推しに告白(嘘)されまして。

朝比奈未涼

文字の大きさ
64 / 108

64.最強の姉妹。

しおりを挟む



…お姫様。

聞こえてきた可愛らしい声に、思わず笑みが溢れる。
どうやらこの会場に、女の子から〝お姫様〟と呼ばれている可愛らしい人がいるらしい。

何だかその存在と女の子が微笑ましくて、ほわほわした気持ちになっていると、私の横に5歳くらいの可愛らしい女の子が現れた。



「こんにちは!お兄ちゃんのお姫様!」

「…え」



綺麗で柔らかそうな黒色の髪を後ろで一つに結び、大きなピンクのリボンを付けている女の子が、私の顔を笑顔で覗く。
大きなくりくりの瞳が印象的な整った顔立ちの女の子は、間違いなく私に挨拶をしていた。

全く見覚えのない女の子に思わず首を傾げる。

私の知り合いにこんなにも愛らしい女の子はいない。
それに私はこの女の子のお兄ちゃんのお姫様でもない。
きっと人違いだろう。

だが、だからといって無視するのも違う。

私は真横にいる女の子が誰なのかわからなかったが、意識して口角を上げた。



「こ、こんにちは」



上手く笑えていない気もするが、きちんと応えたことに意味がある。



「ちょ、里緒!」



ぎこちない笑みを浮かべ続けていると、もう1人、誰かがこの場に現れた。
女の子の横に現れた女性は、この状況にとても焦っていた。

綺麗に巻かれた黒髪に、かきあげられた前髪。
大人っぽいこの女性は20代前半くらいだろうか。

女の子とどこか雰囲気が似ており、パッと見で、姉妹なのだろう、と察せた。
それと同時に、お姉さんから何故か、私の推しである悠里くんの面影も感じた。



「ごめんね、急に。アナタ、柚子ちゃんよね?うちの悠里の彼女の」

「…え、あ、はい」



お姉さんに確認されて、戸惑いながらもこくりと頷く。

うちの、悠里…?

お姉さんの言葉に、私の頭はフル回転し始めた。

悠里くんの面影を感じる、こちらのお姉様。
悠里くんのことを〝うちの悠里〟呼び。

…これは間違いなく、紛れもなく、目の前にいらっしゃる美人さんは、悠里くんのお姉様なのでは?
つまり、この小さな愛らしい女の子は…。



「私、悠里の姉の里奈。大学生。で、こっちの小さいのが…」

「里緒!5歳!年長さん!」



笑顔のお姉さんの横で、悠里くんの妹さん、里緒ちゃんが勢いよく、5本の指を私に見せる。



「…」



突然の推しのご姉妹ご登場に、私は頭が真っ白になった。

本物の推しのご姉妹にお会いする日が来るとは。
悠里くんには、お姉さんと妹さんがいたとは。
姉妹に囲まれていたとは。

固まって黙ってしまった私に、悠里くんのお姉さん、里奈さんが「おーい。大丈夫?」と目の前で軽く手を振ってくれる。
私はその美しい姿に、ハッと我に返り、頭を下げた。



「ゆ、悠里くんとお付き合いをさせていただいております!鉄崎柚子と申します!」



推しの家族に失礼があってはならない!と、慌てる私に里奈さんが優しく笑う。
その顔があまりにも悠里くんに似ていて、思わず感嘆の息が漏れそうになった。
遺伝子がお強すぎる。



「知ってる知ってる。うちの悠里がいつもお世話になってます」

「ます!」



クスクスと笑う里奈さんの隣で、笑顔で同じ言葉を繰り返す里緒ちゃんに、胸がきゅーんっと締め付けられる。
何て愛らしくて最強の姉妹なんだ。



「なんか本当、急にごめんね?里緒が柚子ちゃんの姿見つけて、大興奮でさ」

「わたし、お姫様にずっと会いたかったの!会えて嬉しい!」



少しだけ申し訳さなそうに眉を下げる里奈さんとは、対照的に、里緒ちゃんは本当に嬉しそうに目を輝かせていた。

私は里緒ちゃんの言葉に、改めて首を傾げた。
里緒ちゃんは何故、私をお姫様と呼ぶのか…?



「あの、えっと、私、お姫様ではないというか…。何故、お姫様になっているのでしょうか」



里緒ちゃんに聞いても、詳しくはわからないと思い、里奈さんに理由を聞く。すると里奈さんよりも早く、里緒ちゃんが口を開いた。



「お姉ちゃんはお姫様だよ!お兄ちゃんのお姫様なの!」

「お、お兄ちゃん…。え、あ、悠里くんの?」

「そう!」



可愛いー!!!!!

戸惑う私に、にっこりと花のように笑い、頷いた里緒ちゃんに、胸がズキューンと撃ち抜かれる。

つまり里緒ちゃんの中では、悠里くんの彼女=お兄ちゃんのお姫様、てことになっているのね!



「悠里がよく家で柚子ちゃんの話をするのよ。写真とかも見せてね。だから私たち、柚子ちゃんのこと、前から知ってたの。里緒なんか、お兄ちゃんのお姫様に会いたい!、ていつも言ってて。もちろん、私も会いたかったよ」



里緒ちゃんに優しい視線を向けた後、こちらにも優しく微笑む里奈さんにも胸がズキューンと撃ち抜かれる。

悠里くんといい、里緒ちゃんといい、里奈さんといい。
この家族はラブ狙撃手一家だ。危ない一族だぞ。



「ここには悠里の試合の観戦に?」

「はい」



里奈さんに問いかけられて、頷く。
そんな私を見て里緒ちゃんは、声高らかに、笑顔で言った。



「じゃあ、お姫様もわたしたちと一緒に観よう!」



とんでもなく有り難く、素晴らしすぎる提案だ。
1人よりも、2人。2人よりも、3人の方が断然いい。
しかもその2人が悠里くんの最強のご姉妹となれば、ご褒美でしかない。

今すぐにでも、「ぜひ!」と言いたかったが、私はそれをグッと堪えて、おずおずと2人を見た。



「とても有り難い提案だけど、迷惑じゃあ…」



この眩しすぎる家族団らんに果たして私が混ざってもいいのか。



「迷惑なわけないじゃん?むしろ一緒に観たいし、ね」

「…は、はぅ」



悠里くんによく似た里奈さんの眩しい笑顔に見つめられて、思わず変な息が漏れる。
神様が創りし一族だ。



「ぜひ、お供させてくだしゃい」



私は気がつけばだらしない口調で、里奈さんに頷いていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

付き合ってもいないのに、幼なじみの佐藤がプロポーズしてきた

ぽぽよ
恋愛
「俺らさ、結婚しない?」 三十二歳、独身同士。 幼なじみの佐藤が、たこ焼きパーティの最中に突然言い出した。 付き合ってもないのに。 夢見てた甘いプロポーズじゃないけれど、佐藤となら居心地いいし、給料もあるし、嫁姑問題もないし、性格も知ってる。 断る理由が、ない。 こうして、交際0日で結婚することが決まった。 「とりあえず同棲すっか」 軽いノリで決まってゆく未来。 ゆるっとだらっと流れていく物語。 ※本編は全7話。 ※本編完結後、ゆるいSS投稿予定。 ※サイドストーリー(切なめ)投稿予定。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~

雨宮羽那
恋愛
 魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。  そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!  詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。  家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。  同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!? 「これは契約結婚のはずですよね!?」  ……一方セレフィアがいなくなった義理の家族は、徐々に狂い始めて……? ◇◇◇◇  恋愛小説大賞に応募予定作品です。  お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"  モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです! ※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。 ※表紙はAIイラストです。文字入れは「装丁カフェ」様を使用しております。

心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。

三月べに
恋愛
古川七羽(こがわななは)は、自分のあか抜けない子どもっぽいところがコンプレックスだった。 新たに人の心を読める能力が開花してしまったが、それなりに上手く生きていたつもり。 ひょんなことから出会った竜ヶ崎数斗(りゅうがざきかずと)は、紳士的で優しいのだが、心の中で一目惚れしたと言っていて、七羽にグイグイとくる! 実は御曹司でもあるハイスペックイケメンの彼に押し負ける形で、彼の親友である田中新一(たなかしんいち)と戸田真樹(とだまき)と楽しく過ごしていく。 新一と真樹は、七羽を天使と称して、妹分として可愛がってくれて、数斗も大切にしてくれる。 しかし、起きる修羅場に、数斗の心の声はなかなか物騒。 ややヤンデレな心の声!? それでも――――。 七羽だけに向けられるのは、いつも優しい声だった。 『俺、失恋で、死んじゃうな……』 自分とは釣り合わないとわかりきっていても、キッパリと拒めない。二の足を踏む、じれじれな恋愛模様。 傷だらけの天使だなんて呼ばれちゃう心が読める能力を密かに持つ七羽は、ややヤンデレ気味に溺愛してくる数斗の優しい愛に癒される? 【心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。】『なろうにも掲載』

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~

白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。 国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。 幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。 いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。 これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

譲れない秘密の溺愛

恋文春奈
恋愛
憧れの的、国宝級にイケメンな一条社長と秘密で付き合っている 社内一人気の氷室先輩が急接近!? 憧れの二人に愛される美波だけど… 「美波…今日充電させて」 「俺だけに愛されて」 一条 朝陽 完全無欠なイケメン×鈴木 美波 無自覚隠れ美女

処理中です...