推しに告白(嘘)されまして。

朝比奈未涼

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71.好きなところ。

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それから私たち4人でのクリスマスパーティーは始まった。
リビングの大きなテーブルには、悠里くんと私が作った料理が並べられており、それをみんなで食べながら、話に花を咲かす。
時間を忘れて楽しいひと時を過ごしていると、机を挟んで向こう側に座る里緒ちゃんが、ふと、明るい顔で口を開いた。



「ねぇ、柚子ちゃん。柚子ちゃんはお兄ちゃんのどんなところが好き?」

「え?」



里緒ちゃんの可愛らしい質問に私は目を丸くする。



「んー。いっぱいあるなぁ…」



そして箸を置き、視線を左上へと向けた。

正直、好きなところをあげるとなると、一日中でもあげ続けられる。
しかし、それは流石によくないだろう。
重要な部分だけでも伝えなければ。

そう思い、じっくり思案していると、隣にいた悠里くんは「無理に答えなくてもいいよ」と、気遣うようにこちらを見てきた。
里緒ちゃんの隣にいる里奈さんは「いい質問だねぇ」と楽しそうだ。

全員の視線を浴びながら、私はゆっくりと話始めた。



「えっと…、まずは誰にでも優しいところが好きで、周りをよく見てて、気配りができるところも好き。あとはバスケをしているところもかっこいいし、笑顔も眩しいし、たまに見せてくれる男の子っぽいところも好きだし、見た目も非の打ち所がなくて…」

「ま、待って!もういい!もういいから!」



まだ重要な部分を全て伝えきれていないのだが、真っ赤な顔の悠里くんからストップが入り、もう喋れなくなる。
強制終了だ。

まだまだ言い足りず不満げに悠里くんを見ると、悠里くんは恥ずかしそうに、フイっと、私から視線を逸らした。

…か、可愛い。耳まで真っ赤だ。

ついつい可愛らしい悠里くんに頬が緩む。
すると、今度は里奈さんが怪しく笑った。



「柚子ちゃんだけ悠里の好きなところを言うのはフェアじゃないよね?悠里も言おうか」



ふふふ、と笑う里奈さんに、少しだけ悠里くんが嫌そうな顔をする。
だが、すぐに「…わかった」と小さく頷いた。

おおおおおおお、推しが!?私の好きなところを言ってくれるぅ!!!!????

今まさに大決定されたとんでもないことに嬉しさのあまり、叫び出したくなる。
もちろん、表向きはあくまで冷静に、にこやかにしているが、内なるリトル柚子は喜びで大はしゃぎだ。

今から悠里くんが言ってくれる私の好きなところを、一言一句聞き逃してはいけない。
今日からそこが私のウィークポイントになるのだから。



「…誰にでも平等で、正義感が強いところが好き」



隣から恥ずかしそうに、しかし、しっかりとした口ぶりで、私の好きなところが紡がれ始める。
私はその心地の良い言葉にうんうんと頷き、しっかりと噛み締めた。

なるほど、悠里くんはそう思ってくれているのか。
ならば、今後も風紀委員長として、頑張って働かなくては。



「しっかりしているのに、抜けているところも可愛くて好き」



へへ、可愛いだなんて、嬉しいな。
抜けている自覚はないけど、推しがそう言うのならきっとそうだ。



「実は表情豊かで、いろいろな顔を見せてくれるところも好き」



そ、そうかなぁ。そうなのかなぁ…。



「笑顔も、真面目な顔も、泣きそうな顔も、全部好き。見た目も小さくて、可愛い。小さいのに頑張ってて…」

「…」



続く推しからの有り難い言葉に、どんどん体温が上昇していく。
恥ずかしくて仕方がない。



「あと…」

「ス、ストップ!も、もういいです!限界です!」



まだまだ何か出てきそうな悠里くんに、流石に心臓が破裂しそうになり、私は声を上げた。
まさか、好きだと言われ続けることがこんなにも心臓に悪かったとは。



「…でも俺はもっと言いたいんだけど」

「いい、いい!もう十分!これ以上は私が死んじゃうから!」




眉を少し下げ、まるで子犬のような瞳で不満げにこちらを見る悠里くんに、私は強い意志で首を横に振る。
これ以上は本当に耐えられないのだ。

だが、そんな私を見た悠里くんは柔らかくその瞳を細めた。



「照れてる顔も可愛くて好き。俺しか見られない顔だよね」

「~っ!!!!」



嬉しそうな悠里くんに声にならない悲鳴をあげる。

推しが…、推しが…、尊すぎる…!

一瞬、推しが尊すぎて、意識が飛びそうになったが、私はそこをぐっと堪えて、必死で隣へと手を伸ばした。
そしてそのまま「もう!」と、危険すぎる悠里くんの口を左手で塞いだ。
好き攻撃強制封印だ。



「好きはおしまいです!」



顔を真っ赤にする私に、悠里くんが目を丸くする。
だが、その瞳はすぐに愛おしげに細められ、次の瞬間には私の手のひらに、チュッと何か柔らかいものが当てられていた。
何かではない。

…この尊い感触は悠里くんの唇ではないか?



「ひゃあ…っ」



ほんの数秒固まった後、やっと状況を飲み込み、情けない声をあげて、悠里くんの口から左手を離す。
すると、そんな私に悠里くんは満足げに笑い、「やっぱり、可愛い」と言った。

とんでもない。とんでもないぞ、私の推しは。
ラブテロリストだ。私を甘さで殺す気だ。

甘い空気の中、おろおろと狼狽えていると、その声は聞こえた。



「悠里、場所」



呆れたようにそう言ったのは里奈さんだ。
里奈さんは苦笑いを浮かべながら、隣にいる里緒ちゃんの目元を手で覆っていた。



「ねぇ!ねぇ!?何が起きているの!?お兄ちゃん、柚子ちゃんに何したの!?ねぇ!!!!」



里緒ちゃんが里奈さんに目隠しされたまま、興奮気味に両手をバタバタと動かしている。
里奈さんの目隠しのおかげで、里緒ちゃんは状況をよくわかっていないようだったが、知りたくて知りたくて仕方ないようだった。

里奈さんと里緒ちゃんに今のやり取りを見られ、聞かれていたことを知り、私はますます恥ずかしくなる。

…人一人分入れる穴はどこですか。

ちらりと悠里くんを見ると、さすがに悠里くんも気まずそうに「…ごめん」と謝っていた。

そんな中、やっと里奈さんの目隠しから解放された里緒ちゃんは、声高らかに言った。



「わたしわかったよ!お兄ちゃんが柚子ちゃんのこと、とぉても、大好きなんだってこと!」



キラキラと輝く里緒ちゃんの瞳には曇り一つなく、無邪気そのものだった。



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