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眩しい世界。
しおりを挟むライブ当日。
私は開演30分前には、指定席に着き、ライブ開始を放心状態で待っていた。
何故、放心状態なのか。
それはとんでもない倍率を勝ち抜いて当日のチケットを取れただけでもすごいのに、いざ会場に来てみればなんとアリーナの最前列だったからだ。
ほ、本当にこの席が自分の席なのか、と、ステージの近さにあらゆるものを疑ってしまう。
見間違えではないか、表記ミスではないか、そもそも人違いではないか。
このライブのチケットは電子チケットだ。
当日まで席はわからず、会場の入場口にある端末にチケットを読み込んで、初めてどの席かわかる。
もしかしたらここは私の席ではないかもしれない、と再びスマホを開いて、電子チケットを確認したが、そこにはやはり最前列、1-30と表示されていた。
か、神が、神が私に微笑んでくれた…。
一生分の運をここで使い果たしてしまった。
電子チケットの内容を何度も何度も見て、うっとりする。
そうしていると、電子チケットに見慣れない文字があることに気がついた。
座席番号が表示されている、さらに下。
そこには、〝メンバーとの交流券 当選〟と書かれていた。
「…へ」
思わぬ神々しい〝当選〟という二文字に、声が漏れる。
信じられない文言に、その文字を凝視するが、何度見てもその文字が変わることはない。
ま、幻の交流券に当選してる…。
この〝メンバーとの交流券〟とは、ライブ会場に集まっているファン1万人の中からたった10人が選ばれる、名の通りの券なのだ。
各グループから好きなメンバーを1人ずつ選び、そのメンバーと握手ができ、少しだけ話せて、チェキまで撮れる。
夢のような券なのだ。
…が、たった10人しかその資格は得られない為、私ははなから交流券の当落は眼中になかった。
当たるなど夢にも思っていなかった。
たった1万人だけが得られるライブの席を勝ち取り、さらに最前列を引き当て、幻の交流券にまで当選しているとは。
何もかもが上手くいき過ぎている。
明日、私は死ぬのかな?
身に余るほどの幸福に、私は静かに涙を流した。
やはり、世界は薔薇色だ。
推しが私の世界を幸せな色に染めてくれる。
ああ、早く、透くんに会いたい。
*****
幸せの絶頂の中、ライブは始まった。
会場が暗転し、大きなメインステージと花道とサブステージだけにライトが当てられる。
それからメインステージの後ろにある大きなスクリーンに、romanceのメンバーの映像が流れ始め、派手な音楽が鳴り響いた。
そして光と煙と共にステージ上に現れたromanceメンバーに、会場中のファンは沸いた。
その後に出てきたLOVEにも、同じような歓声が起きた。
だが正直、知名度、人気、どれを取っても圧倒的にromanceの方が上である為、ここにいるほとんどの人がLOVEではなく、romanceを推し、熱烈な声を上げている。
「romanceー!」
「翡翠くーん!」
「奏多ー!」
私の周りにいる女の子たちも、みんなromanceに声援を送っていた。
手に持っているペンライトもromanceのものだ。
どう考えても、LOVEにとって、ここはアウェイ。
それでも私は、周りのromanceファンに負けないように、声を張り上げた。
「LOVEー!透くーん!」
この場では誰も持っていないLOVEのペンラを一生懸命振って、ここに透くんのファンもちゃんといることをアピールする。
するとステージ上で踊っていたキラキラ光る透くんと目が合った。
私を見つけた透くんが、嬉しそうにその瞳を細める。
す、好きぃぃぃー!!!!沼ぁぁぁー!!!!
透くんの微笑みに、私は心の中でそう叫んでいた。
ここにはまだromanceファンの方が圧倒的に多い。
けれど、私が彼を天高く押し上げて見せる。
いつかここを彼のファンでいっぱいにしてみせる…!
そう強く決意したところで、今度は私の前に、翡翠が現れた。
ライトを浴び、踊り歌う翡翠は、前と変わらず、輝いていて、かっこいい。
さすが今をときめく超人気アイドルだ。
立派になって…。
本当、かっこいいね。
完璧な翡翠に、成長を感じ、親心のような感情を抱く。
頑張れ!翡翠!
もう最推しじゃないけど、変わらず応援はしているよ!
そう思いながらLOVEのペンラを振っていると、翡翠と目が合った。
いや、そんなはずはない。こんなにもたくさんのファンの中から翡翠と目が合うわけがない。
きっと気のせいだろう。
ライブあるあるというやつだ。
こちらの方を見ていた翡翠は、太陽のように明るい笑顔を振り撒いていたその瞳から一瞬だけ光を消した。
それから愛おしげに、柔らかく笑った。
さすが、翡翠。
みんなの完璧な星は、表情管理まで完璧らしい。
「きゃあああー!!!」
翡翠の甘い表情に、今日一番の悲鳴が上がる。
しかし、私はそんな翡翠からすぐに透くんへと視線を移し、会場中を包む熱に負けないように叫んだ。
「透くーん!」
メインステージの奥で踊る透くんは、翡翠のように大きな注目は集めていなかったが、それでも私を惹きつけて離さなかった。
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