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3巻
3-2
しおりを挟む3話 地上が大騒ぎになっていました
ダンジョンの入口である巨大扉の近くに転移した私の目の前で、多くの冒険者たちが騒いでいる。
「おい、子供が転移されてきたぞ!?」
「怪我はないようね」
「あの音も、十分くらい前からしなくなったな?」
ガーランド様の別れ際の言葉から察するに、この騒ぎの原因は私にあるらしい。となると、あとでイミアさんに叱られるよね。この後の展開を考えて、攻撃を吸収するスキル『ダークコーティング』をオフにしておこう。そうしないと、私にとっての罰にならない。
「君、大丈夫か? 逃げ遅れた子供がまだいたとは。まさか、他にも……」
魔鬼族の男性で二十歳くらいかな? ひどく取り乱した様子で私のところへ駆け寄り、心配してくれた。
「はい、大丈夫です。怪我もありません。ボスを倒した後、仲間は先に脱出しました。私は、ガーランド像のあった部屋に隠し扉がないか、調査していたんです」
これくらいの嘘を言っても、問題ないよね。
「そうだったのか。できれば、中の様子を教えてくれないか? 音からすると、大変なことが起きているんじゃないか? すぐに騎士団が駆けつけてくる。彼らに状況を説明したいんだが、避難してきた連中に聞いても『ズウゥゥーーーン』という音が響いてくるだけで、強大な魔物とは遭遇していないと言うんだ。君は何か知らないか?」
げ!? それ、私が壁に激突したときの音だ。ダンジョンだからと、安心して敏捷の制御練習をしていたのに、音は地上まで伝わるんだ!! 壁自体のダメージはゼロでも、その振動や音は力とか敏捷のステータス相応に出るのかな。
「何かの激突音は聞こえましたけど、ゴブリンしか現れなかったです」
「やはり、激突音だけか!? うーむ、やはり調査の必要があるな。ありがとう。君はもう帰りなさい」
「はい、失礼します」
みなさん、すみません。犯人は私です。でも、口が裂けても言えない。地上に出ると、笑顔のイミアさんがいた。でも、その笑顔が怖い。
「シャーロット~~、ダンジョンで何をしていたのかな~~」
あ、イミアさんの右拳が私の頭に――
「痛~~~い!!!」
私は頭を叩かれたけど、ノーダメージ。悲鳴を上げたのはイミアさんだ。
「なんで、叩いた私がダメージ受けてるのよ~~~!!」
「すみません、石頭なもので」
イミアさんの右拳が、赤く腫れ上がってしまった。
「さあ、白状しなさい!!」
ここは、素直に起きたことを伝えよう。
「狭い場所では、敏捷を上手く制御できませんでした。周囲には誰もいなかったので、ここで敏捷の訓練をしようと思ったんです。上手く制御できたときはゴブリンを瞬殺できたのですが、制御に失敗すると急停止もできないので、何度も何度も壁に激突しました」
「呆れた~。あの音は、あなたが壁に激突したときの音だったのね!!」
「はい、すみません」
本当に申し訳ない。まさか、こんな騒ぎになっているとは、夢にも思わなかったよ。
「正直、私も恐怖を感じたわ。ネーベリックが近づいてくる足音と似ていたのよ。はじめは、コップの水が少し振動する程度だった。でも、その振動が徐々に大きくなって、地上に上がってくるのか!? ……と思いきや、段々と静かになり安心してきたところで、また突然大きな音が響いたりと……精神的にかなりきつかったわ」
そういえば、制御も兼ねて壁にわざとタックルする練習もしたんだよね。速度を少しずつ上げていったり、緩急をつけてタックルしたりと、そういった行為がこの騒ぎの原因となったのね。
「本当にすみません。でも、もう大丈夫です。散々制御訓練をやったので、次からは普通に冒険できます」
「今回の事件で、あなたがやつを討伐できるだけの強さを持ち合わせていることが実感できたわ。ダンジョンの壁に激突しただけで、その音が地上に響くなんてありえないもの。まあ、この騒ぎもすぐに落ち着くでしょう。さあ、ギルドにランクアップの報告をしてから、アジトに戻るわよ。そうそう、レベルは上がった?」
「レベル8になりました」
ステータスレベルは一つ上がったけど、スキルレベルは上がっていない。
「一つか。次のランクアップダンジョンに行けば、三か四ぐらい上がるんじゃないかしら? でも、気を付けなさい。次からは、罠も設置されている。ランクが上がるほど、凶悪な罠が増えていくわよ」
本音を言うと、仲間が欲しい。私の強さのことを知っても、私と行動してくれる心強い仲間が。たった一人加わるだけで、ダンジョン攻略も楽しくなるだろう。
「エルディア王国でも、冒険者たちはみんな仲間を作り、ダンジョンに挑むようです」
「当然ね。本来は前衛、中衛、後衛に相当する仲間を見つけて、挑むものだもの。一人で行く人も稀にいるけど、自殺行為ね。今回のダンジョンはゴブリンだけだから、一人で挑む者も結構いるものの、次からはそうはいかない。シャーロットには、同ランクの仲間を見つけて欲しいところ……とはいえ、あなたのペースに合わせられる人がいるとは思えないのよ。当分、一人で行動するしかないわね。さあ、一旦帰りましょう」
そこなんだよね。それに、私には特殊な事情もあるから、仲間を見つけるのはやっぱり無理かな? 少し寂しいけど、気楽に冒険できると思えばいいか。今回のような騒ぎだけは起こさないよう、心がけておこう。
「イミアさん、騎士団や冒険者の人たちに、『犯人は私です。私が壁に激突したときの音です』と言っても……」
「絶対に信用してもらえないわね」
「ですよね~」
やっぱり、本当のことは言えないや。だから、このまま素知らぬふりをして帰ろう。今回、大勢の人に迷惑をかけてしまった。みんな、ごめんね。
○○○
冒険者ギルドにランクアップの報告を行い、そのままアジトに戻った。そして、アトカさんの部屋で、アトカさんとクロイス姫に今日の出来事を話した。
「はあ~シャーロット、お前は何をやっているんだ?」
アトカさんに、盛大に溜息を吐かれた。
「あの騒ぎは、シャーロットの仕業だったんですね。音こそ聞こえませんでしたが、多くの人々が騒いでいたんです。子供たちが怯えていたんですよ」
あの騒ぎがここまで届いていたの!? 子供たちを怖がらせてしまったね。
「すみません。壁に激突したときの音が、地上まで届くとは思っていませんでした」
「シャーロットの能力は、ネーベリックを軽く超えているんだろ? シャーロットの敏捷で、手加減なく壁に突っ込んだら、恐ろしい衝撃が起こるはずだ。壁への攻撃力は皆無でも、間接的に発生する音の振動が地上に伝わったんだな」
音の振動が地上にまで伝わるということは、相当な速度による衝撃だ。いくら攻撃力は0でも、間接攻撃が効く以上、仲間ができた場合、誤って殺してしまう危険性もある。私は、もっと自分の力を知らないといけない。
「今回は良い勉強になりました。次から気をつけます」
「なんだか心配ですね。また、何かやらかしそうでヒヤヒヤします」
「クロイス、お前が言うな」
「クロイス姫に言われたくありませんよ」
「クロイス姫に言われたくないわね」
アトカさん、私、イミアさんによる同時ツッコミが入ったよ。
「三人揃って言わないでください。私だってもう、料理に飽きたと言って、こっそり外に出たりしません!! どうです? 賢くなったでしょ!!」
「それは、シャーロットが新規料理を開発してくれたからだろうが!!」
「あはは、言えてる言えてる。クロイス姫は、今までのこともありますから、すぐには信用されませんよ」
イミアさんの言う通りだ。なんにせよ、今回は多くの人々に迷惑をかけてしまった。自分の力を再認識したよ。でもそのおかげで、新たな攻撃方法を生み出せそうな気がする。次のランクアップダンジョンでは、新技に挑戦しよう。
4話 とある冒険者との出会い
Eランクになった翌日――
今日挑戦するDのランクアップダンジョンは地下五階まであり、『洞窟』と『森林』という二つのエリアが存在する。地下一階から、洞窟→森林→洞窟→森林→森林となっている。各階層自体が広く、EとFランクの魔物が出現し、さらにDランク用の罠が多数設置されているため、一層のクリア時間も長くなる。場合によっては、ダンジョンで一晩過ごすパーティーもいるようだ。
ちなみに、地下五階以上あるダンジョンには、『セーフティーエリア』と呼ばれる場所が各階層に必ずあるらしく、その場所に入ると魔物は襲ってこないらしい。冒険者たちは、そこで寝泊まりするそうだ。
だから、ダンジョン攻略前には野営の道具や食糧が必要となる。ジストニス王国において、このDのランクアップダンジョンは『冒険者の登竜門』と言われており、ここを突破してはじめて『初心者』のレッテルから解放されるのだ。
こういった基礎知識を頭に入れた私は、朝、イミアさんと一緒に市場で野営セットや食糧を買い、ランクアップダンジョンへ行くことにした。
貧民街や冒険者ギルドからも少し離れているので、現在徒歩で向かっている。そういえば、貧民街から離れるとき、アトカさんとクロイス姫からいくつか忠告されたな。
『シャーロット、昨日の件もあるので、十分注意して魔物を討伐してくださいね』
『くれぐれも、他の冒険者を巻き込むなよ。今回のランクアップダンジョンからはダンジョン自体が広くなっているし、十代の冒険者も多く参加しているはずだ。目立つ行動だけは、絶対にするな』
昨日の段階でかなり騒がれたから、注意しないといけない。
私がこうやってダンジョンについて真剣に考えているのに、イミアさんはこの世界の焼きおにぎり――ヤキタリネギリを笑顔で頬張っているよ。なんか、緊張感に欠けるね。
「ヤキタリネギリ、イミアさんのお気に入りになりましたね」
「ふふ、だってこんな美味しくて香ばしい味、はじめてなんだもの!! 周りにも、食べてる人がいるでしょ」
ヤキタリネギリをあの一軒の店に教えてから、さして日は経っていない。でも、調理過程がシンプルなこともあって、マネしている店が数軒あった。どうやら各店とも独自のタレを作り出し、味に差をつけているようだ。そのためか、どの店にも行列ができている。この分だと、パエリアなどを教えたニャンコ亭も、大繁盛しているかもね。私のレパートリーはまだまだあるけど、ヤキタリネギリ一つでこれだから、しばらく新規料理の発表は控えよう。
「シャーロット、どこに行くの? ここが目的地よ」
「え?」
急に立ち止まったイミアさんはそう言うけど……
目の前にあるのは、豪華な貴族の屋敷だった。外観も綺麗だ。どう見ても、人が住んでいるように見えるんですけど!?
「ここですか!? いやこれ、貴族の屋敷ですよ?」
「間違いなく、ここがDランク用のランクアップダンジョンよ。ダンジョンというのは、どこにでもできるの。森全体がダンジョンという場所もあるし、こういった建物自体がダンジョンという場所も多数あるわ。建物がダンジョンの場合、そこで過去に凄惨な事件が起こったという証拠でもあるの」
ダンジョン化するほどの事件が、過去にあったんだ?
「ここは百年前、とある子爵家の屋敷でね。そこの一人娘が何か事件を起こしたらしくて、家族全員がこの屋敷内で処刑されたそうよ。処刑から三年後にこのダンジョンが生まれたの。当時のボスは、ゴースト化した家族だったらしいわ。現在では踏破されて、国の管理下に置かれるダンジョンとなっているわ。ちなみにダンジョンの入口は、屋敷の玄関を入ったらすぐに見えるわよ」
うん? この屋敷、二階建てだよね?
「あの……残りの部屋は?」
「この屋敷を管理する人たちが使用しているわ。住み込みの人もいるわね。曰く付きのところだけど、その分、給料は高いそうよ」
住み込みの人もいるの!? たとえ給料が高くても、こんな場所に泊まりたくないよ!?
玄関へと続く庭では、多くの露店が並んでいる。ヤキタリネギリや串焼きなんかが販売されているし、雑貨屋とかもある。中には、武具を販売している露店もあるよ。多くの冒険者が、露店を見て回っていて、凄く賑やかだ。
「あの……みなさん、その事件のことを知っているんですか?」
「もちろん知っているわ。でも、事件から百年経過しているし、ダンジョンが踏破されて以降は、何も起きていないから、安心して出店できるのよ」
うーん、とても一家全員が処刑された場所とは思えない。私たちも敷地に入り、雑貨屋を見てみると、脱出専用アイテム『エスケープストーン』や、ダンジョンの地図が販売されていた。ここは地下五階で各階も広いから、地図が販売されているのだろう。
「シャーロット、エスケープストーンをもう一つ渡しておくわ。地図はいる?」
「一応、買っておきます」
地図を買って、予備のエスケープストーンを貰い、これで全ての準備が整った。
「今回、出現する全ての魔物と戦い、全ての罠に嵌まろうと思います。何事も、経験が大事ですから」
「あのね、魔物はわかるけど、全ての罠に嵌まる必要はないわよ」
イミアさんが呆れている。まあ、普通の冒険者なら、自分から罠に嵌まろうとしないよね。でも、私には『状態異常無効』のスキルもあるから、誰もいないときにこっそり実行してみよう。
「それでは、行ってきます」
「終わったら、アジトに戻ってきてね」
私はイミアさんと別れ、玄関付近までやってきた。そこには、完全武装した警備員らしき男性が立っていた。軽く会釈して扉を開けようとすると……
「君、ちょっと待ちなさい。まさか、一人で行く気かね?」
やはり、呼び止められたか!! こんな子供が一人で行くのはおかしいもんね。
「いいえ、既に仲間が入り、地下一階で待っています」
「仲間? ああ、さっきの学園生の子か!! あの子、仲間を欲しがっていたが、まさかこんな小さな子を誘うとは……」
誰のこと? まあ、いいや。話を合わせよう。
武術、魔法、魔導具、医学、薬学など、多くの分野を学べる場所が学園だ。その中でも、武術と魔法は必須項目に入る。学園生はこういったダンジョンにも、足を運ぶんだね。
「ここは、Dランクのランクアップダンジョンですから、私たちは様子見で行くだけです。無理に進むつもりはありませんよ」
「まだ七歳くらいだろうに、しっかりした口調だ。くれぐれも、地下一階だけを探索して戻ってくるんだよ」
年齢制限はなくとも、心配してくれているのか。警備員さんが扉を開けてくれたので、お礼を言って、屋敷に入った。入った瞬間、どこが入口かすぐにわかった。
ど真ん中に、地下への階段があるよ。ここは吹き抜けのロビーという感じで、左右には通路が続いているけど、関係者以外立ち入り禁止の立て札が置かれていた。
地下へと続く階段を下りていき、ゆっくり扉を開ければ、ヒンヤリした空気が流れ込んでくる。
ここが、Dランク用のランクアップダンジョンか。
ダンジョンに入り、扉を閉めると、周囲は意外と明るかった。この感覚は、昨日のダンジョンと酷似している。さあ、奥へ進んでいこうか!!
○○○
洞窟エリアなんだろうけど、作りは昨日のダンジョンとかなり違う。周囲が土ではなく石でできており、しかも凹凸がまったくない。ここは洞窟というより、ゲームに出てくる地下室の迷路みたいだ。ただし、こちらの方がスケール的に遥かに広大だ。はじめは、地図に頼らず進めてみよう。
このダンジョンで試したいのは、間接攻撃だ。私の場合、音と風圧を利用できそうだ。風圧に関しては、誰もいない場所で、普通の敵に試したい。音に関しては、大きな敵に試したい。アレは理論上実現可能のはず。このダンジョンで大きな敵となるのは、すなわち地下五階にいるボスだ。
むっ、前方から魔物の気配がする。現れたのは……スライムか。構造解析しておきたいところだけど、現在は王城を解析中のため使用できない。でも精霊様から、魔物に関しても少しだけ教わったんだよね。
こいつは、Eランクのノーマルスライム。体長が三十センチほど、身体がプヨプヨしていて、物理攻撃が効きにくいけど、火魔法に弱かったはず。このスライム、小さいよね。これなら、直接手を突っ込んで核にある魔石を取れるんじゃないかな?
ノーマルスライムでも酸性の性質を持っているから、普通に触れば、手が爛れるし、服も溶ける。でもそれなら、身体に火属性を付与して実行すれば問題ないはずだ。
「シュ、シュー(魔鬼族、死ね)」
「最弱が何を言っても怖くないよ。あなたの魔石を貰うね」
……よし、魔石を取れた!! 服も溶けてない。あ、ノーマルスライムがドロドロに溶けて、地面に消えていった。実に呆気ない最期だった。
魔石をマジックバッグに収納し、先に進んでいくと、十字路に出た。ここは無視して、まっすぐ突き進もう。――と、数メートルほど進んだところで、いきなり床が抜けた。
「え……ヒッ!!」
私はおかしな悲鳴を上げ、ヒュ~~ッと落ちていく。下には、無数の槍が穂先を向けて突き立っていたので――
「フライ」
風魔法のフライ、空を飛ぶ魔法だ。元々、この魔法の知識だけは精霊様から教わっていたので、山頂の訓練で習得しておいたのだ。槍の隙間に降り観察すると、ただの鉄製のようだった。全部で三十二本か。そこそこの値段で売れるよね。これはラッキー、ありがたくちょうだいします。空を飛ぶ魔法を習得しておいてよかったよ。
槍を回収して元の場所に戻り、落とし穴のあった壁付近を調べると、両側の壁に魔石が埋め込まれていた。なるほど、これがセンサーの役割となっているのか。この魔石もありがたくちょうだいしよう。
あれ? 魔石を取るとき、なんかビリッときた気がするけど、気のせいかな?
さて、次はどんな罠があっるかな~~。
通路をどんどん進んでいくと、ノーマルスライム五体、ゴブリン三体が現れた。スライムに関しては魔石を取り出すだけ、ゴブリンは首に『内部破壊』攻撃をするだけで終わった。うーん、地下一階だと、近くに冒険者の気配もあるから、迂闊に新技を試せないよ。
あ、宝箱発見。中身は何かな~。箱を開けた瞬間、プシューーーーっと玉手箱のような白い煙が舞い上がった。
「なに、これ?」
うーん、構造解析できないから、なんの煙かわからない。多分、毒っぽい気がする。煙が晴れて、宝箱を再度確認すると、赤っぽい短剣が入っていた。
「これって……色合いからして、銅の短剣だよね?」
地下一階だと、この程度なのかな? まだまだ探せばあると思うけど……むっ、前方で誰かが戦っている。一人だけ? 見た感じ、私より少し年上の魔鬼族の男の子か。イケメンではないけれど、女性の庇護欲を刺激するような可愛い顔立ちをしている。服装が学生服っぽいよね? 警備員さんが言っていた学園生かな? 武器はロングソードか。彼の相手は、ノーマルスライム二体とゴブリン二体……一人で討伐できるかな?
彼は五分ほどで、ゴブリン二体を討伐した。残りはノーマルスライム二体だ。
「くそ、このスライム強いぞ。魔石も小さいから、なかなか斬れない。火よ、魔の者を討ち払え!!ファイヤーボール」
あれ、魔法を使ってる!? 魔鬼族は今、ネーベリックを逃がしたことで精霊様の怒りを買い、魔法が使えないはずなのに!? いや、よく見ると、左手と右手の人差し指と、右手の薬指に指輪をつけてるね。あの人は魔導具から魔法を使用しているのか。ありゃ、残る一体が後ろに回り込んでいる。あの人の強さだと、あれは回避できない。仕方ない、助けるか。
「スライム一体、背後にいますよ」
「え……うわ、危ない!!」
ギリギリのところで、スライムの攻撃を回避したね。
「ありがとう、助かったよ……って子供!?」
「ノーマルスライムで苦戦してたらダメですよ?」
まだ、ランクアップダンジョンの地下一階だ。ここで苦戦してたら、絶対に踏破できない。
「そうは言っても、こいつは物理攻撃が効きにくいし、核となる魔石が小さいから、剣でも当たりにくいんだよ」
「どうして剣にこだわるんですか? このスライムは体長三十センチほどですから、こうやって火属性を身体全体に付与し、手をスライムの中に突っ込んで、魔石を取る。はい、終了」
スライムは一瞬で溶けて、消失してしまった。
「身体全体に属性付与!? しかも、一瞬でスライムから魔石を取った!?」
「簡単な作業ですよ? あなたが、剣にこだわりすぎていたから苦戦したんです」
「いやいやいや、身体全体に属性付与できるなんて、誰も知らないよ!! しかも、あんな小さな魔石を一瞬で取り出せないよ!! スライムの対処方法は、剣で魔石を斬るか、火魔法での攻撃だからね!!」
そういえば、レドルカたちも驚いていたよね。魔鬼族も、身体への属性付与を知らなかったのか。
「そうなんですか? そもそも、スライム相手に魔法を使うこと自体が、もったいないですよ。今後は、さっきのようにすれば楽に倒せます。それでは」
私は、地下二階への階段を探さないとね。
「ちょっと待って。君も一人で挑んでいるの?」
やはり呼び止められたか。
「はい。事情があって、一人で行動しています」
「でも……君は七歳くらいだし、いくらなんでも無謀だよ」
見た目だけで判断すると、確かに無謀に見える。だから、警備員さんには嘘をついて、ここに入ったんだよ。
「勝算はあります。あなたこそ、大丈夫なんですか?」
「いや……まあ、僕も訳ありなんだけど」
どうやらこの男の子にも何かあるようだ。それに、雰囲気が誰かに似ている。どこか放っておけないような感覚に陥る。誰に似ているんだろう? ここで会ったのも何かの縁かもね。せっかくだし、一緒に進むのも悪くないか。
5話 アッシュの悩み
まずは自己紹介をして、仲を深めよう。
「お互い込み入った事情がありそうなので、一緒に行動しませんか? 私はシャーロット・エルバランと言います」
「僕はアッシュ・パートン。君の言う通り、僕の強さでは、一人で最下層に行けそうにない。こちらからお願いしたいくらいだよ。よろしく頼む」
アッシュさんか。互いの信頼を深めるためにも、私の事情を少し話そうか。
「このダンジョンに一人で挑むのは、私の攻撃方法が特殊だからです。まだ加減ができないので、周囲に迷惑をかけると思ったのです」
そもそも私の場合、罠も魔物も関係なく突き進んでいくだけだから、仲間がいるとかえって危ない。
「攻撃方法が特殊? 今は僕たち以外、誰もいないようだし、よければ見せてくれないかな?」
確かに、周囲から他の冒険者の気配がしない。この状況ならば、被害は出ないか。ちょうどいいタイミングで、三十メートルほど先の曲がり角から、ゴブリン三体が姿を現した。こちらには気づいていない。
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