元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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ゴムゴムロープでどこまでも《クックイスクイズ−Web版》

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時系列
全ての事件が解決し、シャーロットチームリタイア後に行われたクックイスクイズ第4チェックポイントでのリリヤやアッシュのお話となります。


○○○ リリヤ視点


シャーロットとお別れした日、結局第4チェックポイントへは行かなかった。敗者復活戦と罰ゲームが終了した後、カクさんが……

「次のチェックポイントでは、君達の瞬発力や反射神経、体幹の強さが問われることになる。ここで、勝者全員の体調を万全に整えるぞ。幸い、シャーロットが簡易温泉施設を建設してくれたから、ここで野宿しても問題ないはずだ。しっかりと、英気を養いたまえ」

と言ってくれた。私とアッシュは簡易温泉施設の建設方法をシャーロットから学んだし、私のマジックバッグに温泉兵器も入ってる。次のチェックポイントで野宿することがあれば、私達が施設を建設してあげよう。


…………そして、その日の夜


私はレアナさんのいるテントに行き、カクさんから貰った丸い形の魔導具【写映球】を介して、アッシュがひた隠しにしている秘密を知ってしまった。

「どうだいリリヤ、感想は?」

私が眠っている間に、こんな事が起きていたなんて…………白狐童子が心の中で大笑いしている。

『あははは、こいつは傑作だ! アッシュは、男に告白しようとしていたのか!? しかも告白後、キスまでしようとしていたのか!? あいつが隠したいわけだ』

何もそこまで笑わなくても……アッシュとしては真剣だったし、神が私に変装しているなんてわかるわけないよ。

でも……えへへ……なんか嬉しいな。

「あのレアナさん……アッシュは私に……け…結婚の申し込みを?」

「くく、そうだよ。しかも、シャーロットの手紙を見て、あいつは覚悟を決めたんだ。あの手紙の内容は真実だ。簡易神具が厄浄禍津金剛にどこまで効果を発揮するのか不明だからね。シャーロットは本気でアッシュのことを心配し、書いたものだよ。だからこそ、リリヤに化けた奴はシャーロットの企みに気づけなかった。まあ、トキワが言ったように、アッシュだけが精神的に大きな傷を負ったけどね」

アッシュが隠したい気持ちもわかる。
こんなの……私に言えるわけないよ。

「その……アッシュは気の毒でしたけど、私としては……とても嬉しいです。そこまで真剣に私のことを思ってくれていたなんて……」

「リリヤ、アッシュのような男はそういないよ。現時点で、ほぼ射止めているようなものだけど、横から盗み取られない様に気をつけな」

アッシュは優しいし、気遣いもある。他の女の人が、アッシュを狙ったりする可能性もあるよね。気をつけないと!

「はい! ただ、明日……アッシュに会った時、どう接すればいいのか……」

「な~に、いつも通りでいいさ。アッシュから話しかけてきたら、口を塞いでやりな。あいつも話したくないだろうしね」

いつも通り……か。そうだよね、結婚なんてまだ考えられないし、下手に言ったらギクシャクしちゃうもん。今の関係を維持しよう!

「はい! レアナさん、アドバイスありがとうございます」

明日からはクックイスクイズも再開する。アッシュやレアナさん、トキワさんとは敵同士になっちゃうけど、真剣に戦おう。第4チェックポイント、瞬発力とかが必要と言っていたけど、何が待ち受けているのかな?


…………翌朝


私はテントから出て、暖かなお日様の光を浴びていると、アッシュがやって来た。お互いに挨拶をした後、アッシュは意を決して自分の秘密を話そうとしたけど、私は左手で彼の口を塞いだ。

「アッシュ、無理に話さなくていいよ。あなたにとって、相当な何かが起きたんだよね?何かを犠牲にして、厄浄禍津金剛を捕縛できたんだよね? 今は話さなくていいよ。あなたの心の傷が回復したら話してね」

「リリヤ……ありがとう」

「第4チェックポイント、頑張ろうね!」
「ああ」

アッシュとは恋人関係になって、まだ間もない。
今は、この関係を大切にしよう。


カクさんは全員が集合したのを確認してから、第4チェックポイントとなる場所へ転移した。転移直後、目の前の風景が急速に切り替わった。

『凄……い。見渡す限り、全てが茶色いゴツゴツした岩場ばかり。前方にある垂直の岩壁、あれはどこまで高く続いているのかな? 上が全然見えないよ』

『リリヤ、前方ばかりに気を取られるな。周りをよく見てみろ!』

『へ?』

白狐童子に言われて、もう一度周囲を見渡すと……前方以外、周囲300メートル程のところで、地面が途切れていた。え、どういうこと? なんで途切れているの?

「ここが、第4チェックポイント【ヘルフォールキャニオン】だ。フランジュ帝国から遥か北にあるランダルキア大陸の奥深くにあり、周辺の国々では有名な場所となっている。遥か昔、大きな地殻変動によって形作られた広大な峡谷で、その中でも私達のいる岩山の高さは5000メートルもある。君達の正面に見えている壁、あれを登り続けると、5000メートルの頂上に到着するだろう。そして、今いるここは海抜3000メートルに位置する荒地で、前方以外が断崖絶壁となっている」

ここで何が行われるの?
まさか……あの垂直の壁を登るの?

「第4チェックポイントは、全員参加型のクイズイベントだ。今から会場に案内しよう」

カクさんは、前方にある垂直の壁のすぐ近くまで歩いていった。やはり、ここを登るのかと誰もが思った時、急に左へと方向転換し、そのまま歩き出した。妙な緊張感が周囲を覆っている。アッシュやトキワさんも、顔が緊張で強張ってる。

これから何が始まるのかな?

「さあ、ここが会場だ。全員、私が合図を出すまで、この道をまっすぐ進みたまえ」
「「「「「え!?」」」」」

嘘……ここを進むの? 

道らしきものはあるけど、道幅が30cm程しかない。しかも、道の右側には果てしなく高い岩壁、左側には何もない。下を見たら……うっすらと霧があるせいで、地面も見えない。しかも、障害物らしきものが何もないから、下から強風も吹いてる。これじゃあ歩いている時、バランスも崩しやすい。

「カクさん、まさかとは思うが、この狭い道幅で全員参加型のクイズをやるのか?」

「トキワよ、その通りだ。君達全員が、この道に入ってもらい岩壁を背にしてから、私がクイズを出題する。さあ、全員進むんだ!」

さすがに、この高さは怖い。隣にいるシュラクさんやサンドラさんも、顔色が悪い。他の人達もそうだ。

「……サンドラさん、リリヤ、行こう。進まないと、強制失格になる。僕は、高地での訓練もしているから、高所から落下した時の対処方法も心得ている」

皆がゆっくりと進んでいく中、私達はその場に留まり、シュラクさんが対処方法を教えてくれた。内容としては、シャーロットが高さ12000メートルから落下した時のものと、ほぼ同じだった。

今の私には、空を飛べる風魔法【フライ】がある。
だから落下しても大丈夫だと思うけど……

『リリヤ、落下しても絶対に焦るなよ』
『うん、そうだね。焦ったら、【フライ】が発動しないもん。焦りは禁物』

そう、こんな高所から落下したことがない。
絶対に焦っちゃダメだ。

「シュラク、ありがとね。対処方法はわかった。こうなったら、覚悟を決めて進むしかないね」

サンドラさん、度胸あるな。自ら進んで、狭い道を歩き出した。身体の大きさを考えたら、1番危険なのに。私も負けていられない!

参加者全員が、狭い道を横歩きしている。こんな場所、普通に歩けないよ。それにしても、この道はどこまで続いているんだろうか? 曲がりくねっているせいで、先が全然見えない。

「皆、止まれ! ここまで来ればいいだろう。これより、君達のスキルと魔法を封印する。基本ステータスの数値は弄らないので安心したまえ。それでは、第4チェックポイントでのルールを説明するぞ!」

いよいよ、始まる。魔法とスキル封印に関しては、予想していたし驚くことでもない。【一列になった私達】、【荒れ狂う風】、【狭い足場】、【スキルと魔法の封印】、多分これだけじゃない。何か、私の想像もしない何かがあるはず。

「クイズのジャンルは、【間違い探し】だ。今から、君達の目の前に《とある映像》を出す。30秒間、その映像をよ~く見ておくんだ。その後、再度映像を出すが、そこには80箇所の間違いがある。君達は、両端からその間違いを指摘していくんだ。1番最後となるチームが答えたところで終了となる」

え、80箇所の間違い探し!?
間違いが多過ぎるよ!!
しかも、両端から答えていくの!

「カクさん! それだと中央にいるチームが、1番不利じゃないですか!?」

「リリヤ、その通りだ! 私は予選会場で、『知力、体力、時の運』と言ったはずだ。この会場に到着した時点から始まっていたのだ。現時点で、リリヤ、サンドラ、シュラク、君達のチームが、最も不利な位置にいるぞ」

え、私達が1番真ん中なの!
左右を見渡したら、曲がりくねっているけど、両端が見える。
あ…………カクさんの言う通りだ。

「改めてルールを説明する。今から連続して、10問の間違いクイズを行う。誤答した者、もしくは1度指摘した間違いを再度言った解答者には連帯責任とし、チーム全員に3発の拳大の岩石が、全方位から襲ってくる。その際、道から落下した者は強制的に失格だ。ただし、10問のクイズを乗り越え、チームに1人でも生き残りがいれば、チーム全員が次の第5チェックポイントに行ける。全チーム通過の場合もあれば、全チーム敗退の場合もありうる。また、ある程度チーム数が減少したら、間違いの数も減らしていく。また、問題が進む程、難易度も上昇していくぞ」

最悪だ。私達が1番不利だよ。80箇所の間違いなんて覚えきれないよ。

「ちょい待ち! カクさん、道から落下した奴等はどうなるんだ? この高さから落ちたら……」

姿は見えないけど、この口癖から察するとレアナさんかな?

「ここから真下に見える地面までの高さは2856メートルだ。落下した者に関しては、その時点でスキルと魔法の封印を解除する。自分でなんとかしなさい……と言いたいが、落下した者の中には勝利チームもいるだろう。それに罰ゲームのこともあるので、高さ50メートルに達したら自動的に出発地点の岩場へと戻る転移魔法が発動される。よって、このクイズで死者が出ることはない」

ほ、良かった。万が一ということもあるし、それを聞いて安心した。

「リリヤ、サンドラさん、今回私達が1番不利だ。少しでも生存確率を上げるために、作戦を練ろう」

左隣にいるシュラクさんからの提案、何か攻略法があるのかな?

「シュラク、私はこういった問題が苦手なんだよ。何か混乱しない攻略法があるのかい?」

「映像を縦3分割にして、私は左端、リリヤは中央、サンドラさんは右端だけを見ましょう」

あ、そうか! 
チームで分担すれば、それだけ負担も減るし、誤答しにくくなる!

「なるほど……それなら私でも何とかなるか」

「ええ。ただ、他のチームも同じことをしてくるでしょうから、やはり記憶力が鍵ですね」

「わかりました。私は中央だけを見ます!」
「私は……右端か。覚悟を決めるか」

「心の準備はいいか? それでは間違い探しクイズ、スターーーート!!!」

カクさんが言い放った瞬間、1問目の映像が現れた。
その映像を見て、私達挑戦者全員が度肝を抜かれた。


○○○


「「「「えええぇぇぇぇーーーーー」」」」

私達の目の前に現れた巨大な映像、それは…………フランジュ帝国帝都にて、巨大シャーロットが4体の従魔達をお尻ペンペンする瞬間だった。この映像の視点、巨大シャーロットと同じ高さから撮ったものだ。巨大な3つのマジックハンド、半泣きしたカムイ達、奥には半壊した王宮、城下にはシャーロットを見上げる大勢の人達、こんなの……こんなの……こんなの反則だよ!

「終了だ!」
「「「「ええええぇぇぇぇぇーーーーー」」」」

どうしよう~~~~インパクトがありすぎて、中央の部分をあまり見てないよーーーーー!!!

シュラクさんやサンドラさんを見ると……

「シュラク、覚えれたか?」

「……シャーロットちゃんの映像がインパクトありすぎて、違う意味で頭に焼きついたというか」

「私も…だよ。私達も、地上からあの光景を目撃していたけど、シャーロットと同じ高さから見たら、こんな映像になるなんてね」

あ、2人も私と同じなんだ。

「シュラクさん、サンドラさん、前向きに考えましょう。帝都にいた私達でこれなんですから、帝都にいなかったチームから見たら、もっと衝撃的のはず、もしかしたら……」

「なるほど、そう考えると我々にも生き残れるチャンスはあるか」

どうか、間違い者続出でありますように!

「次、間違った映像を出すぞ。これだ!」

あ、カクさんの合図と同時に映像が出た。

「「「「「おいーーー!?」」」」」

ちょっとーーーーあからさまな間違いがあるじゃない!
こんなのアリなの!

1) シャーロットとカムイだけ、静止画ではなく動画になっている
2) シャーロットが丸坊主
3) シャーロットとカムイが喋っている。内容も、現実と大きく異なる
『悪い子には、お仕置きだーーー』
『いたーーーい、もっと叩いてーーー』
『私のことは、女王さまとお呼びーーーー』
『はい、女王様~~』
4) カムイが気持ち悪い笑顔を浮かべている
5) 王宮が全壊

………こんなの真っ先に答えられるよ!

シャーロットが厄浄禍津金剛やユアラの件を解決してくれたのに、本人達がいないからって、この仕打ちは酷い!

「間違った映像は、このままこの空間に固定する。1人に対する制限時間は5秒。両端の者から順に答えていけ。スターーーート」

うわあ~、みんながシャーロットとカムイの箇所を真っ先に答えていってるーーーー!

『精霊から悪意を感じるな。我が盟主を丸坊主にするとは……許せん』
『今は、それどころじゃないよ! 白狐童子、ここは協力していこう』
『わかっている。中央の部分に集中しろ』

中央の箇所の中でも、わかりにくい間違いを探さないと。

「それは誤答だ。岩石弾発射!」
「「「う!」」」

あ、左側の離れたところから3人が落下していく! ここからだと、岩石弾が何処から襲ってきたのかわからない。皆が次々と間違いを指摘していく。誤答して岩石弾に耐える者や耐えきれず落下していく人達も6人近くいる。私の見ている範囲で確認できたのは、チームの真上、前方の左斜め上など、岩石弾があらゆる方位から突然現れている。ただ、出現地点が私達と少し離れているから、集中すれば回避できる。

……いよいよ、サンドラさんの番だ。

『リリヤ、私の覚えている中で、1箇所言われていない部分がある』
『大丈夫、私もわかる』

サンドラさん、お願い…………

「サンドラ、不正解! それは1度指摘されているぞ!」

嘘!?

「え!?………くそ! シュラク、リリヤ、すまない」
「サンドラさん、リリヤ、集中しろ!」

『リリヤ、岩石弾だ!』

そうだ、集中しないと!
これに耐えれば、まだ敗退しない!
全方位からくる以上、神経を張り巡らせないと!

「岩石弾発射!」

ドン

「ぐう……真…下からだと!? しかも……そんな形……聞いてない」

シュラクさん!?
ドン

「ガ!?」
「リリヤ、シュラク!?」

私の後頭部に衝撃が走った。まさか真後ろから? そこは岩壁でしょ!?

『クソ! 真後ろだと!岩壁だと思って除外していた。そうか、落下した連中はこれで……』

あ、バランスを崩して足を踏み外した。シュラクさん、サンドラさん……ごめんなさい。私は落下しながら、自分の立っていた場所を見ると、そこには拳大の岩が岩壁から突き出ていた。

あれにやられたんだ。
あれ? サンドラさんは耐えたようだけど? シュラクさんは?

『シュラクなら、お前の少し下にいる。あれは……気の毒にな……』

どういうこと?
私は下を見ると、気絶しているシュラクさんが確かにいた。

「あ」

……あれは酷いよ。

確かに拳大の岩石だけど、形が人の手だ。しかも……両手を組み、人差し指と親指だけを突き上げて、人差し指だけがシュラクさんのお尻……肛門を貫いてる。あんなのが真下から襲ってきたら、回避できないよ。

「サンドラさーーーん、ごめんなさーーーーい」

私は落下しながら、この攻撃に耐えたサンドラさんに謝罪した。


○○○


第4チェックポイントの間違い探しクイズが終わり、全員が出発地点となる岩場へと集合した。

通過チームは7チーム。

そこに、アッシュとトキワさんのチームも含まれている。私達とレアナさんチームは……敗退した。アッシュが落ち込んでいる私を慰めてくれている。

優しいな。

「リリヤ、残念だったね。君とシュラクさんが落ちる瞬間を見たんだ。あれのおかげで、僕は助かった。僕も6問目で間違えて、真下からの攻撃が襲ってきたんだよ」

ああ、シュラクさんのアレを見たことで耐えれたんだね。

「そっか。アッシュの役に立てたのなら嬉しい。……頑張ってね」
「ああ、どうせなら最後まで行ってやる!」

あ~あ、負けちゃったか。
次は罰ゲーム、どんな内容かな?

「皆、今から敗者達への罰ゲームを執行する。罰ゲームのタイトルは、《ゴムゴムロープで何処までも》だ」

なにそれ?
《ゴム》という言葉は知ってるけど、ゴムゴムロープって何?

「さあ、敗者達よ。まずは、この白線に沿って一列に並びなさい」

「何が始まるの? アッシュはゴムゴムロープって知ってる?」
「多分、ゴム製のロープのことだと思うけど、それで何をするのだろう?」

私達敗者はカクさんの言う通り、白線に沿って一列に並んだ。

「敗者諸君、全員一列に並んだようだね。次、君達の帰るべき場所を頭に強く思い浮かべるんだ。冗談半分で、海や密林の中などをイメージしないように! 君達の帰るべき場所、なるべく誰もいない広い場所をイメージしなさい」

私の帰るべき場所? そして、誰もいない広い場所?
うーん、ジストニス王国の王城の中庭かな?
あそこは騎士の人達もいるけど、広くて過ごしやすい。

「うん、全員イメージできたようだね。それでは、これから罰ゲームを執行する」

あ、カクさんの右手に長いロープが、突然現れた。
あれがゴムゴムロープ?

それに白線の両端に、何か杭のようなものが打ち立てられた。そこに輪っかを形成させたゴムゴムロープが取り付けられた。

「勝者諸君、罰ゲーム執行者は君達だ。今から、このゴムゴムロープを強く強く限界まで引っ張るんだ。そして敗者諸君、君達の身体を固定させてもらった。このゴムが君達の身体に直撃するまで、絶対に動けないぞ」

「「「「「え!?」」」」」

あ、本当だ! 身体がビクともしない!
それに……ゴムが直撃!?

「ちょっとカクさん、ゴムに当たった敗者はどうなるの!?」

「アッシュよ、もう理解しているだろ? 敗者達全員が思い浮かべた場所に飛ばされるのだ! 全員がきっかり30秒で目的地に到着するよう設定してある」

「物理的に考えて、ゴムの弾力で目的地まで飛ぶのは無理だから!?」

「あっはっは。そこは魔法でカバーしているさ」

もう…なんでもありだよ。
今のうちに、シュラクさんとサンドラさんにお別れの挨拶をしておこう。

「シュラクさん、サンドラさん、ここまで付き合って頂きありがとうございました」

「いや、こちらこそお礼を言わせて欲しい。リリヤやサンドラさんとチームを組めて楽しかった。目的地に到着したら、サンドラさんを探しに行きますよ」

「は! リリヤ、シュラク、ありがとな。シュラク、あんたも物好きだね。好きにするといい」

サンドラさんも、シュラクさんのことを意識している?
なんにしても、これでお別れだ。

「勝者達よ、準備ができたかな?」
「「「「「はい!」」」」」

あの長く伸びたゴムが、私達に直撃するんだ。

『リリヤ、ごめん。ジストニス王国の王都の冒険者ギルドやニャンコ亭付近で待っていて欲しい』

『うん、待ってる。アッシュ、頑張ってね』

テレパスで、アッシュとの別れも済んだ。
ゴムゴムロープ、いつでもきなさい!

「そうそう、敗者達に1つ良いことを教えてあげよう。この罰ゲームでは、最悪死者が発生するだろう。私の意味をよ~く考えなさい。まあ、この時点で大半の者が気づくだろう」

死者が発生する!?
あ……そうかそういうことか。

「それでは、ゴムゴムロープ発射~~~~」

勝者達が一斉に手を離した。伸びきったゴムが、猛スピードで私達に襲いかかってきた。回避する術はない。

ゴムは私のお腹に直撃し、私は空高く吹っ飛んだ。不思議と、痛くはなかった。あ、もうアッシュが見えなくなったよ。クックイスクイズ、色々あったけど楽しかった。私自身、多くの経験を積めた。もっと成長してから、再挑戦してみよう。

『リリヤ、黄昏るのはそこまでにしておけ。お前は、何処をイメージしたのか忘れたのか? そして、この速度のまま目的地に到着したら、スキル全開でも無事ではすまない』

あ、そうだったーーーー!!!
王城の中庭をイメージしたんだーーーー!!!

30秒で到着するから、急いで風魔法で対応しないと!




…………リリヤ・マッケンジーは、クックイスクイズ第4チェックポイントで敗退した。30秒後、ジストニス王国の王城中庭にて、1つの騒ぎが発生することになる。
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