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《シャーロットが帝王となった場合のifルート》第2部 8歳〜アストレカ大陸編【ガーランド法王国

カムイ、間者を拷問する?

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現在、私達6人(私、リーラ、オーキス、カムイ、マリル、お父様)は、馬車で王城へと向かっている。御者を務めているのは、マリルだ。マリル自身、まだ運転に慣れていないので、ゆっくりと馬を歩かせている。そのため、王城までは約30分程かかるようなので、私はリーラとオーキスに、カムイとの出会いを話した。当のカムイ本人は、リーラに抱きしめられている。

「それじゃあ、カムイはシャーロットの魔力を大量に食べたことで、新種のインビジブルドラゴンとして生まれたんだ?」

「そうだよ、リーラ。僕の身体中を駆け巡っている血はドラゴン由来だけど、魔力にはドラゴンだけでなく、シャーロットのものも混じっているんだ」

「へえ~、そうなると、シャーロットはカムイの母親になるんだね」

「「母親!?」」

オーキスが驚くのはわかるけど、お父様は1度別邸で話を聞いているよね? お父様は、私が成長して、子供を連れ歩いているところを想像したのか、両手で髪をクシャクシャしている。

「うん。出会った当初は【お母さん】て呼んでいたけど、シャーロットが【色々誤解されるから、その名前で呼ばないように】ときつく言われているんだ。今は、普通にシャーロットと呼んでいるよ」

「卵の状態で盗賊に盗まれ、ずっと放置してたところを助けられた……壮絶な出会いだよな。シャーロットはカムイにとって、【母親】兼【命の恩人】に相当するのか」

オーキスとのやりとり、ラルフお兄様の時とほぼ同じだ。

「昨日のパーティー中、こんな感じで透明になって、周囲を見張っていたんだ」

カムイが透明状態になったことで、全員が気配を辿れなくなった。

「うわあ~、抱きしめているからわかるけど、カムイの気配がわからなくなった! これがカムイのユニークスキル!」

カムイ関係の話をすること30分、馬車はあっという間に王城へ到着した。お父様は、私とカムイに従魔用の指輪と腕輪、登城許可証を渡した後、すぐに国王様の元へと急行した。指輪と首輪には、水色の宝石が組み込まれており、主人が指輪を、従魔が首輪を付けることで、騎士達にも誰の従魔かわかるように区別しているようだ。

私達はメイドさんの案内で、王城1階にある客室へと通された。間者の1人が魔鬼族である以上、早急に事情聴取を行う必要性がある。客室には、重苦しい雰囲気が漂っている。リーラもオーキスも事の重要性に気づいているのか、全く喋ろうとしない。待つこと10分、騎士の方が部屋に訪れ、私達を連れ出した。向かった先は、1階取調室の隣にある部屋だ。

そこは8畳ほどの広さとなっていた。取調室とこの部屋の境となる壁全体が、透明なガラスのようなものとなっているためか、取調室全体がこの部屋からクッキリと見えている。

「うわあ~、隣の部屋がくっきりと見える~あれが取調室なんだ~」

リーラは初めての場所でもあるから、やや興奮気味だ。ふと思ったけど、この壁全体が、マジックミラーなのだろうか? 普通に透明だったら、互いの存在がバレてしまい、意味がない。

「凄い……騎士の人達は、あの部屋で犯罪者達を……。僕も勇者として成長したら、犯罪者達を取調べするのだろうか?」

オーキスの場合、魔物殲滅部隊に配属されるんじゃないかな? この国の騎士団にも、犯罪者と魔物の各々に特化したエリート部隊が設立されていると、お父様が言っていたよね。

「マリル、ここって取調室の人達からも見えるの?」
「あ、それ、僕も気になります!」
「私も!」

「このガラスのような壁は、特殊金属となっております。金属の持つ性質と、光属性と闇属性の魔力を利用することで、この部屋からは取調室の全体を見渡せますが、逆に取調室からは、この部屋を見えないような仕組みとなっています」

原理がよくわからないけど、地球のマジックミラーと似たようなものかな?

「よくわからないけど、あっちからは見えないんだよね?」
リーラも、今の説明では把握しきれていないようだ。

「マリルさん、姿が見えなくても、気配でわかるのでは?」
オーキスの指摘も、最もだ。

「それも大丈夫です。この部屋全体が【サイレント】と【ダークウォール】を組み合わせた複合魔導具で覆われているため、こちらの音も気配も漏れません」

なるほど! 遮断魔法【サイレント】で音を、闇魔法【ダークウォールで】で気配を闇で覆うことにより察知されにくくしているのか。それなら、私達は気にせず、取調べの様子を見れそうだ。

「マリルさん、取調室もこの部屋も、随分簡素だよね。犯罪者から取調べするためだけに作られたの?」

「リーラ様、その通りです。取調室の中央に机1台と椅子2脚、壁際には内容を記載するための机が1台と椅子1脚だけです。この部屋も、観察するためだけにありますから、テーブル1台と椅子4脚だけとなります。取調べが長く続く場合もありますので、お飲物は完備されています」

必要最低限のものしかないのね。

「騎士も大変だな~。犯罪者達が犯行動機や理由を自白するまで、ずっとあの部屋にいるんでしょ? 一層の事、強い人が犯人達を脅して、一気に自白させればいいんじゃないかな?」

「リーラ様、相手が必ずしも真犯人とは限りません。何者かに陥れられた方を無理矢理脅して、【私がやりました】と自白させた場合、それは冤罪となります。そうなったら、真犯人を取り逃がしてしまいます」

「あ、そっか」

どこの世界でも、冤罪事件は起こりえる。稀に日本でも起こり、警察の不祥事として、マスコミが叩いているよね。

「今回の場合、パーティー中に無断侵入した間者であることは明白していますので、騎士団側も取調べしやすいはずですよ」

今回の相手は、人間に化けた魔鬼族だ。間者側も、相当な覚悟を持って、王城に侵入している。普通に取調べしても、まず自分の正体を吐かないだろう。仮に拷問したとしても、やり方次第では精神を壊す危険性もあるし、最悪自害の場合もありうる。自害……か、構造解析した後、自害する可能性があれば、自害方法を取調べ中のカムイに伝えておこう。

「大丈夫。こっちにはカムイもいるし、自害する前に防いでくれる。あと拷問の方法も、相手の精神を壊さずに追い詰めるやり方を用意してくれるよ」

しばらく、リーラ達と話し込んでいると、複数の足音が聞こえてきた。どうやら、お父様達が到着したようだ。さあ、間者とのご対面といきましょう。

取調室に入ってきたのは……アルさんとガロウ隊長だ(書籍1巻参照)! なんで、この2人が!? もしかしてお父様は、私と接点のある人を選んでくれたのかな? あ、間者の男もいる。なんか、無表情でいるせいか不気味に感じる。年齢は30歳前後かな? 男は、両手を拘束具で縛られている。ふむふむ、あの拘束具自体が魔導具で、奴の魔法とスキルを封印しているのか。でも、ユニークスキルまでは封印できないのね。ユニークスキルの場合、スキル自体が強力であれば、魔導具やオーパーツでも封印できないと、随分前に精霊様から教わった。

それにしても、アルさんの雰囲気が、随分と変わったような気がする。身体に抱えていた古傷の全てが癒され、隊長職に復帰したからか、頑強になったような力強さを感じる。

「シャーロット、僕はあっちの部屋に行くね」
「うん、間者の情報は、従魔用の通信で伝えるからね」
「わかった。行ってきま~~~す」

カムイからは、緊張感のカケラも感じられない。むしろ、早くあの人と話し合いたいとウキウキしているようにも見える。

あ、カムイと入れ替わりに、誰か入ってきた。

「シャーロット、リーラ、オーキス、マリル、入るわね」

この爽やかに響き渡る声の主は……まさか?

「「「「ルルリア様!?」」」」

王妃様がやって来るとは……驚きだよ。

「ジークから間者のことを聞いた時は、驚いたわ。ブライアン達もここに来たがっていたようだけど、皆予定が入っていて無理なの」

それが、普通だと思う。試しに、王妃様の予定を聞いてみよう。

「あの…ルルリア様のご予定は?」
「ほほほ……よかったわ~、偶々この時間帯に、何の予定も入っていなかったの。さあ、人間に化けた魔鬼族の取調べを見学しましょうね~」

あ…この人、絶対何か予定が入っていたんだ。まだ、扉が開いていたので、部屋の入口を外から護衛してくれている若い男性騎士様をそっと伺うと、苦笑いを浮かべていた。下手に逆らえないんだろうな~。

「あ、始まるみたいですね」

さて、4人が間者をどうやって追い詰めるのか拝見しましょう。


○○○ カムイ視点


へえ、ここが取調室か~。ジークは、シャーロットのいる壁際に移動した。もう1人のガロウと呼ばれている騎士さんは、端に置かれている椅子に座り、机の上にノートを開いて、何か準備をしてる。アルと間者の2人が、中央に置かれている椅子に座って、互いに向き合った。

僕も参加するから、アルのところに行こう。ジークから僕のことを聞いていたのか、特に驚かないや。

「可愛いドラゴンだな。アルだ! カムイ、宜しくな。エルバラン公爵様から、大体の事情を伺っている。まずは、俺から取調べするから、カムイは途中から参加すればいい」

「うん、わかった。アル、宜しくね!」

へえ~、この人、人間の割に結構強いな。
それに、ドラゴンの僕を見ても、嫌な顔を全然しないや。

僕の前に座っている1人の人間の男、みんなには30歳くらいの目付きの鋭い細身の男に見えるのか。僕自身、魔法【真贋】を使用していないから、今の時点では人間の男に見える。彼の両手首には、囚人用の手錠が掛けられていて、腕自体を自由に動かせなくなってる。それに、彼の魔法とスキルも手錠で封印されているらしいけど、強力なユニークスキルには、効果がないみたいだ。

「お前の名前は?」

あ、始まった!

「……」
「お前は、何処の国に所属している?」
「……」
「ここに来た目的は?」
「……」

こんなありきたりな質問をしても、相手が答えるわけないよ。
しばらくの間、様子を見ておこうかな。

『カムイ、あの人…隙を見て、自害するつもりだよ。今から指摘する箇所には、危険な薬剤が仕込まれている。カムイは彼を威圧して、薬剤を外に出してね』

シャーロットからの通信だ!?

『は~い、任せてよ!』

それじゃあ、早速彼を威圧だ!
あ、身体全体が硬直し始めた。効いてる効いてる。

「カムイ、何かしたか? こいつの顔色が……」
「とある方からの通信で、《この人は自害するから気をつけるように》って言われたの。身体の数カ所に、自害用の薬剤が仕込まれているんだって。今から、それを排除しまーーーーす」

やっぱり、シャーロットの構造解析スキルは凄いや。なんでもお見通しだ。取調べなんかせず、シャーロットに全部任せればいいのに。なんで、こんなまわりくどいことをするのかな?

「えーと、まずは左奥歯からだね。間者さん、口をアーーーーンと開けてと言っても、僕が威圧してるから開けられないか。それじゃあアル、この間者さんの口を強引にガパッと開けてよ」

「薬で自害されるのは、こちらとしても困る。少し痛いが我慢してくれ。よし…これでいいか?」

「ガガ……アババガガガ」

間者さん、何か言ってるけど、聞き取れないや。

「うん、大丈夫! えーと、左奥歯左奥歯、あ、これかな?」

『カムイ、それだよ~。その奥歯はね、1度引っこ抜かれていて、歯の空洞に自害薬を仕込んだ後、再度人工的に固定しているの。抜く時は、一気にスパッとやっちゃって。そうすれば、彼の痛みも最小限に抑えれるから』

この人、器用なことするな~。歯を抜く行為って、かなり痛いよね。僕だって抜かれたくないよ。でも、この人の場合、抜かないと自害するようだし、シャーロットの言う通り、痛みを最小限にしてあげよう。間者さん、我慢してね。

「それじゃあ、引っこ抜きまーーーーす。えい!」

少しだけ固定されていたけど、無理矢理抜いちゃった。

「ガガガガッッガガガッガ」

間者さんの顔、さっきの無表情と比べると、全然違う。やっぱり、少し痛かったのかな? でも、自分が死ぬよりは、マシだよね?

「あーー!! わ…俺の歯が~~」

あ、無理に抜いたからか、口から血が出てる。

「これ、アルにあげる。次は…え…左手の人差し指の爪と右手の人差し指の爪?」

へえ~爪の上に薬剤をコーティングしているんだ。
それじゃあ、爪自体を剥がすしかないよね?

『カムイ、一瞬で終わらせてあげて。『爪を剥ぐ』という行為も、歯と同様、かなり痛いの』

そっか、この行為も痛いんだ。でも、この爪を舐めただけで、薬剤が口に染み込んで、この人は死んじゃうんだよね? だったら、さっきと同じく、爪を一気に剥がそう。僕が左手の人差し指の爪に触ると……

「どうして、その場所が!? やめろ~~!!」
「君が、こんな場所に自害薬を仕込むからいけないんだよ。君に死んで欲しくないから剥がすね。……えい」

良かれと思ってやっているのに、なんでそこまで身体を震わせるかな?

「あーーーーー!!!」
「右手の人差し指の爪も……えい」

あ、威圧してるから、激痛で身体を動かそうにも動かせないんだ。威圧を解除してあげないと。

「痛い痛い痛い……」


一気にやってあげたのに、それでも痛いんだね。手錠のせいで両手を自由に動かせないからか、椅子に座ったまま身体をクネクネと動かしている。


「これで終わりだよ。さあ、取調べの続きだ。……ってあれ? アル、どうしたの?」
「……カムイ、一連の行為自体が拷問に相当するんだが?」

え、この程度が拷問?

「あはは、アル、何言ってるのさ。こんなの拷問のうちに入らないよ。僕はこれなんかより、も~っと酷い拷問を見てるからね。この間者さんも、この程度の痛みなんかで、口を割らないよ。僕自身見たことがないけど、僕の仲間の1人でもある【リリヤの拷問】は、相手の精神を壊すくらい酷いらしいよ。拷問相手を裸にして、身体中に鳥の餌を大量に塗りつけた後、周辺にいる数百羽の鳥達を呼び寄せて、一気に拷問相手に襲わせるんだ。大量に塗ってあるから、鳥達が飛び立つまで10分くらいかかるらしいよ。10分間、身体中を鳥達に啄まれるせいで、【痛さ】と【こそばゆさ】の笑い地獄になるんだって。あ、その拷問なら、ここでもできるね」

あれ? アルもジークも……ここにいる全員の顔が真っ青になってる。

「や……やめて」

あれ? 間者さんの声が、なんかおかしい。男と女の声が混じっているよ。

「あははは、やらないやらない。君がきちんと話してくれるのなら、さっき言った【鳥啄ばみ地獄】や僕の知る拷問もやらないよ。僕としては、もう一度、あのクルクル回る拷問を見たいけどね~。あの拷問器具には、あらゆる地獄を搭載できるから……」

『カムイ~~、それ以上言っちゃダメ!!』

あ、シャーロットから、中止命令が出た。
あの拷問のこと、もっと言いたかったのに。

「はーい、これ以上言わないよ。それじゃあ、続きだ。ねえねえ間者さん、拷問を受けたくないのなら、さっさとユニークスキルを解いて、僕達に本当の姿を見せてよ?」

「え……どうして?」

あ、人間の姿と魔鬼族の姿が二重に見えてる。

「あははは、間者さん、既に変異が解けかかってるよ。僕には、特別な魔法があるんだ。君の正体も知ってる。だから、あの時尋ねたんじゃないか。そこまで人間だと言い張るのなら、額から出てるツノを粉々に砕いてもいいんだけど?」

あ、やっと観念したのか、ユニークスキルを解いてくれた。今は、魔鬼族の女性の姿だ。ふーん、僕には容姿の良さがイマイチわからないけど、アルもジークも口を大きく開けてるから、かなりの美人さんなのかな?

これで僕の役目も終了だ!

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