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最終章【ハーゴンズパレス−試される7日間】
遺跡主人との初遭遇
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この女性が、ハーゴンズパレス遺跡の主人?
美しく凛とした佇まい、薄紫色のスリットロング型のドレス、薄暗い灰色をした短い髪、年齢は………20歳前半くらいかな?
壁に投影されているせいか、儚そうで弱々しく感じる。
こんな女性が、本当に遺跡の主人?
そもそも、私達人類はダンジョンを制覇しても、ダンジョンマスターになれない。
【精霊様】
【精霊様の作ったダンジョンコア】
それ以外に確か………そうだ!
【精霊様に気に入られた知性ある魔物】!
この3者しか、マスターになれないはずだよ。
となると、竜人族っぽく見える彼女は………精霊か魔物ということになるのかな?
「ふふふ、呆けている2人の女の子…可愛いわ。そちらの小さな女性がネルマさん、銀髪のあなたがシャーロットさんで間違いないかしら?」
儚げで魅惑的な微笑み、この人が本当に主人であるのなら、今どうして現れたの?
私達は、主人に謁見するための資格があるのかを試されている最中だよ?
「はい。私が、シャーロット・エルバランです」
「ふふふ、初日から大変だったわね。私としては、あなたがここで死んでも構わないのよ。だって………死んだらあなたもここの住人になるのだから」
なんて冷たい微笑み!
一瞬、背筋がぞくっとしたよ!
それにしても、さっきの言葉はどういう意味だろう?
私が死んだら、肉体がダンジョンへ吸収され、魂がガーランド様のいる世界へと連れて行かれるはず。
「あの~私はネルマと申します。あなたのお名前を御伺いしても宜しいでしょうか?」
「ネルマさん、はじめまして。ごめんなさい、今は名乗れないわ。私と対等な場で話し合いをしたければ、試験に合格してくださいね」
今、この場で名乗れますよね!?
「でも、既に私達と謁見してますけど?」
ネルマも、転移された理由を真っ先に聞きたいだろうに。
自分の問い詰めたい思いを必死に我慢している。
「ネルマさん、本来【謁見】とは《身分の低い者》が《身分の高い者》にお目にかかることを言います。当然、それ相応の場所で会わないといけません。今のこの状況が、【謁見】に相応しいと言えますか?」
それを言われると、こちらとしても言い返せない。
今のこの状況は、【謁見】とは言えないよ。
「もお!? 子供と思って馬鹿にしないでください! 謁見の意味くらい知っています! お城であれば、玉座の前で王様と話し合うことですよね? でも、ここにお城なんてありません。だったら、この状況も謁見に入ると思います!」
凄い屁理屈だ。
でも、ネルマは肝心な箇所を間違えている。
「ネルマ、《身分の高い者》が《身分の低いもの》のもとへ突如現れ語りかけてきたのだから、謁見とは言わないよ」
「あ……そっか」
ネルマも理解してくれたところで、話を先に進めよう。
「それで………遺跡の主人様が私に何の用でしょうか?」
彼女の優しげな雰囲気が、冷たいものへと変化していく。
「ふふふ、未来の映像はどうだった? 面白かったでしょ? 私としては、少し不満なのだけど……まあ仕方ないわね。これは警告、先程のドラマとおまけ映像、あれは良き未来の一つでしかありません。そして、あなたがあの《おまけ映像》を見たことで、既に未来は変わっています。本来、何の編集もしていないものを見せる予定だったのだけど残念だわ」
つまり、あの映像の【私】は何の編集もしていない映像を見せられた上で、合格を貰えたのね! それがわかったからこそ、この女性は《おまけ映像》を私に見せたんだ。
「ふふ、あの映像を見たことで、私達はやる気に満ち溢れていますよ。あの未来の私以上の成果を出してみせます」
あの事件の結末は、見る人によっては抗議ものだろう。あそこまでシリアスにやって最後ドラマだと判明したのだから、《その結末はない!》と言いたい人もいるはずだ。ミーシャやアーバンなら、そんな言葉を出すかもしれない。
もしかしたら、この女性はあのおまけ映像を見せることで、私達の油断を誘っているのかもね。あなたの思惑通りには動かないよ!
「あら、それは楽しみね。ふふ、せっかくだし1つだけ助言を言わせて。……【あの未来のシャーロットのようにならないでね】」
え?
今、この人……
「あなたに言われなくても、シャーロット様はあの映像以上の人になれますよ!」
「それは楽しみね。ネルマさんも頑張ってね」
やっぱりだ。
この人の目、何故悲しい目をしているの?
あの映像の私は試験を見事合格している。しかも、彼女は事前にそれを知ってしまったのだから、普通悔しがったりするよね?
なのに、何故あんな慈愛に満ちた悲しい目をしているの?
さっきの助言、何か深い意味があるのだろうか?
「未来からのメッセージか、ふふ………面白いわ。こんな経験は、私にとっても久しぶりよ。シャーロットさん、ネルマさん、私はこの塔の展望エリアにいるわ。私と謁見したいのなら塔をクリアするか、5日後の結果で合格を得るかのどちらかとなる。それと、私の正体について知りたければ、塔の各階に設置されている石碑を探しなさい。それじゃあ、頑張ってね」
映像が消えた。
《私の正体を知りたければ石碑を探せ》………か。
ナルカトナの遺跡と同じく、重要な情報が刻まれているんだね。
「シャーロット様、この塔を完全攻略して、あの女を絶対に驚かせてあげましょう!」
ネルマも、ここに来てから少しずつ成長している。
頼もしい女の子になりつつある。
「ネルマ、頑張ろうね!」
その言葉と同時に、ネルマの瞳も輝きだす。
「はい!」
塔内には罠も設置されているはず、私達は武器も所持していないのだから、慎重に進めていこう。
○○○
出発地点からは、通路1本しかない。だから、私とネルマは通路を進み出したのだけど………途中想定外なものが床に無造作に転がっていたので、足を止めることとなる。
「シャーロット様、これって剣ですよね?」
「あ…うん…剣…ショートソードと言われる剣だね」
これって罠?
何を意味しているの?
「拾っていいのですか?」
「罠かもしれないから、慎重にとろうね」
ネルマが剣に触れる。
すると………何も起こらず、普通に拾えた。
「ネルマ、身体に異常はない?」
「全く問題ありません。これ…屋敷内で見たことあります。少し重いですけど、これくらいなら私でも扱えます」
私が試しに剣を持ったのだけど………
《ズン》
「重!? くうぅぅーーーダメ、全然振れそうにない。短剣とかなら、今の私でも扱えるかな」
いつもならアダマンタイトとかでも余裕で持てるのに、身体能力が地球の10歳児並だからか、普通の剣すら振れないよ。
「シャーロット様、私があなたを護衛します! ステータスが解放されたら、さっきの女性に天誅を下しましょう!」
ネルマが、剣をブンブン振り回し前進していく。
危なっかしいけど、頼もしいね。
それにしても、あの女性の表情がどうしても気にかかる。
【未来のシャーロットのようにならないで】
慈愛に満ちた目で私を見つめて言ったあの言葉が、どうしても脳裏から離れない。
あの助言は、どんな意味で発言したのだろうか?
○○○ ???視点
シャーロットとの通信も終えた。
あの子達は、これからが大変でしょうね。
それにしても…気に入らない、気に入らないわ。
シャーロットが未来の自分からメッセージを貰ったように、私も未来の自分から《メッセージ》というより《警告》を受けた。
内容に関しては、簡単なもの。
【即刻、試験を中止しなさい。このまま進めると、シャーロットの精神が蝕まれ、取り返しのつかない事態に陥る】
私はあの子と相談しながら綿密な計画を練り、12人をここへ転移させたにも関わらず、まさか《未来の自分》からあんな警告を受けるなんて。ハーゴンズパレス遺跡内であれば、私の計画は完璧に遂行できるはずなのよ。
でも……このまま計画通りに進めると、シャーロットがあの未来のような悲惨な人生を辿ることになる。初めは信じていなかったけど、未来の私の言動は真剣そのもので、信じざるおえない映像も見せられた。あの未来において、シャーロットは塔を攻略し展望エリアに入った直後、糸が切れたかのように突然倒れ込み意識を失う。
倒れ込んだ原因については、すぐに判明するわ。
彼女の魂が急激に磨耗したことで、精神と身体が釣り合わなくなり、意識を保てなくなったのよ。
一言で言い表すのなら、【廃人】。
仲間達の献身的な介護により約6年後に完全復帰し、その後、聖女として飛躍的に成長する。あのドラマは完全復帰後に制作されたもの、今の彼女たちが見ても、そこに行き着くまでの過程を知れるわけがない。
私とて、彼女を殺すつもりなど微塵もないし、あの未来のように彼女の精神をあそこまで追い込ませるつもりもない。先程の通信で言った言葉も、全て脅し。
本来、あのドラマに関しても《おまけ映像》や《音楽》を全て消し、あのドラマ自体を【真の未来】としてシャーロットに見せ彼女の心を揺らがせるつもりだったけど、あんな【警告】を受けたらそのまま見せるしかないじゃない。
「主人様、何故不機嫌なのですか?」
私の真上に、あの子が漂っている。
「私とあなたが考えた計画を、【未来の自分】に邪魔されたのよ! しかも、試験後の結果まで詳しく教えられたわ。興醒め、不機嫌にもなるわよ!」
ここまで綿密に立てた計画を途中で中断したくないわ。
かといって、このまま計画通りに進めると、私の目的も果たされず、シャーロットの精神が崩壊し……【廃人】状態となる。
彼女やオーキスのために改良に改良を重ねた塔の仕掛け自体が、最弱状態である彼女にとって厳しすぎるのね。
おそらく、塔の中盤以降に仕掛けられている罠が問題なのよ。
急いで変更しないといけないわね。
それまでは、塔の浅い階層で手こずってもらいましょう。
今の時点だと、彼女達の体力も精神力も十分ある。
周囲に徘徊する魔物達も弱いから、少し厳しい罠を仕掛けても問題ないでしょう。
まずは……あのエリアね!
塔2階は○○エリアだから、彼女にとってもかなり心細くなるはず。
2人を分断させ、単独行動になるよう仕向ける!
ベアトリスとルクスが煩く言うだろうから、シャーロット達が単独行動となる前に、少し休憩を入れてあげればいいわ。
《この時の彼女は急な計画変更もあり、【ある重大な見落とし】に気付いていなかった。この小さな一手の変更が、シャーロットの未来を大きく変化させることになる》
美しく凛とした佇まい、薄紫色のスリットロング型のドレス、薄暗い灰色をした短い髪、年齢は………20歳前半くらいかな?
壁に投影されているせいか、儚そうで弱々しく感じる。
こんな女性が、本当に遺跡の主人?
そもそも、私達人類はダンジョンを制覇しても、ダンジョンマスターになれない。
【精霊様】
【精霊様の作ったダンジョンコア】
それ以外に確か………そうだ!
【精霊様に気に入られた知性ある魔物】!
この3者しか、マスターになれないはずだよ。
となると、竜人族っぽく見える彼女は………精霊か魔物ということになるのかな?
「ふふふ、呆けている2人の女の子…可愛いわ。そちらの小さな女性がネルマさん、銀髪のあなたがシャーロットさんで間違いないかしら?」
儚げで魅惑的な微笑み、この人が本当に主人であるのなら、今どうして現れたの?
私達は、主人に謁見するための資格があるのかを試されている最中だよ?
「はい。私が、シャーロット・エルバランです」
「ふふふ、初日から大変だったわね。私としては、あなたがここで死んでも構わないのよ。だって………死んだらあなたもここの住人になるのだから」
なんて冷たい微笑み!
一瞬、背筋がぞくっとしたよ!
それにしても、さっきの言葉はどういう意味だろう?
私が死んだら、肉体がダンジョンへ吸収され、魂がガーランド様のいる世界へと連れて行かれるはず。
「あの~私はネルマと申します。あなたのお名前を御伺いしても宜しいでしょうか?」
「ネルマさん、はじめまして。ごめんなさい、今は名乗れないわ。私と対等な場で話し合いをしたければ、試験に合格してくださいね」
今、この場で名乗れますよね!?
「でも、既に私達と謁見してますけど?」
ネルマも、転移された理由を真っ先に聞きたいだろうに。
自分の問い詰めたい思いを必死に我慢している。
「ネルマさん、本来【謁見】とは《身分の低い者》が《身分の高い者》にお目にかかることを言います。当然、それ相応の場所で会わないといけません。今のこの状況が、【謁見】に相応しいと言えますか?」
それを言われると、こちらとしても言い返せない。
今のこの状況は、【謁見】とは言えないよ。
「もお!? 子供と思って馬鹿にしないでください! 謁見の意味くらい知っています! お城であれば、玉座の前で王様と話し合うことですよね? でも、ここにお城なんてありません。だったら、この状況も謁見に入ると思います!」
凄い屁理屈だ。
でも、ネルマは肝心な箇所を間違えている。
「ネルマ、《身分の高い者》が《身分の低いもの》のもとへ突如現れ語りかけてきたのだから、謁見とは言わないよ」
「あ……そっか」
ネルマも理解してくれたところで、話を先に進めよう。
「それで………遺跡の主人様が私に何の用でしょうか?」
彼女の優しげな雰囲気が、冷たいものへと変化していく。
「ふふふ、未来の映像はどうだった? 面白かったでしょ? 私としては、少し不満なのだけど……まあ仕方ないわね。これは警告、先程のドラマとおまけ映像、あれは良き未来の一つでしかありません。そして、あなたがあの《おまけ映像》を見たことで、既に未来は変わっています。本来、何の編集もしていないものを見せる予定だったのだけど残念だわ」
つまり、あの映像の【私】は何の編集もしていない映像を見せられた上で、合格を貰えたのね! それがわかったからこそ、この女性は《おまけ映像》を私に見せたんだ。
「ふふ、あの映像を見たことで、私達はやる気に満ち溢れていますよ。あの未来の私以上の成果を出してみせます」
あの事件の結末は、見る人によっては抗議ものだろう。あそこまでシリアスにやって最後ドラマだと判明したのだから、《その結末はない!》と言いたい人もいるはずだ。ミーシャやアーバンなら、そんな言葉を出すかもしれない。
もしかしたら、この女性はあのおまけ映像を見せることで、私達の油断を誘っているのかもね。あなたの思惑通りには動かないよ!
「あら、それは楽しみね。ふふ、せっかくだし1つだけ助言を言わせて。……【あの未来のシャーロットのようにならないでね】」
え?
今、この人……
「あなたに言われなくても、シャーロット様はあの映像以上の人になれますよ!」
「それは楽しみね。ネルマさんも頑張ってね」
やっぱりだ。
この人の目、何故悲しい目をしているの?
あの映像の私は試験を見事合格している。しかも、彼女は事前にそれを知ってしまったのだから、普通悔しがったりするよね?
なのに、何故あんな慈愛に満ちた悲しい目をしているの?
さっきの助言、何か深い意味があるのだろうか?
「未来からのメッセージか、ふふ………面白いわ。こんな経験は、私にとっても久しぶりよ。シャーロットさん、ネルマさん、私はこの塔の展望エリアにいるわ。私と謁見したいのなら塔をクリアするか、5日後の結果で合格を得るかのどちらかとなる。それと、私の正体について知りたければ、塔の各階に設置されている石碑を探しなさい。それじゃあ、頑張ってね」
映像が消えた。
《私の正体を知りたければ石碑を探せ》………か。
ナルカトナの遺跡と同じく、重要な情報が刻まれているんだね。
「シャーロット様、この塔を完全攻略して、あの女を絶対に驚かせてあげましょう!」
ネルマも、ここに来てから少しずつ成長している。
頼もしい女の子になりつつある。
「ネルマ、頑張ろうね!」
その言葉と同時に、ネルマの瞳も輝きだす。
「はい!」
塔内には罠も設置されているはず、私達は武器も所持していないのだから、慎重に進めていこう。
○○○
出発地点からは、通路1本しかない。だから、私とネルマは通路を進み出したのだけど………途中想定外なものが床に無造作に転がっていたので、足を止めることとなる。
「シャーロット様、これって剣ですよね?」
「あ…うん…剣…ショートソードと言われる剣だね」
これって罠?
何を意味しているの?
「拾っていいのですか?」
「罠かもしれないから、慎重にとろうね」
ネルマが剣に触れる。
すると………何も起こらず、普通に拾えた。
「ネルマ、身体に異常はない?」
「全く問題ありません。これ…屋敷内で見たことあります。少し重いですけど、これくらいなら私でも扱えます」
私が試しに剣を持ったのだけど………
《ズン》
「重!? くうぅぅーーーダメ、全然振れそうにない。短剣とかなら、今の私でも扱えるかな」
いつもならアダマンタイトとかでも余裕で持てるのに、身体能力が地球の10歳児並だからか、普通の剣すら振れないよ。
「シャーロット様、私があなたを護衛します! ステータスが解放されたら、さっきの女性に天誅を下しましょう!」
ネルマが、剣をブンブン振り回し前進していく。
危なっかしいけど、頼もしいね。
それにしても、あの女性の表情がどうしても気にかかる。
【未来のシャーロットのようにならないで】
慈愛に満ちた目で私を見つめて言ったあの言葉が、どうしても脳裏から離れない。
あの助言は、どんな意味で発言したのだろうか?
○○○ ???視点
シャーロットとの通信も終えた。
あの子達は、これからが大変でしょうね。
それにしても…気に入らない、気に入らないわ。
シャーロットが未来の自分からメッセージを貰ったように、私も未来の自分から《メッセージ》というより《警告》を受けた。
内容に関しては、簡単なもの。
【即刻、試験を中止しなさい。このまま進めると、シャーロットの精神が蝕まれ、取り返しのつかない事態に陥る】
私はあの子と相談しながら綿密な計画を練り、12人をここへ転移させたにも関わらず、まさか《未来の自分》からあんな警告を受けるなんて。ハーゴンズパレス遺跡内であれば、私の計画は完璧に遂行できるはずなのよ。
でも……このまま計画通りに進めると、シャーロットがあの未来のような悲惨な人生を辿ることになる。初めは信じていなかったけど、未来の私の言動は真剣そのもので、信じざるおえない映像も見せられた。あの未来において、シャーロットは塔を攻略し展望エリアに入った直後、糸が切れたかのように突然倒れ込み意識を失う。
倒れ込んだ原因については、すぐに判明するわ。
彼女の魂が急激に磨耗したことで、精神と身体が釣り合わなくなり、意識を保てなくなったのよ。
一言で言い表すのなら、【廃人】。
仲間達の献身的な介護により約6年後に完全復帰し、その後、聖女として飛躍的に成長する。あのドラマは完全復帰後に制作されたもの、今の彼女たちが見ても、そこに行き着くまでの過程を知れるわけがない。
私とて、彼女を殺すつもりなど微塵もないし、あの未来のように彼女の精神をあそこまで追い込ませるつもりもない。先程の通信で言った言葉も、全て脅し。
本来、あのドラマに関しても《おまけ映像》や《音楽》を全て消し、あのドラマ自体を【真の未来】としてシャーロットに見せ彼女の心を揺らがせるつもりだったけど、あんな【警告】を受けたらそのまま見せるしかないじゃない。
「主人様、何故不機嫌なのですか?」
私の真上に、あの子が漂っている。
「私とあなたが考えた計画を、【未来の自分】に邪魔されたのよ! しかも、試験後の結果まで詳しく教えられたわ。興醒め、不機嫌にもなるわよ!」
ここまで綿密に立てた計画を途中で中断したくないわ。
かといって、このまま計画通りに進めると、私の目的も果たされず、シャーロットの精神が崩壊し……【廃人】状態となる。
彼女やオーキスのために改良に改良を重ねた塔の仕掛け自体が、最弱状態である彼女にとって厳しすぎるのね。
おそらく、塔の中盤以降に仕掛けられている罠が問題なのよ。
急いで変更しないといけないわね。
それまでは、塔の浅い階層で手こずってもらいましょう。
今の時点だと、彼女達の体力も精神力も十分ある。
周囲に徘徊する魔物達も弱いから、少し厳しい罠を仕掛けても問題ないでしょう。
まずは……あのエリアね!
塔2階は○○エリアだから、彼女にとってもかなり心細くなるはず。
2人を分断させ、単独行動になるよう仕向ける!
ベアトリスとルクスが煩く言うだろうから、シャーロット達が単独行動となる前に、少し休憩を入れてあげればいいわ。
《この時の彼女は急な計画変更もあり、【ある重大な見落とし】に気付いていなかった。この小さな一手の変更が、シャーロットの未来を大きく変化させることになる》
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