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最終章【ハーゴンズパレス−試される7日間】
いざ、塔の内部へ! そして、いきなりの遭遇!
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試験2日目の朝、映像の件もあって色々と驚きの連続だったけど、リビングで昼食を食べ終えた頃には、私達全員が落ち着きをとり戻していた。
ただ、私にとっては不可解なこともある。
それは、あの未来のことだ。
【未来】の遺跡の主人がフレヤに命令して、あんなドラマを作らせた。
ここで、疑問が残る。
【未来】の遺跡の主人は、何故ドラマ仕立てにするようフレヤに命令したのか?
【現在】の遺跡の主人は、どんな思惑であの映像を許可したのか?
《おまけ映像》を見た限り、本来はあのドラマ自体を私に【本当の未来】だと思い込ませたかったはずだ。試験のことを考えると、そっちの方が私の心に重くのしかかる。何故、あんな終わらせ方にしたのだろう?
そして、【未来の私】の助言も気にかかる。
【仲間を信頼しろ】、【単独行動だけはするな】、今後の試験内容がかなり過酷なものだと意味している。
この2つの問題だけは、解決していない。
謁見できたら、真っ先に質問してみよう。
ネルマはあの映像を見たことで、心も回復しているし問題ない。ルクスさんも未来の私からの助言により、心が晴れたのか、情緒不安定感もなくなり、今後の試験について私達に説明してくれた。
「次の試験地は、あの塔の内部ですか?」
「はい。塔内部にいるオーキスさんと合流して、塔の《展望エリア》を目指してもらいますが、試験官でもある私とベアトリス様は離脱させてもらいます。ただし、《とある場所》からあなた方を監視します」
塔の内部へ入れるんだ。
こちらとしても好都合だ。
「《展望エリア》には、何があるのですか?」
「ハーゴンズパレスの主人が住んでいます。日程の残り5日間、自力で目的の場所へ到着した場合、試験も当然合格です。また、到達出来なかった場合、試験の合否はそこまでの道程で判断させてもらいます」
塔の内部で、5日間も過ごすことになるのか。
武具も防具も食糧もアイテムもない状態でのスタートだから、自殺行為に等しい。
「シャーロット様の婚約者オーキスさんは、強いんですか?」
ネルマ、まだ私の婚約者じゃないから。
「現状の彼の強さは、Cランクですね。中堅冒険者と同等の力量を持っています。塔内部に関しては、私も詳しく知りません。ただ、今のあなた方ではかなり厳しいとだけ言っておきます。そこで、あなた方3人のモチベーションを上げるべく、1つご褒美を用意しましょう」
「ご褒美!? 何ですか! 何ですか!」
ルクスさんのご褒美発言で、ネルマの目が途端に輝きだす。
現金な奴め。
「5日以内に展望エリアへ到達できた場合に限り、ハーゴンズパレス内にある物品を1つ進呈しましょう」
「おお!」
その発言は、私やオーキスではなく、ネルマのために用意したものだね。
彼女の年齢を考慮すると、モチベーションもかなり上がるだろう。
「マリ◯カート、マリ○カート、マリ○カート! 4台、4台、4台!!」
あのゲームをまだやっていないのに連呼するとは、相当気に入ったのか。
しかも、4台欲しいと連呼している。
PVがあのゲーム機の画面に流れていたから、あの僅かの時間だけでレーシングゲームの真髄を理解したのかもしれない。
「ネルマ様、1台だけです」
ネルマがウルウルとした目で私を見る。
くうぅぅ~~、子供のこういった純粋な目で見つめられるのは苦手だよ。
「わかったよ。私も、あのゲーム機を選んであげる」
「やった! 2台2台!!!」
あの塔を5日でクリアーか。
たとえステータスが封印されようとも、私にはこれまで集めてきたダンジョン産の武器防具がマジックバック内に入っている。イミアさん達から貰ったマジックバック、アストレカ大陸に帰還して以降も、肌身離さず持っている。今回、その行為が功を奏したようだ。
アイテムチートで、塔を最速クリアーしてやる!
「それと、シャーロット様」
「え、何でしょうか?」
ネルマの方を見ていたルクスさんが、唐突に私を見る。
なんだか心を覗かれているようで、胸がドキドキするよ。
「あなたの持つマジックバッグを預からせていただきます。攻略にあたっての食糧や武器防具に関しては、塔内部で入手して下さい」
「「え!?」」
ルクスさんの発言に、私もネルマも声を挙げる。
本当に心を覗かれているのでは!?
何の武器も食糧もないまま、塔内部に潜入なんて危険すぎる。
「ちょっと待ってください。食糧や武器防具を何処で入手するのですか?」
ネルマが、私の疑問を口にしてくれた。
「全て塔内部にありますので御安心を」
安心出来るか!
武器防具はともかく、食糧がどんな状態で塔内部にあるのよ!
○○○
普通の冒険者達が数日間ダンジョン内に篭る場合、替えの下着や服類、予備の武器防具類、食糧などをマジックバックへと仕舞い込む。私達の場合、ルクスさんから一般に流通している物の中でも、やや安めの品をもらった。私もネルマも渋々ながら納得し、バッグに寝室クローゼット内にある衣服類を入れていく。結構な量がクローゼット内に用意されているから、てっきり屋敷内で試験を受けるものだとばかり思っていた。
私達の準備品は【衣服類、1日分の飲み物、マジックバック】だけ、非常に心細い状態で屋敷を出る。塔自体は巨大な建造物のため、屋敷を出てしばらくすると、その姿が露わとなった。
「大きい」
「私達………今からあの建物に入るんですよね?」
「ええ」
オーキスも合わせて3人だけで、あの塔を攻略するのか。
まずは、魔物との接触を避けて、宝箱から武器を入手しよう。
私は普通の女の子になって最弱状態だけど、武器を入手すれば攻撃力も多少上昇する。
何事も、始めが肝心だよね。
………屋敷を出て徒歩約1時間、私達は塔に到着した。
今から私とネルマだけで、この内部に潜入するのだけど、正直不安しかない。
「これが………塔? 本で見ていたものが、私の目の前にある。私はシャーロット様と共に、この中で冒険するんだ?」
円形の塔というものを初めて目の前で見たけど………大きい。
存在感と威圧感が半端ない。
塔自体の質感は、土粘土を固めたかのような感じかな?
展望エリアまでは、どれ程の高さがあるのだろう?
ハーゴンズパレス遺跡内にある塔だから、ダンジョンマスターによって建造されたものなんだけど、どういうわけか入口がない。その代わりに、円形の魔法陣のようなものが塔のすぐ近くに描かれている。
「シャーロット様、ネルマ様、あの転移魔法陣の中央に移動してください。魔法陣に乗れば、塔1階の入口に転移されます」
「質問があります! エスケープストーンといった脱出アイテムは使用可能ですか?」
ネルマの質問に対して、ルクスさんは首を横に振る。
「脱出アイテムもありませんし、下の階に戻ることもできません。しかし、通常のダンジョンと同じく、各階に《セーフティーエリア》が存在しますので、そこで寝泊りしてください」
「おお、いよいよ冒険が始まるの!」
ネルマの精神に問題は無い。
朝で見た未来の仲間からのエールが彼女の負担を軽減させている。
「オーキス様は塔内部を探索していますので、自力で合流して下さい」
転移直後にオーキスと合流したいと思っていたんだけど、既に探索を開始しているのなら1階にはいないかもね。でも、彼自身が私達と合流を望んで1階で待つ可能性もある。そこは、2人の気配察知に頼るしかない。
「わかりました。ネルマ、行こう」
「はい!」
転移魔法陣中央へ移動すると、陣が急速に輝きだしたため、私達は目を閉じる。
そして再度目を開けると、そこは………
「シャーロット様、ここが塔内部なんですよね?」
ここが塔1階か。
私達の佇む場所は、円形の部屋だ。
真下には、魔法陣が描かれている。
光魔法が塔全体に仕込まれているからか、周辺も明るい。
ただ、気温も地上と大差ないため、かなり寒い。
私達の正面には、たった1本の道がある。
私達の冒険は、ここから始まる。
「もしも~し、2人共~自分の世界に入るのもいいけど、そろそろ戻ってくれないかな~~」
え、真後ろから女性の声?
私達の後ろって壁しかないよね?
さっきまで、誰もいなかったよね?
私達は、恐る恐る後方を振り向くと………薄暗い灰色の髪色をした18歳くらいの女性が壁に大きく投影されている。
「は~~い、初めまして。ハーゴンズパレス遺跡の主人で~~す」
「「ええ!?」」
ショートカットの髪、薄紫色のスリットロング型のドレス、美しく気品溢れる女性が小悪魔的な微笑みで両手を振っている。
見た感じ竜人族っぽいけど、この人が本当に遺跡の主人なの?
ただ、私にとっては不可解なこともある。
それは、あの未来のことだ。
【未来】の遺跡の主人がフレヤに命令して、あんなドラマを作らせた。
ここで、疑問が残る。
【未来】の遺跡の主人は、何故ドラマ仕立てにするようフレヤに命令したのか?
【現在】の遺跡の主人は、どんな思惑であの映像を許可したのか?
《おまけ映像》を見た限り、本来はあのドラマ自体を私に【本当の未来】だと思い込ませたかったはずだ。試験のことを考えると、そっちの方が私の心に重くのしかかる。何故、あんな終わらせ方にしたのだろう?
そして、【未来の私】の助言も気にかかる。
【仲間を信頼しろ】、【単独行動だけはするな】、今後の試験内容がかなり過酷なものだと意味している。
この2つの問題だけは、解決していない。
謁見できたら、真っ先に質問してみよう。
ネルマはあの映像を見たことで、心も回復しているし問題ない。ルクスさんも未来の私からの助言により、心が晴れたのか、情緒不安定感もなくなり、今後の試験について私達に説明してくれた。
「次の試験地は、あの塔の内部ですか?」
「はい。塔内部にいるオーキスさんと合流して、塔の《展望エリア》を目指してもらいますが、試験官でもある私とベアトリス様は離脱させてもらいます。ただし、《とある場所》からあなた方を監視します」
塔の内部へ入れるんだ。
こちらとしても好都合だ。
「《展望エリア》には、何があるのですか?」
「ハーゴンズパレスの主人が住んでいます。日程の残り5日間、自力で目的の場所へ到着した場合、試験も当然合格です。また、到達出来なかった場合、試験の合否はそこまでの道程で判断させてもらいます」
塔の内部で、5日間も過ごすことになるのか。
武具も防具も食糧もアイテムもない状態でのスタートだから、自殺行為に等しい。
「シャーロット様の婚約者オーキスさんは、強いんですか?」
ネルマ、まだ私の婚約者じゃないから。
「現状の彼の強さは、Cランクですね。中堅冒険者と同等の力量を持っています。塔内部に関しては、私も詳しく知りません。ただ、今のあなた方ではかなり厳しいとだけ言っておきます。そこで、あなた方3人のモチベーションを上げるべく、1つご褒美を用意しましょう」
「ご褒美!? 何ですか! 何ですか!」
ルクスさんのご褒美発言で、ネルマの目が途端に輝きだす。
現金な奴め。
「5日以内に展望エリアへ到達できた場合に限り、ハーゴンズパレス内にある物品を1つ進呈しましょう」
「おお!」
その発言は、私やオーキスではなく、ネルマのために用意したものだね。
彼女の年齢を考慮すると、モチベーションもかなり上がるだろう。
「マリ◯カート、マリ○カート、マリ○カート! 4台、4台、4台!!」
あのゲームをまだやっていないのに連呼するとは、相当気に入ったのか。
しかも、4台欲しいと連呼している。
PVがあのゲーム機の画面に流れていたから、あの僅かの時間だけでレーシングゲームの真髄を理解したのかもしれない。
「ネルマ様、1台だけです」
ネルマがウルウルとした目で私を見る。
くうぅぅ~~、子供のこういった純粋な目で見つめられるのは苦手だよ。
「わかったよ。私も、あのゲーム機を選んであげる」
「やった! 2台2台!!!」
あの塔を5日でクリアーか。
たとえステータスが封印されようとも、私にはこれまで集めてきたダンジョン産の武器防具がマジックバック内に入っている。イミアさん達から貰ったマジックバック、アストレカ大陸に帰還して以降も、肌身離さず持っている。今回、その行為が功を奏したようだ。
アイテムチートで、塔を最速クリアーしてやる!
「それと、シャーロット様」
「え、何でしょうか?」
ネルマの方を見ていたルクスさんが、唐突に私を見る。
なんだか心を覗かれているようで、胸がドキドキするよ。
「あなたの持つマジックバッグを預からせていただきます。攻略にあたっての食糧や武器防具に関しては、塔内部で入手して下さい」
「「え!?」」
ルクスさんの発言に、私もネルマも声を挙げる。
本当に心を覗かれているのでは!?
何の武器も食糧もないまま、塔内部に潜入なんて危険すぎる。
「ちょっと待ってください。食糧や武器防具を何処で入手するのですか?」
ネルマが、私の疑問を口にしてくれた。
「全て塔内部にありますので御安心を」
安心出来るか!
武器防具はともかく、食糧がどんな状態で塔内部にあるのよ!
○○○
普通の冒険者達が数日間ダンジョン内に篭る場合、替えの下着や服類、予備の武器防具類、食糧などをマジックバックへと仕舞い込む。私達の場合、ルクスさんから一般に流通している物の中でも、やや安めの品をもらった。私もネルマも渋々ながら納得し、バッグに寝室クローゼット内にある衣服類を入れていく。結構な量がクローゼット内に用意されているから、てっきり屋敷内で試験を受けるものだとばかり思っていた。
私達の準備品は【衣服類、1日分の飲み物、マジックバック】だけ、非常に心細い状態で屋敷を出る。塔自体は巨大な建造物のため、屋敷を出てしばらくすると、その姿が露わとなった。
「大きい」
「私達………今からあの建物に入るんですよね?」
「ええ」
オーキスも合わせて3人だけで、あの塔を攻略するのか。
まずは、魔物との接触を避けて、宝箱から武器を入手しよう。
私は普通の女の子になって最弱状態だけど、武器を入手すれば攻撃力も多少上昇する。
何事も、始めが肝心だよね。
………屋敷を出て徒歩約1時間、私達は塔に到着した。
今から私とネルマだけで、この内部に潜入するのだけど、正直不安しかない。
「これが………塔? 本で見ていたものが、私の目の前にある。私はシャーロット様と共に、この中で冒険するんだ?」
円形の塔というものを初めて目の前で見たけど………大きい。
存在感と威圧感が半端ない。
塔自体の質感は、土粘土を固めたかのような感じかな?
展望エリアまでは、どれ程の高さがあるのだろう?
ハーゴンズパレス遺跡内にある塔だから、ダンジョンマスターによって建造されたものなんだけど、どういうわけか入口がない。その代わりに、円形の魔法陣のようなものが塔のすぐ近くに描かれている。
「シャーロット様、ネルマ様、あの転移魔法陣の中央に移動してください。魔法陣に乗れば、塔1階の入口に転移されます」
「質問があります! エスケープストーンといった脱出アイテムは使用可能ですか?」
ネルマの質問に対して、ルクスさんは首を横に振る。
「脱出アイテムもありませんし、下の階に戻ることもできません。しかし、通常のダンジョンと同じく、各階に《セーフティーエリア》が存在しますので、そこで寝泊りしてください」
「おお、いよいよ冒険が始まるの!」
ネルマの精神に問題は無い。
朝で見た未来の仲間からのエールが彼女の負担を軽減させている。
「オーキス様は塔内部を探索していますので、自力で合流して下さい」
転移直後にオーキスと合流したいと思っていたんだけど、既に探索を開始しているのなら1階にはいないかもね。でも、彼自身が私達と合流を望んで1階で待つ可能性もある。そこは、2人の気配察知に頼るしかない。
「わかりました。ネルマ、行こう」
「はい!」
転移魔法陣中央へ移動すると、陣が急速に輝きだしたため、私達は目を閉じる。
そして再度目を開けると、そこは………
「シャーロット様、ここが塔内部なんですよね?」
ここが塔1階か。
私達の佇む場所は、円形の部屋だ。
真下には、魔法陣が描かれている。
光魔法が塔全体に仕込まれているからか、周辺も明るい。
ただ、気温も地上と大差ないため、かなり寒い。
私達の正面には、たった1本の道がある。
私達の冒険は、ここから始まる。
「もしも~し、2人共~自分の世界に入るのもいいけど、そろそろ戻ってくれないかな~~」
え、真後ろから女性の声?
私達の後ろって壁しかないよね?
さっきまで、誰もいなかったよね?
私達は、恐る恐る後方を振り向くと………薄暗い灰色の髪色をした18歳くらいの女性が壁に大きく投影されている。
「は~~い、初めまして。ハーゴンズパレス遺跡の主人で~~す」
「「ええ!?」」
ショートカットの髪、薄紫色のスリットロング型のドレス、美しく気品溢れる女性が小悪魔的な微笑みで両手を振っている。
見た感じ竜人族っぽいけど、この人が本当に遺跡の主人なの?
応援ありがとうございます!
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