10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護

文字の大きさ
60 / 76
5章 猫の恩返し

56話 スパイ捜索活動を開始するわ *ミケーネ視点

しおりを挟む
今、私-三毛猫のミケーネは、主催者側のテントにいる。フリード様から課された私の任務、それは[スパイを見つけ出すこと]。元々、ご主人様のコーティング剤を狙うスパイをとっ捕まえることを第一に動いていたのだけど、テンタクルズオクトパスという魔物が絡んだせいなのか、フリード様が…『ここは、同盟国となっている獣人の国ともかなり近いです。現在の周辺諸国との関係次第で、別任務を持ったスパイが乗り込んでくるかもしれません』と言っていたわ。

少し大袈裟に感じたけど、私の住む街は[大樹の暴走][レストラン-クザンの食材偽装][フェルデナンド家の壊滅]に共通して絡んでいるせいもあって、現在注目を浴びている。そこに[フードフェスタ]という大規模イベントがあることで、他国のスパイにとっては街内に比較的侵入しやすい状況となっているみたい。交易都市と呼ばれているこの街に侵入して、国の現状を深く知ろうとしているのかもね。

フリード様は、これまでの旅の最中にも、こういった大きなお祭りに参加し、人と関わったせいで、いくつかの事件に巻き込まれた経験があるみたい。巻き込まれた腹いせで、その原因を探っていったら、国内もしくは国外の大物がどの事件にも絡んでいたとも言っていた。

それを聞いた私は…

[そういった経験談から街を気にしてくれるのはありがたいのですが、猫が人様の情勢に、そこまで介入していいのですか?]

と質問したら・・・彼は高々とこう言い放ったのよ。

《ほほほほ、私は自分の欲求を満たすため、常に自己中心的に動くのです。正直、この国の情勢なんて微塵も興味ありませんよ。ですが、この街の存在の有無に関わるのであれば、話は別です。折り合いの悪い他国の奴らにとって、この街の存在が厄介だと思えば、必ず何らかの横槍を入れてくるでしょう。それで、この街が滅んでしまったら、身も蓋もありません。だから、事を起こされる前に、我々の手で奴らを消せばいいのです》

その話を聞いた時、私はフリード様を心底恐ろしいと感じ、同時に尊敬の念も抱いた。フリード様は、咲耶と御自分と猫たちのためだけに動いている。この国の未来なんて私も興味ないけど、結局のところ、この国が滅びる事態に陥れば、それだけ治安も悪化し、猫も生きにくい環境になってしまう。それを回避するために、私たちはスパイを見つけ出さないといけないのよ。

ただ、スパイ猫の中でも、私が一番優秀ということもあり、フリード様から直々に任命されたのは嬉しいのだけど、コーティング剤の場合、展示箱の設置場所や機密情報の保管されている建物の内部と外部を見張っていれば、産業スパイも見つかると思う。でも、私の場合は、どうやって見つけるの? フリード様に相談したら、『簡単なことですよ。開幕記念の際、あなたは主催者のテントに入っていなさい。あとは、周りが勝手に動くでしょうから、あなたはその中から怪しい人物を見つけ出し、後をつけて何を狙っているのかを探りなさい』と言われたわ。

今のところ、テント内に怪しい野郎はいない。咲耶は、アルバス・オルバインという領主と話し合っているようね。あ、咲耶やベイツ、他の者たちも動き出したわ。そろそろ、式典が始まるのね。テント内の中でも、私は魔物の入っている小型マジックバッグの保管されている区画にいるけど、どう行動しよう? あら、領主たちは移動しているのに、2名の人間だけはここに残っているのね。この人たちって私たち猫の目から見ても、ただのアルバイトのようなか感じにしか見えないのだけど、ここの管理を任せて大丈夫なの?

「全ての小型マジックバッグの点検終了~ギリギリ間に合った~。魔石の状態も良好だ」

こんなギリギリまで、点検していたの?
随分、熱心ね。

「お疲れ~~、あとはイベント参加者たちにこれらを渡せばいいだけだな。露店出店者以外で、今年は何人参加するかな?」

「出来れば、大勢参加してほしい」
「だな。おっと、領主様の挨拶が始まった」
「フェスタの開幕だ。こっちも、気を引き締めよう」

この2人は、マジックバッグを参加者たちに渡す係のようね。バッグ自体も小型で子供でも持てる物だから、テーブルの上には沢山並べられているし、その下にはバッグで埋め尽くされた大きな箱が2つもある。テーブルの端には、2冊のノートが置かれており、ここにバッグを貸した人の名前などを記載するようね。

「皆、よく集まってくれた。天気は快晴、絶好のフェスタ日和だ。今日は大樹マナリオ様の求める社の完成記念式典でもある。4日前、大樹様は巫女-咲耶を通じて、社完成記念として、これまで天候不良とされていた地域一帯に、恵の雨、恵の風、恵みの晴れといった各地域の農民たちの望むものをもたらして下さった。そして、フェスタ開幕日から終了日までの3日間、この街の快晴を約束して下さった。大樹様のためにも、このフェスタを成功させようではないか‼︎」

領主様も、力が入っているわね。咲耶が来て以降、かなり忙しい日々が続いているはずよ。あなたに齎されたもの全てが、この領全体を活性化させるもの。精霊の力なんて早々手に入らないし、個人ではなく、その力を領全体に行き渡らせることなんて、高位の精霊でないと不可能だわ。咲耶、精霊様、フリード様が街に滞在する限り、領主様の評価は、今後もうなぎ登りになるはずよ。

あら? テンタクルズオクトパスの件も話し終えたようね。
咲耶から聞いた事前情報に間違いはないようで安心したわ。

・露店出店者たちは強制参加
・小型マジックバッグに関しては、フェスタ最終日の午後3時までに返却すること
・肉自体の腐るまでの時間が16時間以上であれば、返却を受け付ける。
・16時間を切っている場合、身の返却だけが不可となる。
・返却不可となった肉に関しては、自己責任で処分すること。
・時間の判定に関しては、スキル[解析]で実施する。

領主様の挨拶が終わったということは、いよいよ咲耶の出番ね。
あの子、どんな挨拶をするのかしら?

「次に、大樹の巫女となった咲耶を紹介しよう。彼女がいなければ、この街の存続自体が危うくなっていたことは、記憶に新しいだろう。さあ咲耶よ、皆に言葉をかけてあげなさい」

「は…はい‼︎」

あの子、緊張で手足がおかしなことになっているわよ。
元伯爵令嬢と聞いているけど、外見からだと貴族に微塵も見えないわ。

「た…大樹の巫女となった咲耶と言います‼︎ 大樹マナリオも、今日のフェスタを迎えることができて嬉しいと言っています。その証拠に、東の方向を見てください‼︎」

東? 咲耶の指差す方向を見ると、ここにいる全員が息を飲む。
嘘でしょ? 大樹様と話し合える証拠として、これを見せるの?
こんなの天候を操作させないと、絶対にできない所業よ。

あはは、咲耶もやるわね。即興で思いついたのか、予め話し合っていたのかは不明だけど、この快晴の天気でこれを見せられたら、半信半疑の人々だって、大樹の巫女としての咲耶を認めるでしょうね。

巨大な虹が街の近辺から発生して、スムレット山の方へどんどん伸びていく。こんな神秘的な光景、生まれて初めてだわ。

咲耶のおかげで、私の気分も晴れ渡った。
それじゃあ、スパイ探しの再開といきましょう。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

処理中です...