76 / 76
5章 猫の恩返し
最終話 猫カフェのオープン
しおりを挟む
フェスタが終わって1ヶ月、私にとって大きな出来事が5つあった。
① アレスとの文通
この1ヶ月で、4通もらっている。王都の人々は、新聞の影響でフェスタ前から私のことを知っているようだけど、その時点では知名度も低かった。そこにフェスタでの騒動で大きく取り上げられたこともあり、知名度がかなり上昇し、アレスと同年代の貴族の男女も、私の名前を知っているんだって。そして、彼に渡したクレープの方でも、大きな変化が起きた。公爵家のシェフにレシピ通りのものを再現してもらい、皆で試食したら、アレスの両親だけでなく、使用人たちも大絶賛し、即座に露店販売が決まったみたい。現在、私のレシピを基にしてオリジナルクレープに挑戦中、4品が完成したところで、露店販売を始める予定。
② 現世の父フェルデナンド伯爵との会談
フェスタの騒動後、私は領主様の住む別邸で、現世の父と会談した。父と再会して驚いたのは、彼の見た目だ。出会った頃よりもかなり痩せていたけど、その表情は何処か晴れ晴れとしており、悪いものが抜け落ちたような印象を受けた。ルウリたちが伯爵に何をしたのはわからないけど、まさかこんな変貌を遂げているとは思わなかった。あの騒動以降、どれだけの心労を抱え、今日まで生きてきたのだろう。
会談早々に言われたのは、謝罪の言葉だ。自分自身が洗脳され操り人形となり、貴族の罪を次から次へと暴露していくことで、自分の仕出かした罪にようやく気づいたみたい。でも、その頃には、フェルデナンド家も崩壊していて、自分の両親が何者かに殺されていたので、その事実を知ると嘆き悲しんだわ。でも、私を含めた子供たちが生きていることを知ると、何とも言えない悲しげな笑みを浮かべた。そんな姿を見ているうちに、私の怒りも消失してしまう。勿論、私にされた仕打ちを許すつもりはないけど、この街へ来たことで、私は前世の記憶を取り戻し、前世の家族と再会して、未練を断ち切れたのも事実だ。
だから、私は一つの答えを出した。
それが、父との絶縁だ。
元々、追放されて親子の縁も切れているけど、私自身が父に宣言することで、フェルナンド家と繋がる縁を完全に断ち切りたかった。かつて父から言われたように、私が父に絶縁を宣言すると、彼は悲しげな顔を浮かべ、謝罪を繰り返すだけだった。会談の翌日、父は王都へ護送され、永遠に会えないだろうということをルウリから言われたのだけど、その時、私の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
③ ヘルハイム王国辺境都市マルレットとの交易開始
フェスタ閉幕から7日後、アマンガムさんと私に、手紙が届いた。手紙の主人は隣国の辺境伯様だったので、私たちは心底驚いたわ。ユウキから辺境伯様の娘レイナ・ライエット様の件を聞いていたから、もしやとは思ったけど、内容は『キャットフード類を大量購入したい』というもので、フードやペロチュールを絶賛していたわ。
アマンガムさんのもとへ行くと、彼も『上手くいけば、商会支部を隣国に建てられるぞ!!』と大歓喜しており、現在キャットフードのドライタイプとウェットタイプ、ペロチュールの大量生産を実施している。
④ 光希誘拐事件
フェスタ閉幕日の夜、私はイベントの結果を知らせるため、光希に連絡を取ろうとしたら、異世界交流のレベルが上がっており、なんと異世界または地球への物質転送(無生物限定)が可能になっていた。
ただし、1立法メートル以内、1日に1品と限定されている。
この機能は非常に嬉しいので、早速光希にも教えてあげると、家族全員が大喜びしたようで、初日は地球から異世界への転送品となった。転送されたのは[デジタルカメラ]、タブレットで撮った写真類はスマホやパソコン画面では普通に見れるようだけど、画素数が低いせいなのか、現像しても粗い写真になるみたい。私はこのカメラで、異世界の光景や友達たちを写真に撮っていき、光希たちを喜ばせたいと思っている。
翌日、私は光希たちに、【ポインター(魔法[フラッシュ]搭載版)】1個を転送した。異世界でも物騒な事件が多いので、防犯として送ったのだけど、使用時には直視しないよう強く注意喚起しておいた。フラッシュ版の光量はあまりにも強いので、興味本位で使用すると失明する可能性が高いからだ。シンプルな操作方法だけど、念のため日本語の説明書を入れておいた。ルウリ曰く、地球人全員が微力ながら魔力に近い霊力というものを持っているようで、1日に1回くらいなら、起動させることが可能みたい。
そして、私のこの行いが、光希の命を救うことになる。
魔道具を転送してから13日目、光希からの連絡が急に途絶えてしまった。翌日になっても、光希側がOFFの状態だったので、私の中に焦燥感が増していく。光希からの連絡は、その2日後にあった。交流が途絶えた理由を尋ねると、なんと光希を含めた3名の女の子が誘拐されていた。いつもの帰宅時間、光希たちが集団下校で帰ろうと正門から出ようとしたところ、通り過ぎると思っていたワゴン車が急停車して、扉が開いた瞬間、覆面を被った男3人が光希たちを無理矢理捕まえて、車の中へと押しやり、そのまま走り去っていった。集団下校であっても、唐突で瞬時に実行されたこともあり、子供たちだけでなく、周囲の大人たちも反応できなかったみたい。
この時、光希だけが車内で冷静さを取り戻し、犯人たちの隙を窺っていた。犯人側は小学生低学年と舐めていたようで、拘束せずに車内に放置していたので、光希は車が止まり、自分達を見張る男が前を向いた瞬間に、魔道具[ポインター]を鞄から取り出し、「園子ちゃん、桜ちゃん、目を閉じて!!」と叫び、二人が目を閉じたのを確認してから、最大レベルで広範囲用に設定しポインターを起動させた。薄暗い時間帯だったのが功を奏し、その光は途轍もない輝きとなる。停まった場所が大通りの交差点だったこともあり、光希が車の扉を開け放ち、2人と一緒に逃げ出したことで、皆が一斉に光希たちと車に注目を集めた。
ここから事件はスピード解決して、光希たちも助かったのだけど、事情聴取やら精密検査、光希自身の心の回復を優先して、私との連絡が途絶えたみたい。幸い、誘拐された3人は無傷、心に少しトラウマを抱えたようだけど、浅いレベルらしい。あの魔道具に関しては、防犯用のためネットで購入したことにしている。その後、デジタルカメラの動画経由で、私は皆の顔を確認しながら、動画でいっぱいいっぱい御礼を言われた。
⑤ 猫集団直訴事件
猫カフェの件でも、大きな進展があった。店の建設が急ピッチに進み、遂に2週間後にオープンというところで、大きな騒動が発生した。
それが、《猫集団直訴事件》。
アマンガムさんたち上層部は、新しく開店する猫カフェのオーナーに、従業員の中でも若く優秀な女性を選んだのだけど、飼い猫ミケーネを含めた猫たちがそれを許さなかった。私はあくまで猫たちの教育係、猫たちの知能を向上させるために実施したお店の仕組みについて説明したのがいけなかった。知識を付けた猫たちが、自分たちの新たな縄張りとなるお店に、見知らぬ女性がボスとなることに納得しなかったのだ。しかも、フリードよりも偉い存在となってしまうのが、余計に腹立たしく気に入らなかったみたい。
オーナーを選んだ翌日の朝、30匹以上の猫たちが屋敷の庭に集まって、《断固反対!! オーナーには咲耶を!! 実現しない場合、我々は猫カフェのメンバーにならない!!》という横断幕を掲げて、『にゃあにゃあ』と大ブーイングを放つ。この光景を見たアマンガムさんは頭を抱えてしまい、すぐさまベイツさんの家にいる私に伝えられた。フリードは抗議の件を聞いて笑うだけで何もしてくれそうになかったので、私が慌てて屋敷に向かい、猫たちを説得する。
この街の猫たちにとっての崇拝すべき相手は、《フリード》と《私》のため、何の力もない人にボスとして君臨してほしくなかった。だから、私は猫カフェのオーナーとなった女性の凄さを猫たちにわかるよう、延々と説明した。色々と話し合ったことで、猫たちにとって、フリードは《力の象徴》、私は《食の象徴》と思っていたので、『この女性は猫カフェを影から支えてくれる《経営の象徴》なんだよ。この人が動いてくれないと、店自体が潰れてしまって、あなたたちの評価が最底辺になってしまい、もう誰も餌を与えてくれなくなるんだよ』と強く訴えたことで、猫たちはオーナーとなる女性がどれだけ大切な存在であるのかを理解してくれた。
この事件は、新聞に大々的に報じられてしまい、アマンガムさん、私、猫カフェのオーナーさんが写真付きで第一面に載ってしまう。猫カフェのオープンが永久にできなくなると思ったけど、これが逆に宣伝となり、猫カフェの存在が良い意味で、周辺の街にも広がり、住民たちはオープンを心待ちにしている。
○○○
いよいよだ。
フェスタが終わって1ヶ月、立て続けに色々とあったけど、今日念願の猫カフェがオープンする。
コーティング剤も改良されたことで、私の求める半透明キャットウォークも完成した。人はテーブル席から、天井付近の高さに製作されたこのキャットウォークを悠然と歩く猫たちを眺め癒されながら、食事を摂ることができる。これ以外にも、キャットタワー、爪研ぎ柱、キャットホイール、キャットハウス、猫用トイレなど、全てが日本で最先端の猫カフェと同レベルのものとなっているわ。建物は、アマンガムさんの飼い猫ミケーネ(三毛猫)を模していて、可愛くてとってもお洒落な二階建ての猫型ハウスで、デジタルカメラで撮った画像を光希たちに見せると、皆が外観とインテリアを絶賛してくれた。
猫たちにとって、ここまで非常に長い道のりだった。
3日前、猫カフェ入り口前にて、大勢の見学人が見守る中、総勢46匹から第一次選抜メンバー15匹(フリードとミケーネは確定済)を選んだ時、選ばれた猫たち全員が歓喜の雄叫び『勝ち取ったぜ~~~(咲耶以外:ミャ~~~)』をあげ、残りの猫たちが悲嘆な雄叫び『負けた~~~(咲耶以外:ミャー~~~)』をあげた。他の人たちから見れば同じ「ミャ~~~」でも、歓喜と悲嘆という両極端だから、周辺で見学していた住民や観光客たちも、猫たちの表情だけで落選した者を見極め、全員に慰めの言葉を贈っていた。
選考基準だけど、私は『人の求める癒し性』、アマンガムさんは『接客性』で、フェスタ期間中に見出された『スパイ能力』については、猫カフェに求められていない。だから、その期間中に活躍しご褒美をもらえた猫たちも、一心不乱に頑張ったけど、残念ながら選ばれなかった。でも、アマンガムさんはそのスパイ能力を高く買っているので、猫カフェとは別口で働いてもらうことになると言ってたわ。勿論、ご褒美付きで。
「咲耶、いよいよ開店だな」
私と優希がいる場所は、猫カフェの中だ。
今、この中にはオーナーとなる25歳の女性ミシェルさん、男性シェフのダンケルさん、そしてアルバイトの私たちと、フリードとミケーネを合わせた総勢17匹の野良猫がいる。猫たちにはこの日のために、十分なブラッシングをしているので、毛並みも完璧だ。猫たちと会話するための小型キャットボードも匹数分設置されているので、私たちがいなくともコミニュケーションは可能だけど、猫たちが人に危害を与えないよう見守る必要がある。
「うん、緊張するね。私の発案から始まった以上、きちんと責任を持って猫たちと接していくわ」
「オープン前なのに、もう8人も並んでいるぞ。私たちにとっての新たな生活の始まりだな」
「うん!!」
私は、フリードと周囲にいる猫たちを見る。お客様方には、最後にアンケートを書いてもらい、癒し度の高い猫を3匹選んでもらっている。選ばれた猫には、閉店後にご褒美を用意しているので、全員がやる気に満ちている。この癒し度に関しては、純粋な人への対応だけで行わないといけないので、フリードやミケーネだって貰えるとは限らない。
「みんな、今から店をオープンするね。絶対に喧嘩せず、仲良く人に癒しを与えてね」
猫全員「ミャ!!(はい!!)」
「よし、頑張ろう!!」
私と優希は頷き、オーナーとシェフに一言声をかけて、入口となる扉を開けた。
「「猫カフェ、只今からオープン致します!!」」
お父さん、お母さん、悠太、光希。
私は、異世界で頑張って生きていくね。
(完)
○○○
ご愛読、ありがとうございました。
① アレスとの文通
この1ヶ月で、4通もらっている。王都の人々は、新聞の影響でフェスタ前から私のことを知っているようだけど、その時点では知名度も低かった。そこにフェスタでの騒動で大きく取り上げられたこともあり、知名度がかなり上昇し、アレスと同年代の貴族の男女も、私の名前を知っているんだって。そして、彼に渡したクレープの方でも、大きな変化が起きた。公爵家のシェフにレシピ通りのものを再現してもらい、皆で試食したら、アレスの両親だけでなく、使用人たちも大絶賛し、即座に露店販売が決まったみたい。現在、私のレシピを基にしてオリジナルクレープに挑戦中、4品が完成したところで、露店販売を始める予定。
② 現世の父フェルデナンド伯爵との会談
フェスタの騒動後、私は領主様の住む別邸で、現世の父と会談した。父と再会して驚いたのは、彼の見た目だ。出会った頃よりもかなり痩せていたけど、その表情は何処か晴れ晴れとしており、悪いものが抜け落ちたような印象を受けた。ルウリたちが伯爵に何をしたのはわからないけど、まさかこんな変貌を遂げているとは思わなかった。あの騒動以降、どれだけの心労を抱え、今日まで生きてきたのだろう。
会談早々に言われたのは、謝罪の言葉だ。自分自身が洗脳され操り人形となり、貴族の罪を次から次へと暴露していくことで、自分の仕出かした罪にようやく気づいたみたい。でも、その頃には、フェルデナンド家も崩壊していて、自分の両親が何者かに殺されていたので、その事実を知ると嘆き悲しんだわ。でも、私を含めた子供たちが生きていることを知ると、何とも言えない悲しげな笑みを浮かべた。そんな姿を見ているうちに、私の怒りも消失してしまう。勿論、私にされた仕打ちを許すつもりはないけど、この街へ来たことで、私は前世の記憶を取り戻し、前世の家族と再会して、未練を断ち切れたのも事実だ。
だから、私は一つの答えを出した。
それが、父との絶縁だ。
元々、追放されて親子の縁も切れているけど、私自身が父に宣言することで、フェルナンド家と繋がる縁を完全に断ち切りたかった。かつて父から言われたように、私が父に絶縁を宣言すると、彼は悲しげな顔を浮かべ、謝罪を繰り返すだけだった。会談の翌日、父は王都へ護送され、永遠に会えないだろうということをルウリから言われたのだけど、その時、私の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
③ ヘルハイム王国辺境都市マルレットとの交易開始
フェスタ閉幕から7日後、アマンガムさんと私に、手紙が届いた。手紙の主人は隣国の辺境伯様だったので、私たちは心底驚いたわ。ユウキから辺境伯様の娘レイナ・ライエット様の件を聞いていたから、もしやとは思ったけど、内容は『キャットフード類を大量購入したい』というもので、フードやペロチュールを絶賛していたわ。
アマンガムさんのもとへ行くと、彼も『上手くいけば、商会支部を隣国に建てられるぞ!!』と大歓喜しており、現在キャットフードのドライタイプとウェットタイプ、ペロチュールの大量生産を実施している。
④ 光希誘拐事件
フェスタ閉幕日の夜、私はイベントの結果を知らせるため、光希に連絡を取ろうとしたら、異世界交流のレベルが上がっており、なんと異世界または地球への物質転送(無生物限定)が可能になっていた。
ただし、1立法メートル以内、1日に1品と限定されている。
この機能は非常に嬉しいので、早速光希にも教えてあげると、家族全員が大喜びしたようで、初日は地球から異世界への転送品となった。転送されたのは[デジタルカメラ]、タブレットで撮った写真類はスマホやパソコン画面では普通に見れるようだけど、画素数が低いせいなのか、現像しても粗い写真になるみたい。私はこのカメラで、異世界の光景や友達たちを写真に撮っていき、光希たちを喜ばせたいと思っている。
翌日、私は光希たちに、【ポインター(魔法[フラッシュ]搭載版)】1個を転送した。異世界でも物騒な事件が多いので、防犯として送ったのだけど、使用時には直視しないよう強く注意喚起しておいた。フラッシュ版の光量はあまりにも強いので、興味本位で使用すると失明する可能性が高いからだ。シンプルな操作方法だけど、念のため日本語の説明書を入れておいた。ルウリ曰く、地球人全員が微力ながら魔力に近い霊力というものを持っているようで、1日に1回くらいなら、起動させることが可能みたい。
そして、私のこの行いが、光希の命を救うことになる。
魔道具を転送してから13日目、光希からの連絡が急に途絶えてしまった。翌日になっても、光希側がOFFの状態だったので、私の中に焦燥感が増していく。光希からの連絡は、その2日後にあった。交流が途絶えた理由を尋ねると、なんと光希を含めた3名の女の子が誘拐されていた。いつもの帰宅時間、光希たちが集団下校で帰ろうと正門から出ようとしたところ、通り過ぎると思っていたワゴン車が急停車して、扉が開いた瞬間、覆面を被った男3人が光希たちを無理矢理捕まえて、車の中へと押しやり、そのまま走り去っていった。集団下校であっても、唐突で瞬時に実行されたこともあり、子供たちだけでなく、周囲の大人たちも反応できなかったみたい。
この時、光希だけが車内で冷静さを取り戻し、犯人たちの隙を窺っていた。犯人側は小学生低学年と舐めていたようで、拘束せずに車内に放置していたので、光希は車が止まり、自分達を見張る男が前を向いた瞬間に、魔道具[ポインター]を鞄から取り出し、「園子ちゃん、桜ちゃん、目を閉じて!!」と叫び、二人が目を閉じたのを確認してから、最大レベルで広範囲用に設定しポインターを起動させた。薄暗い時間帯だったのが功を奏し、その光は途轍もない輝きとなる。停まった場所が大通りの交差点だったこともあり、光希が車の扉を開け放ち、2人と一緒に逃げ出したことで、皆が一斉に光希たちと車に注目を集めた。
ここから事件はスピード解決して、光希たちも助かったのだけど、事情聴取やら精密検査、光希自身の心の回復を優先して、私との連絡が途絶えたみたい。幸い、誘拐された3人は無傷、心に少しトラウマを抱えたようだけど、浅いレベルらしい。あの魔道具に関しては、防犯用のためネットで購入したことにしている。その後、デジタルカメラの動画経由で、私は皆の顔を確認しながら、動画でいっぱいいっぱい御礼を言われた。
⑤ 猫集団直訴事件
猫カフェの件でも、大きな進展があった。店の建設が急ピッチに進み、遂に2週間後にオープンというところで、大きな騒動が発生した。
それが、《猫集団直訴事件》。
アマンガムさんたち上層部は、新しく開店する猫カフェのオーナーに、従業員の中でも若く優秀な女性を選んだのだけど、飼い猫ミケーネを含めた猫たちがそれを許さなかった。私はあくまで猫たちの教育係、猫たちの知能を向上させるために実施したお店の仕組みについて説明したのがいけなかった。知識を付けた猫たちが、自分たちの新たな縄張りとなるお店に、見知らぬ女性がボスとなることに納得しなかったのだ。しかも、フリードよりも偉い存在となってしまうのが、余計に腹立たしく気に入らなかったみたい。
オーナーを選んだ翌日の朝、30匹以上の猫たちが屋敷の庭に集まって、《断固反対!! オーナーには咲耶を!! 実現しない場合、我々は猫カフェのメンバーにならない!!》という横断幕を掲げて、『にゃあにゃあ』と大ブーイングを放つ。この光景を見たアマンガムさんは頭を抱えてしまい、すぐさまベイツさんの家にいる私に伝えられた。フリードは抗議の件を聞いて笑うだけで何もしてくれそうになかったので、私が慌てて屋敷に向かい、猫たちを説得する。
この街の猫たちにとっての崇拝すべき相手は、《フリード》と《私》のため、何の力もない人にボスとして君臨してほしくなかった。だから、私は猫カフェのオーナーとなった女性の凄さを猫たちにわかるよう、延々と説明した。色々と話し合ったことで、猫たちにとって、フリードは《力の象徴》、私は《食の象徴》と思っていたので、『この女性は猫カフェを影から支えてくれる《経営の象徴》なんだよ。この人が動いてくれないと、店自体が潰れてしまって、あなたたちの評価が最底辺になってしまい、もう誰も餌を与えてくれなくなるんだよ』と強く訴えたことで、猫たちはオーナーとなる女性がどれだけ大切な存在であるのかを理解してくれた。
この事件は、新聞に大々的に報じられてしまい、アマンガムさん、私、猫カフェのオーナーさんが写真付きで第一面に載ってしまう。猫カフェのオープンが永久にできなくなると思ったけど、これが逆に宣伝となり、猫カフェの存在が良い意味で、周辺の街にも広がり、住民たちはオープンを心待ちにしている。
○○○
いよいよだ。
フェスタが終わって1ヶ月、立て続けに色々とあったけど、今日念願の猫カフェがオープンする。
コーティング剤も改良されたことで、私の求める半透明キャットウォークも完成した。人はテーブル席から、天井付近の高さに製作されたこのキャットウォークを悠然と歩く猫たちを眺め癒されながら、食事を摂ることができる。これ以外にも、キャットタワー、爪研ぎ柱、キャットホイール、キャットハウス、猫用トイレなど、全てが日本で最先端の猫カフェと同レベルのものとなっているわ。建物は、アマンガムさんの飼い猫ミケーネ(三毛猫)を模していて、可愛くてとってもお洒落な二階建ての猫型ハウスで、デジタルカメラで撮った画像を光希たちに見せると、皆が外観とインテリアを絶賛してくれた。
猫たちにとって、ここまで非常に長い道のりだった。
3日前、猫カフェ入り口前にて、大勢の見学人が見守る中、総勢46匹から第一次選抜メンバー15匹(フリードとミケーネは確定済)を選んだ時、選ばれた猫たち全員が歓喜の雄叫び『勝ち取ったぜ~~~(咲耶以外:ミャ~~~)』をあげ、残りの猫たちが悲嘆な雄叫び『負けた~~~(咲耶以外:ミャー~~~)』をあげた。他の人たちから見れば同じ「ミャ~~~」でも、歓喜と悲嘆という両極端だから、周辺で見学していた住民や観光客たちも、猫たちの表情だけで落選した者を見極め、全員に慰めの言葉を贈っていた。
選考基準だけど、私は『人の求める癒し性』、アマンガムさんは『接客性』で、フェスタ期間中に見出された『スパイ能力』については、猫カフェに求められていない。だから、その期間中に活躍しご褒美をもらえた猫たちも、一心不乱に頑張ったけど、残念ながら選ばれなかった。でも、アマンガムさんはそのスパイ能力を高く買っているので、猫カフェとは別口で働いてもらうことになると言ってたわ。勿論、ご褒美付きで。
「咲耶、いよいよ開店だな」
私と優希がいる場所は、猫カフェの中だ。
今、この中にはオーナーとなる25歳の女性ミシェルさん、男性シェフのダンケルさん、そしてアルバイトの私たちと、フリードとミケーネを合わせた総勢17匹の野良猫がいる。猫たちにはこの日のために、十分なブラッシングをしているので、毛並みも完璧だ。猫たちと会話するための小型キャットボードも匹数分設置されているので、私たちがいなくともコミニュケーションは可能だけど、猫たちが人に危害を与えないよう見守る必要がある。
「うん、緊張するね。私の発案から始まった以上、きちんと責任を持って猫たちと接していくわ」
「オープン前なのに、もう8人も並んでいるぞ。私たちにとっての新たな生活の始まりだな」
「うん!!」
私は、フリードと周囲にいる猫たちを見る。お客様方には、最後にアンケートを書いてもらい、癒し度の高い猫を3匹選んでもらっている。選ばれた猫には、閉店後にご褒美を用意しているので、全員がやる気に満ちている。この癒し度に関しては、純粋な人への対応だけで行わないといけないので、フリードやミケーネだって貰えるとは限らない。
「みんな、今から店をオープンするね。絶対に喧嘩せず、仲良く人に癒しを与えてね」
猫全員「ミャ!!(はい!!)」
「よし、頑張ろう!!」
私と優希は頷き、オーナーとシェフに一言声をかけて、入口となる扉を開けた。
「「猫カフェ、只今からオープン致します!!」」
お父さん、お母さん、悠太、光希。
私は、異世界で頑張って生きていくね。
(完)
○○○
ご愛読、ありがとうございました。
237
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(52件)
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おもしろかったです!完結してしまい残念でなりません。第二部や番外編などまだまだ沙耶ちゃん、ミケーネたちの活躍が読みたいです。
淡雪さん、本作品を最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます( ◠‿◠ )
今日一日かけてゆっくり⁈飛ばし気味で読ませていただきました。
大変羨ましいスキルですよね、私も猫と話してみたい、家に来て良かった?と聞いてみたい、返事はきっと、もっとチゅールが食べたいの、ゼリータイプがいいわ、とか言われそうです。
楽しく読ませていただきました,ありがとうございます。
にゃあんさん、本作品を最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます( ◠‿◠ )
あれれ?ご褒美の旅行編は後日かにゃ?
5章で猫カフェもオープンし一区切りついたので、一旦ここで完結とさせて頂きます。
まにゃまにゃさん、本作品を最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます( ◠‿◠ )