転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

文字の大きさ
38 / 83
本編

36話 誘拐されちゃった

しおりを挟む
目の前は暗闇。
両手足は縛られたまま。
アイリス様とメイリンさんの気配を殆ど感じない。

誘拐されて危険な状況だけど、自分のステータスだけは目隠しされている状態でも確認できたおかげで、心に安心感が芽生えてくる。

うん、落ち着いてきた。
この状況で出来ることは、トーイやガルト様、リアテイル様に通信を入れること。
問題は、誰に通信するかだよね。

トーイやリアテイル様の近くは、ラピスが必ずいるから、通信すると気づかれてしまい騒がしくなる。ガルト様は聖域を離れられないけど、呪縛から解き放たれていることもあり、私の状況を聞いても、冷静な対応をしてくれると思う。

『ガルト様、聞こえますか?』
『ユミルか、どうした?』

今の返事から察すると、まだ誘拐の件を聞いていないのかな。もしかして、トーイやリアテイル様たちも、私が誘拐された事に気づいていないのかもしれない。

『緊急事態発生です。私……アイリス様絡みで誘拐されちゃいました』
『は? 誘拐だと!?』

突然言ったら、驚くよね。

『理由は不明ですが、誘拐一味はアイリス様の捕縛を目的としており、一緒に付いてきた私も何処かの小屋に誘拐されました。両手足を縛られ、目隠しもされて身動きできない状態です』

声を発する事なく相手に会話できるから、この使役契約による通信機能は超便利だよ。

『アイリス……[タウセントの神童]か。彼女絡みということは、研究関係か?』
『多分、そうだと思います』

ここから、どう行動しようかな? こう言った場合は、我々を頼れとガルト様から言われているけど、これから先もずっと頼ってばかりいると、孤独になった時に何も出来なくなってしまう。かといって今の私は4歳、どう頑張っても物理的な意味合いで、犯人達と渡り合えないし、人相手に長を召喚するわけにはいかない。

どうしよう?
どう行動すれば正解なの?

『誘拐か……問題あるまい。ユミルを、こちらへ召喚すればいいだけのこと』
『それはダメ!! アイリス様とメイリンさんを放っておけない!! 引き渡しまで1時間あるから、その間にアイリス様たちの居場所を探ってみる。この小屋の中にいるはずなのに、何故か気配を探れないの』

『落ち着け。まずは、誘拐される前の状況を我に教えてくれ』

いけない、ガルト様の言うとおり、一旦落ち着こう。私は深呼吸をして、ガルト様に誘拐されるまでの経緯を話していくと、彼はため息を吐く。

『災難のもとへと降り立ったかと思えば、次は災難の方からユミルのもとへやってくるか。そのレパードとかいう魔物、おそらくスキル[チャーム]を使ったな。あれで魅了された者はスキル行使者に一時的に支配されることもあり、本来持つ気配や存在感が薄れてしまう』

そうか、それで気配を察知しきれなかったんだ。

『強度の程はわからんが、アイリスを生かしているのなら、奴らの目的は彼女の頭脳だろうから、それほど強い力で支配していないはずだ。恐らく、軽い衝撃を与えれば、スキルを破れる』

それなら私の力でも、打ち破れるかもしれない。

『ユミルは、私の言いつけをきちんと守っていたことで、難を逃れたようだな』

『はい。【常日頃から、身体内にスキル[反射]を行使しておけ】、これがなかったら私も魅了されていました』

タウセントの街中で、目に見えるレベルでのスキル[反射]を行使できない。高レベルの人であれば、その現象を見ただけで、何のスキルかがわかるからだ。だから、毒・麻痺などの状態異常系、催眠・洗脳などの精神干渉系のスキルや魔法にはかからないよう、長から注意を受けていた。私は、それを忠実に守ったからこそ助かったんだ。

『うむ、良い心掛けだ』

今の間に、私の抱えている疑問を長にぶつけてみよう。

『ガルト様、レパードはアイリス様とレンタル契約したことで、今は彼女の従魔なの。なんで、主人に逆らった行動が出来るの?』

これが1番不思議なことだ。契約時、テイマーギルドの人からも、レンタルであっても、主人への暴力だけは固く禁じられている。それが、スキルによる行為なら尚更だよ。

『それは、簡単な話だ。〈二重契約〉』

二重? どういう意味?

『隠蔽に関しては、トーイ達から聞いているな?』
『うん、知ってるよ』

自分のステータスの中でも、相手に知られたくない項目がある場合、それを隠せるスキルがある。一つが[偽装]、鑑定で見られても、異なった名称にしているので、相手が誤認する。この偽装を更に進化させたのが[隠蔽]、項目そのものを消すことができる。

『偽装と違い、隠蔽を行使すると項目を消せるのだが、使いこなしているものは、その上に下地になっている項目と同種類の内容を載せることができる』

『どういうこと?』

『レパードの場合、使役契約だ。奴の真の主人は、今その場にいる男のことだろう。その名前を隠蔽で隠し、その上にテイマーギルドの者やアイリスの名前を入れることで、契約そのものは機能していることもあり、鑑定スキルで見られても怪しまれることはないのだ』

あ~~~そういう事か!!
それならテイマーギルドの人たちにもわからないよ。

『この場合、レパードの主人はその男のままであるため、アイリス達に逆らうことも可能だ。おそらく、アイリスは10歳の子供、学会へ行くにあたり、信頼できる人や魔物の護衛を雇うと考え、事前に冒険者ギルドやテイマーギルドへ侵入し、お前達を待ち構えていたのだろう』

そうなると、半分私の責任かもしれない。
元々、私の護衛を雇う予定だったもの。

そうなると、今回の犯人ってアイリス様の研究の競争相手で間違いなさそうだ。彼女を危険視しているのはわかるけど、自分自身の破滅だってありえるのに、なんでこんな事をするのかな?

『ユミル、気をつけろ。研究者達は、頭が切れる。学会を欠席させるため、二重、三重と策を張り巡らせているだろう』

そうなると、この誘拐が失敗した時に備えて、別の策が動いているってことかな? 相手が何を考えているのか不明だから、そっちの方はわからないけど、今はアイリス様とメイリンさんに合流して、ここを脱出しよう。

『そっちはわかんないから、脱出だけを考えるよ』
『どうするつもりだ?』
『あのね……』

このまま、あの人たちにやられっぱなしというのは嫌だ。
4歳児には4歳児なりのやり方で、あいつらを驚かせてやる。

思いついた策を話すと、ガルト様は豪快に笑い出す。

『その策、面白いな。その方法であれば、我々の正体も勘付かれることは絶対にない。ユミル、奴らに一泡吹かせてやれ』
『うん!!』

よ~し、反撃開始だ!!
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ
ファンタジー
 私は死んだ。  はずだったんだけど、 「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」  神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。  なんと幼女になっちゃいました。  まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!  エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか? *不定期更新になります *誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください! *ところどころほのぼのしてます( ^ω^ ) *小説家になろう様にも投稿させていただいています

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

処理中です...