婚約破棄を卒論に組み込んだら悪魔に魅入られてしまい国から追放されました

犬社護

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第一章 不遇からの脱出

十二話 新たな火種

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 私たちが目を開けると、そこは……学園の教室だった。周囲には高等部の生徒たちがちらほらいるから、多分ミルフィア様やクリス様の在籍する教室だわ。キューブ自体も、教室内で稼働中と言っていたもの。

「キューブが急に光ったと思ったら、ミルフィア様だけじゃなく、王城へ行ったウィンドル様やクリス、それにティアナ様まで突然現れるなんて……」

「あれ? そのキューブが消えていないか?」

「ティアナ様、熱で寝込んでいるって聞いたわ。体調も万全でないのに吸引されたってこと?」

 今更だけど、私だけパジャマだった。
 しかも裸足だから、かなり目立つ。

「いやいや、お前ら現実を見ろ。その吸引された人たちが戻ってきたんだぞ!? 王妃様に、帰還したことをお伝えしないと‼︎」

 名前の知らない男子生徒の声がきっかけとなり、周囲が騒ついていく。周囲には学園服を着た生徒だけでなく、王家直属の魔法使いたちが三名いるから、状況次第でキューブを再封印させるつもりだったのね。キューブから話を聞いているから今更だけど、その行為が無駄だと気づくわ。

 お母様が学園に来ているのなら、ここで待ちましょう。正直、身体がどんどん熱く重くなってきて、フラフラするのよね。保健室のベッドで寝たいところだけど、こんな騒動の中、そんなことをしている余裕はない。

 そんな体調の異変に気づいてくれたのか、ミルフィア様が王家直属の魔法使いの男性のもとへ行くと、私の病気のことを話してくれたのか、彼がこちらへ駆け寄ってきた。

「ティアナ様、本当に魔力欠損症が完治されたのですか?」

 この初老の男性は、病気の件を疑っているようね。無理もない。

「ええ、完治しました。回復魔法を行使して頂ければ、それを証明できます。仮に何か起きたとしても、あなたに責任を負わせることはありませんから安心してください」

 男性はしばらく逡巡していたものの、私に回復魔法を施してくれた。すると、私の身体に異常が起きるどころか、体調がかなり楽になるという事象をもたらす。

 光属性に位置し、《体力を回復させる回復魔法》、《病気を治癒させる治癒魔法》、これらの使い手は非常に少ない。特に、病気を回復させる治癒魔法の使い手は、国中を探しても数人程しかいないと言われている。

 でも、今の私にとって、魔法で体力が回復したこと、この事象が非常に嬉しい。
 これのおかげで、周囲も私自身も、病気が完治したことを確信したのだから。

 魔力欠損症患者は先天性後天性に関係なく、魔力に対する適応性が消失しているため、魔力を受け入れるための身体の許容量が極めて低くなっている。これにより回復魔法やポーション、ハイポーションといった薬草類などの魔力を含む物を身体内へ服用させてしまうと、その許容量を超えてしまうため、体調をかえって悪化させてしまう。今、その副作用が起きなかった。

 私の体調悪化の原因はウイルスなどの外的要因のため、根本的治療に繋がらないけど、これできちんと話し合うことができる。私が魔法使いの男性にお礼を言った後、教室入口となるドアが静かにゆっくりと開いていく。

 教室に入ってきたのは、アレイザード王国オクタビア王妃、私のお母様だった。

 母は王妃として相応しい黒のフォーマルスーツを着用しており、その容姿も抜群で、金髪が服とよく映える。私の容姿もお母様と似ているけど、その扱いは病気のせいで天と地の差がある。

「ルミナから聞いてはいましたが、まさかミルフィアやティアナだけでなく、ウィンドルとミッドレート男爵令嬢まで吸引されていたなんて……え? ティアナ……あなたから魔力を感じますよ? キューブ内で起きた状況を教えてくれますか?」

 ふふふ、これを聞けば、皆も驚くでしょうね。

「はい、王妃様。デモンズキューブ自身が私の病気をいち早く察知し、自分の課す試験を受けさせるため、無理矢理治療を施したのです。そのおかげもあって、私の魔力は復活しました。訓練さえ積めば、今後魔法だって使えるようになります」

 私の言った言葉は皆を驚かせるのに十分だったようで、周囲が途端に騒がしくなる。今の私は、《魔力循環》と《魔力操作》を十分程度しか習っていないせいか、魔力が少し外へと漏れているらしい。ある意味、この拙い技術こそが証拠となっているから良かったとしよう。

 お母様は私の話を聞くと、表情だけで見れば、あまり動揺していないように窺えるけど、身体が少し震えているため、かなり嬉しいのだと思う。

「そう…ですか。まさかデモンズキューブが病気を完治させる手段を持ち合わせていたとは…」

 お母様はすぐに内容を信じてくれたようだけど、周囲にいる学生たちは疑惑の目を向けている。でも、先程の回復魔法の行使を見た学生たちが皆に説明してくれたことで、私の病気が完治したことを信じ、不審がるものはいなくなった。

 そして、ミルフィア様が私の前へ出てきて、更なる驚愕を告げる。

「王妃様、キューブの課した試験を最も早く終わらせたのは、その魔力を回復させたティアナ様です。更に、キューブに気に入られたことで、今回帰還が特別に許されました」

 ちょっとちょっとミルフィアさん、あなたは何を言い出すのかな!?
 継承者の件に関しては、お母様に話すにしても、こんな場所ではダメだよ!!

「何ですって!? それを皆に証明させる証拠はありますか? 何でも構いませんよ」

 お母様もこの件を聞いて、流石に驚いている。
 ただ、証拠を提示しろと言われても、キューブ自身が語らない限り提示できないわ。

「教室の教壇上に置かれていたキューブが消えており、ティアナ様自身が吸引前に身に付けていなかったネックレスを首にかけています。そのデザインが、あのキューブと酷似していませんか?」

 ネックレスですって!?
 あ、試験の時に見たキューブの縮小された物が、そのままネックレスと化しているじゃないの‼︎

 全然気づかなかった。
 しかも、正面が悪魔が神を食っている絵じゃない‼︎
 趣味悪!! 
 見た目は、呪いのネックレスね。
 急いで外そうとしたけど、鉛のように重かった。
 見た目は軽そうなのに外せない……どういうこと?

 お母様も気になったのか、私に近づきネックレスに優しく触れようとしたところ、黒い電気のようなものがバシッと走り、お母様を拒絶した。

 これ、本当にキューブなんだ。

「まさか…本当に…キューブ? あのデモンズキューブに気に入られた?」

 さすがはお母様、こんな状況であろうとも、内心の動揺を外に出さないよう、必死に感情を制御している。

「ティアナ、その話を詳しく聞かせなさい。ここでは何ですから、場所を移動しますよ。四人全員、私の滞在する部屋へ来なさい。体調が悪化する可能性もありますから、先にティアナから話を聞きます」

 お母様の凛とした声が教室に響き、生徒たちも逆らう気はなく、教室から出て行く私たちを黙って見守る。

○○○

 私だけ裸足でパジャマのため、別室で学生服に着替えることとなった。
 汗だくとなっている身体を綺麗に拭いたことで、幾分か体調も良くなる。

 そして、完全防音となっている部屋にて、私たち四人はキューブ内で起きた出来事(解放者の件は除く)をお母様に話した。試験結果の順位、一位が私、最下位がお兄様と伝えた時、お母様はピクッと眉を動かし、お兄様をじっと見つめる。

 兄は《何かを隠しています》と訴えるかのような挙動不審な動きをしていたものの、結果に文句を言うことはなかった。ただ、何かに怯えているかのような表情を時折見せていた。そんな兄を見ても、お母様は特に何も言うことはなく、続きを促してきたので、継承者(仮)のことも話す。

 私がキューブの継承者(仮)になったことに対して大層驚いていたけど、私の対策を聞いたことで、その対処方法を褒めてくれた。お母様も継承者の件が明るみになれば大事になると思い、国王陛下にだけは話すけど、それ以外は私と同じ見解に至る。

 これにより、この件を知る者は、国王陛下を入れた六名の人間だけとなる。

「ティアナ、継承権を抜きにしても、魔力を取り戻した以上、今後あなたは注目の的になります。また、キューブに魅入られた者として、命を狙われる危険性もあります。どちらにしても、あなたの人生はこれで大きく変化することに間違いはありません。一刻も早く身体と魔力を鍛え、キューブの力を取り入れて、迫り来る危機に対応できるよう、力を身につけなさい」

 その通りだわ。

 キューブがこのまま何処かに消えてくれたら普通の生活を送れたでしょうけど、キューブに魅入られてしまい、私が呪いのネックレスとして常に身につけることになるのだから、間違いなく注目を浴びる。誰もが私のことを、いずれデモンズキューブの力を手にする女と思うでしょうね。

 キューブの奴、ここまで何も語らないけど、私の話を聞いた上で注目を浴びるよう、わざと呪いのネックレスに変化したんだわ。

 私の人生をキューブに好き勝手に掻き回されてたまるもんですか‼︎
 自分の人生に関しては、自ら設計し、道を作っていく‼︎
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