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2章 テルミア王国 スフィアート編
終戦
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ボスがいる方角が北、Aクラス(殆どSに近い)がいるのは南、それぞれにはリフィアさんとミアさん、ヒミカさんがいるから大丈夫だろう。問題は、東と西だ。2つの中で、邪族と比較的距離が近いのは西か。私は、瞬間移動で西の門に移動した。
門に到着すると、冒険者の人達から声援が出た。ギルドで会議を行った時、SクラスとAクラスがいない2つの門には、私が急行し大きな魔法を放つと言ってあったからだ。
「皆さん、焦らないで下さい。邪族達とはまだ距離があるので、今から広範囲魔法を放ちます」
「「「おー、やってくれ~~。サーシャ、頼んだぞ~~!」」」
せっかくだから、私も合体魔法を使ってみよう。
間違って邪族達を全滅させないように手加減しないとね。
邪族の広がり具合・強さを考えて、このぐらいかな。
「いきます!『ライトニング・ストーム』」
雷・水・嵐属性を合体させた魔法だ。邪族達の上空に積乱雲が発生し、雷雨の嵐が発生した。邪族側から、恐ろしい程の叫び声が響いた。風圧で、こちら側に来れないようにしているため、雷雨からは絶対に逃げられない。本当は、そこにダウンバーストやトルネードも加えたかったけど、邪族達が木っ端微塵になるので止めた。冒険者達から、
「凄い」
「こっちに来たくても来れないみたいだ」
「なんか、邪族が気の毒になってきたわ」
「あの邪族とか、助けを求めてない?」
えー、なんで非難されるの?そろそろ止めよう。雷雨が止むと、『メテオレイン』の効果もあってか、数は1/3程減少し、残り2/3も深手を負わせたようだ。
「この新型魔法は魔力も大きく消費するので、切り札のことも考えるとこれ以上使用出来ません。皆さん、後は宜しくお願いします」
「「「うおおおーーー、任せろ~~!」」」
よし、この門はこれで大丈夫だろう。東の門も、同じ合体魔法を使い、邪族達に深手を負わせた。これで、一息つけるかなと思ったら、危機察知スキルが反応した。誰だ?これは、フィン!いきなりピンチなの?
瞬間移動で確認すると、なぜかフィンが前線にいて、あちこち右往左往していた。あれは放っておいたら死ぬわね。完全に自分を見失っているわ。フィンがオーガナイトと遭遇した瞬間、オーガナイトを真後ろから一刀両断した。フィンにアドバイスを送った後、危機察知スキルが3つ同時に働いた。げ、なんで同時?あーもう、上空から観察しよう。『隠蔽』をかけて急いで風魔法で上空に移動し、危険に陥っているパーティー達に支援魔法や回復魔法を唱えた。3パーティー全員が危機を脱すると、リーダー達が一言、
「サーシャがやったに違いない」
と言っただけで、仲間全員が納得していた。
いや確かに私がやったんですけど、なんか複雑だ。
この後も、ひっきりなしに危機察知スキルが反応したので、さすがに焦った。こんな事ならファン○ルのような脳波とかで自動で機能する魔導具を創っておくべきだった。というか、そういう魔法か魔導具を創ろう。やっと落ち着いたと思ったら、今度はワイバーン(Bクラス)が上空からやって来た。
《ピキ》
あのね、今、私は非常に苛ついているの。だ、か、ら、
「邪魔よ」 《スパーン》
哀れ、ワイバーンは自分の首が斬られた事を認識せずに、そのまま死んだ。あ、仲間がいないところに落とそう!危ない危ない、忘れるところだった。
ふうー、腹いせにワイバーンを斬ったおかげで、ストレスが解消出来たわ。一息ついた瞬間、今まで最大の危機察知スキルが反応した。今度は何?
調べると、なんとバーンさんとリフィアさんだ。これは不味い!急いで移動すると、邪竜の右腕が切断されており、邪竜からブレスと震属性の槍が放たれていた。これは、考えている余裕がない。
「『オールアビリティ・セカンド』」
良かった~~、なんとか間に合った。というか、何で使わないんですか、リフィアさん!は、そうだ、バーンさんのようなタイプは正々堂々とか言うかもしれない。
「ギリギリでしたね。『マックス・ヒール』。正々堂々とは、言わないで下さいね」
「言うか!あの野郎、なんらかのスキルで急激に力が上がったが、この切り札があれば大丈夫そうだ」
邪竜の使っているスキルは、『狂気』だ。攻撃力を倍に上げる反面、防御力が半分に下がる性質がある。
「敵を討伐するか、30分で解除するようにしてあります。いけますか?」
「は、充分だ!お前は、他の冒険者の所に行ってくれ」
「わかりました、頑張って下さい」
ウィルさん達を確認しに行くと、丁度目標の邪族達を倒したようだ。よし、この人達は大丈夫だろう。あとは、バーンさんがボスを倒せるかに懸かっているわね。ボスを倒せば、切り札を使って一気に邪族達を殲滅だ。ふと、強烈な邪力を感じた。邪竜の方を見ると、あれはドラゴンブレスの態勢に入ってる。邪竜の奴、この戦争を一気に終わらせる気だ。あれは不味い!急いで移動すると、バーンさんも何か攻撃態勢に入っている。何をする気なのだろう?でも、バーンさんのことだから、勝てる勝算があるから何かするつもりなんだ。それなら、邪魔をするのは無粋だよね。ここは見守ろう。ただ、負けそうな場合は、バーンさんは嫌がるだろうけど、そっと魔力を与えよう。
凄い、凄い!バーンさんとリフィアさんが合体攻撃?で、ドラゴンブレスと似たようなものを放出してる。邪竜の黒いドラゴンブレスとバーンさんとリフィアさんの青白いドラゴンブレスが、今まさにぶつかり合って、凄い音が鳴ってる。どこかの漫画を思い出すわ。力量的にバーンさん達の方が強い。よし、押し切った!邪竜は上半分が消失して、完全に死んだわね。上空で周りを観察すると、他の人達も戦いに慣れて普段以上の実力が出ている感じがある。邪族達も、ボスが死んだ事を理解したんだろう。明らかに統制が乱れてきた。ここで切り札を使って、一気に殲滅しよう。
○○○ アイリス視点
戦いが始まりました。ここから見える限り、お姉様、リフィアさんの合体魔法が凄いです。私も早く合体魔法を唱えれるようになりたい。私は見える範囲で、素早さや防御力を上げる支援魔法を唱えています。見えない部分については、大聖堂の魔法使い方がフォローしてくれているはずです。
「エレノア様、皆さん大丈夫でしょうか?」
「アイリス、信じなさい。今は皆を信じるのみです。それに今回の戦いには、サーシャが影で皆を守ってくれてますからね。隠蔽をかけているようですが、ほんの少し存在を感じます」
「え、私には何もわからないんですが?」
「サーシャは、この大聖堂の上空から、『危機察知』と『ポイント』スキルを利用して皆を守っているんですよ。ふふ、彼女は邪神ではなく女神のような存在ですね」
お姉様、凄いです。私もお姉様のようになりたい。その思いが日に日に募っていきます。
「あれ?エレノア様、邪竜の方向から今まで以上の強い邪力を感じます。何をするつもりなんでしょうか?」
「これは、まさかドラゴンブレス!あれを放たれてはいけないわ!魔導具が正常時ならまだしも、今のまま直撃したら魔法が保たないかもしれない!」
「ええ!、お姉様、どうかお守り下さい」
邪竜からドラゴンブレスが放たれた瞬間、誰かが青白いドラゴンブレスを放ちました。これはお姉様じゃない!この感じはバーンさんとリフィアさんだ。ブレス同士がぶつかって、大きな音がこちらまで響いてきてます。
「バーンさん、リフィアさん凄いです。どうか打ち勝って下さい!」
「そんな、あのブレスに対抗出来るなんて。女神スフィア、どうか我らをお護り下さい」
しばらく拮抗していましたが、ついにバーンさんとリフィアさんのブレスが打ち勝ち、邪竜を討伐してくれました。
「やった、エレノア様、バーンさんとリフィアさんが!」
「ええ、邪竜を討伐しましたね」
その時、お姉様が現れました。
「アイリス、バーンさんとウィルさん達が目標を倒してくれたわ。切り札を使って、全ての邪族達を討伐するわよ」
ここから、私達の切り札を使うんですね。
「わかりました。エレノア様、行ってきます」
「サーシャ、アイリスを宜しくお願いしますね」
「はい、任せて下さい」
お姉様と手を繋ぎ、まず西の門に移動しました。
「空間魔法でスフィアート全域に声を届けるようにしたわ。アイリス、お願いね」
私は頷いた。いよいよ切り札を使う時が来たんだ。
「《皆さん、聞いて下さい。ウィルさん達がAクラス邪族、バーンさん達がSクラスの邪竜の討伐に成功しました。ここから一気に畳み掛けましょう。今から切り札を全ての門で戦っている最前線の人達に使っていきます。20分経過したら、最前線の人達と入れ替わりで2番手、さらに20分経過したら入れ替わりで3番手の人達に使っていきます。ここからが正念場です。邪族達を殲滅しましょう!》」
私が言った瞬間、
「うおおお~~!!!」
「ふふ、さすが冒険者の人達ね。まだまだ余力を残しているわね」
お姉様がそう言った時、近くにいた冒険者の30代ぐらいの男性が話に来てくれた。
「おい、サーシャ、何言ってるんだ?全部お前のおかげだよ。ポーションや武器とかの新技術を開発したり、開戦直後の流星や新型魔法、全部サーシャが絡んでるんだろ。皆んな知ってるぜ。あれらがなかったら今頃、魔力が尽きて全員死んでたよ」
あ、やっぱりわかる人にはわかるんだ。お姉様は目立ちたくないから控えめにしてたけど、みんなわかっているんだ。
「え、みんな知ってるんですか!あはは、そう言ってもらえると嬉しいです。では、今からアイリスと2人で切り札を使っていきます」
「ああ、予定通り、最前線から頼む」
「はい!アイリス行きましょう」
「はい!」
そこから、私達は東西南北の門の最前線に切り札である『オールアビリティ・セカンド』を唱えていきました。途中で私の魔力が尽きそうになったので、お姉様から魔力をもらい、最前線全てに使用した後は上空で状況を見守りました。
「あのお姉様、グリフォン出してよかったんですか?」
「大丈夫、空間魔法で見えないようにしてあるから」
本当になんでもありですね。こうやって上から見ると全体がよく見える。最前線の人達が物凄いで邪族達を討伐してる。
「お姉様、最前線の人達の勢いが凄いですね。よく体力持ちますよね」
「うーん、やっぱり皆んなハイテンションになってる。あのペースだと、体力が30分保たないわ」
「え、あの、それは不味いのでは?」
「大丈夫、計算通りよ。いい、アイリス、戦争でも日常生活でもそうだけど、常に最悪を想定して行動しなさい。今回なら、『オールアビリティ・セカンド』を前もって使う事で、その魔法の副作用もわかった。魔力纏いとは違い、他者が魔法で急激に能力を上げるせいで、慣れてない人はハイテンションに陥りやすい。だからこそ、20分にして交代制をとったの。時間が短くなるけど、身体の負担が軽減する分、あと1回この魔法を使用出来るからね」
「常に最悪を想定して行動を起こす、----わかりました」
新型魔法に副作用、考えもしなかった。確かに、あの魔法を初めて使った時、フィン姉がいつもと違っていた。こうやって見ると他の冒険者や騎士団の人達も、あの時のフィン姉に似てる。こういう事も想定して、交代制を採用したんだ。
「さ、そろそろ西の門の最前線で20分経つころね。アイリス、行くわよ」
「はい!」
お姉様はやっぱり凄い。ここに来てから、こうなる事を全て想定していたのかな?私も、いつかお姉様のようになるためにも、どんどん考え方や魔法の技術を盗んでいこう。
○○○ サーシャ視点
切り札を使った事で、邪族達はどんどん数を減らしていった。さすがにBクラスともなると、邪力を纏って抵抗しているけど、現在ではこちらの方が数が優っているので、例外なく討伐されている。今では至る所に邪族の死骸が転がっている。さすがに邪族達も、仲間の死骸を見て戦意を失くし、大森林の方へ撤退している者も出始めた。これ、後処理が凄く大変そうだ。
切り札を使って以降、危機察知スキルが反応しなくなった。フィンも観察していたけど、騎士団の人達と連携をとれるようになっており、時折、回復魔法も使っていた。少し余裕が出来たので、アイリスにもDクラスの邪族達と戦わせた。少しは実戦経験を積んでおかないとね。------そして、ここスフィアートでの戦争は終了した。色々奔走していたからか疲れたよ。今、周りは邪族を全滅させた事で、凄く盛り上がっている。
「さあ、アイリス、ここでの仕事は終わったわ。エレノア様に報告して、終戦宣言をしてもらいましょう」
「お姉様、まさか6時間程で終了するとは思いませんでした」
「今回は、ボスの邪竜が脳筋野郎だったから短期決戦になったのよ」
「の、脳筋野郎ですか」
「そう、簡単に言うと、力でしか物事を決められないタイプね。恐らく、始めはあの邪竜以外にもSクラスはいたんでしょう。だから、始めの内は、人間を洗脳し、アイリスを大森林へ転移させ抹殺しようとした。多分、その後の計画としては、邪族の犠牲を最小限に抑えるため、洗脳させた人間の手によって大型魔導具を破壊させ、スフィアートが混乱している最中に、邪族達が転移でスフィアートの四方に出現させ陥落させるてところでしょう」
「お姉様がその計画を阻止したんですね」
「ええ、洗脳された人達を見つけては邪力線を切断して、『ホーリーボルト』を撃ち込んだから、その中に策略家の邪族もいて消滅したんでしょうね。最後に、Sクラスはあの邪竜だけとなり、ヤケクソになって力尽くで挑んできたというところでしょう。まあ、前もって、邪族が攻めてくる事がわかっていたから、こちらも色々と準備出来たんだけどね。もし、策略家の邪族が生存していたら、ここまでの大勝利にはならなかったでしょう」
「お姉様、凄いです。どのあたりから、そう推理していたんですか?」
「マウロ司祭と会ってからね。それまでに、アイリスと魔導具の情報はあったから、邪族の気分になって、スフィアートの陥落方法を考えたら、容易に推測出来たわ」
「邪族の気分になって考えるか、なるほど、わかりました」
アイリス、積極的に聞いてくるわね。今回の事が相当勉強でなったみたいね。
「さあ、エレノア様のところへ行きましょう」
「はい!」
その後、エレノア様に邪族全滅を報告すると、すぐさまベランダに移り、私の空間魔法を使って、スフィアートやその周りの冒険者や騎士団達に聞こえるように終戦宣言をした。スフィアートにおける邪族との戦争は人間側の大勝利となり、数日間はお祭り騒ぎとなった。
そして、私にも大きな変化があった。お祭りの最中、気になっていた自分のステータスを見ると、なんと基礎能力値が凄い事になっていた。さすがに、この時は顔が引きつったわ。おまけに称号に「聖女」が付いていて、一応エレノア様に報告したら、全住民に知らせましょうと言ってきたから、全力でお断りした。ただでさえ、Sクラス冒険者で目立っているのに、ここで聖女と知られてしまったら、女神サリアにも勘付かれる可能性もある。
目立つ行動は控えていたはずが、結局、王都以上に目立つ存在となってしまった。
これ以上注目されないように、もっと控えめに行動しようとフィンとアイリスに話したら、2人揃って
「「絶対、無理です」」
と言われた。なぜ?
門に到着すると、冒険者の人達から声援が出た。ギルドで会議を行った時、SクラスとAクラスがいない2つの門には、私が急行し大きな魔法を放つと言ってあったからだ。
「皆さん、焦らないで下さい。邪族達とはまだ距離があるので、今から広範囲魔法を放ちます」
「「「おー、やってくれ~~。サーシャ、頼んだぞ~~!」」」
せっかくだから、私も合体魔法を使ってみよう。
間違って邪族達を全滅させないように手加減しないとね。
邪族の広がり具合・強さを考えて、このぐらいかな。
「いきます!『ライトニング・ストーム』」
雷・水・嵐属性を合体させた魔法だ。邪族達の上空に積乱雲が発生し、雷雨の嵐が発生した。邪族側から、恐ろしい程の叫び声が響いた。風圧で、こちら側に来れないようにしているため、雷雨からは絶対に逃げられない。本当は、そこにダウンバーストやトルネードも加えたかったけど、邪族達が木っ端微塵になるので止めた。冒険者達から、
「凄い」
「こっちに来たくても来れないみたいだ」
「なんか、邪族が気の毒になってきたわ」
「あの邪族とか、助けを求めてない?」
えー、なんで非難されるの?そろそろ止めよう。雷雨が止むと、『メテオレイン』の効果もあってか、数は1/3程減少し、残り2/3も深手を負わせたようだ。
「この新型魔法は魔力も大きく消費するので、切り札のことも考えるとこれ以上使用出来ません。皆さん、後は宜しくお願いします」
「「「うおおおーーー、任せろ~~!」」」
よし、この門はこれで大丈夫だろう。東の門も、同じ合体魔法を使い、邪族達に深手を負わせた。これで、一息つけるかなと思ったら、危機察知スキルが反応した。誰だ?これは、フィン!いきなりピンチなの?
瞬間移動で確認すると、なぜかフィンが前線にいて、あちこち右往左往していた。あれは放っておいたら死ぬわね。完全に自分を見失っているわ。フィンがオーガナイトと遭遇した瞬間、オーガナイトを真後ろから一刀両断した。フィンにアドバイスを送った後、危機察知スキルが3つ同時に働いた。げ、なんで同時?あーもう、上空から観察しよう。『隠蔽』をかけて急いで風魔法で上空に移動し、危険に陥っているパーティー達に支援魔法や回復魔法を唱えた。3パーティー全員が危機を脱すると、リーダー達が一言、
「サーシャがやったに違いない」
と言っただけで、仲間全員が納得していた。
いや確かに私がやったんですけど、なんか複雑だ。
この後も、ひっきりなしに危機察知スキルが反応したので、さすがに焦った。こんな事ならファン○ルのような脳波とかで自動で機能する魔導具を創っておくべきだった。というか、そういう魔法か魔導具を創ろう。やっと落ち着いたと思ったら、今度はワイバーン(Bクラス)が上空からやって来た。
《ピキ》
あのね、今、私は非常に苛ついているの。だ、か、ら、
「邪魔よ」 《スパーン》
哀れ、ワイバーンは自分の首が斬られた事を認識せずに、そのまま死んだ。あ、仲間がいないところに落とそう!危ない危ない、忘れるところだった。
ふうー、腹いせにワイバーンを斬ったおかげで、ストレスが解消出来たわ。一息ついた瞬間、今まで最大の危機察知スキルが反応した。今度は何?
調べると、なんとバーンさんとリフィアさんだ。これは不味い!急いで移動すると、邪竜の右腕が切断されており、邪竜からブレスと震属性の槍が放たれていた。これは、考えている余裕がない。
「『オールアビリティ・セカンド』」
良かった~~、なんとか間に合った。というか、何で使わないんですか、リフィアさん!は、そうだ、バーンさんのようなタイプは正々堂々とか言うかもしれない。
「ギリギリでしたね。『マックス・ヒール』。正々堂々とは、言わないで下さいね」
「言うか!あの野郎、なんらかのスキルで急激に力が上がったが、この切り札があれば大丈夫そうだ」
邪竜の使っているスキルは、『狂気』だ。攻撃力を倍に上げる反面、防御力が半分に下がる性質がある。
「敵を討伐するか、30分で解除するようにしてあります。いけますか?」
「は、充分だ!お前は、他の冒険者の所に行ってくれ」
「わかりました、頑張って下さい」
ウィルさん達を確認しに行くと、丁度目標の邪族達を倒したようだ。よし、この人達は大丈夫だろう。あとは、バーンさんがボスを倒せるかに懸かっているわね。ボスを倒せば、切り札を使って一気に邪族達を殲滅だ。ふと、強烈な邪力を感じた。邪竜の方を見ると、あれはドラゴンブレスの態勢に入ってる。邪竜の奴、この戦争を一気に終わらせる気だ。あれは不味い!急いで移動すると、バーンさんも何か攻撃態勢に入っている。何をする気なのだろう?でも、バーンさんのことだから、勝てる勝算があるから何かするつもりなんだ。それなら、邪魔をするのは無粋だよね。ここは見守ろう。ただ、負けそうな場合は、バーンさんは嫌がるだろうけど、そっと魔力を与えよう。
凄い、凄い!バーンさんとリフィアさんが合体攻撃?で、ドラゴンブレスと似たようなものを放出してる。邪竜の黒いドラゴンブレスとバーンさんとリフィアさんの青白いドラゴンブレスが、今まさにぶつかり合って、凄い音が鳴ってる。どこかの漫画を思い出すわ。力量的にバーンさん達の方が強い。よし、押し切った!邪竜は上半分が消失して、完全に死んだわね。上空で周りを観察すると、他の人達も戦いに慣れて普段以上の実力が出ている感じがある。邪族達も、ボスが死んだ事を理解したんだろう。明らかに統制が乱れてきた。ここで切り札を使って、一気に殲滅しよう。
○○○ アイリス視点
戦いが始まりました。ここから見える限り、お姉様、リフィアさんの合体魔法が凄いです。私も早く合体魔法を唱えれるようになりたい。私は見える範囲で、素早さや防御力を上げる支援魔法を唱えています。見えない部分については、大聖堂の魔法使い方がフォローしてくれているはずです。
「エレノア様、皆さん大丈夫でしょうか?」
「アイリス、信じなさい。今は皆を信じるのみです。それに今回の戦いには、サーシャが影で皆を守ってくれてますからね。隠蔽をかけているようですが、ほんの少し存在を感じます」
「え、私には何もわからないんですが?」
「サーシャは、この大聖堂の上空から、『危機察知』と『ポイント』スキルを利用して皆を守っているんですよ。ふふ、彼女は邪神ではなく女神のような存在ですね」
お姉様、凄いです。私もお姉様のようになりたい。その思いが日に日に募っていきます。
「あれ?エレノア様、邪竜の方向から今まで以上の強い邪力を感じます。何をするつもりなんでしょうか?」
「これは、まさかドラゴンブレス!あれを放たれてはいけないわ!魔導具が正常時ならまだしも、今のまま直撃したら魔法が保たないかもしれない!」
「ええ!、お姉様、どうかお守り下さい」
邪竜からドラゴンブレスが放たれた瞬間、誰かが青白いドラゴンブレスを放ちました。これはお姉様じゃない!この感じはバーンさんとリフィアさんだ。ブレス同士がぶつかって、大きな音がこちらまで響いてきてます。
「バーンさん、リフィアさん凄いです。どうか打ち勝って下さい!」
「そんな、あのブレスに対抗出来るなんて。女神スフィア、どうか我らをお護り下さい」
しばらく拮抗していましたが、ついにバーンさんとリフィアさんのブレスが打ち勝ち、邪竜を討伐してくれました。
「やった、エレノア様、バーンさんとリフィアさんが!」
「ええ、邪竜を討伐しましたね」
その時、お姉様が現れました。
「アイリス、バーンさんとウィルさん達が目標を倒してくれたわ。切り札を使って、全ての邪族達を討伐するわよ」
ここから、私達の切り札を使うんですね。
「わかりました。エレノア様、行ってきます」
「サーシャ、アイリスを宜しくお願いしますね」
「はい、任せて下さい」
お姉様と手を繋ぎ、まず西の門に移動しました。
「空間魔法でスフィアート全域に声を届けるようにしたわ。アイリス、お願いね」
私は頷いた。いよいよ切り札を使う時が来たんだ。
「《皆さん、聞いて下さい。ウィルさん達がAクラス邪族、バーンさん達がSクラスの邪竜の討伐に成功しました。ここから一気に畳み掛けましょう。今から切り札を全ての門で戦っている最前線の人達に使っていきます。20分経過したら、最前線の人達と入れ替わりで2番手、さらに20分経過したら入れ替わりで3番手の人達に使っていきます。ここからが正念場です。邪族達を殲滅しましょう!》」
私が言った瞬間、
「うおおお~~!!!」
「ふふ、さすが冒険者の人達ね。まだまだ余力を残しているわね」
お姉様がそう言った時、近くにいた冒険者の30代ぐらいの男性が話に来てくれた。
「おい、サーシャ、何言ってるんだ?全部お前のおかげだよ。ポーションや武器とかの新技術を開発したり、開戦直後の流星や新型魔法、全部サーシャが絡んでるんだろ。皆んな知ってるぜ。あれらがなかったら今頃、魔力が尽きて全員死んでたよ」
あ、やっぱりわかる人にはわかるんだ。お姉様は目立ちたくないから控えめにしてたけど、みんなわかっているんだ。
「え、みんな知ってるんですか!あはは、そう言ってもらえると嬉しいです。では、今からアイリスと2人で切り札を使っていきます」
「ああ、予定通り、最前線から頼む」
「はい!アイリス行きましょう」
「はい!」
そこから、私達は東西南北の門の最前線に切り札である『オールアビリティ・セカンド』を唱えていきました。途中で私の魔力が尽きそうになったので、お姉様から魔力をもらい、最前線全てに使用した後は上空で状況を見守りました。
「あのお姉様、グリフォン出してよかったんですか?」
「大丈夫、空間魔法で見えないようにしてあるから」
本当になんでもありですね。こうやって上から見ると全体がよく見える。最前線の人達が物凄いで邪族達を討伐してる。
「お姉様、最前線の人達の勢いが凄いですね。よく体力持ちますよね」
「うーん、やっぱり皆んなハイテンションになってる。あのペースだと、体力が30分保たないわ」
「え、あの、それは不味いのでは?」
「大丈夫、計算通りよ。いい、アイリス、戦争でも日常生活でもそうだけど、常に最悪を想定して行動しなさい。今回なら、『オールアビリティ・セカンド』を前もって使う事で、その魔法の副作用もわかった。魔力纏いとは違い、他者が魔法で急激に能力を上げるせいで、慣れてない人はハイテンションに陥りやすい。だからこそ、20分にして交代制をとったの。時間が短くなるけど、身体の負担が軽減する分、あと1回この魔法を使用出来るからね」
「常に最悪を想定して行動を起こす、----わかりました」
新型魔法に副作用、考えもしなかった。確かに、あの魔法を初めて使った時、フィン姉がいつもと違っていた。こうやって見ると他の冒険者や騎士団の人達も、あの時のフィン姉に似てる。こういう事も想定して、交代制を採用したんだ。
「さ、そろそろ西の門の最前線で20分経つころね。アイリス、行くわよ」
「はい!」
お姉様はやっぱり凄い。ここに来てから、こうなる事を全て想定していたのかな?私も、いつかお姉様のようになるためにも、どんどん考え方や魔法の技術を盗んでいこう。
○○○ サーシャ視点
切り札を使った事で、邪族達はどんどん数を減らしていった。さすがにBクラスともなると、邪力を纏って抵抗しているけど、現在ではこちらの方が数が優っているので、例外なく討伐されている。今では至る所に邪族の死骸が転がっている。さすがに邪族達も、仲間の死骸を見て戦意を失くし、大森林の方へ撤退している者も出始めた。これ、後処理が凄く大変そうだ。
切り札を使って以降、危機察知スキルが反応しなくなった。フィンも観察していたけど、騎士団の人達と連携をとれるようになっており、時折、回復魔法も使っていた。少し余裕が出来たので、アイリスにもDクラスの邪族達と戦わせた。少しは実戦経験を積んでおかないとね。------そして、ここスフィアートでの戦争は終了した。色々奔走していたからか疲れたよ。今、周りは邪族を全滅させた事で、凄く盛り上がっている。
「さあ、アイリス、ここでの仕事は終わったわ。エレノア様に報告して、終戦宣言をしてもらいましょう」
「お姉様、まさか6時間程で終了するとは思いませんでした」
「今回は、ボスの邪竜が脳筋野郎だったから短期決戦になったのよ」
「の、脳筋野郎ですか」
「そう、簡単に言うと、力でしか物事を決められないタイプね。恐らく、始めはあの邪竜以外にもSクラスはいたんでしょう。だから、始めの内は、人間を洗脳し、アイリスを大森林へ転移させ抹殺しようとした。多分、その後の計画としては、邪族の犠牲を最小限に抑えるため、洗脳させた人間の手によって大型魔導具を破壊させ、スフィアートが混乱している最中に、邪族達が転移でスフィアートの四方に出現させ陥落させるてところでしょう」
「お姉様がその計画を阻止したんですね」
「ええ、洗脳された人達を見つけては邪力線を切断して、『ホーリーボルト』を撃ち込んだから、その中に策略家の邪族もいて消滅したんでしょうね。最後に、Sクラスはあの邪竜だけとなり、ヤケクソになって力尽くで挑んできたというところでしょう。まあ、前もって、邪族が攻めてくる事がわかっていたから、こちらも色々と準備出来たんだけどね。もし、策略家の邪族が生存していたら、ここまでの大勝利にはならなかったでしょう」
「お姉様、凄いです。どのあたりから、そう推理していたんですか?」
「マウロ司祭と会ってからね。それまでに、アイリスと魔導具の情報はあったから、邪族の気分になって、スフィアートの陥落方法を考えたら、容易に推測出来たわ」
「邪族の気分になって考えるか、なるほど、わかりました」
アイリス、積極的に聞いてくるわね。今回の事が相当勉強でなったみたいね。
「さあ、エレノア様のところへ行きましょう」
「はい!」
その後、エレノア様に邪族全滅を報告すると、すぐさまベランダに移り、私の空間魔法を使って、スフィアートやその周りの冒険者や騎士団達に聞こえるように終戦宣言をした。スフィアートにおける邪族との戦争は人間側の大勝利となり、数日間はお祭り騒ぎとなった。
そして、私にも大きな変化があった。お祭りの最中、気になっていた自分のステータスを見ると、なんと基礎能力値が凄い事になっていた。さすがに、この時は顔が引きつったわ。おまけに称号に「聖女」が付いていて、一応エレノア様に報告したら、全住民に知らせましょうと言ってきたから、全力でお断りした。ただでさえ、Sクラス冒険者で目立っているのに、ここで聖女と知られてしまったら、女神サリアにも勘付かれる可能性もある。
目立つ行動は控えていたはずが、結局、王都以上に目立つ存在となってしまった。
これ以上注目されないように、もっと控えめに行動しようとフィンとアイリスに話したら、2人揃って
「「絶対、無理です」」
と言われた。なぜ?
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そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる
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主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
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仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
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三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
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パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
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