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4章 ガルディア帝国 闘技会編
皇帝との謁見-2
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いま、皇帝や学園長は2人して、恍惚な表情をしたまま部屋で休んでいる。昼食後、少し休憩してからお風呂に入ってもらった。そのお風呂が2人にとって衝撃的だったようだ。王宮にも広いお風呂はあるらしいが、私が作ったお風呂はアルカリ単純温泉で、成分濃度も濃いのでニュルニュルしているのだ。それが気に入ったらしい。
「シュリよ、温泉の事はサーシャから聞いているな」
「当然です。温泉は地下深くに眠っている地下水の事らしく、地熱で温められたものらしいです。温泉に関しては、『探知』の魔法が使えます。ここの温泉を強くイメージし、魔法を唱えれば、その発掘場所もわかるはずです。現在は、探知による場所の探索、発掘方法やどのように循環していくかを考案しているところです」
「うん、この温泉は国民達に安らぎを与える素晴らしいものだ。必ず探し当てるんだ」
うーん、予想以上に温泉が高評価だ。
「キース皇子、どうかビルブレム周辺も探索してもらえないでしょうか?」
「学園長、安心して下さい。王都とビルブレムを最優先にしています」
温泉に関しては、キースに任せましょう。そこまで手伝っていられないから。さて、ゆっくり休んでもらったところで学園長室に戻りましょうか。
「もう戻ってきたのか。不思議な空間だった。フィン王女やイリスは、あの部屋で泊まっているのだな。正直羨ましいよ」
「皇帝、私も同じ思いです」
さて、本題の話をしましょうか。
「皇帝、休憩はここまでです。スオウの件はどうなりましたか?」
「スオウか、全く馬鹿な息子だ。力を支配と勘違いした事で邪族と手を結び、私やキースの暗殺を目論んでしまった。スオウに関しては王都に帰り次第、奴と直接的に関わりのあった連中を全て炙り出し処刑にする。一族の者達は貴族籍を剥奪し庶民に落とす。落ち着いた頃を見計らい、ビルブレムの闘技会の件も含め、皆の前で正式に発表する」
「それでしたら、既に察知している可能性もありますから、いち早く先手を打つためにも何人か王都に転移させましょうか?私の部下のリッチをお貸しします」
「そうしてくれると助かる。現状、人数は完全に把握仕切れていないからな」
リッチには悪いけど、ここに来てもらいましょう。
「召喚リッチ」
リッチを召喚し状況を説明すると、
「なるほど、わかりました。キース、ここまで関わったんだから最後まで付き合わせてもらうぞ」
「助かるよ、リッチ。それなら騎士団にいる3人を連れて行こう。その3人は、ずっとスオウの内偵調査をしていて、おおよそ把握しているはずだ。皇帝、今から行って来ます。早い方がいい」
「うむ、キース、リッチ殿、頼んだぞ」
「リッチ聞いた通りよ。しばらくの間は、ガルディア帝国で後始末をしていてくれない?」
「は、かしこまりました。ついでなので、キースと一緒に騎士団も鍛えておきましょう。あいつらはキース以上に軟弱です。あれでは、邪族が王都に大量出現した場合、全く役に立たないでしょう」
「リッチ殿にとっては、エリート騎士団も軟弱呼ばわりか。闘技会では動けもしなかったから、反論出来んよ。キースと騎士団の事を頼む」
「あい、わかった。任せておけ。それでは主よ、早速行動に移ります」
そう言って2人は転移した。本当に、行動に移るのが早いわね。
「皇帝、これまでの歴史に現れた邪族の軍勢より、今の方が遙かに強力になっています。実際、闘技会に出現したおよそ200体の邪族は、ボスのバルバリン以外、全てがAランクです。スフィアートではAランクこそ少なかったものの、全てがCランク以上でした。今の戦力では歯が立たないんです。それだけ邪王の力が増しているということです。黒幕連中の全体像が把握仕切れていない以上、邪王は討伐出来ません。それに、討伐された邪王は専用の転生システムに組み込まれてしまいます。私が管理世界に行き、邪王の転生システムを排除しないといけません。出来れば、私が邪王の転生システムを排除した後、勇者達と協力して邪王を討伐して欲しいです」
「うん?サーシャは手伝ってくれんのか?」
「その場合、おそらく手伝えません。システムの排除にどの程度の力を消費するかがわからないからです。ただ、私の加護を授けた人達が現在で11人います。その人達と協力して下さい」
「そうかわかった!サーシャは神族やシステムの事だけを考えていればいい。下界のことは、我々に任せろ!」
「ありがとうございます。それとシルフィーユにいるエルフの王には、私の件を伝えているのでしょうか?」
「ああ、今日の朝のうちに通信済だ。エルフは、スフィア教同様、女神スフィアを崇拝しているからな。さすがに驚いていたよ。あの寡黙な王が、あそこまで表情を大きく崩すのは初めて見たな。おそらく、一族トップであるハイエルフに伝えているはずだ」
ということは、バーンさん達がハイエルフと謁見しやすくなったかな。気になるのは、ハイエルフ2人の動きね。黒幕の佐江と努であったら、当然詳細に把握しているだろうし、私のことも調べて正体を察するはずだけど、そこからの動きが読めない。たとえ黒幕でなかったとしても、行動が読めないわね。バーンさん達が訪問することで、事態がどう動くのか気になるところだ。
まあ、エルフに関しては、これ以上考えても進展しないわね。とにかく、これでガルディア帝国も大丈夫だろう。次は、レーデンブルクについてだ。
「皇帝陛下、レーデンブルクやアルテハイムは今どうなっているのでしょうか?」
あら、フィンに先に言われちゃったわね。自分の故郷や婚約者の故郷がどうなっているのか気になるのは当然か。
「レーデンブルクとアルテハイムか-----」
え、なに?その沈黙は?
「ふぇ!皇帝陛下、何かあったんですか!」
「いや、アルテハイムに関してはわからないが、レーデンブルクは至って平和だ。何も起こっていない」
「よかった。安心しました」
妙ね。スフィアートでの邪族の大軍勢、ビルブレムの闘技会襲撃、2つの国の主要都市が狙われているのに、なぜ平和なの?ソフィア・アレンシャルの件で、間違いなく国内に邪族はいるはずよね。
「サーシャも気付いたか。そうだ、平和過ぎるのだ。フィン王女が行方不明になって以来、レーデンブルクはソフィア・アレンシャルの事情聴取を行った。もちろん、ソフィア自身も被害者だ。事情聴取自体も、ソフィアの負担にならないように丁重に行われた。そして、邪族の潜伏先を突き止め討伐することに成功した。盗賊が持っていた魔導具も、邪族が開発したものだ。おそらくは、自分達が人間や獣人に偽装するため試験的に開発したものだろう。その魔導具をさらに改良したものが、今回のビルブレム侵入に使用されたと、私は考えている。侵入した邪族に関しては、キースやサーシャ達が邪族襲撃よりも事前に対処してくれたおかげで、闘技会の外も平和だったようだ。おっと話が逸れたな。ソフィア・アレンシャルに関する邪族討伐以降、レーデンブルクでは何も起こっていない。現在、フィン王女が帰ってくるのを皆心待ちにしているよ」
「アルテハイムに関する情報はないんでしょうか?」
「問題はそちらだな。2ヶ月前、内偵に数名アルテハイムに送ったのだが、音信不通となった。おそらく、殺されたと判断していいだろう。何かが起こっているのは間違いない」
アルテハイムで、何かを画策しているということか。スフィアートとビルブレムでの敗北、情報はアルテハイム側の邪族にも伝わっているはずだ。どう行動してくるだろうか?予定調和のスキルで、私が考える手段もあるけど危険過ぎる。ビルブレムですら、あんな大衆演劇のような違和感を感じた。幸い、良い方向に転換したから良かったけどね。私の思い方次第で、周りに悪影響を与える可能性が非常に高い。あくまで、予定調和は最終手段として考えよう。
「師匠、王都の遺跡調査が終わったら、レーデンブルクに行くんですよね」
「ええ、そうよ。スフィアのメッセージの内容次第で変更する可能性もあるけど、余程のことがない限りはレーデンブルクよ」
「アルテハイムの事は気になりますけど、まずはお父様やお母様、家族のみんなを安心させます」
「私からも、フィン王女の事を伝えておこう。女神スフィア様に何があったのか、サーシャがスフィアタリアの新たな女神様となったという事も含めてな」
「やはり言いますか」
「シルフィーユの王に伝えているのだから、レーデンブルクの王や王妃にも言わないとまずいだろう。それに、レーデンブルクとアルテハイムはシルフィーユとテルミア王国同様、女神スフィアを大きく崇拝している。聖女とまではいかないが、巫女様が女神スフィアの神託を聞く立場にある。その神託が途絶えていることは、王達もスフィア様に何かがあったということを把握している。前もって、私から全容を言っておくよ。おそらく、王宮に到着した時点で、フィン王女の救出者という形で最高級のおもてなしを受けるだろうな。サーシャも、自分がこの世界の女神になった事を強く自覚した方がいい。普通なら、私のこの話し方の時点で不敬なのだぞ」
アルテハイムには伝えないか。まあ、妥当な判断ね。----女神ということをを自覚しろか。
「そうですね。昨日なったばかりなんで、全く実感は湧きませんが、サリアを討伐した後は、私が引き継ぎますからね。女神である事を強く自覚しておきます。でも、こうやって知り合いだけで話すときは、話し方は今のままでいいですよ」
「あはは、わかった」
これで大体話し終わったかな。
あ、そうそう王都の遺跡にあるスフィアのメッセージか。
「皇帝、王都の中にある遺跡にスフィアのメッセージがありますので、私達は王都に行きます。その際、転移でお連れしましょうか?」
「なに、そうして貰えるとありがたい。転移は、何人可能なのだ?」
「私の場合、何人でも大丈夫です。騎士団も一緒に連れて行きましょうか?」
「それは助かる。飛竜を呼ぶ手間が省ける」
せっかくだし、みんなで転移すればいいわね。
「王都への出発は、いつ頃ですか?」
「ここビルブレムにもスオウの協力者がいて、現在事情聴取中だ。おそらく、2日後だな」
「わかりました。その間に、この学園の料理人達に中華料理を教えておきましょう」
「サーシャ様、本当ですか!ありがとうございます!」
「ううむ、仕方あるまい」
「学園長、急ですけど明日は大丈夫ですか?」
「大丈夫ですとも!明日は休日ですから学生も殆どいません。丁度良いです!そうだ、サーシャ様、これが終わったら食堂に行きましょう。設備を見てもらわないといけません」
なんでハイテンションなの?温泉効果?中華料理効果?
学園長が大喜びしている。そして、学園長だけが私をサーシャ様と呼んでいる。まあいいか。
○○○
学園長を見ると、肌のツヤが良くなり活力を取り戻したかのようにキビキビと動いている。そこまで中華料理を気に入ったのね。そして、食堂に到着したわけだが、学生達と料理人達が何やら揉めていた。
「お前達、どうしたんだ?」
「あ、学園長、学生達が昼食を食べ損ねたらしく、何か作ってくれないかと言ってきたんですよ。明日は学園自体が休みという事もあって、材料が殆ど残っていないんです」
ふーん、学生達を見ると、かなりお腹を空かしているわね。中華料理は材料もないから無理だし、あり合わせで作るしかないわね。
「すいません、サーシャといいます。今残っている材料を教えてくれませんか?」
「ああ、それは構わないが、------ぐらいしかない」
残っている材料が少な過ぎる。明日、休日という事もあって、新たな食材が入荷するからか。うーん、これならあれが出来るか。喜ぶかな?まあ、ないよりマシでしょ!
「これならオムライスが作れますよ」
「オムライス?なんだね、それは?」
「実際に作りましょう。すぐに出来ます」
必要な材料を炒め、そこにライスを加える。ケチャップで味付けを行い、優しく卵で包む。あ、5人前作ってしまった。
「はい、完成です。あなた達、お昼まだなんでしょう?これ食べなさい」
3人の学生は、なぜかプルプル震えていた。
「「「サーシャ様、ありがとうございます。まさか手料理を食べれるとは思いませんでした!!!」」」
なんで学生もサーシャ様なの?年近いよね?
「「「美味い!」」」
うーん、絶賛してくれてるし気にしないでおこう。
「あと2つどうしよう?料理人の方々、食べてみますか?」
「「「ああ、頂くよ。------美味い!」」」
一気に食べてるよ。オムライスは美味しいとは思うけど、ガッツク程ではないんだけど。
あれ?フィンやイリス、学園長がじっと私を見ている。
「あとは、料理人の方々に任せますね。これがレシピです」
「お姉様、作ってくれないんですか!」
「師匠、食べたいです」
「ダメ!さっき中華料理を食べたでしょ。それとも太りたいの?」
「「う!」」
あれ学園長は?
食べ終わった料理人達と話し合ってるよ。ていうか食べ終わるの早いよ!きっと明日の話をしているのね。料理人達の顔がどんどん明るくなってきてるもの。
翌日、これまで作った中華料理を全部料理人に教えた。私の話を真剣に聞いていた料理人達が練習も兼ねて、夕食は中華料理の試食会が開催された。どういうわけか、昨日の3人の学生達もいた。そして当然の如く、食事の時間は戦争となりました。
「シュリよ、温泉の事はサーシャから聞いているな」
「当然です。温泉は地下深くに眠っている地下水の事らしく、地熱で温められたものらしいです。温泉に関しては、『探知』の魔法が使えます。ここの温泉を強くイメージし、魔法を唱えれば、その発掘場所もわかるはずです。現在は、探知による場所の探索、発掘方法やどのように循環していくかを考案しているところです」
「うん、この温泉は国民達に安らぎを与える素晴らしいものだ。必ず探し当てるんだ」
うーん、予想以上に温泉が高評価だ。
「キース皇子、どうかビルブレム周辺も探索してもらえないでしょうか?」
「学園長、安心して下さい。王都とビルブレムを最優先にしています」
温泉に関しては、キースに任せましょう。そこまで手伝っていられないから。さて、ゆっくり休んでもらったところで学園長室に戻りましょうか。
「もう戻ってきたのか。不思議な空間だった。フィン王女やイリスは、あの部屋で泊まっているのだな。正直羨ましいよ」
「皇帝、私も同じ思いです」
さて、本題の話をしましょうか。
「皇帝、休憩はここまでです。スオウの件はどうなりましたか?」
「スオウか、全く馬鹿な息子だ。力を支配と勘違いした事で邪族と手を結び、私やキースの暗殺を目論んでしまった。スオウに関しては王都に帰り次第、奴と直接的に関わりのあった連中を全て炙り出し処刑にする。一族の者達は貴族籍を剥奪し庶民に落とす。落ち着いた頃を見計らい、ビルブレムの闘技会の件も含め、皆の前で正式に発表する」
「それでしたら、既に察知している可能性もありますから、いち早く先手を打つためにも何人か王都に転移させましょうか?私の部下のリッチをお貸しします」
「そうしてくれると助かる。現状、人数は完全に把握仕切れていないからな」
リッチには悪いけど、ここに来てもらいましょう。
「召喚リッチ」
リッチを召喚し状況を説明すると、
「なるほど、わかりました。キース、ここまで関わったんだから最後まで付き合わせてもらうぞ」
「助かるよ、リッチ。それなら騎士団にいる3人を連れて行こう。その3人は、ずっとスオウの内偵調査をしていて、おおよそ把握しているはずだ。皇帝、今から行って来ます。早い方がいい」
「うむ、キース、リッチ殿、頼んだぞ」
「リッチ聞いた通りよ。しばらくの間は、ガルディア帝国で後始末をしていてくれない?」
「は、かしこまりました。ついでなので、キースと一緒に騎士団も鍛えておきましょう。あいつらはキース以上に軟弱です。あれでは、邪族が王都に大量出現した場合、全く役に立たないでしょう」
「リッチ殿にとっては、エリート騎士団も軟弱呼ばわりか。闘技会では動けもしなかったから、反論出来んよ。キースと騎士団の事を頼む」
「あい、わかった。任せておけ。それでは主よ、早速行動に移ります」
そう言って2人は転移した。本当に、行動に移るのが早いわね。
「皇帝、これまでの歴史に現れた邪族の軍勢より、今の方が遙かに強力になっています。実際、闘技会に出現したおよそ200体の邪族は、ボスのバルバリン以外、全てがAランクです。スフィアートではAランクこそ少なかったものの、全てがCランク以上でした。今の戦力では歯が立たないんです。それだけ邪王の力が増しているということです。黒幕連中の全体像が把握仕切れていない以上、邪王は討伐出来ません。それに、討伐された邪王は専用の転生システムに組み込まれてしまいます。私が管理世界に行き、邪王の転生システムを排除しないといけません。出来れば、私が邪王の転生システムを排除した後、勇者達と協力して邪王を討伐して欲しいです」
「うん?サーシャは手伝ってくれんのか?」
「その場合、おそらく手伝えません。システムの排除にどの程度の力を消費するかがわからないからです。ただ、私の加護を授けた人達が現在で11人います。その人達と協力して下さい」
「そうかわかった!サーシャは神族やシステムの事だけを考えていればいい。下界のことは、我々に任せろ!」
「ありがとうございます。それとシルフィーユにいるエルフの王には、私の件を伝えているのでしょうか?」
「ああ、今日の朝のうちに通信済だ。エルフは、スフィア教同様、女神スフィアを崇拝しているからな。さすがに驚いていたよ。あの寡黙な王が、あそこまで表情を大きく崩すのは初めて見たな。おそらく、一族トップであるハイエルフに伝えているはずだ」
ということは、バーンさん達がハイエルフと謁見しやすくなったかな。気になるのは、ハイエルフ2人の動きね。黒幕の佐江と努であったら、当然詳細に把握しているだろうし、私のことも調べて正体を察するはずだけど、そこからの動きが読めない。たとえ黒幕でなかったとしても、行動が読めないわね。バーンさん達が訪問することで、事態がどう動くのか気になるところだ。
まあ、エルフに関しては、これ以上考えても進展しないわね。とにかく、これでガルディア帝国も大丈夫だろう。次は、レーデンブルクについてだ。
「皇帝陛下、レーデンブルクやアルテハイムは今どうなっているのでしょうか?」
あら、フィンに先に言われちゃったわね。自分の故郷や婚約者の故郷がどうなっているのか気になるのは当然か。
「レーデンブルクとアルテハイムか-----」
え、なに?その沈黙は?
「ふぇ!皇帝陛下、何かあったんですか!」
「いや、アルテハイムに関してはわからないが、レーデンブルクは至って平和だ。何も起こっていない」
「よかった。安心しました」
妙ね。スフィアートでの邪族の大軍勢、ビルブレムの闘技会襲撃、2つの国の主要都市が狙われているのに、なぜ平和なの?ソフィア・アレンシャルの件で、間違いなく国内に邪族はいるはずよね。
「サーシャも気付いたか。そうだ、平和過ぎるのだ。フィン王女が行方不明になって以来、レーデンブルクはソフィア・アレンシャルの事情聴取を行った。もちろん、ソフィア自身も被害者だ。事情聴取自体も、ソフィアの負担にならないように丁重に行われた。そして、邪族の潜伏先を突き止め討伐することに成功した。盗賊が持っていた魔導具も、邪族が開発したものだ。おそらくは、自分達が人間や獣人に偽装するため試験的に開発したものだろう。その魔導具をさらに改良したものが、今回のビルブレム侵入に使用されたと、私は考えている。侵入した邪族に関しては、キースやサーシャ達が邪族襲撃よりも事前に対処してくれたおかげで、闘技会の外も平和だったようだ。おっと話が逸れたな。ソフィア・アレンシャルに関する邪族討伐以降、レーデンブルクでは何も起こっていない。現在、フィン王女が帰ってくるのを皆心待ちにしているよ」
「アルテハイムに関する情報はないんでしょうか?」
「問題はそちらだな。2ヶ月前、内偵に数名アルテハイムに送ったのだが、音信不通となった。おそらく、殺されたと判断していいだろう。何かが起こっているのは間違いない」
アルテハイムで、何かを画策しているということか。スフィアートとビルブレムでの敗北、情報はアルテハイム側の邪族にも伝わっているはずだ。どう行動してくるだろうか?予定調和のスキルで、私が考える手段もあるけど危険過ぎる。ビルブレムですら、あんな大衆演劇のような違和感を感じた。幸い、良い方向に転換したから良かったけどね。私の思い方次第で、周りに悪影響を与える可能性が非常に高い。あくまで、予定調和は最終手段として考えよう。
「師匠、王都の遺跡調査が終わったら、レーデンブルクに行くんですよね」
「ええ、そうよ。スフィアのメッセージの内容次第で変更する可能性もあるけど、余程のことがない限りはレーデンブルクよ」
「アルテハイムの事は気になりますけど、まずはお父様やお母様、家族のみんなを安心させます」
「私からも、フィン王女の事を伝えておこう。女神スフィア様に何があったのか、サーシャがスフィアタリアの新たな女神様となったという事も含めてな」
「やはり言いますか」
「シルフィーユの王に伝えているのだから、レーデンブルクの王や王妃にも言わないとまずいだろう。それに、レーデンブルクとアルテハイムはシルフィーユとテルミア王国同様、女神スフィアを大きく崇拝している。聖女とまではいかないが、巫女様が女神スフィアの神託を聞く立場にある。その神託が途絶えていることは、王達もスフィア様に何かがあったということを把握している。前もって、私から全容を言っておくよ。おそらく、王宮に到着した時点で、フィン王女の救出者という形で最高級のおもてなしを受けるだろうな。サーシャも、自分がこの世界の女神になった事を強く自覚した方がいい。普通なら、私のこの話し方の時点で不敬なのだぞ」
アルテハイムには伝えないか。まあ、妥当な判断ね。----女神ということをを自覚しろか。
「そうですね。昨日なったばかりなんで、全く実感は湧きませんが、サリアを討伐した後は、私が引き継ぎますからね。女神である事を強く自覚しておきます。でも、こうやって知り合いだけで話すときは、話し方は今のままでいいですよ」
「あはは、わかった」
これで大体話し終わったかな。
あ、そうそう王都の遺跡にあるスフィアのメッセージか。
「皇帝、王都の中にある遺跡にスフィアのメッセージがありますので、私達は王都に行きます。その際、転移でお連れしましょうか?」
「なに、そうして貰えるとありがたい。転移は、何人可能なのだ?」
「私の場合、何人でも大丈夫です。騎士団も一緒に連れて行きましょうか?」
「それは助かる。飛竜を呼ぶ手間が省ける」
せっかくだし、みんなで転移すればいいわね。
「王都への出発は、いつ頃ですか?」
「ここビルブレムにもスオウの協力者がいて、現在事情聴取中だ。おそらく、2日後だな」
「わかりました。その間に、この学園の料理人達に中華料理を教えておきましょう」
「サーシャ様、本当ですか!ありがとうございます!」
「ううむ、仕方あるまい」
「学園長、急ですけど明日は大丈夫ですか?」
「大丈夫ですとも!明日は休日ですから学生も殆どいません。丁度良いです!そうだ、サーシャ様、これが終わったら食堂に行きましょう。設備を見てもらわないといけません」
なんでハイテンションなの?温泉効果?中華料理効果?
学園長が大喜びしている。そして、学園長だけが私をサーシャ様と呼んでいる。まあいいか。
○○○
学園長を見ると、肌のツヤが良くなり活力を取り戻したかのようにキビキビと動いている。そこまで中華料理を気に入ったのね。そして、食堂に到着したわけだが、学生達と料理人達が何やら揉めていた。
「お前達、どうしたんだ?」
「あ、学園長、学生達が昼食を食べ損ねたらしく、何か作ってくれないかと言ってきたんですよ。明日は学園自体が休みという事もあって、材料が殆ど残っていないんです」
ふーん、学生達を見ると、かなりお腹を空かしているわね。中華料理は材料もないから無理だし、あり合わせで作るしかないわね。
「すいません、サーシャといいます。今残っている材料を教えてくれませんか?」
「ああ、それは構わないが、------ぐらいしかない」
残っている材料が少な過ぎる。明日、休日という事もあって、新たな食材が入荷するからか。うーん、これならあれが出来るか。喜ぶかな?まあ、ないよりマシでしょ!
「これならオムライスが作れますよ」
「オムライス?なんだね、それは?」
「実際に作りましょう。すぐに出来ます」
必要な材料を炒め、そこにライスを加える。ケチャップで味付けを行い、優しく卵で包む。あ、5人前作ってしまった。
「はい、完成です。あなた達、お昼まだなんでしょう?これ食べなさい」
3人の学生は、なぜかプルプル震えていた。
「「「サーシャ様、ありがとうございます。まさか手料理を食べれるとは思いませんでした!!!」」」
なんで学生もサーシャ様なの?年近いよね?
「「「美味い!」」」
うーん、絶賛してくれてるし気にしないでおこう。
「あと2つどうしよう?料理人の方々、食べてみますか?」
「「「ああ、頂くよ。------美味い!」」」
一気に食べてるよ。オムライスは美味しいとは思うけど、ガッツク程ではないんだけど。
あれ?フィンやイリス、学園長がじっと私を見ている。
「あとは、料理人の方々に任せますね。これがレシピです」
「お姉様、作ってくれないんですか!」
「師匠、食べたいです」
「ダメ!さっき中華料理を食べたでしょ。それとも太りたいの?」
「「う!」」
あれ学園長は?
食べ終わった料理人達と話し合ってるよ。ていうか食べ終わるの早いよ!きっと明日の話をしているのね。料理人達の顔がどんどん明るくなってきてるもの。
翌日、これまで作った中華料理を全部料理人に教えた。私の話を真剣に聞いていた料理人達が練習も兼ねて、夕食は中華料理の試食会が開催された。どういうわけか、昨日の3人の学生達もいた。そして当然の如く、食事の時間は戦争となりました。
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