冤罪で殺された悪役令嬢は精霊となって自分の姪を守護します 〜今更謝罪されても手遅れですわ〜

犬社護

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第一章 姪との出会い

5話 姪チェルシーの目的

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チェルシーの父……つまり《ロイドお兄様》以外が、十八年前に死んでいる?
落ち着いて…落ち着くのよ。
気取られないよう、チェルシーから続きを聞きましょう。

「何故? まさか誰かに殺されたの?」

チェルシーは俯きながら、何かを思い出すかのうように両手で握り拳を作ります。

「違うよ…事故で死んだの。当時、父も祖父も祖母も外交で隣国へ行っていた。三人共一緒に行動していて、叔母さまが治安部隊に拘束されたって話を手紙で知った途端、仕事を早急に切り上げて叔母様のいる王都へ向かったけど、国境近くの峠付近で事故にあったの。魔物が茂みから急に飛び出してきたせいで、馬が暴れてしまい、崖へ転落、生存者は父のみだった」

人ではなく魔物に襲われての転落であれば、事故というのも頷けますが、本当に…事故なの? 

「チェルシー…三人の名前はわかる?」

私は表情をきちんと保てているのでしょうか?
心の中には、嵐が吹き荒れている。

「え、そりゃあわかるけど…」

一瞬戸惑ったものの、彼女の口から語られた名前は、紛れもなく私の知るお父様、お母様、お兄様の名でした。

間違いありませんわ……チェルシーは私の姪ですわ。

私が投獄されて以降、家族が何故面会へ訪れなかったのか、その理由がわかりましたわ。まさか既に死んでいただなんて……アルもグレースも私の精神面を気にして、それを言わなかったのね。

《私のせいだわ》

私が犯人に嵌められたせいで、父と母を事故で死なせてしまった。あまりに唐突に言われたこともあって、両親を失った悲しみよりも、犯人に対する殺意と怒り、憎悪が膨れ上がってきますわ!! チェルシーもいるのだから、まだこの怒りを抑えないといけません。話の続きを聞きましょう。

「それで…その後、どうなったのですか?」

「冒険者たちが崖の下で倒れていた三人を発見して、そのまま隣接しているカーディナル王国オースコット領の冒険者ギルドへと運び込まれた。残骸と化した荷馬車に身分を証明する物があったことで身元もすぐに証明され、オースコット家が三人を引き取り、領都の邸へ運び込んだのだけど、祖父と祖母は既に亡くなっていて遺体の損傷も激しかったから、すぐ火葬され墓地へと埋葬された。父だけは昏睡状態だったこともあり、発見時に応急処置が施されたこともあって、一命をとりとめることができたの」

深い崖下へ落下したのだから、無理もありませんわ。
死ななかった事自体が奇跡だわ。

そこからチェルシーの話を深く聞いたことで、私はお兄様に起きた事象に胸を痛めました。昏睡状態のお兄様が目覚めたのは事故から一年後、怪我から完治した彼はオースコット男爵から、家族の身に何が起きたのかを嘘偽りなく聞いたことで、深い絶望に覆われたそうです。ルーテシア(私)の怨霊が王都の国民に多大な迷惑を掛けたことで、フォンテンス家という家名が貴族から抹消され、お兄様は知らぬ間に平民となり、仲睦まじかった婚約者の女性とも強制的に婚約解消されてしまい、経営していた領地も国へと返還され、屋敷も取り壊され、全てを失ってしまった。

一ヶ月程は憔悴していたけど、彼はオースコット男爵の一人娘アルテイシア様に励まされたこともあって、自分の心を取り戻し、命の恩人でもあるオースコット男爵に報いるため、誠心誠意を持って領地経営を学び実践し、四年後アルテイシア様と結婚、翌年チェルシーが生まれて、今では爵位を受け継ぎ、オースコット男爵として国に忠誠を誓っている。また、彼は秘密裏に、私の犯罪が冤罪であることを証明するため動いているという。その強い意志は、娘のチェルシーにも宿っているようで、私に話を聞くため秘密裏に国王陛下から許可を貰い、見張り番のザイルと共にここへ来た。

「しまった!! この話は他人に話しちゃいけないんだよ!! ルーテは浮遊霊だからいいけど、ザイルさんが……あ、まだ気絶してる。よかった~~~」

確かに、その話を他者に話してはいけませんわ。お兄様のことだから、上手く隠してチェルシーを学園に行かせているはず。

「私も、他者に話さないことを誓いましょう。勿論、今後出会う幽霊たちにも言いませんわ」

それを聞いて彼女も安心したのか、続きを話してくれました。

「ありがとう、ルーテ。私の目的は父と同じで、ルーテシア叔母さまの無実を証明すること。許可を下さった現国王アルザック様とグレース王妃様も、私の味方だから心強いんだ。でも、国の頂点でもある二人だからこそ、その思いは表に出せないけどね」

アルが現国王!?
グレースが王妃!!

十八年も経過しているのなら、王位を継承してもおかしくありません。しかし、私にとっては死んでから現在までが数日程度の感覚……状況に追いつけませんわ。

「アル…ザック様が国王陛下…それなら今の王子は?」
あ、おかしな事を言ってしまったわ。

「へ? 今の王子? ………あ~~~~~しまった~~~~~」
チェルシーが突然叫び声を挙げましたが、どうしたのでしょう?

「どうしたの?」
「今日は、私のクラスメイトでもあるラルカーク第一王子十三歳の誕生日なんだよ!! 誕生日パーティーが王城の《翡翠の間》で開催されるから、私も参加ついでにと思って、ダメ元でここの見学申請を提出したら、すぐに受理されたこともあって、パーティー前に来たの!! え~と現在時刻は…」

第一王子の名はラルカーク。

せっかくなので私も、そのパーティーに無断参加させてもらいましょう。幽霊に招待状なんて必要ありませんから、どこへでも侵入できます。ただ、二人が私を視認できたように、その他大勢にも認識される可能性が大いにありますわね。チェルシー以外には絶対に見られたくありませんから、その点だけは注意が必要です。

「やば!! あと三十分で始まるよ!! 急いで地上にいるクリスティーと合流して、ドレスに着替えて翡翠の間へ行かないと!!」

せっかく姪と会えましたのに、すぐにお別れとは……残念ですが仕方ありませんわね。でも、彼女がここにいるのなら、お兄様もパーティーに参加しているかもしれません。ただ、ここを出る前にやるべき事がありますわ。

「チェルシー、色々とありがとう。私はもう少しここを探索してから、翡翠の間へ行くわ。それと……今は幽霊としての力を上手く扱えないけど、訓練すればあなたにとって心強い戦力になるわ」

その言葉が何を意味しているのか、チェルシーもすぐに理解し、驚いた表情を浮かべます。

「こちらこそ、ありがとう。何故かわからないけど、ルーテからは家族と話しているかのような温かさを感じたの。それじゃあ、急ぐから!!」

チェルシーは、大慌てで来た道を引き返しました。
周囲には気絶している男性以外、誰もおりませんわね。

そう思った途端、チェルシーの言葉が頭に蘇ってきます。
お父様とお母様が……私のせいで死んでしまった。

「お父様…お母様…申し訳ありません…不甲斐ない私のせいで……お二人を死なせてしまった。不出来な娘で申し訳ありません」

涙が…涙が…止まりませんわ。
面会に訪れなかった理由が…既に事故で死んでいただなんて。
私のせいだ…私のせいだ…私のせいだ…私が事件に巻き込まれなければ…死ぬのは私一人だけで十分なのに!!

あいつが、あいつが~~~~~~!!
心の怒りが抑えきれない!!
犯人への憎悪が煮えたぎっていく!!

「どうして!! どうして、私たち家族がこんな目に遭わなければならないの!! 許さない、絶対に許さないわよ!! 必ず捕まえてやる!! 私たち家族を絶望に陥れた犯人を必ず捕まえてやる~~~~~~~」

私の怒りと悲しみに満ちた怨嗟の絶叫が地下区画に木霊する。
私は誓う!!
必ず犯人を突き止め、地獄に叩き落としてやるわ!!
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