冤罪で殺された悪役令嬢は精霊となって自分の姪を守護します 〜今更謝罪されても手遅れですわ〜

犬社護

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第一章 姪との出会い

10話 チェルシーの勇気ある発言 ※チェルシー視点

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何でこんな事になったのだろう?

ルーテが近くにいるのか全然わからないけど、男爵令嬢の私は今からとんでもないことを口にしなければならない。ルーテの言った言葉を宣言した時点で、私は厄介事に巻き込まれてしまう。ラルカークに挫折を所望したけど、まさかそれに巻き込まれるなんて夢にも思わなかった。ただ、悲嘆に暮れた彼をこのまま放置させたくないという思いも、私の中にある。陛下や王妃様も、召喚魔術陣に対して何の疑いも持っていないようだから、このまま放っておけば、ラルカークの立場は危ういものになってしまうし、彼自身も壊れてしまうかもしれない。

……覚悟を決めなきゃ!!

「ルーテ、私がその改竄場所を指摘すればいいんだよね? 何故わかったのかと問われたら、さっきの言い分で納得してくれるんだよね?」

「ええ、専門用語を下手に言い過ぎると、更なる追求を受けてしまい、最悪犯人と疑われますから、言動には注意してください」

と仰られても、召喚魔術陣や魔術言語の専門用語なんて知らないから、言いたくても言えません。私は目の前で呆然と陣を見続けるラルカークを無視して、まずは魔術陣を円周上にゆっくりと見渡していく。陣内には幾何学的な紋様が描かれていて、一本一本の線の中に、目に見えない魔術言語が組み込まれている……んだよね? 

通常、魔術陣を解析する場合は、出発点となる箇所から魔力を注入して順番に言語を解析しないといけない。それが一番負荷の掛からない方法なんだけど、欠点として時間を要するということ。短時間で終わらせたい場合は、目に自分の魔力を集中させて、解析を行えばいい。こうすることで、陣内に刻まれた魔術言語が可視化され、どの位置からでも読み解ける・…とルーテは言っていたけど、それって目に負荷がかなり掛かるよね?

【魔力制御】に関しては私も習っているけど、魔力を集積させた箇所はどの部位であっても、通常時よりも負荷が掛かるから、成人していない者がその行為を実行したい場合、必ず大人の引率者が必要とされているわ。私だってやったことはあるけど、保持時間は数分レベル。

召喚から契約までの作業を終えてから五分程しか経過していないのに、ルーテはその力を使って、この規模の魔術陣をそんな短時間で解析したの? 彼女の年齢は私と同じくらいだけど、浮遊霊としてどれだけの間彷徨っていたのだろう? 私との知識量が違い過ぎるよ。とにかく、私は目に魔力を集積させて、限界時間ギリギリまで陣の周囲を歩こう。

ルーテの言う通り、魔力言語らしきものが浮かび上がっているけど、意味が全然わからない。ルーテの言う専門用語の一つ一つの読み方すらわからない。改竄場所は……ここだ!!

「ラルカーク…様、ここおかしくないですか? 回路自体に異常はありませんが、何故か《鳥類》という言葉が入っていますよ?」

私が魔術陣のある一点を指さすと、彼は少しだけ反応してくれた。

「チェルシー、君まで私を侮辱する気か?」
口に出した以上、もう引き下がれない。
こうなったらやれるだけやってやるわ!!

「違います!! 私は、あなたがどれだけ王族として努力してきたのかを知っているわ。入学試験と定期試験の成績も上位だし、魔術の才能だってあることも知っています。ラルカーク様、自分の資質にもっと自信を持ってください!! あなたを信じているからこそ、この結果に納得がいかないのです!! 」

ラルカークはオースコット領へ月に一度訪れ、父に領地経営を請い、隣国の方々との話し合いにも参加し、同盟関係をより強固にしようと必死に努力を続けている。そんな彼の目に、光がない。これまで築き上げてきた王族としての自信が、この結果のせいで大きく崩れ落ちたんだ。まずは、彼の目に光を灯さないといけない。ルーテの言われた通りに、怪しまれずに召喚術について話していこう。

「この召喚術は術者の資質も問われますが、それ以前に召喚される生物は術者の持つ魔力そのものに惹かれる性質があります。でも、《ひよこ》はともかく、《ハシビロコウ》はラルカーク様に全く興味を示していなかった。どちらかというと、《何故私を呼んだ?》と問いかけていたように感じました」

時折、ルーテが私に話しかけてくれるおかげで何とかなっているけど、ここからが難しい。私の言い方で、皆に理解してもらえるといいのだけど大丈夫かな?

「そう言えば……奴も私にそう問いかけてきたな」

よし、ラルカークの目に光が灯ってきたわ!!

「術者に対して何の興味も持っていない者が、召喚されること自体がおかしいのです!!私は魔術言語なんてほとんど知りませんが、これまで召喚されてきた生物の言語程度ならわかります。私なりに異物が紛れ込んでいないか少しだけ見ましたが、この部分の言語がおかしい!! 皆様方も見てください!!」

皆が私の言葉に対し、動揺の色を見せる。王家直属の魔術師が点検した魔術陣に文句を言っているのだから当然だよね。うう、胃が痛いよ~~五人の魔術師たちが、急足で陣のもとへやってきて、私の指摘した箇所を解析してる。ルーテ、これで間違いだったら、私は平民落ち決定なんだからね!!

「これは!? 陛下、オースコット令嬢の仰る通り、この部分に《鳥類》という言語が刻まれています!!」

良かった~本当に刻まれていたんだ~。でも、一人の男性魔術師の言葉がキッカケで、周囲が騒然となってきてる。ルーテ曰く、生物を召喚する魔術の中でも、《立志の儀》に使用される魔術陣は、召喚される生物がランダムになるよう、鳥や猫といった生物の固有名称の付いた魔術言語の使用が禁止されている。今回に限り何故かあってはならない言語が刻まれていたことを考慮すると、何者かがラルカークもしくは王家そのものを陥れようと企んでいる可能性が高い。

【つまり、貴族の誰かが反旗を翻そうとしている】

皆それがわかっているからこそ、混乱し騒々しくなっているんだ。陛下や王妃様も魔術師の元へ慌ててやって来て、色々話し合っているけど、第二王子のカイン様と第一王女のベリンダ様は状況に追いついていないのか、少し狼狽えているわ。護衛の騎士たちも万が一を考えて、王族の方々を護るため、周囲を警戒している。肝心のラルカークを見ると、さっきより顔色も良くなっているから私の意図に気づいてくれたのかな?

「チェルシー…その…ありがとう。私は自分の資質を信じきれていなかった」
ラルカークから真剣にお礼を言われたのは、これが初めてかもしれない。
なんか、こそばゆいな。

「べ…別に、あなたのため…」

『陛下、進言しても宜しいでしょうか!!』

私が言葉を発しようとした瞬間、一人の女性が声をあげ、多くの貴族のいる区画から一人堂々と前へ出てきた。犯人またはその関係者がこの中に紛れ込んでいる場合、私の意見に対して何らかの反発を発してくるから注意するようルーテから言われていたけど、まさかこの女性が犯人か関係者なの?

だって、このお方は《ニーナ・エクスランデ公爵夫人》だよ?
貴族位の中でも最高位の位を持つ女性が、犯人とは思えないよ。
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