冤罪で殺された悪役令嬢は精霊となって自分の姪を守護します 〜今更謝罪されても手遅れですわ〜

犬社護

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第一章 姪との出会い

11話 憶測による被弾

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チェルシーの発言に対し、反応を見せたのは《ニーナ・エクスランデ》。

薄い紫色の魅惑的なドレスを纏い、十八年経過したことで貴族としての色香と風格を漂わせ、公爵夫人として相応しい容姿を身につけています。チェルシーから聞きましたが、彼女が《エクスランデ》の姓を名乗っているということは、夫は婿養子としてエクスランデ家に嫁いできたのですね。

「エクスランデ公爵夫人か。今の状況を理解しての発言か?」
アルは若干の威圧と敵意を込めた視線をニーナに向けています。

「はい」
「…進言を許そう」
さて、何を言ってくるのかしら?

「此度の誕生日パーティーでの立志の儀、ラルカーク様にとって大切な儀式が汚されたことは、私も残念に思います。その犯人についてですが、オースコット嬢の自作自演の可能性も考えられます」

呆れますわね。
何の根拠もなく、よくそんな憶測をこの場で言えますわ。グレースもその発言に怒ったのか、前に出ようとしたものの、アルが左手で制します。

『チェルシー、皆のいるこの場でニーナ・エクスランデに許可なく話しかけてはいけませんよ』

チェルシーもこの発言に目を見開き、何か行動を起こそうとしていたので事前に戒めると、彼女は冷静になったのか、軽く頷いてくれました。

「ほう、何を根拠にそんな発言をする?」
アルは突発的に言われた発言でも終始冷静さを保っており、ニーナに詰め寄ります。

「召喚儀式が終了してから十分程しか経過しておりません。この大きさの陣に対して、解析速度が異様に速いのです。また、此度のパーティーには、ラルカーク様の婚約者選定も入っているとお聞きしています。通常であれば、オースコット令嬢は男爵令嬢のため、容易にラルカーク様にお話しできないでしょう。それ故、こういった強引な手段を取ったとも考えられます」

ニーナが何を言いたいのか、察しがつきます。恐らく、先程の二人のやり取りで何らかの強い関係性を持っていると理解したのか、その絆に綻びを入れたいのでしょう。

「なるほど解析速度の速さか、其方の言い分も一理ある。だが、そんな憶測が通用するのなら、其方だけでなくここにいる全員が容疑者となる。特に、ラルカークに近い年齢の令嬢を持つ親たちが該当するな。そうなると、其方も容疑者の一人だ」

さすが、アルですね。今の発言で周囲の貴族たちを動揺させ、ニーナに嫌悪を示すよう差し向けました。

「な!! 証拠もないのに、それはいくらなんでも横暴でございます!! 私共エクスランデ公爵家は、王家に忠誠を誓っております!!」

アルの意見に対して、ニーナは動揺の色を隠そうともせず、焦ってしまい声を荒げます。彼女の側にはラルカーク様と歳の近い令嬢が一人いて、母親同様かなり狼狽えていますね。彼女の顔は、若い頃のニーナによく似ていますが、チェルシーに対して敵意を持っていないようです。

「それならば、何故其方は証拠もないのに、そんな憶測を言うのだ?」
「そ…それは…申し訳ございません。浅はかなことを言いましたわ。深くお詫び致します」
ニーナが深くお辞儀する。
現状、彼女が犯人なのかは微妙なところですわね。

「只今を持ってラルカークの誕生日パーティーを終了とする。そして、この場で召喚魔術陣の調査を執り行う!! 調査が終了するまでパーティー参加者全員を翡翠の間から出ることを禁ずる!! 恐らく、一時間ほどで終了するだろうから、それまでは料理を堪能し歓談しているといいだろう」

アルはそう宣言すると、再び魔法陣の方へと歩き出します。私はニーナの言動が気になっていたので、終始彼女の顔色を窺っていたのですが、皆が陛下の方へ視線を向けた瞬間、ニーナはほんの少しですが卑しい笑みを浮かべました。

この女、何かを企んでいますわ!!

○○○

あれから何が起きても対処できるよう、私は魔術師たちの動きを注意深く観察しています。チェルシーの方は、ラルカーク様と何やら話し合った後、翡翠の間にいるクリスティーに合流し、そちらでも色々と話し込んでいるようです。時折、私のいる方を見つめていたので、多分私のことを教えているのかもしれませんね。ラルカーク様は、そんなチェルシーをしばらく見つめてから第二王子や第一王女のいる方へ向かいました。

それから五分程経過しましたが、まだ動きもなさそうなので、私がチェルシーのいる場所へ行き、軽く二人に小声で挨拶すると、クリスティーが少し驚き、私に挨拶を返してくれました。どうやら、私の事情を上手く説明してくれたようですね。現在の状況を二人に伝えると…

「ルーテ、私は怪しまれていないよね?」

ニーナの発言により、チェルシーも不安がっているようです。

「大丈夫と言いたいところですが、犯人の目的が不明である以上、絶対とは言い切れません。今のところは魔術師の方々が魔術陣の周囲にいますから改竄されることもありませんが、どうにも嫌な予感が消えませんね。今後も、私は陣の近くで見張っています。二人は翡翠の間から出ないように」

「わかった、気を付けてね」
「ルーテ、気をつけて」

周囲を見た限り、怪しい動きをしている者はいないようです。それならば、私は陣の置かれている場所へ戻り、見張りを継続させましょう。魔術陣の解析が終了すれば再起動を試みるはず、そこで異常がなければとりあえず皆も解放されると思いますが、あのニーナの不気味な笑みを考えると、そこで何かが起きてもおかしくありません。

現在、王家直属の証となる緋色のローブを身につけた五人の魔術師が陣の周囲を歩いています。そもそも改竄された事象自体が、陣の管理を勤める魔術師たちの失態なのです。ここから名誉を挽回させるには、今ここで犯人に繋がる証拠を見つけ出さないといけないでしょう。失敗すれば、全員クビとなる可能性が高いこともあり、五人全員が必死に調査しているようですが、彼らの顔色を窺うと状況はあまり芳しくないようです。

「よし、一度陣を発動させよう。ジェイク、ラルカーク様のいた出発点となる場所から魔力をゆっくりと丁寧に流せ」

緋色のローブの胸元付近に銀星のバッジを付けた四十歳程の男性、この方が隊長のようですね。彼は、私のすぐ近くにいた茶髪で二十五歳くらいの男性に声をかけました。

「は、はい!!」

ジェイクと呼ばれた男性、王家直属の魔術師部隊に配属されてから日が浅いのか、身体が強張っているようです。すぐに所定の位置につき、膝まづいた状態で右手を出発点となる場所に触れ、言われた通り魔力を少しずつ陣内に流し込みます。

「全員、陣の周囲に散れ!! 一人一人等間隔となって、改竄した痕跡を何としてでも見つけ出すんだ!!」
「「「「了解!!」」」」

隊長を含めた四人の魔術師が四方に散り、陣内を注視します。魔力が少しずつ注入されていき、改竄された場所に到達した瞬間、それは起こりました。出発点にいるジェイク以外の四人の視線が改竄場所へ向いた時、死角となる位置に異物が……
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