記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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21話 王族セリーナとの出会い

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ハティスがセリーナ様とロイドさんを連れて、こっちに来ている。

「お疲れ様。早かったね」

ハティスはいつもの調子だから、セリーナ様に可愛がられただけかな。

「ハティスは、遊んでもらっていたの?」
「違う。ロイドとセリーナから、悪霊とあの奇妙な気配のことで質問されていたんだ」

セリーナ様やロイドさんもスキル[霊視]を持っていて、悪霊と漆黒の者の醸し出す気配に気付いていたんだ。

「初めまして、私はセリーナ・ユーゴニック、この国の第一王女よ」

これって、カーテシーっていう礼儀作法だ。
一つ一つの所作が、すっごく綺麗。

「初めまして、ユイと言います。もしかして、病院の受付での件ですか?」

「ええ、一応私はこの病院に潜むゴーストたちのボスなの。仲間のゴーストたちが少し前に私のもとへやって来て、『獄中で死んだレイナのストーカーが悪霊化していて、彼女に憑いている』って教えてくれたのよ」

ゴーストのボスって…どんな経緯でそうなったのか気になる。

「私とロイド様が慌てて別館から本館の受付へ向かっていると、急に奇妙な気配が出現したと思ったら、とんでもない叫び声が聞こえて、それが人ではなく、ゴーストのものだと感覚的にわかった。現地に到着したら、皆が何事もなかったかのように行動しているし、レイナ自身もあの悪霊に憑かれている事に気づいていなかった」

私が受付で起きた出来事を明かすと、2人は険しい顔になる。

「あのストーカー、捕縛されて牢獄に収監され死んだと聞かされてたいたけど、まさか悪霊化して、レイナに憑いていたなんてね。ユイは緊急処置として対処したのだから、何のお咎めもないわ。そうでしょ、ロイド様?」

「ええ、ユイには何の罪もありません。奴が討伐されたことで、今はゴーストたちも落ち着きを取り戻しつつあります。後程私から、ゴーストたちやレイナに詳細を伝えておきましょう」

「お願いします。ユイ、リオン、今から私の入院している部屋へ行きましょう。ストーカーや私の事情に関しては、歩きながらでも話すわ。ハティスだけは、ここでお留守番ね」

「いいよ。あそこで見ているゴーストたちとお友達になってから、今の件を話しておくよ」

従魔用スペースの端っこに、3体のゴーストがこっちを観察している。ハティスが詳しく何が起きたのかを伝えてくれるだろうから、もう心配なさそう。

○○○

セリーナ様は歩きながら、レイナさんについて説明してくれた。彼女は、3ヶ月前からストーカー被害に遭っていて、身の危険を感じたことから周囲と相談し、ランクA女性冒険者の護衛を雇うことにした。2ヶ月間、平和な日々が続いていたけど、ストーカーは不満を募らせていたのか、1人になった僅かな隙を突いて、自分の物にならない彼女を刺し殺そうと暴走する。護衛がその気配を逸早く察知できたことで、男は彼女の目の前で捕縛されたけど、罪を償うことなく牢屋内で死んでしまう。

後味の悪い解決となってしまったけど、レイナさんは体調を回復させるため、2週間休職することになり、今日が復帰日。彼女は悪霊に憑かれ顔色を悪くしていたけど、受付業務をきちんとこなしていたから、そこまで体調も悪化していないと思う。それに、私が悪霊を討伐したから、ここから回復させればいいんだよ。

次は、セリーナ様の話だね。

「私は8歳の頃から、ガイア・シック症候群を患っているわ。現在療養のため、リリザハットのアカシエル病院の1室に入院しています。この病気の進行を少しでも食い止める為、1日の大半を幽体離脱し生き霊となって過ごしているのよ。もう5年、この生活を続けているわね」

5年間、殆どの時間を生き霊状態って…。

「この延命治療の影響で、魔力量だけが高くなっていき、身体が貧弱になっていった。このままでは長く生きられないと思い、ロイドさんや護衛たちに頼んで鍛えてもらい、訓練を重ねていくうちに強くなっていき、今では街中に存在する全てのゴーストたちのボスに君臨しているってわけ」

なんか、投げやりな言い方だ。
無理ないかも。

王族だから、本来なら国に携わる教育を受けて、色々な貴族と交流を図っているはずだもん。

「リオンは私と歳の近い霊視持ちだから、時折話し相手になってもらっているの」

そういうことか。霊視持ちなら、互いの気持ちをわかり合えるもんね。

「貴方さえ良ければ、私の話し相手…そのお友だちになってくれないかしら?」
「はい、喜んで!」

私も記憶喪失のせいで、歳の近いお友だちがいないから、願ったり叶ったりだよ。

「ありがとう」
「ところで今更なんですけど、ガイア・シック症候群って何ですか?」
「ユイ、知らないで、セリーナ様の話を聞いていたのかよ!」

私の言葉に驚くリオンに対して、ロイド様とセリーナ様は優しく笑い、ロイドさんがこの病気について詳しく語ってくれた。

ガイア・シック症候群、今から58年前のガイア・シックという男性が発見したことから、その病名が付けられた。設定されている器(最大魔力量)以上の魔力が延々と体内から湧き出て蓄積されていくことで、身体に様々な悪影響を及ぼし、最悪の場合は身体が爆発し、死に至る。これまでの研究成果で、症状を軽減させる最も有効な対策が、スキル[幽体離脱]と判明していて、魂が本体から離れれば離れるほど、魔力消費も大きくなる。

この病気は100万人に1人発症すると言われ、発症者数が非常に少ないこともあって、研究の進捗速度も芳しくないため、治療薬は開発されていない。これまで回復魔法や完全治癒薬と言われているエリクサーで試されているけど、症状の改善は認められたものの、すぐに元に戻ってしまうため、意味を成さない。そうなると、ボーナス特典の身体内に潜むあらゆる害悪を消滅させる[完全治癒]も効かないってことか。

「発症原因もわかっていないんですか?」

「3年前に判明している。本来、スキルや魔法などで魔力を消費した場合、大気中の魔素が体内に入り込み、魔力に変換されて回復していき、器が満タンになると、その取り込みも止まる。彼女の場合、この制御機能に欠陥があるため、器以上の魔力を体内に取り込んでしまう。この発症原因を突き止めた【医療の神童アリステア・エヴァンティーヌ嬢】でも、治療の目処が立っていないのが現状だ」

「医療の神童?」

まだ、習っていない言葉が出てきたので首を傾げると、リオンが詳しく説明してくれた。

「アリステア様は13歳、これまでに大病とされる3つの病気の治療薬を開発しただけでなく、国内の衛生環境を劇的に改善させ、伝染病などの発生率を大きく減少させたんだ。9歳から医療研究を始めて、たった4年でそこまでの実績を叩き出したから神童と呼ばれているのさ」

「すごいね、そんな女の子がいるんだ」

「神童って呼ばれている女の子は、この国に3人いる。《医療》《魔道具》《戦闘》、それぞれに特化していて、年齢は11~13歳」

ほえ~~~、三人とも私たちと同じくらいだ。 

「そのアリステア・エヴァンティーヌ侯爵令嬢は、スキル[霊視]を所持していて、現在護衛のルシウスと共に、セリーナ様の病室にいる」

「え!?」「え、彼女も来ているんですか!?」

ロイドさんの言葉に、私たちは驚く。

「元々、セリーナ様は王都の病院にいたが、アリステア嬢の根拠ある仮説で、ここへ転院させた」

アリステア様の言った仮説、それは【病気の性質上、魔素濃度が薄ければ薄い程、心身の負担が軽くなる】というもの。

国内の街の中でも、ここはネルヘン樹海の影響で、魔素濃度が最も低い。セリーナ様は1年前にこの街へ転院し、仮説についてもこの1年で証明され、身体への負担も軽くなっており、アリステア様は月に1回この街に訪れ、セリーナ様の容態を確認し、病気に関わる情報を医者たちと共有している。

聞けば聞くほど、アリステア様って凄いね。
神童と呼ばれる理由も、理解できるよ。
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