悩める文官のひとりごと

きりか

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悩める文官のひとりごと

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まずい……


非常にまずい…。


なんでこういう状況になったのか………。


人間って、命の危機に陥ると、

助かる方法を導き出す為に、高速で脳内バンクが開くというが、頭の中のどのデータをひらいても、何も出てこない。

疑問符しか出てこない……。??


目の前には、羨ましくなる程の鍛えた身体と、輝くブロンドに、淡いブルーの瞳の持ち主、

アシュリー王国の第一騎士団イザーク・ケリー団長が、甘い雰囲気を醸し出している……。


なんでこうなった??!




僕は、リュカ・マルタン 

小さい頃から騎士団に憧れていて、騎士団に入るために、

体を鍛えようと、少し走っただけで息切れがし、

模造剣を振れば、すっ転び…。むぐぐ。

上背があれば、どうにかなるかも…と、頑張ってミルクを飲んでも背は伸びず………。あれ?

いやいや、身長のほうは、まだ18才、成人したばかりだから…。

まだ伸びるハズ!!

きっと………たぶん…。希望として…伸びて欲しい!


学園での卒業が近くなり、

騎士団で、文官の書記官を募集してると聞き、憧れていた騎士団!これは、「応募しろっ」っと、神様の思し召しかも?


さっそく、申込みをして、奇跡的に、面接まで漕ぎ着け、

これまた、神頼みが幸を得たのか、無事にこの春、学園を卒業と同時に勤めはじめて、はや3ヶ月……。

憧れの騎士団に入れても

やはり文官、しかも、下っ端の書記官。

団長や、副団長みたいにきらびやかな面々を遠目に眺め、決済のサインを頂きに各部所を迷いながら、ウロウロする日々。

ぬぬっ……、決して、迷子には、なってないぞっ!


迷いながら、騎士の練習風景を眺めながら次の部所に移動しているのだが、(えっ?3ヶ月いるのに迷うのかって?そ、それは、建物が中庭をグルっと丸く包んでるつくりだし、同じような部屋に、同じ作りの扉だからだよ?だ、だからかな?)


それにしても、騎士団の方々って、相変わらず、逞しいイケメンぞろい……

なかには、なんちゃってイケメンも混ざってるっぽいが?

いやいや、騎士になれなかったからって、僻んでなんか決して……ゲフンゲフン。


騎士団って、庶民から貴族まで、幅広く人気があり、

公開練習のさいは、婦女子の華やかな声援(まれに、野太い声も聞こえるが、そこはあえてスルーでお願い)に包まれるのだが、

ひときわ声援(しつこいようだが、男女の声援だよ?)があがるのが、騎士団長のイザーク様、

そして、緋色の髪と深紅の瞳の持ち主、

アルマン・マルーン副団長様!!

同じ男として、こうありたいって理想の方なんだっ!

このおふた方が揃うと、すごいのなんの!

イザーク様は、スリムな筋肉の付き方だが、アルマン様は ゴツイ!  か~、カッコイイ。

僕も、アルマン様みたいに、ゴツくなりたいなあ~って思う。

えっ?無理だって?

い、いいだろ!目標は、高くもったって!


コホン、さて、僕の所属は、第3書記室なんだ

直属上司である、

ハリー・ペロンさんは、僕と同じ男爵家だけど、

ハリーさんちは、お兄さんが公爵家に婿入りしたっていうのに、気取りがなく、本当に優しくて…。

新人にとって、恵まれた職場って、大事だよね?うん。

日々、楽しく過ごさしてもらってます。


ハリーさんは、僕が、アルマン様の大ファンだって知っているらしく、 

「副団長の決済をいただかないといけないんだけど~~、困ったな~!忙しくて行けないなあ~、誰か代わりに行ってくれたらな~~-?」

チラチラって、こちらを見ながら聞こえるようにパスを投げてくれた!

ここに天使がいる~~!

ありがたや~。わざわざこの仕事を廻してくれたのだから……。

が、がんばりますぅ~~!

と、思ったものの、やはり迷ってます。

たぶん、迷ってます……きっと迷ってます。



さんざん迷いつつ、辿り着きましたよ~!

そこのアナタ!やっとかだって?

違うもん~~☆


重厚感溢れる扉!ここで間違いないっ!


コンコンコン、「第3書記室、リュカ・マルタンです!サインを頂きにまいりました!」

あれ?


ゴンっ!


あれ?なんだか室内で、物が落ちた音が?どしたのかな??

「失礼いたしま~す。」


しまった!ここは、副団長室でなく、団長の部屋だった~~~!!!

方向音痴な僕のバカ~!!!


机に突っ伏した団長の周りには、書類やら、物が散乱状態!

「だ、団長、ケリー団長!大丈夫ですかっ?!誰かっ~!」


駆け寄る僕の腕を掴み(さすがは騎士、掴まれたら痛い)

虚ろな視線を投げかけてきたと思ったら、

ん?いきなり目に輝きを取り戻し、ターゲットロックオン!

って、なぜに僕を見つめる?

「君、確か以前会ったね。たしか、第3書記室の……」や、ヤバイ……なぜか、団長の瞳が、キラキラモード?

「はい…リュカ・マルタンです。」

「リュカと呼んでも?」

うわ~い、やたらと、イケメンオーラ垂れ流しで、甘いなにかを出しまくっているが、残念なことに、ここには僕しかいない!

ぎゃ~!眩しい~~~!

目が~~~!!


まずい……非常にまずい。

だめだ、脳内バンクが、開かない……

よし、ここは、リセットして、

オープニングに戻って……って、ダメダメじゃん、僕って!



凄い足音が聞こえてきたと思うと、扉が壊れる勢いで開き、

深紅のアルマン様が現れた……。

か、カッコイイ~!


「イザーク……、お前。あちゃ~~、間に合わなかったか………。」

ため息をつく姿もカッコよすぎな、

憧れのアルマン様に、見惚れてしまった僕の背後から、やたらと冷気が………。

あれ?室内の温度が下がったような?


振り向くと、イザーク様~!どうしたんですか?背後から冷気がでてますっ!!

ここは、戦場ですかっ?


イザーク様が、地獄から響くような声で、「アルマン…邪魔をするなっ!」

「イザーク、そこの新人書記君が怖がっているから、そんな顔はやめろ。」

そうです、怖すぎてチビリそうです……。 チビッてないけど。 「ちっ。」

えっ?今、団長が舌打ちしたような?

怖いので帰っていいですか?

あっ、ダメそうですね。


「あ、あの…、マルーン副団長、決済のサインが洩れておりましたので、お願いにまいりました…。」

イザーク様と、アルマン様の間に挟まれ、死に絶えそうな精神を奮い立たせた僕って凄くないですかっ!?


「可愛い~♡リュカのお願いだからなっ、アルマンなんかでなく、俺のサインのほうがいいに決まってるだろう?

そうだろう、リュカ♡ なんだったら、今すぐに婚姻届にもサインをしよう♡♡」

えっ?確かに、我が国では、同性でも婚姻できますが、高位の貴族だと、跡継ぎ問題があるから、同性婚は、忌避されがちだし。

イザーク様も、アルマン様も、何代か遡ったら、王族の血が流れてる、高位の公爵家。 

アルマン様は、次男だけど、イザーク様は、跡取りのハズ?

って、何を考えてる~!

僕のバカバカ!!


「あ~~、なんだな。新人君、イザークは、悪いもの食べてな…。

いまは、マトモでない状態だから、このことは内密にな…。」

アルマン様~?それって?食あたりですかっ?


「オイっ、アルマン、俺は、マトモだが? 

ただ、リュカとの記念すべき出会いを満喫しようとしてるが。

それを、お前が邪魔してるだけだが?」


お願いです、こんな状態のイザーク様と二人っきりにしないでください!

ムリムリ。


「さる御方が、手作りのお菓子を俺にくださってな、

まっ、俺は甘いもん苦手だし、

かといって、感想を聞かれたら答えないといけないし?

でな、イザークにやったんだけどさ。

どうも、さる御方は、俺の心を掴みたいからって、惚れ薬を入れていたらしくてさ~~」

アルマン様、イザーク様で、毒味さして……ゲフンゲフン。 

いえいえ、さる御方の貴重な手作りを、イザーク様にお分けしたのですねっ?

ええっ、僕だって、空気くらい読めます。


爽やかな笑顔でもって、恐ろしいことを仰るアルマン様を前に、「その惚れ薬入りお菓子を食べて、たまたま僕が?」


「なかなか鋭いな、新人君、お菓子を食べて、目にしたのがオマエだったんだな。まあ、数日経てば、正気に戻るから、それまで辛抱なっ」

アルマン様に、肩をポンと叩かれ、手加減されてるのに、地味に痛い。

涙目になってしまった僕って軟弱?


「オイッ!! 何、俺のリュカに触れている!」

グイッと、後ろに引っ張られ、ポスンと、イザーク様の胸に強く抱きこまれ…。

く、苦しい……。呼吸がしにくい………。あ、なんだか意識が…。

そう思った瞬間、意識を手放してしまった。



あ~、僕は、なにやら、硬いソファで寝てるみたい…。

ん?


目を開けると、眩いブロンドに、澄んだ淡いブルーの瞳が、心配そうに覗きこんでいた。

硬いソファだと思ったら、なあんだ、イザーク様に横抱きにかかえられていたのかあ~って、オイッ! 

恐れ多くも、我が国が誇れる騎士団団長様でいらっしゃられるぞっ!頭が高い?

「はっ?えっ?も、申し訳ございませんっ」慌てて起き上がろうとしたが、クラクラして、ふたたびイザーク様に抱きこまれてしまう……恥ずかしい!

「愛しいリュカ、すまなかった。アルマンに嫉妬したあまり、そなたをこのようにして…。責任は、我が名に誓ってとる!」

僕の右手を握り、手の甲に唇を落とす姿もイザーク様、カッコよすぎ……。

ただ、残念なのが、手の持ち主が、僕ってとこだけどね。

「えっと、責任ってほどでもないですし、サインをいただけたら…」

「あ~~、コホン。サインなら、イザークがしたぞ。ハリーに渡すように手配したから安心したまえ」

ん?アルマン様の声が後ろから聞こえる……。

ぎゃあ~~!!!この状態を見られた?もしかしなくても、見られた? 

「アルマン、リュカが減る。話しかけるなっ!」

「新人君、悪いけど、しばらくここにいてくんないかな?騎士団の沽券にかかわるからさ~。団長が、この状態だと、マズイからな。」うわ~い、スルーしたよ。

「しばらくって?」

僕とアルマン様の会話を遮るように、

イザーク様が「リュカ、永遠にだよ♡俺とは離れられない運命なんだよ」だって。


アルマン様が、げんなりしたカンジで、

「イザークが正気になるまでの数日だな。幸い、ここは、仮眠室もあるし、浴室もついてる。食事も運ばせよう。着替えも手配しておこう。家のほうには、仕事と、伝えたからな」

そう説明しながら、アルマン様は、扉の前まで来たとこで「イザーク、新人君の家に挨拶してもいないうちに、手を出すなよ。」って、後ろ手を振りながら出ていってしまった……。

ヒドイ、イザーク様と2人だけにしないでくれ~~~!!!


「あのう~~、団長?」


「……リュカが可愛いすぎる……。リュカのご両親にご挨拶したら、すぐにでも陛下の許可をいただき、結婚しよう!

なに、案ずるな、許可なんて、半日、いや、1時間もかからぬ」

いやいや、貴族の婚姻の許可証は、数週間から、数カ月かかるはず……。

「ケリー団長、落ち着いてくださいませ。僕の家は、男爵家ですが、団長のお家は、公爵家。身分も違いすぎますし、なにより、僕は、男なので、跡継ぎ問題も生じます。」

「リュカ、イザークと…。でないと、その愛らしい口を封じなくてはいけなくなる。俺の理性を試したいのか?」

「イザーク様?」

「イザークだ。」やっべぇ、キスされそうだ。

「イザーク様、お互いの家も認めてないのに、家格が上の方には、まだ無理です。申し訳ございません。」

涙目で訴えたのがよかったのか、なんとかなった…セーフ。


そのまま、イザーク様の膝の上で食事をし、急ぎの仕事をイザーク様がイヤイヤされてるうちに入浴を済ませ、

イザーク様に抱きしめられての就寝……。

細く見えていたが、さすがは団長、しっかりと鍛え上げられた筋肉!マズイ、ドキドキしてしまう。

「リュカ、明日にはご両親に挨拶に行くぞ…」

熱の籠もったイザーク様の声を聞きつつ、いつの間にか微睡んでいた。


翌日も、その次の日も、イザーク様の熱は冷めず、熱い視線に絆されつつある自分。

遠くでしか見ることが叶わなかった人の熱を感じ、惹かれていくのが、抑えられなくなってきている。


これは、現実でなく、いつかは醒める夢みたいなもの。


イザーク様は、食べ物の好き嫌いがないとか、子供の頃、ヤンチャ過ぎて、騎士団に入団を決めたとか。


イザーク様が、両親に挨拶に行こうと、しつこく言っても、まずは、お互いを知りたいとお願いしたら、渋々でも許してくれる。


イザーク様の本当の恋人になれたら…。


そんなことを願ってしまう…。叶わない望みなのに…。


ずっと、いつまでも、二人だけでいる訳には許されない。

イザーク様の団の演習のときには、まるで妻のように送り出し、事務仕事のときは、書類の整理のお手伝いをし、一月近く過ごしているが……。

イザーク様が少しでも離れると寂しいなんて重症かも。


明日には、この恋が終わってしまうかも…。


「イザーク様、僕の事が好きですか?」つい、確かめてしまう。

「リュカ、誰よりも愛してる。こんなに愛しいと思う気持ちは、初めてだ。」

僕を抱きしめ、優しく額に唇を寄せてくれる。

明日、同じことを聞いても、同じように返してもらえる保証なんてどこにもない………。

嫌だ…。

「イザーク様、愛してるくれるなら、僕に貴方を刻んで欲しい

…。お願い…。」

その夜、僕は、イザーク様に抱かれた。

後悔はしていない。


次の朝、覚悟はしていたが、

予想と違い、相変わらずイザーク様は、甘い表情で僕を見つめていた。


あれ?


「すまない、あまりにリュカが可愛いことを言うから、我慢できなかった…。」

イザーク様、惚れ薬、そろそろ切れてませんか?


ん?


なんでも、惚れ薬は、とっくに切れていたが、僕への想いが変わらずだったらしい……。


既成事実もできたことだしとばかりに、ご機嫌なイザーク様は、抱きつぶされた僕を抱え、双方の両親に挨拶をしに向かったのだが、我が家は、問題無しなのだが…。

なぜか、公爵家でも、諸手を挙げて喜ばれた…なぜ?

なんでも、イザーク様は、財産目当てで寄ってくる男女(あれ?)にウンザリして、生涯独身を宣言していたらしい。

だから、僕のような平凡を絵にしたようなのでも歓迎してもらえたみたいだ。


そして、予告どおり、1時間で陛下の婚姻の許可証をもぎ取ってきたイザーク様は、凄過ぎる…。


公爵家の別館で、次期公爵で、騎士団団長の肩書きを持つ、凄い方の伴侶として過ごすことになった。


色々と悩んだけど、しばらくは、騎士団の文官を続けていきたいなあ~って思ってる。

イザーク様は、僕を誰にも見せたくないって言うけど、「同じ騎士団に通うのって嬉しいなあ♡」って言えば、アッサリ許可されたよ。

チョロイ?

そんなイザーク様も大好きだけどね。









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