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はじめましておにいさん9
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「まあ、なんだ考えてる間に着いたぞ、俺たちの実家に」
「わぁー綺麗な家、お花もたくさん咲いててキレイ……」
「あぁ、かあちゃん花好きだからな、みずきちゃんがキレイって言ってやれば喜ぶと思うぞ?」
「是非お花のお話してみたいです」
私は興奮気味に言った、お兄さんは車を止めるとドアを開けて外に出て私の座っている方のドアを開けてくれた
「さあ?着きましたよ?お姫様」
お兄さんは手を差し出した、私はクスッと笑ってしまったけど悪い気はしなくて手をお兄さんの方へとのばす、お兄さんは優しく手を握って外へと引っ張り出してくれる、引っ張る力が強過ぎて私は勢いが止まらずにお兄さんの胸にぶつかってしまう
「わぁっ!?ごめんなさいっ!?」
「大丈夫?みずきちゃん、俺ちからが強いんだ、ごめんね?加減が難しくて……」
「兄貴っ!?なにしてるんだ?」
おにいさんが反対側から降りてきてこの状況を見て驚いているようだ
「違うんだ、ふざけてたらこんな事になっちまって」
お兄さんは私を優しく押して体から離してくれる
「違うってなんだよ、わかってるさ、兄貴だからどうせふざけてたんだろうなって事ぐらいわかるよ、でも気を付けてくれよ?おれの好きな女に触るのは最小限にしてくれ」
「すまねぇ、にしてもうちの弟は怖い事言うようになったもんだ、怖い、怖い、気を付けまーす」
私はそんな2人を見ながらクスクスと笑ってしまう
「それにしても、お前そんなに恥ずかしい事さらっと言えるもんだな、俺には無理だわ、俺の好きな女とか絶対言えねぇよ」
「兄貴も本当に好きな人が出来たら言うようになるさ、意識しないでも口から出ちゃうんだよな……」
微笑ましい2人だなぁ……
「おいっ!おまえらー家の前でなに騒いでんだー!」
家の方から声が聞こえてくる
「あっ、親父だ」
お兄さんが言う
「親父、ただいま、連れて帰ってきたぜ、親不孝野郎を」
「おー帰ったかー親不孝者め、お前のせいでなぁ、お母さん倒れちゃったじゃねーかよ、もう勘弁してくれよ」
おにいさんのお父さんだよね?
なかなかに口が悪いけど顔はなんだか嬉しそうだなぁ……
「おっ、そこのかわい子ちゃんは?まさか遂に結婚する気になったのか?」
お兄さんは左右にぶんぶんとクビを振っている
そんなに否定されると少し傷つくなぁ、ありえないけど、ありえないけどさ
「違う、違う!!俺のじゃないよ」
「えっ、俺のじゃねぇって事は……まさか……お前……」
お父さんの顔がみるみる強張っていく
あぁ……ああ……
怒ってる、怒ってるよ……お父さん……どうしよう……
「親父……違うんだって、ちょっと落ち着いて話を聞いてくれ」
おにいさんは身振り手振りでお父さんに話す、お父さんは少し落ち着いたのか強張った顔じゃなくなっていく
「なんだ?言ってみろ?なにが違うんだ?」
「今回の事は本当に申し訳ないと思っています、かあさんに心配かけてしまって……でも!おれの話をちゃんと聞いてからにしてもらえませんか?」
お父さんはふんっ!と息を吐くと私たちの方を見て来いと呟くと家の方へと歩き始めた
「ふぅー危なかったなぁ……うちの親父なかなかに気が短いからなぁ……」
お兄さんが息を吐きながら早口で言う
それにこたえるように、おにいさんも小さな声で話す
「本当、危なかった……外で怒鳴られたりしたら、ご近所さんに筒抜けになっちまうからな……」
そんなに怖いんだ……お父さん……失礼だけど怖そうだったもんな……大丈夫かな?まあでもおにいさん大丈夫だって言ってたし大丈夫だよね、きっと……
「まあ、なんとかなるだろ?さっさと家の中入ろうぜ」
「そうだな、さぁみずきも早く入ろう、おれが守るって言ってるだろ?」
「でっ、でも……迷惑になるんじゃ……」
私は歩くのを躊躇う、そんな私を見ておにいさんは私の後ろに回ると腰のあたりを押して無理に前に歩かせた
「おっ、おにいさん……わかりました、わかりました、1人で歩きます、歩きますからやめてください」
そんなやり取りを見ていたお兄さんはクスクスと笑っている
「もー笑わないでください……」
お兄さんは目を閉じてなにか考えているようだ
「そんなに楽しそうにしてるの奥さんと一緒にいる時には見た事なかったような気がするなぁ」
「そうなんだ、付き合ってた頃から、奥さんとはこうやってイチャイチャした事なんて数える程しかないんだ、奥さんがクールっていうか淡白っていうか、ベタベタするの好きじゃなさそうだからあまりちょっかいかけなかったんだ」
おにいさんはなんだかどこか寂しそうな目をしていた……
そうだよね、なんか微妙な気持ちになるよね……昔の事思い出しちゃうよね……なにもかも話して、なにもかも聞いても昔の楽しかった思い出は消せないもんね……
「はっ、早く行かないとまた怒られちゃいますよ?」
私はおにいさんの手をつかむと引っ張った、おにいさんは難しそうな顔をしていたけどしぶしぶと歩き出した
「あー気が重いなぁ……ったく、お前らのためになんで俺まで……まあ仕方ねぇかかわいい弟と可愛いみずきちゃんの為なら」
お兄さんはそういうと玄関のドアを開けた
「さあ、中に入ろう」
おにいさんと私もお兄さんに続いて家の中へと入る、玄関はとても綺麗で靴箱の上には小さなお花がセンス良く花瓶に飾られている、家の中は白を基調にしているのかとても明るい、こんな家なら帰ってくるのが楽しみになりそうだ
お母さんのセンスがいいのかな?
勝手なイメージがどんどん膨らむ……
色白でとても上品な人なんだろうな、言葉遣いとかも丁寧で……
まるで私とは真逆だ……
「さぁ、上がってくれ、奥がリビングだから、あっ俺はトイレ行ってから行くわ」
お兄さんはそういうと、リビングまで続いている廊下にあるドアを開けると中へと入ってしまった、きっとあそこがトイレなのだろう、お兄さんがいなくなってなんだか緊張感が増したような気がするな、おにいさんは緊張しているのか何も言わない、私の方を見る余裕もないのか下を向いて歩いている、任せろって言っても不安だらけだもんそうなるよね……
でも、私が下手な事言って混乱させても仕方ないしおにいさんに任せよう、いざとなれば私もなにか役に立てるように頑張ろう、ここまで来ちゃったらなるようになるしかないよね!私は前を歩くおにいさんの真横まで早歩きで近付くと耳元で
「大丈夫です、私も役に立てるように頑張りますから」
と囁くと、おにいさんはぎこちない笑顔で頷いてくれたなんだか悪い事してしまったような気がして心苦しくなる、ゆっくり歩いてリビングのドアの前まで歩くと一度おにいさんが立ち止まり大きく息を吸うと思いっきり息を吐いた
「さあ、行こう……おれたちはなにも悪くない、きっと味方になってくれる」
そう言うとおにいさんはドアを開けた、ドアを開けるとダイニングテーブルが目に入る、目線を少し左にずらすと左側に大きいソファがありお父さんはソファに貫禄を漂わせて座っている、背中しか見えてないのに怒っているような感じが伝わってくる、お母さんはいないのかと右の方に目線をうつすがキッチンの方には誰もいなかった、倒れたって言ってたけど大丈夫なのかな?本当に申し訳ない事をしてしまった、謝るだけでは許してもらえなさそうだ……
おにいさんはソファの方へと歩き出す、私も遅れないように後ろに付いて歩く
「親父、紹介させてくれ、今日連れて来たのは奥さんの弟の嫁さんだ」
私は慌てて言う
「お久しぶりです、おにいさんとおねえさんの結婚式でお会いしました、おねえさんの弟の妻のみずきです、今日は急にお邪魔してしまい、申し訳ありません」
私はお父さんの目を見て話し頭を下げる、お父さんは驚いているようだ、きっとおにいさんが浮気相手でも連れて来たのだと思っていたんだろう
「で、今日は嫁さんの弟の嫁なんか連れて来てなんだっていうんだ?警察にお世話になるような事、その弟の嫁としたのか?」
私はゆっくりと顔を上げる、お父さんはおにいさんの顔を睨むように見ている、おにいさんもまっすぐにお父さんの目を見ている
「警察にお世話になった事、ちゃんと話します、みずきさんと2人でコンビニで買い物していた時にみずきさんが見知らぬ男の人に声を掛けられて、しつこくナンパされていたので助けたら、周りの人たちが警察を呼んでくれたみたいで警察の人が来て場を納めてくれたんだ、それで身元引き取り人として親父に電話したんだ」
お父さんの開いた口が塞がらない、そりゃ驚くよね……
「そうか、2人でいた理由はわからないけどお前はその、守ろうとした訳か、それじゃぁ叱れないな、叱れないどころか褒めなきゃいかんな」
「こんな大ごとになるなんて思っていなくてすいませんでした……」
おにいさんは頭を下げている、私も慌てて頭を下げる
「もういいさ、お前は男としてやるべき事をした、偉いじゃないか女を守れるなんていつの間にかもう立派な男になってたんだな」
お父さんは立ち上がるとおにいさんの肩をポンポンと強めに叩いた
「母さんは二階の寝室で横になってる、みずきさんも連れて行ってこい俺はここで待ってるから、母さんにもちゃんと話してこい、一番心配してるのは母さんなんだからな?」
「わかってる、ありがとう親父、行こうみずき」
おにいさんは足早に廊下へと出て行った、私はお父さんに軽く頭を下げておにいさんの後に続いた、廊下に出るとおにいさんはふぅーっと息を吐くと廊下の壁によりかかった
「大丈夫ですか?おにいさん」
「あ、あぁ……すげぇ緊張したよ……でも、とりあえずはわかってもらえてよかった」
「お母さん大丈夫ですかね?」
「まぁ、多分大丈夫だと思う、いつもは体力自慢のかあちゃんだからな、さぁ行こう」
おにいさんは廊下を玄関の方へと戻り、階段を上っていく、二階に着くとすぐ目の前の部屋のドアをおにいさんは優しくノックする
「母さん……おれだよ……入ってもいいかな?」
ドアの向こうからかすかに声が聞こえてくる、おにいさんは聞き取れたようで、部屋のドアを開けて中へと入っていく、おにいさんが私の方を見て身振りで部屋の外で待っていてと伝えて来たのでとりあえず部屋の外で待つ事にした、きっとこれ以上お母さんを驚かせないように気を使ってるんだろう、部屋の中の話し声はなにも聞こえてはこない私は下を向いて大きく息を吐く、なんと言ってお母さんに謝ればいいのか言葉が出てこない……
数分外で待っているとドアが開く音が聞こえて顔を上げると笑顔のおにいさんがいた
「お待たせ、おいで」
おにいさんは手を伸ばして、私の手を掴むと部屋の中へと引っ張り込んだ、パタンとドアの閉まる音が後ろから聞こえて私は目を開けるとベッドの上に座っている女性が目に入った、おにいさんのお母さんだ
「あらあら、お久しぶりねぇ、確か結婚式の時に会ったわよね?」
お母さんが私に話しかけて来た
「あっ、はっ、はい……お久しぶりです、その……すいませんでした!私のせいで……」
お母さんは困っているようだ
「あらあら、謝らないで、みずきさんは怖い思いをしたんだから、そんなに緊張しないで悪いのはうちの子の方ですよ、もっとスマートに助けてあげられればこんな騒ぎになる事なんてなかったのに、本当にお父さんに似てどんくさいんだから……」
「母さん……みずきの前でそんな事言わないでくれよ……おれだって頑張ったんだから……」
「全く……なんでうちの男たちはこんなに頼りないのかしら……ごめんなさいねぇ……ゆっくりしていって私ももう大丈夫だから下でお話でも……」
「母さん、ダメだよ、もっと休んでないと……それにまだ話の続きがあるんだ、聞いてもらいたいんだ」
「わかってるわ、あなたの考えてる事だもの、わかるわ、母親だもの」
お母さんはそう言うと微笑んで私の顔を見て手招きをする、私は手招きされるままにお母さんの隣に座る
「ねぇ?みずきさん……もうあなた達覚悟は出来てるようね?」
私はドキッとして下を向いてしまう
「母さん……それってどうゆう意味なんだ?」
「どうゆう意味もないわよ、あなた達、覚悟を決めたから家に来たのよね、わかるわよ、2人の顔を見れば私だって歳は取ったけど女ですもの、さぁ話しの続きを聞かせてちょうだい?」
なぜかお母さんは嬉しそうな表情だ
「母さんには隠し事は出来ないな、昔からそうだ、隠してるつもりでもすぐにバレちゃうんだ……母親ってすごいんだな」
「ふふっ……母親を甘く見ないでね?」
「本当の事を話すよ、母さんにはもうお見通しみたいだし、おれはみずきの事が好きなんだ、みずきもおれの事好きだって言ってくれた、なんでそうなったかって言うと昨日奥さんの実家に行ったんだ、それでいろいろあって奥さんと弟くんが浮気してる事がわかったんだ、それでみずきに相談されて、それで好きだって気持ちが抑えられなくなってみずきを家から連れ出したんだ、守りたかったんだ辛い事から、もちろんおれも辛かったからおれも助かったんだ、みずきと一緒にいられて心が楽になったんだ、それでおかしな話かもしれないけどしばらくここにいさせて欲しいんです、みずきの実家はとても遠いし、かと言ってあんな家に置いておけないから、身勝手かもしれないけどお願いします」
お母さんは少し驚いたような表情だ、さすがに好き同士まではお見通しだったみたいだけど浮気されただのなんだのは見抜けなかったみたいだ
「えっ?奥さんと弟ってどうゆう事?きょうだいでって事?」
「そうなんだ、きょうだい同士でそういう関係みたいなんだ……」
お母さんは頭を抱えてしまっている
「あなたの奥さん、そんな風には見えなかったけれど……それは本当なの?」
「あぁ、おれもまだ信じられないけど、昨日そう電話で言われたんだ奥さんに……弟くんもその時奥さんと一緒にいたんだ、もう確定だろ?詳しい話はなにも聞いてはいないけどもうおれは離婚するつもりだ」
「そうなのねぇ……あなたの気持ちはわかったわ、みずきさんはどうなの?これから先の事どう考えてるの?」
「私は……旦那の事信じたい気持ちもあります……でも、もう信じる自信がありません……同じ家の中で私の事平気で裏切ってたかもしれないような人の事……おにいさんが支えてくれるなら私、もう一度人生をやり直したいと思ってます」
「みずき……そんな風に想っていてくれたんだな……おれ嬉しいよ、おれは……みずきを支える、みずきもおれを支えてくれるか?」
「はい、こんな頼りない私でよければいつまでもそばに居ておにいさんを支えたいです」
「あらあら、2人ともお暑いわ、方向性が決まったならやるべき事はたくさんありそうね?ふふっ、まずはお父さんにちゃんと報告しなきゃね?」
そう言うとお母さんはベッドから立ち上がりおにいさんの肩を優しくポンポンと叩いた、おにいさんの家の人はみんな肩を叩くのが習わしなのかな?
「さあ?話は早い方がいいわね、下にいるお父さんに話に行きましょう?私も応援するからきっと大丈夫よ」
お母さんは微笑んでいる、さっきまでの緊張感が嘘のように消えていく、母親っていうのはこんなにもすごいものなんだ、自分の息子の事ちゃんと信じて、どうしたいのか聞いて応援出来るって、普通ならあり得ない事だよね?
お母さんは早足で部屋から出て行った、私達も遅れないように跡をついて行く一階に降りた時にトイレから出てくるお兄さんと鉢合わせになった、すごく長い時間に感じたけど実際はそんなに時間は経ってなかったんだと思うと少し体の力が抜けた
「よお、大丈夫か?みずきちゃん」
「大丈夫です、ありがとうございます、お腹大丈夫ですか?」
「あぁ、俺はいつでも大丈夫だ、男だからな」
なにを言っているのかはよくわからなかったけど大丈夫ならよかった、お兄さんは私の手を取って跪く、まるでお姫様の手をとる王子様のようだ
「お姫様にご心配していただき、恐縮です」
そう言うと、そのまま手の甲にキスをされた
「おっ、お兄さん……?!」
私は慌てて手を離そうとするけど、力強くお兄さんに握られて離す事が出来ない
「ははっ、若くて可愛い子をからかうのは楽しいなぁ、ごめん、ごめん」
お兄さんはポンポンと優しく私の頭を叩いた、おにいさんに叩かれてるようでなんだか心地いい
「兄貴……もう……みずきをからかうのはやめてくれよ」
おにいさんは力ない声で言う
「あっ、すまん、すまん、ついなぁ……最近若い可愛い子と絡んでなかったからなぁ……」
お兄さんは遠い目をしている、お兄さんは優しくわたしをおにいさんの方へと押してくれる、押された私はおにいさんの胸の中におさまった
「あっ……あわわ……お母さんがいるのに……」
私は恥ずかしくておにいさんの胸の中で目をぎゅっと閉じた
「まぁまぁ、あなた達みずきさんの虜なのね?でも今はよしなさいよ?全く……これだから男ってのは……」
お母さんの落胆したような声が聞こえてくる、おにいさんは慌てて私から離れていってしまった、もう少し触れ合っていたかったけど仕方ないよね……
「ごめん、母さん……だって兄貴が……」
「見てたからわかってるわよ、そんな事でいちいち反応しちゃうなんて相当みずきさんの事好きなのねぇ、お兄ちゃんも弟にいじわるしないの」
「はい、はい、わかったよ」
お兄さんは手を頭の上でヒラヒラさせながら階段を上っていってしまった、自分の部屋にでも戻ったのかな?
「全くあの子は……いつまで経ってもわんぱくと言うか自由人と言うか……困っちゃうわね、私達親の気持ち考えた事あるのかしらね?」
お母さんはため息をついた
「兄貴も兄貴なりに何か考えてるんじゃないかなぁ?おれには何を考えてるかはさっぱりわからないけど……」
「兄弟ってやっぱり何か通づるモノがあるのかしら?私にはわからないわ」
お母さんはそう言うとリビングのドアを開けて中へと入って行ってしまった、おにいさんと一緒に慌てて後を追いかけてリビングのドアを開けて中へと入った、リビングではお父さんがテーブルの近くでそわそわと歩き回っていた、私達が入ってくるのを見ると慌てた様子でソファーの方へ歩いて行きソファーに座った
「母さん、も、もう大丈夫なのか?」
「えぇ、先程はすみませんでした……気が動転してしまって……すっかり元気になりましたわ」
お母さんはお父さんの隣に座った、お父さんは恥ずかしそうな嬉しそうな表情になる、おにいさんや私の前では恥ずかしいのかな?普段はきっと仲良しなんだろうな……私も将来こどもができて、自立した後は旦那さんと仲良くしたいと思っているからお手本のような夫婦だ、こんな両親に育てられたおにいさん達は幸せ者だなぁ、うちの両親はよく喧嘩していたな、喧嘩はした方がいいとかなんとかテレビではよく見るけどやっぱり喧嘩はしない方がいいのかなーなんて思ったりする
「お父さん、2人からお話しがあるみたいなのよ、聞いてくれるかしら?」
「話し?いいだろう、まぁソファーに2人とも座りなさい」
お父さんが手招きしてくれたので、おにいさんの後に続いてソファーの方へ移動しておにいさんが座ってから、少しだけ離れて隣に座った
「親父、さっき話したのとは違う話しなんだ、さっきより大事な話しなんだ、聞いてほしい」
「さっきよりも大事な話か……まぁゆっくり聞かせてもらうさ」
「ありがとうございます、もう薄々わかってるかもしれないけどおれはみずきの事が好きです、奥さんがいて新婚のくせになにを言ってるかわからないかもしれませんが……」
お父さんは曇った顔になる
「ほう……で2人ともどうするつもりなんだね?みずきさんも旦那さんがおられるでしょう?」
お父さんは私の目をまっすぐに見る
「私は……「親父、おれからおれが話したいんだ」
「ほう、それなら話してもらうか」
「なにがあっても守るって決めたんだ、おれの嫁とみずきの旦那が浮気をしてた、きょうだいで身体を重ねてたんだ、おれは許せないから離婚する、みずきも同じかそれ以上に傷付いている、離婚するつもりでいるこれから大変な事がたくさんあるのはわかってる、それでもおれはみずきといたい、みずきに支えてもらいたいんだ、すべてが終わったらみずきと新しい人生を始めたいんです」
「唐突な話しだ……信じられない……」
「お父さん……?私もねさっき聞いたばかりだからわからないけど、嘘ではないと思うの2人の顔を見ればわかるのよ、辛い思いをしたんだろうなってだから信じてあげてほしいのよ」
「わかった……とても信じられるような事じゃないけど、自分の息子の言う事だ、信じるさ」
「それでしばらくここにおれとみずきをおいておかせてはもらえないかなって、おれはどうにでもなるけどみずきの実家は遠いし、1人するには不安が大きいもちろん住まわせてもらってる間の食費やらなんやらは出すつもりでいるんだ」
「まぁまぁ、いいんじゃないかしら?」
「おいおい、母さん……まぁ少しの間だけだぞ?しばらくしたら2人でどこか住む場所を探せばいいさ」
「ありがとう、親父助かります」
おにいさんが頭を下げるのと同時に私も頭を下げた
「そうねぇ……しばらく一緒に暮らすなら……みずきさんとも仲良くなりたいわねぇ……そうだわ、心細いでしょう本当のお母さんだと思って接してくれていいのよ?だって後々家族になるんですもの!」
「母さん……まぁ言われてみればそうか、気を使ってたんじゃお互い疲れるもんな、本当のお父さんと思って仲良くしてくれみずきさん」
「はいっ!ありがとうございます、すごく嬉しいです……」
私はこみ上げる涙を止める事が出来ずに大きな涙を目からこぼしてしまう
「みずきっ……!?なんで、どうしたの?」
「その、嬉しくて……見ず知らずの私なんかに優しくしてくれて……昨日はもうこんな人生どうなってもいいやって思ってたのに、今はやり直せるやり直そうって思えるようになりました」
「みずき……」
おにいさんは優しく私を抱き寄せる
「おにいさん……」
「ゔぅんっ……」
お父さんが咳払いをする、おにいさんは慌てて私から離れていく
「まったくお前は……親の前だって言うのに……」
「いいじゃないの、それだけみずきさんの事が心配なのよ、素敵じゃない、ねぇあなた?」
お母さんはお父さんにぴったりと寄り添う、お父さんは顔を赤らめて目を泳がせている、照れてるのを誤魔化そうとしているのが見え見えでなんだか可愛らしく見える
「親父も母さんも同じだろ?」
おにいさんは笑いながら私の腰に手を回す、なんだか温かくて安心する、私もついつられて笑ってしまった
お父さんは上ずった声で
「まあ……あれだな……お腹空かないか?」
「そうねぇ……そろそろお昼かしら?そういえば今日は2人で外で食べましょうって話していたんですよねぇ?お父さん?」
「えっ、あっ、そうだったっけか?」
「んもぅ……お父さんってばいつも約束忘れちゃうんだからぁ……さぁ行きましょう?」
そう言うとお母さんはお父さんの手を引いてドアを開けて廊下へ出て行ってしまった
「えっ、あっ……行っちゃいましたね?」
「そっそうだな、おれたちもどこか食べに行こうか?車もおれのが置いてあるから」
「うん、ご飯食べに行きたいっ」
「やっと心を開いてくれたんだな、みずき……ありがとう、嬉しいよ!さぁ出掛けよう」
おにいさんはニコニコしながら私の手を引いて玄関の外へ出て車のところまで行くとおにいさん顔が一瞬にして曇る
「あぁ、いっけない車の鍵を持ってくる忘れちゃった、玄関のところにあるからすぐ取りに行ってくるから待ってて」
おにいさんは早足で玄関まで行くとドアを開けて中へと入って行ってしまった、仕方なく車の横で立って待つ事にした、何気なくおにいさんの車の中を覗くとおねえさんの好きなキャラクターのぬいぐるみがたくさん置いてある、少しだけ、ほんの少しだけ
心がぎゅっと締め付けられる
仕方ない、仕方のない事だと自分に言い聞かせる
「ごめーん、あったあった、さぁ乗ろう」
おにいさんが車の鍵を押すとピピッと音がしてライトが光る、どうやら車の鍵が開いたみたいでおにいさんは運転席に乗り込んだ、私も遅れないように助手席に乗り込んだ
「すごいですね、キーレスなんですね」
「そうかな?最近のは標準装備じゃないか?さぁどこに行こうか?」
「うーん、バイキングとかブッフェとかどうですか?」
「いいなぁ、じゃぁ近くの複合施設に行こう確か中にそういうお店もあったと思うから」
「はい、行きたいです」
おにいさんは車のエンジンをかけてギアをDに入れて車を走らせる、複合施設かぁ、いろんなお店があるんだろうなぁ……少しだけでも見られるかな?でも、今日はゆっくり休みたいかも……でも、パジャマとか持ってこなかったな……お金もそんなに持ってきてないし、おにいさんに相談してみようかな?
でも、厚かましいかな?お金貸してくださいなんて……
「なぁ、みずき?お節介かもしれないけどしばらくおれの家にいるならやっぱりその……いろいろと必要なものがあるだろ?だから……ご飯の後ついでに買い物も済ませようか?」
「えっ、あっ、はいっ……でも私、そんなにお金持ってきてなくて……」
「えっ?なんだ…….そんな心配はいらないよ、おれが出すから」
「そんな……悪いですよ……」
「なぁ?みずき、おれはお前を守りたい、守るってみずきになにも不自由させないって意味も込めてるんだ、だから気にするな一緒になったら返してくれたらいいから、なっ?」
「でっ、でも……」
「もおー!みずきは……おれは好きな女の為ならなんでもするんだよ!わからないなら昨日の夜の続きするか?」
「えっ、ふぇ?わかった、わかりました!お願いします」
「ふっ、可愛いなぁ……さぁ?もう着くよ?」
そう言われて窓の外を見ると大きな建物が見える、いろんなお店の看板がある、たくさんの車が駐車場に停まっている
「さぁ、どこに車停めようか?立体駐車場でいいかな?」
「お任せします、どこでも大丈夫です」
おにいさんは私の目を見て微笑むと立体駐車場の上にあがるために坂道を登る、2Fは満車らしくもう一回上にあがり3Fに停める事に、おにいさんは入り口の近くになんなくバックで車を停める
「着いたよ、行こうか?あっでも、その前にキスしてもいいか?」
「はい、行きましょう、キス?!えぇっ!?」
私の目を見つめながらおにいさんがどんどんとわたしに近付いてきて、おにいさんの唇が私の唇に重なる
そんな……
こんな車の中で……
誰かに見られちゃうかもしれないのに……
優しいキス……
どれぐらいそうしていたのか
私にはすごく長く感じたけれど、きっと1分もなかったんだと思う
フッとおにいさんの唇が離れていく、いつもならなんでキスなんてするのって怒ってしまうだろう、だけど今はもっとキスしていたかったなぁと思ってしまう
「おっ、おにいさん……」
つい甘い声を漏らしてしまう、おにいさんは一瞬驚いたような顔になるけどすぐに嬉しそうな顔になって私に抱き付いてきた
「もーみすぎはー可愛いんだからぁー今すぐここで犯しちゃいたくなるよ……」
耳元で囁かれて身体の奥が疼いてしまう
「やっ、やだぁ……」
「ふふっ、冗談だよ?純粋なんだから、みすぎ早く行こう、おれもうお腹ぺこぺこなんだよ」
おにいさんのお腹からぐうぅ~っと大きな音が聞こえてくる、そんなにお腹空いてるんだぁ……食べ盛りの大学生じゃあるまいし、もういい歳なはずなのに、でもそんなところもこどもっぽくて可愛いなぁ……
「もー言いたい事はたくさんあるけど私もお腹空いてきたんで早くご飯食べに行きましょう」
おにいさんを突き離すと素早くシートベルトを外してドアを開けて外に出ると小走りで入り口の方へと向かう、しばらく後にドアの閉まる音が聞こえてきたのでおにいさんが降りてきたんだと思い後ろを振り返るおにいさんは慌てているようだけど、ゆっくりと私の後を付いてくる
「おーい、待ってくれよーみすぎ」
なんだか、浜辺で恋人同士が追いかけあっこしているようでなんだか照れ臭くなる
「ふふっ、おにいさん、本当に私の事好きならはやく捕まえに来てくださいよ?」
私はいたずらめいた微笑みをおにいさんに投げかける
おにいさんは困ったような表情になったけど、突然ものすごい早さで走り出し私の所まで走ってくると私を力強く抱き締めた、耳元ではぁはぁとおにいさんの息遣いが聞こえてくる
「大丈夫ですか?おにいさん?」
「よーしっ!捕まえた!みすぎはやっぱり俺のものだな!」
おにいさんは周りの人に聞こえるように大きな声で言う、私は恥ずかしくなっておにいさんの首に顔をグイグイと押し付ける、おにいさんの匂いがいっぱいの鼻の中に入ってきて心が満たされるような感覚になりつい目を閉じる
「えっ、あっ、みすぎ?どうした?」
「いや、なんか幸せだなぁーって思って……好きになってくれてありがとう、助けてくれてありがとう」
おにいさんを強く抱きしめる
「ちょっ……みずきっ……急になにを……恥ずかしいだろ……でも嬉しいよ」
人目なんて気にもしないで2人で強く抱き合った、涙が頬を伝うのがわかった、手の甲で涙を拭うとおにいさんから離れておにいさんのおでこにキスをした
「嬉しいけど、他の人にみずきの泣き顔見られちゃうの嫌だなぁ、さぁ笑って?」
おにいさんは照れ臭そうに微笑む、嬉しいような照れ臭いようなむずむずするけど嬉しくてつられて微笑んだ
「もう本当に行きましょうか?」
私はおにいさんの手を引いて入り口から中に入る、エスカレーターに乗って下の階へと下がる
1階まで降りる、ここは来た事がないからわからないけどフードコートとかはどこにあるのかな?おにいさんはよく来たりするのかな?
「さぁ、何を食べようか?やっぱり女の子はオムライスとかがいいのかな?」
「なんでも大丈夫ですよ?オムライスも好きですけどおにいさんはお肉好きなんですよね?トンカツとかも悪くないですね」
「おおっ、みずきもなかなかいける口?」
「ふふっ、たくさん食べたいじゃないですか?」
おにいさんの耳元で囁くように言う
「やっぱりみずきっておれの理想の女性だよ、大好き」
嬉しくなって舞い上がってしまいそう
「ふふっ、じゃぁトンカツか何かお肉食べましょう?」
「望むところだぜ!じゃぁ確かトンカツの専門店があったからそこに決まりだな、こっちだ、さぁ行こう」
おにいさんに手を引かれる、私も当たり前のように手をつなぐ、ついこの前までこんな風になるなんて思ってもいなかったのに、でも悪くない、悪くないどころか幸せでのぼせてしまいそうだ
おにいさんに導かれてお店に入る、お昼時という事もあって店内はかなり席が埋まっているみたい、席に案内されて落ち着くとメニューを2人で選んで注文を済ませた
「おにいさん、本当に2人前も食べるんですか?」
「うん、食べるよ?みずきももっと食べたいの?」
「いえ、私は大丈夫ですけど……」
「こんな事言うと気分悪くさせてしまうかもしれないけど、奥さんと食べにきても嫌われたくないって気持ちがあってずっと食べたいのを我慢してたんだ、オムライスがいいって言われれば足りなくても満足したフリをしてたんだ、でもみずきになら素直に、思うように振舞っても大丈夫だって思ったからたくさん注文したんだ」
「もお……そんな事言って……食べ過ぎには気を付けくださいよ?」
「うん、ありがとう、みずき」
注文したモノが運ばれてくる、おにいさんの前には2人前運ばれてくる、トンカツの2人前となるとかなりガツンとしている、それでもおにいさんはニコニコして嬉しそうだ、歳を取ると油物ってあんまり食べられなくなるって聞いてたけどおにいさんは平気なんだなぁ、なんだか感心してしまう、私の前にもたのんだモノが運ばれる、おにいさんはチラッと私が頼んだモノを見た、まさかこれも食べたいのかな?おにいさんの食欲恐るべし
「もし、お腹いっぱいになったら食べてくれますか?」
「あぁ、もちろんだ、おれに任せろ」
ああ、昔テレビで見たことがあるな
俺の胃袋は宇宙だっ!
って台詞がおにいさんにはお似合いだ
その後、おにいさんはかなりのスピードで頼んだトンカツ2人前を食べ終えた、私が食べ終わるのを待っていてくれた、お店を出ると私の当面の必要な物の買い出しを済ませた、服やら下着やらだ、すっかり時間も経ってしまい、荷物もかなり多くなったので帰る事にした、2人で仲良く手を繋いで歩いていると突然後ろから名前を呼ばれた、でも複合施設だから同じ名前の人が呼ばれているのだろうと思い振り返る事はしなかった、だって私にはこちらに友達なんて1人もいないから呼ばれる事はまずありえない、無視していると走ってくる音が聞こえてその後すぐ肩を強くつかまれた、私は驚いて振り返るとそこには旦那がいた
「おいっ、みずきっ!なんで…なんで呼んでるのに無視するんだっ?」
私は驚きのあまり声が出ない
「なぁ!聞いてるのかっ?」
「もとき君、少し落ち着かないか!」
おにいさんが旦那の手をわたしの肩から振り払う
「おにいさん!なんなんですか?俺の嫁に手を出したんですか?」
かなり大きな声で旦那がおにいさんに問いかける、周りの人がざわざわとこちらを見ているのがわかる
「とりあえず外に出ないか?周りの目もあるし」
おにいさんが提案する
「はあ?そんな偉そうなこと言える立場なのかよ!人の嫁たぶらかしてよぉ!」
「おっ、落ち着こうよ?ごめん、無視した訳じゃないよ、外で話さない?ここだと他の人の迷惑になるしさ?」
私が提案すると、旦那はしぶしぶといった様子で外へと出た、外に出ると誰かにスマホで連絡を取っているようだ、その隙に私はおにいさんにあまり旦那を興奮させないでほしいと小声でお願いした、旦那は一度怒ってしまっと手がつけられなくなる、出来るだけ穏便に済ませたい
「さっきは、ごめんなさい、まさかあなたがここにいるとは思わなくて……」
「ああ、そうだろうなぁ?探してんだ、みずきを昨日からずっとな」
「昨日から……?」
「そうだ……あの後すぐ家に帰ったのにみずきもあの野郎もいなくなってて、すごく心配したんだぞ?」
旦那は少しづつ私に近付いてくる
「でもっ……それはあなたが……おねえさんと……」
「なぁ?きょうだいなんだし、そんなに騒ぐ事じゃないだろ?みんなやってるよ、みずきも一緒に混ざればいいだろ?あの野郎は絶対に嫌だけどな」
「その、あの野郎っていうのはおれの事なのかな?もとき君?」
おにいさんが話に入ってくる
「ああ、そうだよ、もうお前の事はおにいさんだなんて思ってねぇからな!馴れ馴れしく話しかけるなよ!」
「おれもお前の事、義理の弟だからって可愛がってたけどもうやめるわ、大人の男同士話付けようや?」
おにいさんはそう言いながら私と旦那の間に入ってくれた
「おいっ、てめぇ俺のみずきに近付くなよ!」
旦那がおにいさんの肩を押す
「ほお、手を出すのか?弱い奴ほどすぐ手を出すんだよなぁ、悪いけどなみずきはもうお前のみずきじゃねえんだよ?おれのみずきだ、お前みたいな最低な男とみずきを一緒にさせておけないもんで」
旦那の顔が真っ赤になっている、かなり怒って興奮しているようだ
「はぁあっ?何言っちゃってんの?このじじい、俺のだよ!俺のみずきなんだよ!ふざけんな!」
「なあ?お前さ、自分の立場わかってんの?お前がみずきを裏切ったんだろ?今更何を言っても遅えんだよ!好きな女1人守れねぇくせに偉そうなこと言うんじゃねえよ!」
おにいさんは私の手を取ると車へと戻る為に歩き出した、旦那が何か言っているけど頭の中がぐちゃぐちゃになってしまっていて何を言っているのかわからない
早足で歩くおにいさんに引っ張られる形になる、おにいさんの歩幅が大きいのか私はついていけなくなってしまう、それに気が付いたおにいさんは軽々と私をお姫様抱っこするとそのまま早足で車まで戻った、通り過ぎる人たちはヒソヒソと何かを言っているみたいだ、そりゃお姫様抱っこしてる人なんてそうそう見られるものではない
「おにいさん……私1人で歩けますから……」
「そうか?さっき立ってる時だって足が震えてたのに?おれについて歩けなかったのに?無理すんな、んで周りの目なんか気にすんな、黙ってそこにいろ」
私足が震えてた?
嘘っ……全然自分ではわからなかったのに、おにいさんそんな小さな事にも気が付いてくれてたの?
「それと、あいつらとの事はもっとちゃんとしたところで話し合わないとダメだ、こんなところで大声で言い合ったって時間の無駄だ、とりあえず家に帰ろう、きっと家に来るんだろうけど家族が味方だ、守ってくれる、もちろんおれも守るから、な?みずき」
「はい……私も、私も頑張ります」
「おう、でも無理すんなよ?手だけは出させないようにするから、男が女に手をあげるなんて最低な事だからな、さぁ車に乗って?」
そう言うとおにいさんは私をゆっくりと下ろしてくれた、私は車のドアを開けて助手席へと乗り込む、続いておにいさんが運転席に乗り込んでエンジンをかけて足早にお店を出た
帰りの車内で私とおにいさんは強く手を繋いだまま一言も話さなかった、正確には何も話せなかったのかもしれない、これから何が起こっても大丈夫だって確証が欲しかったけど、ここまで来て逃げ続ける事は出来ない、どんな結果になったとしても立ち向かわなければいけない
そんな強い気持ちの表れなのか
痛いほどの力で手を繋いでいた
家に着いて荷物を持って家の中へ入るとお兄さんが出迎えてくれた
「おっ、おかえり、もー飯食いに行くなら誘ってくれよー?母さんもいないしから仕方なくカップ麺食べたんだぜ?」
お兄さんは冗談交じりにそう言った、なんだか心がホッとした
「ははっ、ごめんよ兄貴、今度は誘うよ」
「なんで笑うんだよ?まったくお前たちは……」
「実はさっき会ったんだ、もとき君に」
「もときって誰だ?」
「私の……旦那です……」
「えっ?あぁ、そうなのか、でもなんでだ、居場所がバレてるのか?」
「なんか旦那が言うには昨日からずっと探してたって私の事を……」
「みずきちゃんの事を?で、なんでそいつがここを知ってるんだ?」
「それなんだけど、多分奥さんが教えたんじゃないかって思ってる、もとき君と奥さんが連携し合ってるんじゃないかってだからここに来るのも時間の問題かもしれない」
「ほほう、まあいいんじゃねぇの?俺はみずきちゃんの味方だし、親父も母さんも味方だから心配する事はないだろう?」
「そうなんだけど、もとき君は怒ると手がつけられなくらしくてさっきもかなり興奮してたみたいで手を出してきたんだ、おれだったからよかったけどみずきに怪我でもさせられたらおれ、止められなくなる」
「ふーん、まあでも弱いんだろ?そいつ、向こうから手を出してくるならこっちもある程度は反撃してもいいだろ?正当防衛だって、みずきちゃんを守る為なら仕方ない」
みんな私の事守ってくれるんだ、嬉しいけど、まだ……迷惑かけたくないって思ってしまう自分が嫌になる、いざとなればおにいさんたちを守る為に自分の身を差し出す覚悟はしておこう、甘えてばかりじゃ、守られてばかりじゃ前には進めないもんね
「わぁー綺麗な家、お花もたくさん咲いててキレイ……」
「あぁ、かあちゃん花好きだからな、みずきちゃんがキレイって言ってやれば喜ぶと思うぞ?」
「是非お花のお話してみたいです」
私は興奮気味に言った、お兄さんは車を止めるとドアを開けて外に出て私の座っている方のドアを開けてくれた
「さあ?着きましたよ?お姫様」
お兄さんは手を差し出した、私はクスッと笑ってしまったけど悪い気はしなくて手をお兄さんの方へとのばす、お兄さんは優しく手を握って外へと引っ張り出してくれる、引っ張る力が強過ぎて私は勢いが止まらずにお兄さんの胸にぶつかってしまう
「わぁっ!?ごめんなさいっ!?」
「大丈夫?みずきちゃん、俺ちからが強いんだ、ごめんね?加減が難しくて……」
「兄貴っ!?なにしてるんだ?」
おにいさんが反対側から降りてきてこの状況を見て驚いているようだ
「違うんだ、ふざけてたらこんな事になっちまって」
お兄さんは私を優しく押して体から離してくれる
「違うってなんだよ、わかってるさ、兄貴だからどうせふざけてたんだろうなって事ぐらいわかるよ、でも気を付けてくれよ?おれの好きな女に触るのは最小限にしてくれ」
「すまねぇ、にしてもうちの弟は怖い事言うようになったもんだ、怖い、怖い、気を付けまーす」
私はそんな2人を見ながらクスクスと笑ってしまう
「それにしても、お前そんなに恥ずかしい事さらっと言えるもんだな、俺には無理だわ、俺の好きな女とか絶対言えねぇよ」
「兄貴も本当に好きな人が出来たら言うようになるさ、意識しないでも口から出ちゃうんだよな……」
微笑ましい2人だなぁ……
「おいっ!おまえらー家の前でなに騒いでんだー!」
家の方から声が聞こえてくる
「あっ、親父だ」
お兄さんが言う
「親父、ただいま、連れて帰ってきたぜ、親不孝野郎を」
「おー帰ったかー親不孝者め、お前のせいでなぁ、お母さん倒れちゃったじゃねーかよ、もう勘弁してくれよ」
おにいさんのお父さんだよね?
なかなかに口が悪いけど顔はなんだか嬉しそうだなぁ……
「おっ、そこのかわい子ちゃんは?まさか遂に結婚する気になったのか?」
お兄さんは左右にぶんぶんとクビを振っている
そんなに否定されると少し傷つくなぁ、ありえないけど、ありえないけどさ
「違う、違う!!俺のじゃないよ」
「えっ、俺のじゃねぇって事は……まさか……お前……」
お父さんの顔がみるみる強張っていく
あぁ……ああ……
怒ってる、怒ってるよ……お父さん……どうしよう……
「親父……違うんだって、ちょっと落ち着いて話を聞いてくれ」
おにいさんは身振り手振りでお父さんに話す、お父さんは少し落ち着いたのか強張った顔じゃなくなっていく
「なんだ?言ってみろ?なにが違うんだ?」
「今回の事は本当に申し訳ないと思っています、かあさんに心配かけてしまって……でも!おれの話をちゃんと聞いてからにしてもらえませんか?」
お父さんはふんっ!と息を吐くと私たちの方を見て来いと呟くと家の方へと歩き始めた
「ふぅー危なかったなぁ……うちの親父なかなかに気が短いからなぁ……」
お兄さんが息を吐きながら早口で言う
それにこたえるように、おにいさんも小さな声で話す
「本当、危なかった……外で怒鳴られたりしたら、ご近所さんに筒抜けになっちまうからな……」
そんなに怖いんだ……お父さん……失礼だけど怖そうだったもんな……大丈夫かな?まあでもおにいさん大丈夫だって言ってたし大丈夫だよね、きっと……
「まあ、なんとかなるだろ?さっさと家の中入ろうぜ」
「そうだな、さぁみずきも早く入ろう、おれが守るって言ってるだろ?」
「でっ、でも……迷惑になるんじゃ……」
私は歩くのを躊躇う、そんな私を見ておにいさんは私の後ろに回ると腰のあたりを押して無理に前に歩かせた
「おっ、おにいさん……わかりました、わかりました、1人で歩きます、歩きますからやめてください」
そんなやり取りを見ていたお兄さんはクスクスと笑っている
「もー笑わないでください……」
お兄さんは目を閉じてなにか考えているようだ
「そんなに楽しそうにしてるの奥さんと一緒にいる時には見た事なかったような気がするなぁ」
「そうなんだ、付き合ってた頃から、奥さんとはこうやってイチャイチャした事なんて数える程しかないんだ、奥さんがクールっていうか淡白っていうか、ベタベタするの好きじゃなさそうだからあまりちょっかいかけなかったんだ」
おにいさんはなんだかどこか寂しそうな目をしていた……
そうだよね、なんか微妙な気持ちになるよね……昔の事思い出しちゃうよね……なにもかも話して、なにもかも聞いても昔の楽しかった思い出は消せないもんね……
「はっ、早く行かないとまた怒られちゃいますよ?」
私はおにいさんの手をつかむと引っ張った、おにいさんは難しそうな顔をしていたけどしぶしぶと歩き出した
「あー気が重いなぁ……ったく、お前らのためになんで俺まで……まあ仕方ねぇかかわいい弟と可愛いみずきちゃんの為なら」
お兄さんはそういうと玄関のドアを開けた
「さあ、中に入ろう」
おにいさんと私もお兄さんに続いて家の中へと入る、玄関はとても綺麗で靴箱の上には小さなお花がセンス良く花瓶に飾られている、家の中は白を基調にしているのかとても明るい、こんな家なら帰ってくるのが楽しみになりそうだ
お母さんのセンスがいいのかな?
勝手なイメージがどんどん膨らむ……
色白でとても上品な人なんだろうな、言葉遣いとかも丁寧で……
まるで私とは真逆だ……
「さぁ、上がってくれ、奥がリビングだから、あっ俺はトイレ行ってから行くわ」
お兄さんはそういうと、リビングまで続いている廊下にあるドアを開けると中へと入ってしまった、きっとあそこがトイレなのだろう、お兄さんがいなくなってなんだか緊張感が増したような気がするな、おにいさんは緊張しているのか何も言わない、私の方を見る余裕もないのか下を向いて歩いている、任せろって言っても不安だらけだもんそうなるよね……
でも、私が下手な事言って混乱させても仕方ないしおにいさんに任せよう、いざとなれば私もなにか役に立てるように頑張ろう、ここまで来ちゃったらなるようになるしかないよね!私は前を歩くおにいさんの真横まで早歩きで近付くと耳元で
「大丈夫です、私も役に立てるように頑張りますから」
と囁くと、おにいさんはぎこちない笑顔で頷いてくれたなんだか悪い事してしまったような気がして心苦しくなる、ゆっくり歩いてリビングのドアの前まで歩くと一度おにいさんが立ち止まり大きく息を吸うと思いっきり息を吐いた
「さあ、行こう……おれたちはなにも悪くない、きっと味方になってくれる」
そう言うとおにいさんはドアを開けた、ドアを開けるとダイニングテーブルが目に入る、目線を少し左にずらすと左側に大きいソファがありお父さんはソファに貫禄を漂わせて座っている、背中しか見えてないのに怒っているような感じが伝わってくる、お母さんはいないのかと右の方に目線をうつすがキッチンの方には誰もいなかった、倒れたって言ってたけど大丈夫なのかな?本当に申し訳ない事をしてしまった、謝るだけでは許してもらえなさそうだ……
おにいさんはソファの方へと歩き出す、私も遅れないように後ろに付いて歩く
「親父、紹介させてくれ、今日連れて来たのは奥さんの弟の嫁さんだ」
私は慌てて言う
「お久しぶりです、おにいさんとおねえさんの結婚式でお会いしました、おねえさんの弟の妻のみずきです、今日は急にお邪魔してしまい、申し訳ありません」
私はお父さんの目を見て話し頭を下げる、お父さんは驚いているようだ、きっとおにいさんが浮気相手でも連れて来たのだと思っていたんだろう
「で、今日は嫁さんの弟の嫁なんか連れて来てなんだっていうんだ?警察にお世話になるような事、その弟の嫁としたのか?」
私はゆっくりと顔を上げる、お父さんはおにいさんの顔を睨むように見ている、おにいさんもまっすぐにお父さんの目を見ている
「警察にお世話になった事、ちゃんと話します、みずきさんと2人でコンビニで買い物していた時にみずきさんが見知らぬ男の人に声を掛けられて、しつこくナンパされていたので助けたら、周りの人たちが警察を呼んでくれたみたいで警察の人が来て場を納めてくれたんだ、それで身元引き取り人として親父に電話したんだ」
お父さんの開いた口が塞がらない、そりゃ驚くよね……
「そうか、2人でいた理由はわからないけどお前はその、守ろうとした訳か、それじゃぁ叱れないな、叱れないどころか褒めなきゃいかんな」
「こんな大ごとになるなんて思っていなくてすいませんでした……」
おにいさんは頭を下げている、私も慌てて頭を下げる
「もういいさ、お前は男としてやるべき事をした、偉いじゃないか女を守れるなんていつの間にかもう立派な男になってたんだな」
お父さんは立ち上がるとおにいさんの肩をポンポンと強めに叩いた
「母さんは二階の寝室で横になってる、みずきさんも連れて行ってこい俺はここで待ってるから、母さんにもちゃんと話してこい、一番心配してるのは母さんなんだからな?」
「わかってる、ありがとう親父、行こうみずき」
おにいさんは足早に廊下へと出て行った、私はお父さんに軽く頭を下げておにいさんの後に続いた、廊下に出るとおにいさんはふぅーっと息を吐くと廊下の壁によりかかった
「大丈夫ですか?おにいさん」
「あ、あぁ……すげぇ緊張したよ……でも、とりあえずはわかってもらえてよかった」
「お母さん大丈夫ですかね?」
「まぁ、多分大丈夫だと思う、いつもは体力自慢のかあちゃんだからな、さぁ行こう」
おにいさんは廊下を玄関の方へと戻り、階段を上っていく、二階に着くとすぐ目の前の部屋のドアをおにいさんは優しくノックする
「母さん……おれだよ……入ってもいいかな?」
ドアの向こうからかすかに声が聞こえてくる、おにいさんは聞き取れたようで、部屋のドアを開けて中へと入っていく、おにいさんが私の方を見て身振りで部屋の外で待っていてと伝えて来たのでとりあえず部屋の外で待つ事にした、きっとこれ以上お母さんを驚かせないように気を使ってるんだろう、部屋の中の話し声はなにも聞こえてはこない私は下を向いて大きく息を吐く、なんと言ってお母さんに謝ればいいのか言葉が出てこない……
数分外で待っているとドアが開く音が聞こえて顔を上げると笑顔のおにいさんがいた
「お待たせ、おいで」
おにいさんは手を伸ばして、私の手を掴むと部屋の中へと引っ張り込んだ、パタンとドアの閉まる音が後ろから聞こえて私は目を開けるとベッドの上に座っている女性が目に入った、おにいさんのお母さんだ
「あらあら、お久しぶりねぇ、確か結婚式の時に会ったわよね?」
お母さんが私に話しかけて来た
「あっ、はっ、はい……お久しぶりです、その……すいませんでした!私のせいで……」
お母さんは困っているようだ
「あらあら、謝らないで、みずきさんは怖い思いをしたんだから、そんなに緊張しないで悪いのはうちの子の方ですよ、もっとスマートに助けてあげられればこんな騒ぎになる事なんてなかったのに、本当にお父さんに似てどんくさいんだから……」
「母さん……みずきの前でそんな事言わないでくれよ……おれだって頑張ったんだから……」
「全く……なんでうちの男たちはこんなに頼りないのかしら……ごめんなさいねぇ……ゆっくりしていって私ももう大丈夫だから下でお話でも……」
「母さん、ダメだよ、もっと休んでないと……それにまだ話の続きがあるんだ、聞いてもらいたいんだ」
「わかってるわ、あなたの考えてる事だもの、わかるわ、母親だもの」
お母さんはそう言うと微笑んで私の顔を見て手招きをする、私は手招きされるままにお母さんの隣に座る
「ねぇ?みずきさん……もうあなた達覚悟は出来てるようね?」
私はドキッとして下を向いてしまう
「母さん……それってどうゆう意味なんだ?」
「どうゆう意味もないわよ、あなた達、覚悟を決めたから家に来たのよね、わかるわよ、2人の顔を見れば私だって歳は取ったけど女ですもの、さぁ話しの続きを聞かせてちょうだい?」
なぜかお母さんは嬉しそうな表情だ
「母さんには隠し事は出来ないな、昔からそうだ、隠してるつもりでもすぐにバレちゃうんだ……母親ってすごいんだな」
「ふふっ……母親を甘く見ないでね?」
「本当の事を話すよ、母さんにはもうお見通しみたいだし、おれはみずきの事が好きなんだ、みずきもおれの事好きだって言ってくれた、なんでそうなったかって言うと昨日奥さんの実家に行ったんだ、それでいろいろあって奥さんと弟くんが浮気してる事がわかったんだ、それでみずきに相談されて、それで好きだって気持ちが抑えられなくなってみずきを家から連れ出したんだ、守りたかったんだ辛い事から、もちろんおれも辛かったからおれも助かったんだ、みずきと一緒にいられて心が楽になったんだ、それでおかしな話かもしれないけどしばらくここにいさせて欲しいんです、みずきの実家はとても遠いし、かと言ってあんな家に置いておけないから、身勝手かもしれないけどお願いします」
お母さんは少し驚いたような表情だ、さすがに好き同士まではお見通しだったみたいだけど浮気されただのなんだのは見抜けなかったみたいだ
「えっ?奥さんと弟ってどうゆう事?きょうだいでって事?」
「そうなんだ、きょうだい同士でそういう関係みたいなんだ……」
お母さんは頭を抱えてしまっている
「あなたの奥さん、そんな風には見えなかったけれど……それは本当なの?」
「あぁ、おれもまだ信じられないけど、昨日そう電話で言われたんだ奥さんに……弟くんもその時奥さんと一緒にいたんだ、もう確定だろ?詳しい話はなにも聞いてはいないけどもうおれは離婚するつもりだ」
「そうなのねぇ……あなたの気持ちはわかったわ、みずきさんはどうなの?これから先の事どう考えてるの?」
「私は……旦那の事信じたい気持ちもあります……でも、もう信じる自信がありません……同じ家の中で私の事平気で裏切ってたかもしれないような人の事……おにいさんが支えてくれるなら私、もう一度人生をやり直したいと思ってます」
「みずき……そんな風に想っていてくれたんだな……おれ嬉しいよ、おれは……みずきを支える、みずきもおれを支えてくれるか?」
「はい、こんな頼りない私でよければいつまでもそばに居ておにいさんを支えたいです」
「あらあら、2人ともお暑いわ、方向性が決まったならやるべき事はたくさんありそうね?ふふっ、まずはお父さんにちゃんと報告しなきゃね?」
そう言うとお母さんはベッドから立ち上がりおにいさんの肩を優しくポンポンと叩いた、おにいさんの家の人はみんな肩を叩くのが習わしなのかな?
「さあ?話は早い方がいいわね、下にいるお父さんに話に行きましょう?私も応援するからきっと大丈夫よ」
お母さんは微笑んでいる、さっきまでの緊張感が嘘のように消えていく、母親っていうのはこんなにもすごいものなんだ、自分の息子の事ちゃんと信じて、どうしたいのか聞いて応援出来るって、普通ならあり得ない事だよね?
お母さんは早足で部屋から出て行った、私達も遅れないように跡をついて行く一階に降りた時にトイレから出てくるお兄さんと鉢合わせになった、すごく長い時間に感じたけど実際はそんなに時間は経ってなかったんだと思うと少し体の力が抜けた
「よお、大丈夫か?みずきちゃん」
「大丈夫です、ありがとうございます、お腹大丈夫ですか?」
「あぁ、俺はいつでも大丈夫だ、男だからな」
なにを言っているのかはよくわからなかったけど大丈夫ならよかった、お兄さんは私の手を取って跪く、まるでお姫様の手をとる王子様のようだ
「お姫様にご心配していただき、恐縮です」
そう言うと、そのまま手の甲にキスをされた
「おっ、お兄さん……?!」
私は慌てて手を離そうとするけど、力強くお兄さんに握られて離す事が出来ない
「ははっ、若くて可愛い子をからかうのは楽しいなぁ、ごめん、ごめん」
お兄さんはポンポンと優しく私の頭を叩いた、おにいさんに叩かれてるようでなんだか心地いい
「兄貴……もう……みずきをからかうのはやめてくれよ」
おにいさんは力ない声で言う
「あっ、すまん、すまん、ついなぁ……最近若い可愛い子と絡んでなかったからなぁ……」
お兄さんは遠い目をしている、お兄さんは優しくわたしをおにいさんの方へと押してくれる、押された私はおにいさんの胸の中におさまった
「あっ……あわわ……お母さんがいるのに……」
私は恥ずかしくておにいさんの胸の中で目をぎゅっと閉じた
「まぁまぁ、あなた達みずきさんの虜なのね?でも今はよしなさいよ?全く……これだから男ってのは……」
お母さんの落胆したような声が聞こえてくる、おにいさんは慌てて私から離れていってしまった、もう少し触れ合っていたかったけど仕方ないよね……
「ごめん、母さん……だって兄貴が……」
「見てたからわかってるわよ、そんな事でいちいち反応しちゃうなんて相当みずきさんの事好きなのねぇ、お兄ちゃんも弟にいじわるしないの」
「はい、はい、わかったよ」
お兄さんは手を頭の上でヒラヒラさせながら階段を上っていってしまった、自分の部屋にでも戻ったのかな?
「全くあの子は……いつまで経ってもわんぱくと言うか自由人と言うか……困っちゃうわね、私達親の気持ち考えた事あるのかしらね?」
お母さんはため息をついた
「兄貴も兄貴なりに何か考えてるんじゃないかなぁ?おれには何を考えてるかはさっぱりわからないけど……」
「兄弟ってやっぱり何か通づるモノがあるのかしら?私にはわからないわ」
お母さんはそう言うとリビングのドアを開けて中へと入って行ってしまった、おにいさんと一緒に慌てて後を追いかけてリビングのドアを開けて中へと入った、リビングではお父さんがテーブルの近くでそわそわと歩き回っていた、私達が入ってくるのを見ると慌てた様子でソファーの方へ歩いて行きソファーに座った
「母さん、も、もう大丈夫なのか?」
「えぇ、先程はすみませんでした……気が動転してしまって……すっかり元気になりましたわ」
お母さんはお父さんの隣に座った、お父さんは恥ずかしそうな嬉しそうな表情になる、おにいさんや私の前では恥ずかしいのかな?普段はきっと仲良しなんだろうな……私も将来こどもができて、自立した後は旦那さんと仲良くしたいと思っているからお手本のような夫婦だ、こんな両親に育てられたおにいさん達は幸せ者だなぁ、うちの両親はよく喧嘩していたな、喧嘩はした方がいいとかなんとかテレビではよく見るけどやっぱり喧嘩はしない方がいいのかなーなんて思ったりする
「お父さん、2人からお話しがあるみたいなのよ、聞いてくれるかしら?」
「話し?いいだろう、まぁソファーに2人とも座りなさい」
お父さんが手招きしてくれたので、おにいさんの後に続いてソファーの方へ移動しておにいさんが座ってから、少しだけ離れて隣に座った
「親父、さっき話したのとは違う話しなんだ、さっきより大事な話しなんだ、聞いてほしい」
「さっきよりも大事な話か……まぁゆっくり聞かせてもらうさ」
「ありがとうございます、もう薄々わかってるかもしれないけどおれはみずきの事が好きです、奥さんがいて新婚のくせになにを言ってるかわからないかもしれませんが……」
お父さんは曇った顔になる
「ほう……で2人ともどうするつもりなんだね?みずきさんも旦那さんがおられるでしょう?」
お父さんは私の目をまっすぐに見る
「私は……「親父、おれからおれが話したいんだ」
「ほう、それなら話してもらうか」
「なにがあっても守るって決めたんだ、おれの嫁とみずきの旦那が浮気をしてた、きょうだいで身体を重ねてたんだ、おれは許せないから離婚する、みずきも同じかそれ以上に傷付いている、離婚するつもりでいるこれから大変な事がたくさんあるのはわかってる、それでもおれはみずきといたい、みずきに支えてもらいたいんだ、すべてが終わったらみずきと新しい人生を始めたいんです」
「唐突な話しだ……信じられない……」
「お父さん……?私もねさっき聞いたばかりだからわからないけど、嘘ではないと思うの2人の顔を見ればわかるのよ、辛い思いをしたんだろうなってだから信じてあげてほしいのよ」
「わかった……とても信じられるような事じゃないけど、自分の息子の言う事だ、信じるさ」
「それでしばらくここにおれとみずきをおいておかせてはもらえないかなって、おれはどうにでもなるけどみずきの実家は遠いし、1人するには不安が大きいもちろん住まわせてもらってる間の食費やらなんやらは出すつもりでいるんだ」
「まぁまぁ、いいんじゃないかしら?」
「おいおい、母さん……まぁ少しの間だけだぞ?しばらくしたら2人でどこか住む場所を探せばいいさ」
「ありがとう、親父助かります」
おにいさんが頭を下げるのと同時に私も頭を下げた
「そうねぇ……しばらく一緒に暮らすなら……みずきさんとも仲良くなりたいわねぇ……そうだわ、心細いでしょう本当のお母さんだと思って接してくれていいのよ?だって後々家族になるんですもの!」
「母さん……まぁ言われてみればそうか、気を使ってたんじゃお互い疲れるもんな、本当のお父さんと思って仲良くしてくれみずきさん」
「はいっ!ありがとうございます、すごく嬉しいです……」
私はこみ上げる涙を止める事が出来ずに大きな涙を目からこぼしてしまう
「みずきっ……!?なんで、どうしたの?」
「その、嬉しくて……見ず知らずの私なんかに優しくしてくれて……昨日はもうこんな人生どうなってもいいやって思ってたのに、今はやり直せるやり直そうって思えるようになりました」
「みずき……」
おにいさんは優しく私を抱き寄せる
「おにいさん……」
「ゔぅんっ……」
お父さんが咳払いをする、おにいさんは慌てて私から離れていく
「まったくお前は……親の前だって言うのに……」
「いいじゃないの、それだけみずきさんの事が心配なのよ、素敵じゃない、ねぇあなた?」
お母さんはお父さんにぴったりと寄り添う、お父さんは顔を赤らめて目を泳がせている、照れてるのを誤魔化そうとしているのが見え見えでなんだか可愛らしく見える
「親父も母さんも同じだろ?」
おにいさんは笑いながら私の腰に手を回す、なんだか温かくて安心する、私もついつられて笑ってしまった
お父さんは上ずった声で
「まあ……あれだな……お腹空かないか?」
「そうねぇ……そろそろお昼かしら?そういえば今日は2人で外で食べましょうって話していたんですよねぇ?お父さん?」
「えっ、あっ、そうだったっけか?」
「んもぅ……お父さんってばいつも約束忘れちゃうんだからぁ……さぁ行きましょう?」
そう言うとお母さんはお父さんの手を引いてドアを開けて廊下へ出て行ってしまった
「えっ、あっ……行っちゃいましたね?」
「そっそうだな、おれたちもどこか食べに行こうか?車もおれのが置いてあるから」
「うん、ご飯食べに行きたいっ」
「やっと心を開いてくれたんだな、みずき……ありがとう、嬉しいよ!さぁ出掛けよう」
おにいさんはニコニコしながら私の手を引いて玄関の外へ出て車のところまで行くとおにいさん顔が一瞬にして曇る
「あぁ、いっけない車の鍵を持ってくる忘れちゃった、玄関のところにあるからすぐ取りに行ってくるから待ってて」
おにいさんは早足で玄関まで行くとドアを開けて中へと入って行ってしまった、仕方なく車の横で立って待つ事にした、何気なくおにいさんの車の中を覗くとおねえさんの好きなキャラクターのぬいぐるみがたくさん置いてある、少しだけ、ほんの少しだけ
心がぎゅっと締め付けられる
仕方ない、仕方のない事だと自分に言い聞かせる
「ごめーん、あったあった、さぁ乗ろう」
おにいさんが車の鍵を押すとピピッと音がしてライトが光る、どうやら車の鍵が開いたみたいでおにいさんは運転席に乗り込んだ、私も遅れないように助手席に乗り込んだ
「すごいですね、キーレスなんですね」
「そうかな?最近のは標準装備じゃないか?さぁどこに行こうか?」
「うーん、バイキングとかブッフェとかどうですか?」
「いいなぁ、じゃぁ近くの複合施設に行こう確か中にそういうお店もあったと思うから」
「はい、行きたいです」
おにいさんは車のエンジンをかけてギアをDに入れて車を走らせる、複合施設かぁ、いろんなお店があるんだろうなぁ……少しだけでも見られるかな?でも、今日はゆっくり休みたいかも……でも、パジャマとか持ってこなかったな……お金もそんなに持ってきてないし、おにいさんに相談してみようかな?
でも、厚かましいかな?お金貸してくださいなんて……
「なぁ、みずき?お節介かもしれないけどしばらくおれの家にいるならやっぱりその……いろいろと必要なものがあるだろ?だから……ご飯の後ついでに買い物も済ませようか?」
「えっ、あっ、はいっ……でも私、そんなにお金持ってきてなくて……」
「えっ?なんだ…….そんな心配はいらないよ、おれが出すから」
「そんな……悪いですよ……」
「なぁ?みずき、おれはお前を守りたい、守るってみずきになにも不自由させないって意味も込めてるんだ、だから気にするな一緒になったら返してくれたらいいから、なっ?」
「でっ、でも……」
「もおー!みずきは……おれは好きな女の為ならなんでもするんだよ!わからないなら昨日の夜の続きするか?」
「えっ、ふぇ?わかった、わかりました!お願いします」
「ふっ、可愛いなぁ……さぁ?もう着くよ?」
そう言われて窓の外を見ると大きな建物が見える、いろんなお店の看板がある、たくさんの車が駐車場に停まっている
「さぁ、どこに車停めようか?立体駐車場でいいかな?」
「お任せします、どこでも大丈夫です」
おにいさんは私の目を見て微笑むと立体駐車場の上にあがるために坂道を登る、2Fは満車らしくもう一回上にあがり3Fに停める事に、おにいさんは入り口の近くになんなくバックで車を停める
「着いたよ、行こうか?あっでも、その前にキスしてもいいか?」
「はい、行きましょう、キス?!えぇっ!?」
私の目を見つめながらおにいさんがどんどんとわたしに近付いてきて、おにいさんの唇が私の唇に重なる
そんな……
こんな車の中で……
誰かに見られちゃうかもしれないのに……
優しいキス……
どれぐらいそうしていたのか
私にはすごく長く感じたけれど、きっと1分もなかったんだと思う
フッとおにいさんの唇が離れていく、いつもならなんでキスなんてするのって怒ってしまうだろう、だけど今はもっとキスしていたかったなぁと思ってしまう
「おっ、おにいさん……」
つい甘い声を漏らしてしまう、おにいさんは一瞬驚いたような顔になるけどすぐに嬉しそうな顔になって私に抱き付いてきた
「もーみすぎはー可愛いんだからぁー今すぐここで犯しちゃいたくなるよ……」
耳元で囁かれて身体の奥が疼いてしまう
「やっ、やだぁ……」
「ふふっ、冗談だよ?純粋なんだから、みすぎ早く行こう、おれもうお腹ぺこぺこなんだよ」
おにいさんのお腹からぐうぅ~っと大きな音が聞こえてくる、そんなにお腹空いてるんだぁ……食べ盛りの大学生じゃあるまいし、もういい歳なはずなのに、でもそんなところもこどもっぽくて可愛いなぁ……
「もー言いたい事はたくさんあるけど私もお腹空いてきたんで早くご飯食べに行きましょう」
おにいさんを突き離すと素早くシートベルトを外してドアを開けて外に出ると小走りで入り口の方へと向かう、しばらく後にドアの閉まる音が聞こえてきたのでおにいさんが降りてきたんだと思い後ろを振り返るおにいさんは慌てているようだけど、ゆっくりと私の後を付いてくる
「おーい、待ってくれよーみすぎ」
なんだか、浜辺で恋人同士が追いかけあっこしているようでなんだか照れ臭くなる
「ふふっ、おにいさん、本当に私の事好きならはやく捕まえに来てくださいよ?」
私はいたずらめいた微笑みをおにいさんに投げかける
おにいさんは困ったような表情になったけど、突然ものすごい早さで走り出し私の所まで走ってくると私を力強く抱き締めた、耳元ではぁはぁとおにいさんの息遣いが聞こえてくる
「大丈夫ですか?おにいさん?」
「よーしっ!捕まえた!みすぎはやっぱり俺のものだな!」
おにいさんは周りの人に聞こえるように大きな声で言う、私は恥ずかしくなっておにいさんの首に顔をグイグイと押し付ける、おにいさんの匂いがいっぱいの鼻の中に入ってきて心が満たされるような感覚になりつい目を閉じる
「えっ、あっ、みすぎ?どうした?」
「いや、なんか幸せだなぁーって思って……好きになってくれてありがとう、助けてくれてありがとう」
おにいさんを強く抱きしめる
「ちょっ……みずきっ……急になにを……恥ずかしいだろ……でも嬉しいよ」
人目なんて気にもしないで2人で強く抱き合った、涙が頬を伝うのがわかった、手の甲で涙を拭うとおにいさんから離れておにいさんのおでこにキスをした
「嬉しいけど、他の人にみずきの泣き顔見られちゃうの嫌だなぁ、さぁ笑って?」
おにいさんは照れ臭そうに微笑む、嬉しいような照れ臭いようなむずむずするけど嬉しくてつられて微笑んだ
「もう本当に行きましょうか?」
私はおにいさんの手を引いて入り口から中に入る、エスカレーターに乗って下の階へと下がる
1階まで降りる、ここは来た事がないからわからないけどフードコートとかはどこにあるのかな?おにいさんはよく来たりするのかな?
「さぁ、何を食べようか?やっぱり女の子はオムライスとかがいいのかな?」
「なんでも大丈夫ですよ?オムライスも好きですけどおにいさんはお肉好きなんですよね?トンカツとかも悪くないですね」
「おおっ、みずきもなかなかいける口?」
「ふふっ、たくさん食べたいじゃないですか?」
おにいさんの耳元で囁くように言う
「やっぱりみずきっておれの理想の女性だよ、大好き」
嬉しくなって舞い上がってしまいそう
「ふふっ、じゃぁトンカツか何かお肉食べましょう?」
「望むところだぜ!じゃぁ確かトンカツの専門店があったからそこに決まりだな、こっちだ、さぁ行こう」
おにいさんに手を引かれる、私も当たり前のように手をつなぐ、ついこの前までこんな風になるなんて思ってもいなかったのに、でも悪くない、悪くないどころか幸せでのぼせてしまいそうだ
おにいさんに導かれてお店に入る、お昼時という事もあって店内はかなり席が埋まっているみたい、席に案内されて落ち着くとメニューを2人で選んで注文を済ませた
「おにいさん、本当に2人前も食べるんですか?」
「うん、食べるよ?みずきももっと食べたいの?」
「いえ、私は大丈夫ですけど……」
「こんな事言うと気分悪くさせてしまうかもしれないけど、奥さんと食べにきても嫌われたくないって気持ちがあってずっと食べたいのを我慢してたんだ、オムライスがいいって言われれば足りなくても満足したフリをしてたんだ、でもみずきになら素直に、思うように振舞っても大丈夫だって思ったからたくさん注文したんだ」
「もお……そんな事言って……食べ過ぎには気を付けくださいよ?」
「うん、ありがとう、みずき」
注文したモノが運ばれてくる、おにいさんの前には2人前運ばれてくる、トンカツの2人前となるとかなりガツンとしている、それでもおにいさんはニコニコして嬉しそうだ、歳を取ると油物ってあんまり食べられなくなるって聞いてたけどおにいさんは平気なんだなぁ、なんだか感心してしまう、私の前にもたのんだモノが運ばれる、おにいさんはチラッと私が頼んだモノを見た、まさかこれも食べたいのかな?おにいさんの食欲恐るべし
「もし、お腹いっぱいになったら食べてくれますか?」
「あぁ、もちろんだ、おれに任せろ」
ああ、昔テレビで見たことがあるな
俺の胃袋は宇宙だっ!
って台詞がおにいさんにはお似合いだ
その後、おにいさんはかなりのスピードで頼んだトンカツ2人前を食べ終えた、私が食べ終わるのを待っていてくれた、お店を出ると私の当面の必要な物の買い出しを済ませた、服やら下着やらだ、すっかり時間も経ってしまい、荷物もかなり多くなったので帰る事にした、2人で仲良く手を繋いで歩いていると突然後ろから名前を呼ばれた、でも複合施設だから同じ名前の人が呼ばれているのだろうと思い振り返る事はしなかった、だって私にはこちらに友達なんて1人もいないから呼ばれる事はまずありえない、無視していると走ってくる音が聞こえてその後すぐ肩を強くつかまれた、私は驚いて振り返るとそこには旦那がいた
「おいっ、みずきっ!なんで…なんで呼んでるのに無視するんだっ?」
私は驚きのあまり声が出ない
「なぁ!聞いてるのかっ?」
「もとき君、少し落ち着かないか!」
おにいさんが旦那の手をわたしの肩から振り払う
「おにいさん!なんなんですか?俺の嫁に手を出したんですか?」
かなり大きな声で旦那がおにいさんに問いかける、周りの人がざわざわとこちらを見ているのがわかる
「とりあえず外に出ないか?周りの目もあるし」
おにいさんが提案する
「はあ?そんな偉そうなこと言える立場なのかよ!人の嫁たぶらかしてよぉ!」
「おっ、落ち着こうよ?ごめん、無視した訳じゃないよ、外で話さない?ここだと他の人の迷惑になるしさ?」
私が提案すると、旦那はしぶしぶといった様子で外へと出た、外に出ると誰かにスマホで連絡を取っているようだ、その隙に私はおにいさんにあまり旦那を興奮させないでほしいと小声でお願いした、旦那は一度怒ってしまっと手がつけられなくなる、出来るだけ穏便に済ませたい
「さっきは、ごめんなさい、まさかあなたがここにいるとは思わなくて……」
「ああ、そうだろうなぁ?探してんだ、みずきを昨日からずっとな」
「昨日から……?」
「そうだ……あの後すぐ家に帰ったのにみずきもあの野郎もいなくなってて、すごく心配したんだぞ?」
旦那は少しづつ私に近付いてくる
「でもっ……それはあなたが……おねえさんと……」
「なぁ?きょうだいなんだし、そんなに騒ぐ事じゃないだろ?みんなやってるよ、みずきも一緒に混ざればいいだろ?あの野郎は絶対に嫌だけどな」
「その、あの野郎っていうのはおれの事なのかな?もとき君?」
おにいさんが話に入ってくる
「ああ、そうだよ、もうお前の事はおにいさんだなんて思ってねぇからな!馴れ馴れしく話しかけるなよ!」
「おれもお前の事、義理の弟だからって可愛がってたけどもうやめるわ、大人の男同士話付けようや?」
おにいさんはそう言いながら私と旦那の間に入ってくれた
「おいっ、てめぇ俺のみずきに近付くなよ!」
旦那がおにいさんの肩を押す
「ほお、手を出すのか?弱い奴ほどすぐ手を出すんだよなぁ、悪いけどなみずきはもうお前のみずきじゃねえんだよ?おれのみずきだ、お前みたいな最低な男とみずきを一緒にさせておけないもんで」
旦那の顔が真っ赤になっている、かなり怒って興奮しているようだ
「はぁあっ?何言っちゃってんの?このじじい、俺のだよ!俺のみずきなんだよ!ふざけんな!」
「なあ?お前さ、自分の立場わかってんの?お前がみずきを裏切ったんだろ?今更何を言っても遅えんだよ!好きな女1人守れねぇくせに偉そうなこと言うんじゃねえよ!」
おにいさんは私の手を取ると車へと戻る為に歩き出した、旦那が何か言っているけど頭の中がぐちゃぐちゃになってしまっていて何を言っているのかわからない
早足で歩くおにいさんに引っ張られる形になる、おにいさんの歩幅が大きいのか私はついていけなくなってしまう、それに気が付いたおにいさんは軽々と私をお姫様抱っこするとそのまま早足で車まで戻った、通り過ぎる人たちはヒソヒソと何かを言っているみたいだ、そりゃお姫様抱っこしてる人なんてそうそう見られるものではない
「おにいさん……私1人で歩けますから……」
「そうか?さっき立ってる時だって足が震えてたのに?おれについて歩けなかったのに?無理すんな、んで周りの目なんか気にすんな、黙ってそこにいろ」
私足が震えてた?
嘘っ……全然自分ではわからなかったのに、おにいさんそんな小さな事にも気が付いてくれてたの?
「それと、あいつらとの事はもっとちゃんとしたところで話し合わないとダメだ、こんなところで大声で言い合ったって時間の無駄だ、とりあえず家に帰ろう、きっと家に来るんだろうけど家族が味方だ、守ってくれる、もちろんおれも守るから、な?みずき」
「はい……私も、私も頑張ります」
「おう、でも無理すんなよ?手だけは出させないようにするから、男が女に手をあげるなんて最低な事だからな、さぁ車に乗って?」
そう言うとおにいさんは私をゆっくりと下ろしてくれた、私は車のドアを開けて助手席へと乗り込む、続いておにいさんが運転席に乗り込んでエンジンをかけて足早にお店を出た
帰りの車内で私とおにいさんは強く手を繋いだまま一言も話さなかった、正確には何も話せなかったのかもしれない、これから何が起こっても大丈夫だって確証が欲しかったけど、ここまで来て逃げ続ける事は出来ない、どんな結果になったとしても立ち向かわなければいけない
そんな強い気持ちの表れなのか
痛いほどの力で手を繋いでいた
家に着いて荷物を持って家の中へ入るとお兄さんが出迎えてくれた
「おっ、おかえり、もー飯食いに行くなら誘ってくれよー?母さんもいないしから仕方なくカップ麺食べたんだぜ?」
お兄さんは冗談交じりにそう言った、なんだか心がホッとした
「ははっ、ごめんよ兄貴、今度は誘うよ」
「なんで笑うんだよ?まったくお前たちは……」
「実はさっき会ったんだ、もとき君に」
「もときって誰だ?」
「私の……旦那です……」
「えっ?あぁ、そうなのか、でもなんでだ、居場所がバレてるのか?」
「なんか旦那が言うには昨日からずっと探してたって私の事を……」
「みずきちゃんの事を?で、なんでそいつがここを知ってるんだ?」
「それなんだけど、多分奥さんが教えたんじゃないかって思ってる、もとき君と奥さんが連携し合ってるんじゃないかってだからここに来るのも時間の問題かもしれない」
「ほほう、まあいいんじゃねぇの?俺はみずきちゃんの味方だし、親父も母さんも味方だから心配する事はないだろう?」
「そうなんだけど、もとき君は怒ると手がつけられなくらしくてさっきもかなり興奮してたみたいで手を出してきたんだ、おれだったからよかったけどみずきに怪我でもさせられたらおれ、止められなくなる」
「ふーん、まあでも弱いんだろ?そいつ、向こうから手を出してくるならこっちもある程度は反撃してもいいだろ?正当防衛だって、みずきちゃんを守る為なら仕方ない」
みんな私の事守ってくれるんだ、嬉しいけど、まだ……迷惑かけたくないって思ってしまう自分が嫌になる、いざとなればおにいさんたちを守る為に自分の身を差し出す覚悟はしておこう、甘えてばかりじゃ、守られてばかりじゃ前には進めないもんね
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