47 / 114
その距離感、すれ違い
5
まだグズグズしている吉継だが、だいぶ泣き止んできた。
「吉継、療法士とのプレイは続けろ」
「…はい」
「それで足りない分は俺が相手してやる」
「厚木さんが…?」
でかい図体で厚木の膝に手を置き、上目遣いで目をぱちくりさせている。
ただの頭がおかしいSubだと思っていたのに…。
「不満か」
「違う…もう俺としたくないんじゃないかって思ってたから…」
「そんなことはない。だが俺が忙しいのは本当だ」
自分の欲求解消すらままならないくらいで、貪欲な吉継の相手は到底務まらない。
「お前とプレイするならあの家の方がいいが、普段はどこにいてもいい。ただ山科は、お前の事を気に入っている」
「山科さんが?」
「俺のときより甲斐甲斐しい」
山科は、吉継を息子のように可愛がっている。
吉継が寂しがっていると言ったのも彼女だ。
「山科さんの料理は美味しくてつい食べすぎてしまいます」
「直接言ってやれ」
吉継は、このマンションを維持したまま、押元が決めた療養期間は”藍”にいることを決めた。
待機させていた車で”藍”に着くと、山科が一目散に吉継のところへ走って出迎えをした。
明らかに泣きはらした目を見ても、態度を変えないところはさすがだ。厚木は睨まれたが。
「ご無事でよかったです」
「心配かけてすみません」
「そんなことは良いですから、お腹空いてるんじゃないですか。夕食の用意はできていますよ」
グイグイ吉継をキッチンへ誘導していく。
山科は、厚木の方へ向き直り、
「吉継さんを連れ戻してくださり感謝しています。でも…」
出入り禁止ですから。と副音声が聞こえた。
厚木は家主なのであからさまには追い出されないが、釘は刺された。ひどい扱いである。
定時で帰ってもいいと言ったのに、吉継が心配で持っていたようだ。
笠井には連絡しているので、別の運転手が手配されてくるはずだ。
中には入れないので、玄関先で待つ。
「厚木さん」
一旦キッチンに入って行った吉継が、玄関に戻ってくる。
「帰るんですか」
「ああ、まだ出禁中だ」
「どうして厚木さんが自分の家で出禁になるんですか」
「さあ…、そんなことより早く飯を食って寝ろ。お前が心配で山科が帰られない」
「あっ、わかりました。また来ますか」
「近いうちに様子を見にくる」
「はい、おやすみなさい」
と言って、キッチンに戻っていく。
山科が不思議そうな顔をして二人のやり取りを見ていた。
明日には出禁も解けているだろう。
あなたにおすすめの小説
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。