【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

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ネガティブなマッチング

ネガティブなマッチング 1



 「顕さん、どうしてここに…」
 「朋志こそ。俺は講師先がこっちで、休憩中なんだ」
 「そう…」

 2年ぶりに会う顕は、ほとんど変わっていないように見えた。
 顕は、企業向けに研修講師をしている。
 たまたま近くに研修をしに来ていて、気分転換と昼食をしに外へ出たということらしい。

 
 ずっと会いたくても会えないと思っていたのに、本当に偶然としか言いようがない。

 --- さっきみたいにならないようにしないと。

 知らないDomの人に対して、あれだけ心が乱れたのだ。
 顕に変なところを見せたくない。早く帰ったほうがいい。


 「元気そうですね。俺もう」
 「朋志、昼ごはんは食べたか」
 「食べました」
 「じゃあ俺がごはんを食べる間だけでいいから、お茶だけでもつきあってほしい」
 
 






 舌の根も乾かないうちに、朋志は、近くのカフェで顕と向かい合って座っていた。
 

 第2性はマイノリティだ。みんなが第2性の種を持って産まれてくると言われていても、全ての人が芽吹くわけではない。俺のせいで、顕さんは世間的にバツが付いてしまっている。法整備されても、満足はしていないし、人の目もそこまで優しくはない。
 

 顕さんもDom性が強い人だ。失態は避けたい。


 そこまで考えて、どう言えばいいのかとあれこれ頭を巡らせる。


 「元気にしていたか」
 「はい」
 「無理やり誘って悪かったな。あれからずっと朋志のことは気になっていたんだ」
 「それは俺も。でも、元気そうで安心しました」
 「ああ。元気にしてるよ」
 
 そこで話が途切れた。
 パートナーだったことがあるなんて信じられないくらいよそよそしい会話。



 本当に話したいことはきっと違う。
 顕さんも俺も。
 切り出すタイミングだけの問題だ。ここで別れたらもう二度と聞けないだろう。

 
 顕さんがランチセットを食べ終えた。俺も、頼んだアイスティーがほとんど氷だけになった。顕さんはこれからまだ仕事が残っている。元気な姿だけでも見られたらそれで満足とするのがいいのか。

 「顕さん、パートナーは…いますか」


 時計を確認していた顕さんの動きが止まる。
 「ああ、いる」
 逡巡したような素振りも一瞬のことで、顕さんははっきりと言った。言ってくれた。
 安心や羨望、顕さんとの溝が決定的になった絶望。顕さんとの楽しかった思い出、噛み合わないプレイ…、色んな感情が綯い交ぜになって混乱ぎみだけど、聞けてよかった。


 「俺からも聞きたかったんだけど、先越されたな。朋志は?」
 「俺も、…います」

 
 これで最後だ。わざわざ本当のことを言う必要もない。
 顕さんに気を遣わせてしまうだけだ。きれいに別れたい。

 「そうか、よかった」
 会計を済ませて店を出る。
 

 「つきあってくれてありがとう」
 「こっちこそごちそうさまでした」
 「これくらいはさせてくれ」
 俺はこのまま帰るだけだけど、顕さんはこれからまだ仕事がある。
 連絡先はパートナーを解消したときにお互い消しているし、これからのことを考えたら聞かないほうがいい。
 顕さんの新しいパートナーも、前のパートナーと連絡を取っていると知れば、良い気分にはならないだろうし、顕さんが不利になることは俺も望んでいない。



 ここいら辺で潮時だ。会えてよかった。
 「じゃあ、俺はこれで」
 会釈して帰ろうとすると「待ってくれ」と、呼び止められる。


 「はい」
 「あ、いや」
 顕さんは、俺を引き止めたものの、何を言おうか迷っているようだ。

 俺も名残り惜しい。でも、俺と顕さんがこれ以上時間を共有して何になる?
 欲しいものが与えられないと思い知らされ続けるのはつらい。


 そのうえ、短い時間のあいだに、二人の強いDomと話をしていて、すごく疲れている。できれば早く帰りたい。
 「顕さん休憩時間が」
 「朋志、やっぱり顔色がよくない」




 心臓が跳ねた。そんなところに気づかないで欲しい。
 顕さんは、少し迷ったみたいだったが、まっすぐ俺の目を見て言った。
 「パートナー…いないんだろ」






 
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