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溺愛Domは甘やかしたい
溺愛Domは甘やかしたい 1
「うーん…」
白いポロシャツを掲げて首を捻る。学生みたいだな。
棗と応急処置的プレイをしてから、早十日。
体調はいまだ安定傾向にあった。
いつもと同じビルをいつものように清掃する。
「丸目くん、二階のトイレもお願いしていい?男性用だけでいいから」
「はい、行ってきます」
この数日、持ち場を早く終わらせることができているので、別の場所も回されるようになった。
最後に、ポイントに集められたゴミを回収して廃棄場へ。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様ー」
昼ごはんは、近くのスーパーでおかずを買って帰る。
メッセージアプリには、棗からのメッセージが届いていた。
棗はマメに連絡をくれる。
朋志の体調を伺うものがほとんどだが、その日の昼食や、茶柱が立った湯呑み、屋上の猫、他愛もない写真を添えてくれる。
朋志も、買ってきた惣菜を皿に移して、即席の味噌汁、炊きたてのご飯を茶碗によそい、写真を撮る。
『ご飯は炊きました』
程なくして、『ご飯だけ?』と返事が返ってきた。
仕事が午前中だけなので、時間はあるし、節約も兼ねて自炊しているが、料理は一向に上手くならない。スーパーの惣菜コーナーが主な栄養源といえる。
『お米を研ぐことが一番得意ですが、サラダも作れます』
『丸目さんと一緒にご飯を作ってみたい』
『ツヤツヤご飯が見たいですか』
『見たい』
あのビジネスホテルに泊まった日の朝、一緒に朝食を摂ってから別れた。
次の日は、散歩コースがある公園まで一緒に行った。朋志が人混みは苦手だと言ったので、人が密集しない屋外で会うことになった。
夕日が沈むのを一緒に眺めてから帰る…、健全すぎるデート…といっていいのかわからないが…を思い出して、面映いやら、棗には申し訳ないやらだ。
プレイはしていない。第二性については、話題にもならなかった。
代わりにいろんな話をした。
棗の趣味はウィンタースポーツと水泳。最近は、ボルタリングにも興味があるようで。仕事帰りにボルタリングジムに寄ることもある。
公認会計士らしく、一日中数字を見ていると反動でとにかく体を動かしたくなるらしい。
好きな食べ物は大豆製品と肉の赤身、かつお。良質なタンパク質を摂りたい、と真顔で教えてくれた。
朋志は、ビルの清掃員。時々マンションの清掃もする。趣味らしい趣味はないが、ハイキングや散歩、低い山の登山が好きだ。行きつけの猫カフェにお気に入りの猫がいる。好きな飲み物は紅茶。
棗のことを知るほど、もっと知りたいと思ってしまう。
この日、プレイをしなかったことで、朋志の気持ちはかなり安定していた。
棗のことが好きだ。
きっと、ゆくゆくは棗とプレイをすることになると思う。棗が言ったとおりに。
日々やり取りするメッセージに、健全なデート。
棗が朋志との時間を大切にしてくれようとしているのを感じていた。
そして届いたメッセージ。
『この土曜日は空いていますか』
『空いてます』
『では一緒に作りましょう。僕の家でも?』
『大丈夫です』
というやり取りの末、棗の家に行くことになった。
朋志は、普段着るものに頓着しないため、服装選びの経験値が恐ろしく低い。
相手に失礼がなく、かつ、さりげない清潔感もオシャレ感も演出したい…と、高望みをしていることに気づかず、何を着ていこうかとうんうん悩んでいた。
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