【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

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トラウマ持ちのSubは面倒くさい

トラウマ持ちのSubは面倒くさい 4


 出勤前の電話で、「八峰ビルに行く予定の人が急用で休んでしまって、違う現場から代わりになりそうな人もいなくて。申し訳ないけどそっちに行ってほしい」と、チーフの梶さんに言われたので、今日の現場は八峰ビルになった。

 朋志が勤めているのは、バスに乗って15分で行ける清掃会社だ。体調不良が現れだしてから、今までの仕事が続けられなくなり、午前中だけ働けるこの清掃会社に1年ほど前から勤めている。
 梶をはじめ職場の人たちは、朋志のバース事情に理解がある。
 徒歩でいけるような近い現場を朋志に、優先的に回してくれている。代わりに遠い現場は、他のスタッフたちが持ち回ってくれている。急な人手不足で困っているなら、できる限り協力したい。
 「住所教えてください」
 一も二もなく返事していた。
 
 電車で10分ほどの間に人酔いしてしまい、吐き気を覚える自分が情けない。以前は移動時間を気にしたことなんてなかったのに。

 --- 強い薬に変えたほうがいいのかも知れない。
 主治医が言うように、心療内科を受診することも考えていかなければ。
 

 今の職場を気に入っている。バース事情を抱えた朋志に配慮してくれるありがたい職場だ。
 この職場を辞めることがあれば、その先、どんな生活になるのか検討もつかない。
 

 社会と関係を絶たれて、孤独に悩まされるのか、抑制剤が効かなくなって精神不安がつきまとうか、抑制剤を服用した副作用で入院か……。明るい未来はなにもない。


 
 
 「臨時で派遣された丸目です」
 「待ってたわ。急にごめんね」
 八峰ビルのリーダーから清掃区域を引き継ぐ。制服に着替えて、気持ちも切り替える。

 八峰ビルは、かなり大きなオフィスビルだ。いつも朋志が清掃しているビルと比べて、スタッフは変わらないのに、清掃区域は広い。
 普段は優遇されていたことに気づいて、感謝と申し訳なさで、代役をつつがなくこなさなければ、という気持ちになる。
 会議室の時間割をもらい、人の出入りが多くなる時間帯を避けながら清掃していく。終わる頃になると、空調が効いているにも関わらず、汗ばむくらいだった。


 「丸目くん、助かったわ。ありがとう」
 「役に立てて良かったです」
 リーダーやスタッフから労いの言葉をかけてもらった。時間以内に清掃し終えてホッとする。「若いから動きもいい」と、少し年配の女性スタッフからは、個包装された飴をもらった。

 いつもより動いて喉が渇いた。動いている時には意識していなかった疲れがでてくる。エントランスロビーのソファで休憩しながらお茶を飲んでいると、お尻に根が生えたみたいに動けなくなった。しばらく休ませてもらおう。


 エントランスは、人気がない時間が短く、スーツを着た人たちが代わる代わる出入りしている。
 Tシャツに綿パンという、場にそぐわない格好をした上にソファを占領している朋志を、訝しげに見ながら通り過ぎる人もいる。

 帰ってから休んだほうがいいな。


 ゆっくり立ち上がってエントランスをくぐると、昼間の日差しが刺すようで、一瞬動きが止まる。


 ふらついたのかも知れない。
 「大丈夫ですか」
 腰を支える手と、耳元に聞こえる声。
 微かに針葉樹の香り。
 じんわり伝わる熱。



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