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ネガティブなマッチング
ネガティブなマッチング 6
「コマンド…」
「はい」
「いつですか」
全く思い出せない。
かと言って、棗が嘘を言っているようにも見えない。
「丸目さんがあの男にコマンドを使われそうになったとき--」
朋志は、男の強引な行為に、ショック状態になっていたようだ。サブドロップによく似たようすで、混乱もしていたので、なんとか落ち着かせたいと思った。とっさのことだったらしい。
「すみませんでした」
「いえ…、こちらこそ助けていただいて…」
棗につられて、朋志も頭を下げる。
棗は勝手にプレイをしたことを気にしているが、朋志を心配してのことだ。
Domとのプレイに拒否感はあっても、棗を責める気はない。
むしろ感謝している。
現に、体は軽く、すっきりしていた。
療法士とのプレイでもほとんど体調改善ができなかった。
抑制剤も効きにくくて、いつも頭に靄がかかっているような状態で、体も重く、何をするのも億劫で…。
棗に頭を下げるのをやめてもらいたい。
「棗さん、頭を上げてください」
棗は何も悪いことはしていないと思う。
それよりも…。
「棗さんとプレイして、…覚えていないですが…でも、すっきりしました」
「…」
「体も軽いです」
「…本当ですか」
「はい」
棗は、まだ納得していないといったようすで、じっと朋志を見ている。
「お礼を言うのは俺の方です」
助けてくれてありがとうございますと、棗の目をしっかりと見る。
細めのアーモンドアイ。どのパーツを取ってもきれいな人だなぁと感心する。
コマンドを拒否しても聞いてもらえなかった。その前からDomと一緒にいることにしんどさがあって、距離を取りたかった。
そんな状態であのときコマンドを使われていたら、自分がどうなっていたかわからない。
どうにかしてこの感謝している気持ちを棗に伝えたい。
夢うつつに、誰かに褒めてもらったような。なにか欲しかった言葉を言ってもらえたような。嬉しくてくすぐったかったような。
--- あれは、顕さんじゃなかったんだな…
「丸目さん」
棗が居住まいを正す。
「はい」
「丸目さんが良ければ、また会いませんか」
「棗さん…」
「僕は、丸目さんのことが好きになりました」
棗がまっすぐ朋志を見据える。
ストレートすぎる言葉にびっくりして返事を忘れてしまった。ぼうっとする。素直に嬉しい。
助けてくれた感謝もあるが、棗に好意を持ち始めている。
これきりで終わりにしたくない。
--- 棗さんとまた会いたい。
--- 俺も棗さんのことをもっと知りたい。
「できれば、合意の上でプレイもしたいです」
「あ…」
棗はDomで、朋志はSubで。
そうだ。ダイナミクスバーで顕から聞いた。棗は、朋志のことを気に入ったみたいだって。
朋志がSubだから。
欲求不満のSubに命令したいだけなのかも…。
ちらりと浮かんだ考え。そんなことを思うのは失礼だ。
棗は、あの強引なDomとは違う。
「はい…俺も…」
棗への好意は確かにあるのに、急に色を無くしたように感じる。
棗がサイドボードからスマホを取り、操作をしているのを見て、朋志もカバンからスマホを取り出し、連絡先を交換した。
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