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甘やかしたいDomの献身と…
甘やかしたいDomの献身と… 5
「仕事が忙しかったのは本当ですが、…どうにでもやりようはあったと反省しています。すみませんでした」
「いえ…顕さんに会いたいとか言って、俺も悪かったです」
「違います。丸目さんは、許斐さんと連絡を取って会おうが、好きにしていいんです。…でもそう思わせたのは僕ですね…」
棗が怒っていないとわかり、ほっとした。棗は棗で、反省するところがあったと認めた。
これで仲直りできたと思った。
「俺も考えなしに言ってしまったし、いいんです」
しかし、棗は、まだ浮かない顔をしている。
なにかを言おうとして、悩んでいるような。
しかし、決心がついたように口を開く。
「僕は許斐さんに嫉妬しているんです」
「棗さんが嫉妬…」
全く想像できない。
棗は朋志話を聞いて、トラウマを解してくれた。
朋志のことを大事にしてくれるが、棗自身はあまり内面を語らない。
苦悶の表情をしている男の横で、朋志は不謹慎にもときめいてしまった。
「ええ、もうずっと…」
棗と顕は『フィー』で知り合った。
Domとしてのタイプは違うが、Dom同士。話は合った。
棗は、Domとしての評価が高くない。
一夜限りの刺激的なパートナーを求めるSubが多い『フィー』では、Subを甘やかして、可愛がりたいDomの需要はなかった。
ときどき興味から、甘やかされてみたいというSubとプレイしながら、抑制剤を飲んで欲求をコントロールしていた。
逆に、顕のように、Subを精神的に追い詰め、お仕置きをして愉しむタイプのDomは、一夜の相手としてかなり需要が高く、パートナーに困ったことはない。
どうして同じDomなのに、こうも違うのか。
プレイの間だけなのに、Subを被虐的に扱い、グレアで服従させる態度を取れないことに劣等感があった。
「許斐さんから、ときどき丸目さんの話を聞いていました」
「えっ」
顕がサブドロップさせたSub。
本当は優しくしてほしかったのに、気づかずに顕が本能のまま追い詰めてしまった。
後悔しているが、会ったところで二度とプレイはできない。性質を変えることはできないのだから、同じ結果にしかならない。
「僕は、そんなSubが本当にいるなら会ってみたいと思っていました」
興味本位ではなく、本能から優しくされたい、甘やかされたいと求めているSubがいるなら。
棗を受け入れてくれるかもしれない。
顕と朋志が再会したのは偶然だった。
朋志もSubとしては、珍しいタイプだ。プレイが上手くいかず、欲求のコントロールができていないのではないか。
疲れたようすの朋志を見て、そう判断した顕の脳裏には棗の顔が浮かんでいた。
「でも、最初に会ったあなたは、許斐さんのことが好きでしたね」
「…」
「僕は、あなたのことをすぐに好きになりました。Subとしてだけではなく」
「…棗さんは、俺が顕さんのことを好きだったと知っていたんですか」
「知っていました。一途で健気だと。こんな人が僕のSubになってくれたらいいのにと思っていました」
「僕のことを好きだと言ってくれたときは嬉しかったですが、心のどこかでは、抑制剤を服用する必要がなくなれば、また許斐さんのDom性に引き寄せられて僕から離れて行くんじゃないかと…、気が気でありませんでした」
棗がそんなことを考えていたなんて、思いもしなかった朋志は、なにもいうことができなかった。
その頃の朋志は、棗に優しくされて、ただただ浮かれた毎日を送っていたのだ…。
「でも、僕とのプレイで日に日に元気になっていくあなたを見るのは僕の喜びでもあり、同時にDom性も満たされました…。
僕を選んでくれたらいいのにという期待もしていました」
「一方で、プレイ中も、丸目さんが、許斐さんに助けを求めたら終わる関係だと、期待してはいけないと自分に言い聞かせていました」
「あっ」
セーフワード…『顕さん』
朋志にとっては、たいした理由ではなかった。棗にとっては、『いつでも顕に助けを求められるから棗とプレイしてもいい』と言われているのと同じだった。
そのうえ、顕と会いたいから連絡先を教えてほしいと言われた棗の気持ちを考えると…。
「俺…なんにも知らなかったんですね…」
「僕は、こんな僕を知ってほしくなかったんです」
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