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溺愛Domは甘やかしたい 2
溺愛Domは甘やかしたい
棗はあまり、住まいにこだわりがない。
いま住んでいるマンションは、仕事を初めたころ、”なんとなく””とりあえず”購入したものだ。
家具も適当にそろえただけで、なんの執着もないのだが…。
「このソファ、ふかふかして気持ちがいいです」
と言って、棗にとって”なにも執着のない””このソファ”に座ってにこにこと寛いでいるパートナーを見ると。
また、ベッドで「大きい、王様みたい」と目をキラキラさせているところを見てしまうと。
ーーー 家具選びにこだわっておけばよかった…
自分のSubが、自分の選んだもので寛いだり褒めたりしているシチュエーションは、Dom心が大層満たされるのではと思うので、大きな獲物を逃したような気分で悔しい。
かといって、家具を総入れ替えするほどまだ自分を見失っていない。中途半端でため息が出る。
「こんなものしか用意できませんが…」
仕事終わりに、朋志の部屋に行くと、夕食を作って待っていてくれた。
料理はほとんどできないと言っている通り、野菜をちぎって盛ったサラダと冷ややっこと汁物、お惣菜の揚げ物。
たんぱく質にこだわりがある棗のために用意したと思われる冷ややっこは、おかわりが充分あると言っていたので、そのあたりに愛情を感じて悦に入る。
そう。ここのところ、棗は大変色ボケしていた。
パートナーである朋志のことを三国一の花嫁ならぬ、三国一のパートナーだと思っている。
色ボケの自覚はもちろんある。
淡々とこなしていた仕事にも充実感があり、仕事は義務でも消化試合でもない、やりがいがあるものだったのかと実感する毎日。
朋志は、棗よりも2歳年上ながら、全く世間ずれしておらず、作る表情は素直で幼く、少年のように見えるときがある。
比較的身長は高い方で、棗ともほとんどかわらないくらいだが、全体的に線が細く、抱きしめると一層細身だということがわかる。
先日やっと、仕事に行ける日が増えたと喜んでいた。
最近の目標は、ここ数年で落ちてしまった体力を取り戻すことらしく、棗のトレーニングメニューを参考に、できる部分を取り入れているようで。
うれしそうに「棗さんと一緒にボルタリングに行ってみたいです」と言う姿は文句なしに可愛い。
しかし棗は、つい。うっかり。そんなに頑張る必要はない、だの、一生自分の元で可愛がられていればいいのに、だの独占欲丸出しの言葉をぶつけたくなってしまう。
ただ安心させたい、支えたいという綺麗な部分だけではなく、棗自身あまり歓迎していない部分のDom性が、朋志を見ていると出そうになることがある。
棗の家に住まわせて、外にも出さずに囲い込んで、好きなときに可愛がって…。
尽くしたい欲がある朋志のSub性は、もしかしたら喜んで囲われに来るかも知れないが、朋志個人としてはどうだろうか。
抑圧を窮屈に感じ、すぐに離れていくだろう。
何度考えてもこの結論に行きつくわけで。
「次の休みはどうですか」
腹の中を微塵も感じさせない笑顔に、朋志は頬を上気させ、「いいんですか」と言って笑っていた。
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