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ハッピーエンドのその先は
変化を受け入れるには 6
「第一性欲がない人もいます。朋志さんが気に病む必要はありません」
「本当ですか…」
「もー、いるよ。世の中いろんな人がいるんだから。そもそもダイナミクス性からしてややこしいし。でもまあどんなでもだいたい生きていけるから」
「…」
「はい」
「あと、まだ朋志が第一性欲が無いとか決まってないし」
「はい。俺も断言するような言い方をしてしまってすみません、朋志さん」
「でも、今まで考えたことがないんです。俺、吉継さんの言う通りだと思います」
「あぁうん。まあ俺は顕とパートナーだったことがあるのにセックス経験がないことの方に驚いてるけど…」
「え、そうですか…? あの、ちょっと聞きにくいのですが…」
「はい大丈夫です」
「いいよ」
「二人ともプレイしながらセッ、…そういうことするんですか。何かきっかけとか合図とかあるんでしょうか。プレイの前後とか決まりがあるんですか。そういうのがわかれば、俺でも棗さんのこと満足させてあげられるのかなって…」
「…」
「…」
二人とも急に真顔で黙ってしまった。
--- 知らないのは非常識とか…暗黙のルールがあるとか…身の程をわきまえろとか…?
「…朋志さん、棗さんと触れ合うことはありますか」
「はっ。プレイ中とか…ケアもしてくれます。それ以外の時でも」
「どんな感じで?」
「抱きしめてくれたり、撫ででくれたり、手を握ったり。あとは…」
「あとは?」
あとは…。
「ひ、膝に乗ったり…」
言いながら恥ずかしくなってきた。不安が行き過ぎて口が緩くなっている気がする。証拠に、二人とも動きが止まってしまった。
「あっ違うんです。これは"Kneel"のルールで決またことで、俺もDomに見上げられるのは変だなって思うんですけど棗さんが」
「…羊羹にシュガー盛り盛りで甘やかされてるね。このまま聞いてて棗くんに怒られないかな朋志待ってもういいから」
「あの俺、なんか変ですか」
「うん、変…かも知れないけど、でも悪くない、つか良いと思うよ」
「俺も、変なこと言ったなって反省してます。今までのは気にしないでください」
朋志の知りたいことは何も教えてくれない二人。
でも二人だけでなにか話しが進んでいる。通じ合っている。
こんなんじゃあ俺…。
「棗さんとパートナーを解消することになったらどうしよう…」
「えぇっ」
「なくない?」
「だって、俺」
「朋志さん、落ち着いて」
「…はい」
「朋志さんは、棗さんと触れ合うとき、どんなふうに思いますか」
吉継の問いかけに棗とのプレイやケアをしてくれた時のことを思い出す。
--- 棗さんは、いい匂いがして、
--- 声も優しい。安心できる。
--- 褒めて抱きしめてくれたらふわふわする。
--- もっとくっついていたい。
--- いっぱい棗さんの好きなように躾けしてほしい。
そういったものがごちゃまぜになった気持ちの中に、体中を浸しているみたいになる。
「今の気持ちを素直に棗さんに伝えたら何も心配しなくていいと思いますよ」
「そうでしょうか」
「悩み聞かされたのか惚気聞かされてたのかよくわからないかいけつしたらおれのもきいて」
「ぜひ。俺も聞いてほしいです」
「聞かせてほしいです」
「今日は言いにくいところを色々教えてくれてありがとうございました」
話をしているうちに、日も傾きはじめていた。
「じゃーまたねー」
「素直に気持ちを伝えたら多分大丈夫ですよ」
二人に話を聞いてもらえてよかった。
一人だったら、もっとしんどかった気がする。
少なくとも、棗に直接言おうと勇気が出るまで、と言ってどこまででもずるずる引きずっていた気がする。
勢いのまま、棗に連絡をする。
『今日はお家に伺っても大丈夫ですか。棗さんと話しがしたいです。』
程なくして返信が来た。
『もちろんです。僕もちょうど帰って来たところです』
棗の家まで、バスと徒歩で約三十分。
頭の中で、どう言おうか考える。
棗さんは第一性欲がありますか?
…確かに聞きたいことだが、直球すぎて恥ずかしい質問だ。
--- なんにもない俺が立ち入っていいのかな
もしもあるなら、俺とプレイしたあと、他の人としてるんですか。
俺が今までそんなことを考えたことがないように、棗さんも俺となんて考えたことがないですか。
ずっと以前に誘われたという、その人たちのほうが棗さんを癒やしてくれるなら…
棗がそう言うなら、それを受け入れるしかないのかも知れない。
自分が受け止める自信がないから、仕方のないことかも知れない…。
棗の家に着き、夕食をごちそうになった上に手ずから紅茶を淹れてもらったあと、素直にここのところの悩みと今の気持ちを伝えたものの。
「朋志さんは、僕とパートナーを解消したいのですか」
と言われて、びっくりすることになる。
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