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ハッピーエンドのその先は
変化を受け入れるには 8
――― こわい
「朋志さんともう少しプレイがしたいです、いいですか」
「は、はい」
棗がこわいと思ったのも一瞬で、すぐにいつもどおりの優しげな雰囲気に戻っていた。
棗は、ベッドの縁に座って朋志を見る。
「"Kneel"、膝には乗らなくていいですが、…手はおいてください」
「はい」
ベッドから降りて、フローリングに正座する。
目の前にある棗の腿に手を乗せて見上げる。
朋志の手に手を重ねる棗の手は優しい。
「よくできましたね、可愛いです。…"Roll"」
「はい」
棗は優しい。
でも、さっきまでのふわふわした感じではない。
足を崩し、棗に見えやすいようにそのまま後ろに倒れる。
「待ってください。ベッドで横になってください」
「はい」
ベッドに座ってからさっきまで寝ていたことろで仰向けになる。今の棗に全身を見てもらうのは少しこわい。
でも、Subの本能が朋志を動かす。
――― 棗さんの匂い
緊張していたものが、棗の匂いを感じてほっとする。棗を見ると、お腹あたりで握っていた手を撫でて、すっと離れていく。
「あ…」
「あなたの全部を見せてくれてありがとうございます。もう少し頑張れますか、次で最後にしましょう」
「はい」
「”Attract”」
「…はい」
返事はしたが、どうすれば今の棗の気を引けるのだろうか。
棗はじっと見ている。
目が合うとにっこり笑って、「ゆっくりでいいですよ」と気遣ってくれる。
でもいつもと違う。
指を縛って、棗が寝室まで戻って来るのを待つあいだ、早く帰って来て欲しいと焦れる気持ちはあっても、不安はなかった。
棗に見られて居心地が悪いと思ったのは初めてのことだ。
棗にセックスパートナーができて、朋志がプレイだけのパートナーになったら、きっとこんな感じになるということだ。
--- 嫌だ。
棗が他の人とセックスしていいなんて嘘だ。
じゃあすぐに自分としてほしいとは言えないが、棗に他の人なんて触ってほしくない。
いかに自分の提案が良くなかったのか、今まで棗が朋志に、どれだけ心を配ってくれていたのかを思い知る。
シーツに鼻先を寄せると、棗の匂いがする。さっきから何度も同じことを繰り返してしまう。
これでは褒めてもらえない。
ベッドから降りて、棗に向き合う。できるだけゆっくり。
--- 俺から目を離さないで…
「棗さん」
棗の両手を取って、腰に回す。
ちらりと視線を向けて棗を伺うと、嫌がられているようすは無くて、ほっとした。
そのまま、棗の膝に乗り上げ、首に腕を回す。
「…これでいいですか」
「"Goodboy"」
抱きしめて欲しいという催促は伝わったようで、腰の手を背中に回して引き寄せてくれた。
胸と胸がくっついた感触にやっと力が抜け、全身を預けることができた。
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