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ハッピーエンドのその先は
かわいいSubの愛で方 1
「お仕事頑張ったら、ご褒美ありますよ」
と朋志が宣ったのは繁忙期の前。
ご褒美と言われたら、もう…。
大人のご褒美はアレしかない。
棗のちょっとだけ賢い脳ミソは、賢くあることを放棄して、夜のご奉仕をする朋志でいっぱいにした結果、セロトニンが過剰に分泌された。
頭の中でのことなのでストッパーはなく、朋志と大人のご褒美という棗史上最高のギャップ萌えに逆らわず、萌えに萌え転げ回った。幸せホルモンに浸されて、仕事はかなり捗った。
月曜日は、玄関で。
火曜日は、裸エプロンで。
水曜日は、バブって。
木曜日は、チャイナで。
金曜日は、Dom性を爆発させて、
土曜日は、反省して極甘プレイ
日曜日は、ノーマルプレイでリセット
といった具合である。
しかし。
棗のパートナーは、エッチって何?ハグで充分でしょ?という謎深きピュアピュア青年、奇跡の二十七歳である。
そこが彼の魅力の一つだが、年上だと俄には信じられないありさまで、棗自身、新発見の日々を送っており、仙人にでもなるつもりですか?と突っ込みを入れたくなる時がある。
さすがの棗も、0.1を1にすることはできても、0スタートではかなり分が悪い。彼が極薄ながら、少しでも性欲があることがわかったことは僥倖だった。
そして彼は、純粋なだけではなく、健気で真面目だ。
彼が示してくれた”ご褒美”という名の愛情を受け取りながら、なんと汚い大人になってしまったのかと…思いはしたが、そこはそれ、妄想させてくれてありがとうありがとう、という感謝の気持ちを込めて抱きしめた。
仕事終わりに来たのは、シャンデリアのある応接間、棗の幼なじみである厚木聡実の持ち物である別宅、”柘榴”である。
実家から然程遠くないので、幼い頃からここには馴染みがあった。
聡実は、本宅や複数ある別宅の中でもこの”柘榴”を気に入り基点にしているようだった。
訪問すると、長身の社長秘書が出迎え、「聡実さんは少し遅れるそうです」と申し訳なさそうにしながらこの応接間に案内してくれた。
応接間にのソファで寛ぎ、しばらくすると許斐がやって来た。
「遅れて悪い」
「いいえ、いま来たところです」
厚木家の家政婦が作った料理はプロ顔負けのレベルだ。
主が不在のまま、客間に移され、老舗の割烹料理店に来たかのような手料理が振る舞われた。
二人ともしばらくは料理を食べていたが、先に口を開いたのは許斐だった。
「自慢だよな」
「ええ」
「同棲させたって言ってたからな」
「見せつけたかっただけですね」
本来の名目は定期的な情報交換だ。
棗にとっても、同じDom同士でダイナミクス性について話ができる機会は大事にしていきたい。
しかし、今回呼ばれた趣旨は、それだけではないと察した二人だ。
可愛がっているSubを同棲させた。
羨ましいだろ。
ということである。
Domとして、パートナーのSubを手元に置いて、好きなときに可愛がれる環境を作ったことは、はっきりいって羨ましい。
プレイの間だけではなく、生活のすべて、果ては呼吸の一つまでを支配できることは、Domとしては至福である。
これみよがしに出迎えをさせて、同じ屋根の下にいることを見せつける。
忌々しい。
羨ましいを通り越して、忌々しいというのが一番の感想だった。嫉妬しまくりである。
許斐の方も同じ気持ちらしく、桐の箱に入っていた日本酒を惜しげもなくあおっている。
「朋志は元気にしているか」
「お構いなく」
「つれないな…」
「元気ですよ、もちろん」
「ならいい」
許斐は、朋志をサブドロップさせたことを今も気にしている。早々に新しいパートナーを得た許斐と違い、朋志が永らくパートナーがおらず、つらい思いをしていたことにも心を痛めているようだった。
棗に彼のパートナーになることを勧めて、収まるところに収まった今も、朋志が元気にしていることを確認して安心している。
朋志も許斐のことについてはいろいろあったはずだが、悪い印象は持っていない。
許斐にもSub性が働くらしく、新しいパートナーがいることをよかったと喜んでおり、許斐のパートナーともすぐに仲良くなっていた。
しかし、一生許斐に敵わない気持ちを抱えていくのかと思うとうんざりしてしまう。
許斐にあるのは、生涯のパートナーともいうべき相手と引き合わせてくれた恩と、棗の知らない時間を共有したことによる二人の見えない絆に対する嫉妬。
棗が一生抱えていかないといけないジレンマだった。
「許斐さんは、同棲を考えることはありますか」
「俺はまあ、したいかな。でも桜巳が嫌がるだろうから、当分無いな」
「そうですか」
「棗は朋志とするのか」
「…いえ、今のところは考えていません」
「ああ…夜とか大変そうだしな」
棗が少し言い淀んだ瞬間を見逃さず、ニヤニヤしながら言ってきた。
少し隙きを見せると、すかさず攻撃し、マウントを取ってくる。嫌な男である。
全くの見当違いではないのが腹立たしい。
そもそも、朋志の性事情を知っていることに殺意すら湧いてくるわけで。
「放っておいてください」
「美麗で絶倫と浮き名を上げた棗も、朋志相手じゃ自慢の刀を振るう機会も無く、錆びるだけだな」
「下品ですよ」
酒が入るとろくでもない。
「あいつ、僧侶目指してんのかもな」
猪口を口に運びながら、棗の大切なパートナーを高い酒の肴にして笑っている。
棗は、似たようなことを考えていたことは棚に上げ、下品なことを言う許斐の足を思い切り蹴ってやった。
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