96 / 151
ハッピーエンドのその先は
かわいいSubの愛で方 5
「縛ってください」
朋志が両手を差し出した。
「わかりました」
朋志に言われるまま手首を縛る。
手首にかかった縄を見て、朋志は、体に入っていた力を抜いた。
「どうしました、なにか嫌なことでもありましたか」
「…」
うつむく朋志の腰を抱き、ソファに座るよう促す。
膝に頭を乗せて頭を撫でる。体を動かし汗をかいたので、髪の根元は温かい。
少し癖のある柔らかい髪を梳いていると、棗の太腿に頬を擦り寄せて甘えてきたが、なにかを言うことはない。
コマンドで言葉を引き出すかどうか、迷ったのも一瞬。言いたくなったら言うだろうと切り替えた。
もともと人混みが好きなタイプではない。静かな場所を好むのだ。
次からは一瞬にいれば良いと結論づけた。
「朋志さん、落ち着いたらシャワーにしませんか、汗を流してゆっくりしましょう」
「…一緒に…」
「は」
「一緒に入ってください…」
棗の心中は複雑だった。
”一緒にバスタイム”という大切なイベントは、こう、もう少しムードある雰囲気で来てほしかったのだ。
棗が朋志を洗ったあとは、「俺も…」と言って朋志が棗の背中を流す。
いちゃいちゃではなく、介護だった。
しばらくの間、棗の心にしこりを残す出来事となった。
服を着させて髪を乾かす。
改めて抱きよせると、優しく抱き返してくる。
どれくらいそうしていたのか。
「棗さん、俺変なんです」
「朋志さん…」
向かい合う朋志の表情は幾分すっきりしていた。
話ができるところまで来ていることに安心する。
「棗さんは、さっきの女の人たちと知り合いですか」
「え」
「先生に教えてもらってるとき、棗さんが女の人たちと話をしていたのを見てしまって…」
「朋志さん」
「俺、別に棗さんが誰と話をしてもいいと思っているんです」
「ええ」
「でもあの人たちが棗さんの腕や肩を触ってたから俺…」
「…」
棗は朋志を待っている間、二人連れの女性に話しかけられた。女性達が言うには、棗をインストラクターと間違えたということだが、その後は食事に誘われたりしたので、そういうことだろう。お断りを入れたときに、引き止めるように女性の一人に触られた。
しかし、すぐに相手も諦めたので、棗は特に気にしていなかった。
朋志とインストラクターの距離が近い方が、棗にとっては気がかりだったのだが…。
「もしかして…朋志さん」
「…」
「嫉妬ですか」
「お、俺…」
みるみる間に目に涙が溜まり、一粒流れ落ちる。
堪らず痩身を抱きしめる。
「ごめんなさい…」
鼻をぐずつかせながら謝る朋志に、胸が痛んだ。
朋志は棗から見たら、未熟で幼い。
でも、何も思わないわけではない。
棗がするべきは、朋志の頭を撫でてやることでは無く、「女性に話しかけられて困った」と説明をすることだったとわかった。
「僕の方こそすみませんでした」
朋志は、誤解を解くための弁明をしようとする棗を強く抱き返してきた。
首を振って棗の肩で涙を拭いたと言って笑う朋志に湧いてきた気持ちそのままに従い、顔中に口をつけていった。
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。