【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

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ハッピーエンドのその先は

実家に帰らせていただきます 4




 週末、実家に帰ることになったと棗に伝える。
 『帰りだけでも迎えに行っていいですか』
 届いたメッセージを読んで、『ありがとうございます、嬉しいです』とお願いした。





 実家までは、電車と徒歩で約一時間かかる。
 朋志の実家は最寄り駅から徒歩で十分くらい離れた、閑静な住宅街の一画にある。
 丸目とローマ字で書かれた表札。小さいが手入れが行き届いた庭には、数種類のハーブが育てられている。
 
 インターホンを押して少しすると、母が出てきた。
 朋志を見て破顔する。
 「あの…、ただいま」

 



 「さ、中に入ってちょうだい」
 母が淹れてくれたハーブティーのハーブは、庭から摘んできたものだ。
 客間には、父もいた。挨拶をして、朋志が家を出るまでいつも座っていたテーブルの席に座る。
 ハーブティーを一口飲んで、父が口を開く。
 「朋志は、まだあの家にいるのか」
 「はい」
 「帰ってくるのか」
 「あ、いいえ」
 「朋志さん、電話では仕事が決まったからと言っていたじゃない」
 「正社員になりますけど」
 体調が安定して、正社員として働けるだけの体力もついた。


 「”治った"から帰ってくるという事じゃないのか」
 「いえ、”治った”とかでは無くて…」


 この平行線は予想していた。


 「通院して良くなったんじゃないの?」
 母が不安そうに聞いてくる。
 
 良くなったのは、通院したからじゃなくて…。


 「俺は、一人暮らしをして薬を飲んでもダイナミクスが全然安定しなくて、…」
 薬は効かない。療法士とプレイをしても駄目だった。
 棗に出会って、棗が朋志の安心できるプレイを見つけてくれるまで、ずっと苦しかった。
 棗がパートナーになってくれて、今こうして元気な姿を見せられるようになった。
 

 「パートナー…」
 「朋志さんのパートナーは、女性の方?」
 「いえ、…男性、です」

 窓から差し込む光は柔らかくキラキラしているが、ひときわ重苦しい空気になったことがわかる。


 両親がDomとSubのプレイについてどこまで理解しているのかわからないが、朋志のパートナーが男性だという時点で、理解の範疇を超えているだろう。
 

 「また、そんな相手に依存して、駄目になったらどうするんだ」
 「薬を飲んだ方がいいんじゃないの」
 「…」


 両親が朋志を理解しようと…できなくても…してくれるのは、親子だから…だけではない。

 ダイナミクスに関わる第二性を持った人は少ないが、学校の検査で判ることであったり、病院に専門の科があることだったり、療法士がいることだったり…。社会的に一定の枠組みがあるから。
 この人たちが、社会通念に反した行いはしない人たちだから…。
 優しい人たちだから、朋志はわかりやすく責められたりしないが、くっきりと濃い溝が見える。




 ”Sub”にとって、理解ある”Dom”の保護下、支配下に身を置くことは”安心”を得ることだ。
 多くの人たちが、家族やパートナーにたいして感じる安心感となんら変わらない。
 ”Sub”だとわかるまでは、朋志にとって、両親が、この家が”安心できる場所”だったのに…。




 朋志は、両親には理解してほしいと思う。

 心配をかけたくないと思っても、両親にとっては”治った”以外は受け入れられないのかもしれない。

 ーーー 親不孝になってしまった…
 ーーー ずっと心配してくれたのに…


 

 「俺、今までふたりに心配かけてきたから、仕事ができるくらい元気になったことを言いに来ました」

 「朋志さん」
 「言いたかったのはそれだけです」





 帰ることは止められなかったが、また来ると言う朋志に、来るなとも言われなかった。
 「朋志さんのお部屋はそのままにしてあるから、いつ帰って来てもいいのよ」という母も、朋志が本当に帰ってくるとは思っていないだろう。
 「うん、ありがとう母さん。父さんにも伝えて」
 「ええ」












 実家の最寄り駅に向かう間に、メッセージアプリを開いて棗に連絡する。
 近くの公園で待っていたら、棗が迎えに来てくれた。
 「ご両親とゆっくり話せましたか」
 「はい、ありがとうございます」




 
 車に乗り込み、棗に声をかける。
 「棗さんとプレイがしたいです」
 たくさん触ってほしいと誘う。
 棗はなにも聞かずに、「もちろん、いいですよ」と二つ返事で答えてくれた。









 
 
 

 
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