105 / 151
蜜月かもしれません
棗理人(25)の所見 3
「”Goodboy”よくできましたね」
痩身を抱きしめ、震える唇を啄む。徐々に力が抜けていくのを感じた。
唇だけでは足りずに、頬にこめかみまで。
首筋に吸い付くと艶やかな声が聞こえ、つい熱が入る。
「棗さ…」
「朋志さん…」
棗が唇を離す。朋志は、ふうと息を整えながらどこかうっとりしている。
「お仕置きが効きすぎましたか」
「俺、いつも棗さんにして欲しいことを思うだけでしてもらえて、すごく贅沢をしていたんだと気づきました…」
「僕が好きでしていることです、いつもありがとうございます」
見つめ合うと、どちらともなく笑い合う。
「腕は痛くないですか」
「大丈夫です」
「もう少しだけこのままでいいですか」
「はい」
「ありがとうございます」
「”Look”と”Stop”です。大丈夫ですか」
「はい」
コマンドで…。
視線を縛り、動きを縛り、体を縛る…。
酷い独占欲に笑ってしまいそうになるが、朋志はなにも気づかず、棗のコマンドを守ろうと目を開いて、動かないようにしている。
拘束され、複雑な形で固定された体を、辿るように撫でていく。
朋志は、吐息混じりの艶やかな声で棗を誘う。
コマンドがあるので、反応する場所を触っても動けず、声を上げるだけ。
目を瞑りたいのか、反らしたいのか、揺れる目で必死に棗を見ている。
少しも動けない程に縛られて、うっとりしている。
棗のSubは、健気でかわいい。
すべてを棗に預けてくれる。
「服が邪魔ですね」
「え…」
「今の朋志さんを見ていると、直に触りたくなりますよ」
「…ぅ」
「驚きましたか、すみません」
「いえ…」
「朋志さんは見えていないかもしれませんが、今のあなたすごくそそりますよ」
棗の愛撫と視線を、逃げ場もなく受け止めて、首筋まで赤く染めている。
その下も見たいと思うのは当然だった。
きっと全身を染めているに違いない。
棗のあけすけな言葉に、朋志が目を閉じる。
労いを込めて愛しい人を抱きしめる。
「ありがとうございます、素敵でしたよ」
「痛みはありませんか」
「ないです」
縛っていたところにも跡はなく、ほっとする。
朋志もプレイが終わり先ほどまであった、ふるいつきたいくらいの艶は成りを潜め、ケロッとしている。
そんな朋志を一言で表すなら”素朴”だ。
素朴で純粋。そしてどちらも純度が高い。
棗が愛して止まない朋志の美徳だ。
先日、朋志が実家からすっきりできないものを抱えて帰ってきた。
普段どおりに振る舞っているが、表情に影を落とすことがあることはわかっている。
親子関係は特別で複雑だ。気軽に立ち入れるものではない。
棗ができることは、自分のSubを可愛がることだけ。
朋志をこのまま囲い込みたいという欲がある棗にとって、今の埋められない溝がある親子関係は、朋志のことを思うと心が痛むが、しかし、悪くない。
醜い独占欲である。
また、朋志が棗に向ける信頼の情は大きい、その優越感。
次はどうして可愛がろうか考える時間も樂しい。
「朋志さん」
「はい」
「二人で旅行にでも行きたいのですが、どうですか」
仕事が本格的に始まったら、今までのようにゆっくり会うことは難しい。
近場でいいのでゆっくりできるところをと提案すると、見る間に嬉しそうな表情になる。
「はい、俺も行きたいです」
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。