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蜜月かもしれません
未来は見えないけれど 1
気持ちよく晴れ渡った休日。
早朝に近い時間から動き出し、公共交通機関を使って約二時間…。
温泉街である。
朋志は、棗と一泊二日の旅行にきていた。
ホテルのチェックインにはまだ時間がある。
一泊なので、ふたりとも荷物は軽い。
「バス停はあっちの方みたいです」
「はい」
そのままバスに乗って、観光をしてからホテルに行くことになった。
週末の観光地なので、バスも混んでいる。
肩を寄せて乗ることになった。
一緒に外出するときは大抵、棗が車を出してくれる。
朋志は免許を持っていないので、棗に頼り切りである。
棗も運転は好きらしいが、朋志はいつもしてもらってばかりだなぁ…と思っている。
棗は最初から、車で現地に行こうと言ってくれていた。
人混みが苦手なので、車での移動は大変ありがたいが、せっかくの旅行である。
ゆったりとしたスケジュールを組んでいるし、棗にも運転に気を取られず一緒に楽しみたかったので、今回は公共交通機関を利用することにした。
車内は混んでいるが、さり気なく棗が庇ってくれて、他の乗客との接触はほとんどしなかった。
ひそひそ話でもするみたいに耳元で話をする。
「晴れてよかったですね」
「雨だったら、プランの練り直しでしたからね」
今回の旅行は、ひたすら歩く。
きれいな湖の周りの景色を楽しみながら歩いて歩いて歩き回るプランなのだ。
そして夜はゆっくり温泉に浸かる。快眠プランである。
次の日は、世界遺産の寺院を観光する予定だ。
湖の周りはハイキングコースになっている。
新幹線で腹ごしらえは済ませているので、軽く準備運動をしてからスタートする。
天気もいいし、気温も季節の変わり目で暑くも寒くもない。すれ違う人たちと挨拶を交わしながら歩いていく。
「展望台はここから行けるみたいですね」
「行きましょう」
マップで所要時間を確認する。余裕だ。
展望台から眺める景色は、美しい湖を見渡せるだけではなく、奥に広がる山々まで自然一帯が見渡せて、とても綺麗だった。
「棗さん、きれいです」
「絶景ですね」
気がついたら二人、手を握りながら景色に見入っていた。
朋志から手を握ったのか、棗からなのか、あとから考えても全く思い出せなかった。
朋志にはもう一つ楽しみにしていることがあった。
英国風のカフェでゆっくり紅茶とスコーンをいただく。
朋志は紅茶を一口飲み、震える手でカップをソーサーに置く。
英国風の店内。窓は自然を目一杯大きく切り取り、背景には湖。そして粛々とした佇まいの棗。
「す、すごく…いいです…」
朋志が頬を染め、うっとりした眼差しを向ける。棗はそれを微笑みで受け止めた。
「朋志さん、スコーンがついてますよ」
棗が朋志の口の端についていたスコーンを取って口に運ぶ。
「あ…ありがとうございます…」
いろんな意味で。この光景、宝物にします。
いつもと違う光景、紅茶とスコーンと棗をひとしきり堪能する。
ぼうっと満足しか無い一息をつく。
幸せすぎる。
ちょうどそのタイミングで、店員さんに案内された二人が目に入る。
――― あ。
男女の二人連れだったが、朋志は男性の方から目が離せなかった。
あのひとSubだ。
やっぱり、同じダイナミクスを持っている人はわかってしまう。たぶん相手の方も気づいているだろうと思う。
棗も気づいているみたいだが、知り合いではないし、話題にすることでもない。
店を出ると、ホテルに向かうにはちょうど良い時間だった。
「行きましょう」
「はい」
朋志は、同じSubの男性のことが気になっていた。それは、男性の首に細い首輪が着いていたからだった。
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