【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

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蜜月かもしれません

未来は見えないけれど 2





 ホテルに着くと、棗がチェックインを済ませてくれて、鍵を受け取る。
 
 部屋からの景色もいい。
 山が近くにある。
 「きれい…」
 

 夕食までまだ時間があるので、先に温泉に浸かろう。
 
 「夕食の前に温泉行きますね」
 「はい」
 「?」


 棗が静かだ。
 無理に話をすることもないが…。
 機嫌が悪いわけではなさそうなので、疲れたのかな?と思ったが、どう考えても朋志より体力のある棗が、距離はあってもただ歩くだけの運動で消耗するとは思えない。

 お茶を淹れる。
 「どうぞ」
 「ありがとうございます」
 棗がお茶に手を伸ばす。
 「おいしいです、朋志さんは疲れていませんか」
 「すこし…。棗さん」
 「はい」
 「さっきのカフェで、…いましたね」
 「ええ」
 「Subの男性が、首輪をしていました」
 「Domの女性は同じ素材のブレスレットとチェーンをしていましたね」
 チェーンの先がカラビナ作りになっていて、首輪に繋がるらしい。
 「見ただけでわかるんですか」
 「あれと同じ商品を見たことがあります」
 


 あれは、なによりもわかりやすいパートナーの証だ。

 朋志はサブドロップを経験して、日常生活に支障をきたすほどの不調に悩まされていたので、仕方なく職場でカミングアウトして、周囲に配慮を求めた。
 幸い、恵まれた職場環境だったので、カミングアウトをして嫌な経験をしたことはない。
 今は棗というパートナーもいる。

 ダイナミクスはマイノリティーだ。
 あの頃、不調が抑制剤で抑えられるくらいのものだったら、きっとカミングアウトはしていなかっただろう。
 前のパートナーだった顕も、カミングアウトはしていなかった。朋志もあの頃はしていなかったし、それが普通だと思っている。
 

 あのカフェで見た二人はパートナーだ。
 首輪は、二人には結婚指輪と同じ位置づけのものだと、見てすぐにわかった。
 あの二人を見たのは短い時間だったが、朋志は、パートナー関係を可視化させて堂々としている二人を尊敬した。
 

 「羨ましく思いましたか」
 「えっ、首輪ですか」
 どうだろう。
 「羨ましいというより、…すごいことだと思いました」
 


 「僕は少し羨ましく思いました」
 「え」
 「いえ、首輪をして欲しいと思ったわけではありませんよ」
 「…はい」
 それはなんとなくわかるような気がした。

 棗もDomだ。
 朋志のイメージしていたDom像とは違ったが、付き合ってみると、棗はDomでしかない。

 プレイは優しくて、自尊心が満たされるくらい褒めてくれる。棗は不安感が強いSubである朋志を労って、ケアもたくさんしてくれる、思いやりのあるDomだ。

 そんな中にも、強い独占欲、朋志を隅々まで支配しつくそうとする視線、ほんの指先を動かすことすら棗に操られていると感じる時がある。

 そんなとき朋志は、棗をこわく感じてしまう。

 でもそれは不安とは少し違うもので。
 もうなにもかも棗に支配されているのに、なにをすれば朋志のDomがもっと満足してくれるのか、なんでも差し出すから暴いてほしいと、泣き叫んでしまいたくなるのだ。
 それがこわい。



 朋志がSub性から、被支配欲を持っているように。
 棗もDom性から、支配欲を持っている。
 首輪は、支配と被支配を可視化させるわかりやすい方法だった。

 朋志は、棗がしたいと言えばするだろうが、ふたりきりの時しかしないだろうなと思う。
 Subであることをカミングアウトして、パートナーがいることは知られていても、職場に首輪をしていく勇気はない。

 「あのふたりは、今の僕には刺激が強く感じました」
 「俺にもです」
 「ええ」


 「僕は、Domだということをカミングアウトしていません」
 「はい」
 それが普通だろうと思う。
 カフェで見たふたりの方がマイノリティーの中の少数派だろう。




 「朋志さん」
 「はい」
 「このタイミングで言うのはちょっと違うかも知れませんが、もともと言うつもりでしたし…」
 「?」
 棗にしては歯切れが悪い。
 ――― 首輪、とか…?
 あのふたりにあてられて、棗も首輪をしたくなったのだろうか。
 朋志的には、棗に縛られながらプレイするだけで棗を感じられ、充分満たされているのだが…。
 なにを言われるのかドキドキしている朋志をよそに、切り出した棗の方が落ち着いて見える。



 「僕と一緒に住んでくれませんか」
 「えっ」
 「部屋は空いています」
 「あっでも」
 「無理にとは言いませんが、考えてみてもらえませんか」
 「は、はい」
 「ありがとうこざいます」
 「…」


 それは、いつかの日に見た夢が現実になるかも知れないということで…。
 朋志には、首輪よりも刺激が強いことだった。


 





 
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