【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

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蜜月かもしれません

未来は見えないけれど 3





 「僕と一緒に暮らしてくれませんか」


 棗が言ったことは、朋志がこれまで全く想像していなかったことだった。
 それこそ夢に見て、ちょっといい気分になるくらいで…。


 「こんなタイミングになってしまいましたが、以前から考えていたことです」
 「は、はい」
 戸惑っている朋志を見て、棗が隣に座ってくれた。
 ちょっとほっとする。



 実は…と棗が言う。
 「会社を辞めようと思っています」
 「ええっ」

 会計士さんが会社を辞める理由なんか全くわからない。
 使途不明金を突き詰めて、会社の横領を発見してしまったとか…?
 朋志の頭の中はサスペンス劇場である。
 
 「すぐにではありませんよ」
 「あっ」

 よかった。
 朋志は、勝手に妄想を膨らませてしまったことを恥じた。

 「なにかあったのですか」
 「独立したくて」
 すごい。
 小さいけど綺麗なオフィス、入り口には”棗会計事務所”と書かれている。朋志の想像である。

 素敵なことだ。

 「応援します」
 「ありがとうございます」
 棗が朋志の手を握る。

 「朋志さんのおかげです」 
 「え」
 「朋志さんがここに来るまで、一つずつステップを踏んで乗り越えていく姿を見ていました。あなたは健気で、ひたむきに前を向いて歩いていくということを知っている素敵な人です」
 「…」

 「もっと朋志さんを近くで見ていたいと思いました。それだけでなく、僕自身も前を向きたいと思い、今まで悩んでいたことに挑戦することにしました」  
 棗の目は、穏やかだった。
 それはもう棗の中では決まっているからだ。
 夢ではなく、現実にするという強い意志を感じた。

 棗ならできるだろう。
 
 「これから朋志さんも忙しくなるでしょう、僕もなので…」
 「…」
 棗は、今と同じ距離感を保ったまま、お互いがしたいことを一緒に続けていきたいから、朋志と暮らしたいのだと言ってくれている。

 朋志はどうだろう。
 
 すぐに言葉を見つけられない朋志を見て、棗はふと微笑む。
 「悩ませてしまいましたか、せっかくの旅行なのに、すみません」
 「そんなことありません」
 朋志も棗の手をぎゅうっと握り返す。
 「棗さんが、そんなふうに思っていたなんて知らなくて、びっくりしました。でも、俺たちのことを考えてくれていて、嬉しいです」
 「ええ」
 「少し考える時間をください」
 「もちろんです。聞いてくれてありがとうございます」
 棗は朋志を一度、強く抱きしめてから離れた。
 表情は晴れやかに見える。

 「温泉に行きましょう」 
 「はい」
 

 棗は、言いたいことを言ってすっきりしたのか、すっかりいつもの棗だった。
 朋志は、いつも通りの棗に安心しながら、先程言われたことを考えていた。
 棗の真摯な気持ちに応えたいと思いながら。









 温泉は、大浴場と部屋にある。
 部屋付きの浴室へ一緒に入りましょうと、棗が真剣な顔で言うには。
 「リベンジさせてください」
 「リベ…?」
 棗のリベンジなど、朋志には全く預かり知らぬことである。
 「なにもしませんから」
 「はい、疑ってなんかいません」
 「…ええ、まあ、少しくらい疑ってくださっても…う、眩し…」
 棗が、薄目になっている。
 「僕たちにはこの問題がありましたね…」
 「棗さん…?」
 「朋志さんは気にしないでください。早急課題ではありませんので」

 棗に促され、浴室に入る。
 「わあ」
 「きれいですねえ」
 
 浴室は、露天風呂になっていて、夕暮れに包まれた自然美が眼下に広がる。
 山と空の境界線がぼやけていく。

 「夜空を見ながら入りたかったですね」
 「朝日もきれいでしょう」


 体を洗い、ゆっくり浸かる。
 棗のいつになくリラックスした姿に、朋志もじんわり疲れが取れていく気がした。濡れ髪を後ろに流し、滴り落ちた雫が肌を伝っていく。
 朋志は、棗から目が離せなくなってしまった。
 「あっ」
 「どうしました」

 「いえ…、なななんでもないです」

 

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