【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

np03999

文字の大きさ
114 / 151
蜜月かもしれません

未来は見えないけれど 4




 




 旅行から戻り、程なくして朋志の新しい生活が始まった。

 朝は今までと同じ時間だが、帰りは遅い。
 棗とは週末にしか会えなくなった。

 まだ変化に体はなれていないと感じるが、気持ちの上では充実していた。
 仕事は楽しい。
 最初は、環境の変化についていけるか不安だったが、周りのサポートもあり、ストレスはない。
 今のところ、ダイナミクスの不調もない。


 棗のおかげである。


 棗が一緒に暮らしたいと言ってくれたことは、朋志の頭の中にずっとある。

 あれから棗は、本当に普段どおりだった。
 休憩時間に、スマホで写真をスワイプする。
 旅行で撮ったものだ。
 湖を背景にした棗と、寺院で一緒に撮ったもの。
 
 朋志は、未だに信じられなかった。
 こんな綺麗で格好いい人が、パートナーだと言ってくれるだけでもすごいのに、一緒に住みたいと言ってくれた。


 旅行先で見たカップルは、首輪で絆を可視化させた。
 衝撃的な光景だった。
 朋志には思いつかない方法だ。


 ダイナミクスを持つ者同士がパートナー関係になったら、任意で公的機関に登録を行う。
 そうすることで、婚姻関係と同等の扱いをうけられる。もしもパートナーが病気や怪我で病院に運ばれたときなどは、一番に連絡が来る。家族と同じ扱いになる。

 医療機関にかかったときには申告が必要だが、会社への報告は任意だ。パートナーを扶養している場合には申告するが、そうでなければ会社に言うメリットはあまりない。
 ダイナミクスのパートナー関係は、多種多様なケースが多く、決まりもざっくりとしている。
 婚姻関係のいいとこ取りをしているだけの、取ってつけたような決まりごとだ。


 朋志は、棗とパートナー関係にあるが、登録はしていない。
 棗とそんな話はしたことがないし、朋志は、顕と失敗した経験から、登録に前向きではない。
 サブドロップすると、パートナー関係を解消したほうが良いと言われるからだ。
 新しいパートナーを見つけたほうが良いと、見知らぬ機関の人に言われる。
 棗とのプレイでサブドロップするとは考えられないが、もしドロップしてしまっても、棗とはパートナーを解消したくない。やり直したい。
 駄目になったときのことを勝手に考えて、勝手に落ち込んでいる。
 

 朋志と棗は、なんだろう…。
 今は、お互いがパートナー関係にあることを認めている。
 二人だけの決まりごとだ。

 …一緒に暮らすことで、なにか変わるだろうか。
 棗が言ったことは、お互いやりたいことは違うけど、これからも一緒にいたい。
 だから、一緒に住みたい。
 すごくシンプルでわかりやすかった。
 
 朋志も棗と一緒にいたい。
 一緒に暮らしたい。
 でも、どこまでいっても朋志は、臆病だ。
 こわい。

 
 朋志から見て、棗はDomとして非の打ち所がない。
 堂々としていて、言いたいこともやりたいこともはっきりしている。独立したいと言った棗は、格好よかった。
 棗は、人としても憧れなのだ。
 比べて朋志は…。
 Subとしても、個人としても、至らないところだらけだ。
 それでもSubとしてなら、棗が朋志のことを好きになってくれるのはわかる。一緒に暮らしたいと言ってくれることも。
 不安だらけのSub、プレイも偏っていて、できることは少ない。棗が気づかせてくれて、それでも良いと認めてくれた。
 むしろこんなやりにくいSub、棗以外に相手にされるとは思えない。
 棗が朋志のことをパートナーとして選んでくれたことが奇跡だ。
 感謝している。



 でも、朋志個人としてはどうだろう。
 見た目も普通で、これといって取り柄もない。
 性格も、よく言えばおとなしいが、引っ込み思案で暗い。
 ただ自分に自信がないだけ…。
 Subとしての劣等感でいっぱいだったのに。そちらが満たされたら今度はこっち。
 ため息しかでない。


 Domとして言ってくれたら、すぐに頷けたのに…というのは甘えだとわかっている。


 早く返事しないといけないと思いながら、この気持ちをうまく伝えられる自信はない。
 ましてこんな自分勝手な思いをわかってほしいとは言えるはずもなく…。




 



 その週末。
 朋志は棗のマンションに来ていた。
 

 「こんにちは」
 「こんにちは」
 思わず見つめ合って笑う。
 「なんだか久しぶりな気がします」
 「はい…」
 「どうぞ」
 「おじゃまします」
 
 ここのところ週末は、プレイが中心になっている。
 細かく発散できなくなったのだ。


 そして、なにより心が痛いことには。
 「”Kneel”」
 「はい」
 「”Look”」
 「はい」
 「”Take”」
 「はい」
 プレイが作業のようになっていることだ…。
 心は満たされるけど、なんか違う感が拭えない。
 


 このままじゃだめだ…。



感想 3

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

響花学園

うなさん
BL
私の性癖しか満たさない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。