【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

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蜜月かもしれません

未来は見えないけれど 5





 「棗さん」
 「はい」


 棗は、朋志のために紅茶を淹れてくれていた。
 「いえ、あの、話をしてもいいですか…」
 「わかりました。紅茶を飲みながら話しましょう」



 「ありがとうございます」
 棗が紅茶を運んでくれる。今日もおいしい。棗も朋志の隣に座る。
 「棗さんが旅行のとき、ど、同居したいと言ってくれましたね」
 「ええ、同棲ですけど」
 「あ…ぅ、はい」
 紅茶で喉を潤す。

 「棗さんが、一緒に住もうと言ってくれて嬉しくて、考えてきました」
 「同棲です」
 「あぅ、…はい。どど同棲の話です」
 「はい」

 「俺も棗さんとど…同棲したい…です」
 「ほんとうですか」
 「…はい、でも…」
 棗の視線を感じる。
 思いきって、棗の手を握る。

 「俺は、やっぱりこわくて」

 朋志の言葉に、棗が手を握り返してくれる。朋志よりも少しだけ大きな手、温かくて安心する。
 


 「棗さんは、俺のパートナーです。いつか棗さんが言ってくれたみたいに、俺にも棗さんしかいません」
 「ええ」


 「でも、あのときはどうしてか、すぐに”はい”って言えなくて…」
 「朋志さんがなにを怖がっているのか聞きたいです」
 「…棗さん…俺がSubで棗さんはDomだから…」
 「僕がDomだとだめですか」
 「違います。だめなのは俺です。棗さんが俺のことSubとして認めてくれて、俺は初めてSubでもよかったんだと思えました」
 「朋志さん…」
 「だけど、そうしたら今度は俺…自信がなくなってしまって…、棗さんはなんでもできてすごい人です。そのうえ綺麗だし格好いいし…。でも俺は…暗いし、男だし…」
 「…」
 「ごめんなさい…でも確認しないと俺…面倒くさくてすみません…」
 謝ってばかりの朋志の言葉に棗は動かず、黙ったままだった。
 そしてぽつりと言った。

 「性別…」

 棗が呟いた。
 「そうですか」
 「…」
 「朋志さんは、女性が好きですか」
 「…俺は…性別はどちらもあまり…、たぶん、Domしか好きになれません…」
 「僕は、好きになればどんな人でも愛せますが…一度に一人だけです、朋志さん」
 「棗さん…」


 「朋志さんはどうしたいですか」
 「俺は…」

 この手を離さないでほしい。
 離したくない。
 でもたぶん、棗なら朋志のことを離さないでいてくれる…。


 「俺は、棗さんが俺のことをSubだから好きになってくれて、でも、ど…同棲したらSubじゃない俺のことも受け入れてくれるか不安になってしまって…」


 初めて会ったときから、棗は朋志を見てくれていた。そんな人にこんなことを聞くのは失礼じゃないか…。ただの甘えだと恥ずかしくなる。
 頬を撫でられる。
 「顔をあげてください」

 棗は、朋志の愚にもつかない話を聞いても、嫌な顔ひとつしない。
 優しい眼差し。

 「僕は、同棲なんか持ち出したら、あなたが逃げていくんじゃないかと思っていました」
 「えっ」
 「Subじゃない部分のあなたは、自立心の強い人ですから、相手がDomとはいえ、誰かの庇護下に入ることを良しとはしないんじゃないかと…」
 「そんなことは…」
 「ええ、今の話を聞いてわかりました」
 朋志は、棗から目が離せない。吸い込まれそうな思いで棗を見ている。


 「あなたは、自立心や尊厳…そういったものを含めたあなた自身を、まるごと僕に預けてくれようとしているのですね」
 「あっ」
 「でも、Sub以外のあなたは僕が受け入れるか不安に思っている…」
 そうだ。
 朋志の不安はそこだけ。受け入れてほしいからこそ不安になってしまう。いい大人がこんな小さなことを言い出してぐずっている。
 呆れられないかと心配もしている。
 

 朋志の不安ごと棗が抱きしめてくれた。耳元でささやかれるとくすぐったい。
 「もう全部好きになっていますよ」
 「ほんとうですか」
 「ええ、あとでゆっくり教えてあげます」
 「はい」


 よかった。
 棗を好きになってよかった。
 抱いてくれている体を抱きしめ返す。
 「ありがとうございます…」

 ――― ずっと一緒にいてもいいんだ…








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