【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

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蜜月かもしれません

構ってちゃんの人たち 3



 棗の家は郊外にある。
 田園風景が広がる山の手前に大きな家がぽつりと建っている。
 手入れはされているが、築年数は結構経っている。 
 表札には棗、と達筆に書かれている、ここが棗の実家だった。
 
 今は両親ともう一人で住んでおり、兄弟はみんな成人を期に家を出た。

 昨日から棗の兄の一人、理生が帰国滞在していると聞いたが…。

 インターホンを押して中に入る。
 母が出迎えてくれた。
 棗の母は、小柄で溌剌としている。
 「あら、理人さん」
 「お久しぶりですお母さん、戻りました」
 来客用のスリッパを棗の足元に用意してくれたので、足を通す。
 「ホントよ、ちっとも帰って来てくれないから寂しくて」
 「すみません」
 「理久りくさんも来ているわよ」
 「理生は?」
 「理生さんは出かけたわよ、約束してたの?」
 「はい、でも大丈夫です」
 「そう?あとでお父さんたちにも挨拶に来てね」
 「はい」

 廊下を軽く軋ませ、客間に入る。
 「失礼します」
 「理人か」
 「理久兄さん」
 理久は、棗より十歳年離れている一番上の兄だ。
 三十も後半になるが、線も細く、母にそっくりの女性的な顔をしているので、年齢不詳な雰囲気がある。
 理久はDomだ。棗は、理久からDomの作法を教わった。Subの性質や接し方、慈しみ方まで。


 理生もDomだが、年が近い理生にはよくいじめられた。あまりいい思い出がない。彼は留学先のアメリカにそのまま定住し、ほとんど帰って来ないので、安心していたのだが。

 反面、年の離れている理久には幼い頃から可愛がってもらっている。本来なら頭が上がらない存在だ。

 いくら兄弟とはいえ、Subの朋志をDomの兄たちに会わせたくない。まして、朋志は他ならぬ棗のSubだ。誰にも触らせたくない。
 
 「理生ももうすぐ来ると思う」
 「はい、理生はここで寝泊まりしているんですか」
 「そうだね」
 「どこに行っているんですか」
 この時間に来ることは伝えていたのに。
 「ちょっといいとこ」
 「?」
 「それより理人、水臭いよ。パートナーと同棲することを黙っているなんて」
 「すみません」
 「理生のことがなかったら、ずっと言わないつもりだっただろ」
 「いや、…まあ」
 「昔から理人は秘密主義で面白くない」
 「すみません」
 理久は母譲りの甘い表情で頬を膨らませているが、棗からしたらちっとも可愛くない。むしろ、ぞーっとする。

 幼少期からの刷り込みで、棗は理久には勝てるきがしない。
 最終的には、朋志次第で会わせることになるだろうと思っている。朋志が無邪気に”会いたいです。挨拶させてください”と言っている姿が目に浮かぶからだ。
 朋志が他のDomと接する機会を作りたくないという、棗の気も知らず…。 

 朋志には言っていないが、棗の家族はみんなDomだ。
 兄弟だけではなく、両親も。
 両親は、Dom同士でパートナーとなった。
 パートナーというより、共通のSubを可愛がる仲間なのだ。
 そして、生まれた子どもは三人ともDom。

 棗の家は説明しにくく、ややこしいので、あまり言いたくないのだ。

 
 朋志をDomの巣窟に放り込むことになる。
 兄にうっかり口を滑らせてしまったことは、痛恨だった。

 なので、朋志との境界線をきっちり決めておきたい。
 ダイナミクスを表に出さず、ただの兄として挨拶をして、速やかにお引取り願う。
 一筆書いてもらうつもりで実家に戻って来たのだ。



 車のエンジン音がした。
 「理生かな」
 理久が玄関の方を見ながら言う。棗に視線を戻す。
 
 「理人、ごめんね」
 「はい?」
 「理生を止めなくて」
 「よくわかりませんが…」

 理久の表情。
 いたずらが成功したときのような…、面白がっている顔だ。
 嫌な予感がする。
 「僕も会いたかったんだ」
 「理久兄さん、あなた…」



 「理久、連れてきたよ」
 「ありがとう、理生」
 「棗さん」
 よく知った声。弾かれたように声がする方に視線を向ける。
 「朋志さん…」

 棗とほとんど同じ顔をした理生と一緒にいたのは、絶対家族に会わせたくないと思っていた大事なパートナー…、朋志だった。




 
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