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蜜月かもしれません
構ってちゃんの人たち 4
理生と一緒に入ってきたのは、朋志だった。
「棗さん、すみません…」
「朋志さん」
棗は朋志の手を引いて引き寄せ、理生から引き離した。
「俺…棗さんと思って鍵を開けてしまって」
朋志が申し訳無さそうに謝る。棗の手を握りしめる力がいつもより強く、不安が伝わってくる。不安ごと包み込むように重ねる。
「気にしないでください。それよりなにもされていませんか」
「あっ…、…はい、大丈夫です…」
朋志の微妙な間に引っかかり、理生を睨みつけた。
「理生、マンションには来ないでくださいと言っておいたはずです、朋志さんになにもしてないでしょうね」
「兄ちゃんにたいして酷くね?理人のトモくんには指一歩触れてないけど。ねートモくん?」
「えっ、はい」
「…トモくん?」
朋志を”トモくん”と呼んだことに、棗は、理生の意図的な挑発だと気づいていたが、無性に腹が立った。
…僕のSubに興味本位で関わるな。
他は何も考えられず、地を這うような声が出た。棗の手を握っていた朋志がビクリと体を揺らせる。びっくりさせていることはわかったが、理生への怒りの方が強い。
「朋志さんを変な愛称で呼ばないでください」
「でも、トモくんは嫌がってないから」
理生のことは昔から苦手だ。同じ顔をしているのも好きになれない。
何より、理生はすぐ棗のものに興味を持って、ちょっかいをかけてくる。すぐに飽きるくせに…。嫌な思いだけが残る。
「トモくん、怒りっぽい理人なんか嫌になったらいつでも俺のところに来ていいからねー。理人より良い思いさせたげるから」
「え…」
斜に構えたまま態度を変えない理生を見ていると、腹の底からグラグラ煮えたぎるものが出口を求めて暴れまわっているのを感じる。
理生相手に閉じ込めておく必要もない。
「あっバカ理人、Subの前でグレアは…!」
「理人、やめなさい」
「…っ!」
理久の言葉に、棗は弾かれたようにして我に返った。
「理生もそのへんにしておきなさい」
「しょーがないなぁ」
「…すみません」
ハッとする。
棗の手の先には朋志がいる。
「朋志さん、大丈夫ですか」
「…」
朋志は棗の手を力なく握ったまま、身を縮めるように震えていた。棗の怒りのグレアに怯えている。
朋志が棗のグレアを感じたのは初めてのはずだ。初めて感じたのが怒りのグレアだ。自分に向けられたものではなくても恐かったのだろう。朋志は、棗の怒りには慣れていない。慣れさせる気もないのに。
棗は、慌てて朋志を落ち着かせようとした。自分のしてしまったことを後悔しながら。
しかし、朋志は引き寄せようとした棗の手を震えながら押しのける。
「や、棗さん、…こわい…」
「朋志さん…」
周りはDomだらけの上に、頼りの棗からは怒りのグレアをあてられ、朋志はどうしたらいいのかわからないまま、ただ震えていた。
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