【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

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蜜月かもしれません

構ってちゃんの人たち 6



 棗さん…。
 棗が怒っている。
 朋志は、自分が怒られているわけでもないのに、こわくて仕方がなかった。

 朋志のことで怒っていたから…。

 理生を部屋に入れたのも、のこのこ棗の家についてきたのも朋志だ。

 棗を直接怒らせたわけではなくても、朋志の判断がこの状況を招いてしまったと思ったら…。
 ただでさえ、気弱になっているところに、グレアを浴びてしまった。



 「もう大丈夫ですよ、恐かったですね」
 低くて、穏やかな声。
 年上の男性で、この人もSubだ。
 よかった。
 「あ、あの…、ここはDomの人たちばかりで…」
 「ええ、そうですね。落ち着ける場所に移動しましょう。歩けますか」
 「はい…」

 




 ――― 棗さん、俺は鍵を開けないほうがよかったのかな。

 朋志は、棗の三つ上の兄だという理生を言われるまま部屋に招き入れた。
 そこで棗のことをいろいろと聞いた。
 もう一人、理久という兄がいる。
 理久が長男、理生が次男、棗が末っ子になる。
 
 理久が陶芸家で、理生は海外で理久の作品をブランドとして販売しているそうだ。
 定期的に帰国して、理久の作品を仕入れているらしい。

 「よろしくね。理生って呼んでいーよ」
 「りお…さんは、棗さんのお兄さんですか。双子かと思いました」
 「そぉ?よく言われるけど、俺の方が男前だと思うよ」
 「ふふっ」
 理生の顔は、棗とほとんど同じなのに、性格は全く似ていない。棗の知らない表情を見ているみたいで楽しい。
 「ねえ、きみの名前は?」
 「あっ、ごめんなさい。俺は、丸目朋志です。よろしくおねがいします」
 「朋志…トモくんね、オッケー」
 「トモくん…」
 本当に棗とは似ていない。でも、嫌な感じはしない。
 「トモくんはいつから理人のパートナーなの」
 いつからだろう。記念日もないくらい曖昧なタイミングだった。
 「半年…くらいです」
 「へぇ、でも理人のプレイはつまんないでしょ」
 「えっ!」

 棗のプレイが詰まらないなんて考えた事はない。
 理生は棗のプレイのどの部分のことを言っているのか…。

 「俺は、棗さんのプレイでダイナミクスが安定しました。つまらないなんて感じたことはありません。棗さんには感謝しています」
 「…ふぅん、甘くて優しいだけのプレイしかしないから、みんなすぐ飽きちゃうんだけどな」
 それは以前、棗からも聞いたことがあった。棗のコンプレックスのひとつだ。

 「でも俺は、棗さん以外のプレイは受け入れられないです…」

 朋志は、棗の”甘くて優しいプレイ”がいい。棗だけだ。

 「へえー理人のヤツ、ちゃんと見つけちゃったのね”自分だけ”のやつ」

 嬉しい。それは朋志も一緒だった。
 
 「理人に飽きたらいつでも俺のところに来ても良いからね」
 「えっ、棗さんに飽きる日なんて来る気がしませんけど…」
 「うえぇ、マジレスいらねぇ」



 それから、どうして理生が棗のマンションに来たのかも教えてもらった。

 棗の家は、家族全員がDomなこと。
 唯一、一人だけSubがいる。彼は両親のパートナーだが、家族として暮らしている。

 棗は、特殊な家族構成をあまり知られたくないと考えているようだが、理生や理久は、棗のパートナーなら歓迎したいと思っている。
 普段、田舎に住んでいて他のSubと関わることのない両親のパートナー…恵吾という…とも話し相手になって欲しいと言われて、朋志は、それならと理生と一緒に来たのだ。


 朋志は、理生の言い分には賛成だった。
 棗が気にしていることについては、まるで気にならない。
 朋志が悩んでいたら、棗はいつも朋志を肯定してくれる。これでいいんだと朋志に自信をくれる。
 朋志は、棗をまるごと受け入れたかった。
 
 



 なのに。朋志は甘く考えていた。
 棗の家族だから、全員Domでも大丈夫。

 まさか、Dom同士の牽制や喧嘩があんなに強烈な世界だとは思っていなかった。
 Domの発する敵意丸出しのグレアが、…直接向けられたわけでもないのに…、あんなに恐ろしいものだったなんて。


 棗さんに謝りたい。
 きっと朋志の軽率な行動があの場面を招いたのだ。
 棗をこわがって拒否してしまうなんて…。
 せっかくパートナーだと認めてくれて、ずっと一緒いたいと言ってくれたのに…。
 


 
 棗たちがいる部屋から離れると、段々落ち着いてきた。客間のソファに座る。
 
 「…俺、棗さんに謝らないと」
 「謝るようなことがあったのですか」
 恵吾が聞き返す。恵吾は、年上でSubで、穏やかな雰囲気に、気が緩んだ。吐き出したい思いもあった。
 「俺が勝手なことしたから…棗さんを怒らせて…、パートナーじゃなくなったらどうしよう…」

 恵吾が少し考え、朋志の隣に座った。
 「僕は、棗家の人たちと長らく一緒にいますが…、棗家の人はみんな、クールダウンが早いと言うか、怒っても長続きしません」
 「…」
 「そして、決して相手だけを責める人たちではありません。僕にはなにがあったのかはわかりませんが、ゆっくり話し合えば悪いことにはならないと思いますよ」
 「そうでしょうか」
 「ええ、きっと」



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