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蜜月かもしれません
構ってちゃんの人たち 9
朋志がみんなのところへ挨拶しに行くと。
待ってましたとばかりに朋志へと群がる面々。
朋志はといえば。
自慢の畑を見てほしい父と、薪窯を見てほしい理久の間で困っていた。
「あの、どちらも興味あります。見たいです。でもどうしたらいいですか」
困りながらも、どちらにも真面目に答えていた。
「えっ、そうか。じゃあ順番に行こうか」
「そうですね」
「はい」
身内がデレデレする姿は見ていて疲れる。
あんなおじさんDomに囲まれて気の毒だと思うが、当の朋志は全く嫌がっていない。むしろ楽しそうだ。
心中穏やかでない棗に、恵吾が話しかける。
「理人さん、大丈夫ですか」
「恵吾さん…、全くもって大丈夫ではありませんが…仕方ありません。あのひとたちが暴走し始めたら誰にも止められませんので」
「そうですね…」
「トモくん、理久たちと行っちゃったんだ?あの二人に捕まると長いからなぁ…くそー出遅れた」
「理生さんはトモくんと充分お話されたんじゃないですか」
「んー、少しね」
恵吾にまで”トモくん”が浸透していることに、軽い絶望を抱く棗の心中など、誰一人興味はない。
「恵吾さん、母さんが夕飯を一緒に作って欲しいって言ってたよ」
「そうでしたか、わかりました」
そうして供された夕飯は。
母と恵吾が張り切ったので、豪華だった。
父と理生が隣の席を狙っていたが、「棗さんの隣でもいいですか」という朋志に、肩を落としつつ、席を棗に譲った。
「朋志さん」
「はい」
「忘れています」
隣に座りながら耳元で囁く。耳からブワッと赤くなった。かわいい。
「あっ…り、理人さん…」
「はい」
「あ、あーん」
朋志が食べやすそうな大きさにカットされたブロッコリーを箸でつまんで棗の口元に運んでくる。
遠慮なくいただく。
「理人…お前そこまで…」
「げえー理人と兄弟とか恥ずかしくて死にそう」
「そっくりだそ、お前たち…」
「なんとでも言ってください」
家族に会う前、嫉妬深い棗が朋志にお願いしたのは、みんなの前で”理人”と呼ぶことと、夕飯を食べさせることだった。
ピンポイントでマウントを取って満足を得ることで、他の時間を乗り切ろうという作戦である。
心が狭くて嫉妬深い棗の、苦肉の策だった。
こんな時ばかりは、賢い頭も活躍しないのである。
朋志はちょっとはにかんだ笑顔で肯定してくれた。心の中で何を思われていたのかは知らない。
キモいとか思われていたら、しばらく布団から出られないだろう。
食後のお茶を飲みながら、母が朋志に話しかける。
「トモくん、理人さんの生まれたときの写真見たくない?」
「えっ、良いんですか!」
「小、中、高と取り揃えているわよ」
「見たいです」
「もちろんよ、待ってて」
朋志は、本日一番の笑顔でアルバムを抱えた母を待っていた。
その手があったか…とみんな臍を噛んだ。
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