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蜜月かもしれません
構ってちゃんの人たち 10
朋志は、恵吾ともう少し話をしたかったが、彼の周りには必ず家族の誰かと話しをしていたので、きっかけを作られなかった。
話をしたい内容が個人的なことだったからだ。
彼は両親と近いくらいの同じSubで、少し話を聞いてくれただけだが、気持ちが楽になった。
あと、彼の雰囲気が好きになった朋志だ。
落ち着いていて、穏やかな雰囲気。話し方も優しい。
何より、彼のダイナミクスはとても安定していると思う。
朋志は医者ではないので、なにも証明できないのだが、愛されているSub独特の雰囲気のようなものを感じた。羨ましいほどに。
明日の昼には帰ることにして、夜は泊まらせてもらうことになった。
入浴をすませて棗の部屋に戻ろうとしたところ、タイミングよく恵吾を見かけたので話しかける。
「恵吾さん」
「トモくん。今日は疲れたでしょう」
「いえ、楽しかったです。恵吾さんが話を聞いてくれたおかげで棗さんと仲直りできました。ありがとうございました」
「僕はなにもしていませんよ」
「そんなことありません」
「そうですか」
「はい」
「あの、恵吾さん」
「はい」
「実はお願いがあります…」
「僕にできることなら」
「…棗さんのことです」
朋志から見て、棗は非の打ち所がないDomだ。尊敬している。
しかし、家族からの言われようといったら…。
朋志は家族の会話を聞きながら、「??」と首を傾げていた。
――― 棗さんって誰がどう見ても、完璧なDomだと思うけど…。
ちょっとくさいセリフを言って、ちょっと嫉妬深くて筋肉オタクだけど、格好いいし、いい匂いがして、優しいのに。
これは、ダイナミクスの違いからくる評価のズレなのではと思い、同じSubの恵吾から見た棗を知りたかった。
話を聞いたところで、朋志が棗への好意を変えることはない。ないからこそ聞ける。
好奇心混じりに聞きまわることは、あまり褒められたことではないが…。
「なるほど…」
朋志の話を聞き終えて、恵吾は要するにと前置き言った。
「トモくんは、理人さんが良くない言われ方をしているのはどうしてかと思っているわけですね」
「はい、それもありますけど…」
あまりにも、朋志の評価と違いすぎて戸惑ったということもある。
「理人さんは幸せ者ですね」
恵吾は、そう言って微笑み、部屋に招いてくれた。
「理人さんは、ダイナミクスによるDom性についてはかなり悩んでいました」
「えっ」
「Subから求められるDom性と、持って生まれたDom性の違いにです」
「ああ…」
棗のコンプレックスだ。
「大人になって、ある程度、折り合いをつけるようになりましたが…」
変えられない性質を否定され、まだ子どもだった棗は、全てを拒否されたような孤独感を感じていた。それでも、いつか誰かが受け入れてくれるのを待っていたのだ。
「彼らは、理人さんのことを兄弟の気安さで好きなように言っているだけです。それは兄弟だからこそ言えることで、良いも悪いもないとは思いますが…」
恵吾の目は優しい。
「僕は、トモくんの見方を支持します」
「…」
「理人さんは、優しくて素敵な人ですからね」
「はい」
「トモくんに理人さんの秘密を教えてあげます…」
「棗さん!」
「朋志さん…わっ」
朋志が長風呂からやっと戻ってきたと思ったら、急に大きな声を出して棗に抱きつく。
「どうしましたか、なにか嫌なコトでもありましたか」
「いいえ」
「”Hug”って言ってください」
「…いいですよ」
「朋志さん、”Hug”」
「はい!」
朋志は、棗をあらん限りの力で抱きしめた。
棗の実家で、棗の原点に触れ、こうして抱きしめることができることが嬉しかったのだ。
棗は、朋志の様子から、何があったのかはわからないが、なにかいいことがあったに違いないと思い、朋志のかわいさに内心デレデレしていた。
「ところで朋志さん」
「はい」
棗は神妙な顔をしていた。
朋志は、なんだろう?なにかしたっけと思いを巡らせたが、特に思いあたる節はなかった。
「家族の前で、僕にあーんしないといけなかったこととか、実は嫌だとか思っていましたか」
「え、そうですね…嫌なんて全然思いませんでしたけど…」
棗の表情が一層こわばり、朋志まで緊張してきた。でも、嘘は言えない。
「なんだが可愛いなあって思いました」
「か、かわいい…」
「はい、こう、胸がきゅうっとするというか」
「…」
「え、嫌でしたか」
「いえ…」
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