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期待をこめて
冬の夢、地下の息吹き 1
「トモくんに理人さんの秘密を教えてあげます…」
恵吾さんが朋志に教えてくれたのは。
朋志にとって、心が温かくなって、胸がきゅうっとする話だった。
そして、朋志の心で大切にしまうことにした。
棗の実家から戻り、朋志は毎日が忙しかった。
賃貸の解約や住所変更手続き…。
住所変更については、職場にも申請する。朋志は、職場にパートナーがいることを伝えていることもあり、妙に恥ずかしい思いをした。
「定期が変わるようでしたら、こちらに記入してください」
「はい」
「おめでとうございます」
「ぅ…ありがとうございます…」
数枚の書類をもらって帰る。
棗のマンションだ。
今月いっぱいは賃貸契約期間中で、朋志は細々した荷物を少し残しているが、体は先に棗のマンションへ入居した…という感じである。
自分のペースで進められた引っ越しだったので、荷物は休みの度に棗にも手伝ってもらいながら運び入れた。
処分するものは先に振り分けて引き取りに来てもらっているので、あとは契約期間をいっぱい使って、掃除やら挨拶やらを済ませる予定である。
「おかえりなさい」
「た…ただいま…」
棗におかえりと出迎えられることに、まだ慣れない朋志である。
「簡単なものですが、夕食も用意していますよ」
「ありがとうございます」
一汁二菜のタンパク質をメインとしたボリューム満点のメニュー。
「いただきます」
棗はもりもり食べ進めていく。食べっぷりが見ていて気持ちいい。
朋志はごはんと漬け物だけでも生きていけるタイプで、エンゲル係数はもっぱら紅茶で上げていたのだ。これを食べ続けていたら、朋志もマッチョになれそうな気がする。
「おいしいです」
「ありがとうございます」
「お仕事のあとにご飯を用意するのは大変でしょう。俺もこれから出来るように頑張ります」
「いいえ、朋志さんに食べてもらえると思ったら、作り甲斐がありますので、気にしないでください。張り合いがある方が、仕事もマッハで終わらせられますし」
そうはいっても、棗にも繁忙期がある。
独立を視野に入れている会計士が毎日定時で帰って来て大丈夫なのか、…定時なのはいいことなのだが、無理をしていないかと心配している。聞いたところで”大丈夫です”と言われるだけなので聞けないが…。
棗には内緒であるが、朋志には密かな野望がある。疲れた棗を癒やすべく、駅前の料理教室に通うのだ。記入済の申込用紙は、カバンの中で待機中である。
――― 待っていてください、棗さん。和洋中マスターしてみせますから…!
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