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日常系
オリオン、聖夜に包まれて 2
話をしながら、段々と棗のテンションが下がっていくのがわかる。通話を終え、朋志の方を見る。棗が言いたくなさそうに言うには。
「…実家でクリスマスパーティをするそうですので、行きませんか…できたらお断りの方向で…」
「えっ」
「行きたいですか」
「行きたいです…いけませんか…」
「いいえ、行きましょう…」
なんともちぐはぐなやり取り。
棗の実家嫌いの原因はわかっている。
Domだらけのところに朋志を行かせたくないのだ。
朋志はちゃーんとわかっている。なにせ大好きな棗のことだ。
棗の心配を少しでも軽くしてあげたい。
なので朋志は、
俺がついています棗さん!大船に乗ったつもりでいてください!
と、心のなかで啖呵を切り、棗の手をぎゅーっと握った。
「大丈夫です、棗さん」
「朋志さん」
「この理生さんからいただいたセーターを着て、見せつけましょう」
俺たちが仲良くているところを!
「ええ…朋志さん」
棗とクリスマスリンクコーデが出来るとワクワクしている朋志は、理生の名前が出た途端に泥船となったことなど知る由もなかった。
今年のクリスマスは平日なので、その前の週末を利用して棗の実家に帰ることになった。
「荷物はこれだけですか」
「はい」
車に乗り込みベルトを締める。
「よろしくお願いします」
「はい」
朋志は運転免許証を持っていないので、車での移動は棗任せになってしまう。棗といえば、朋志のためなら通勤の送り迎えもしたいくらいなので、運転は全く苦にはならないのだが、朋志は気を遣ってしまうのだ。
行き先が気乗りしないときなんかは特に。
「俺も免許証を取ろうかな…」
今は料理の達人を目指して、悪戦苦闘している。一度に二つのタスクを進められない朋志にはまだまだ先のことになるが、パートナーのDomに尽くせることはSubの歓びである。棗が朋志の運転する車の助手席に乗っていることを想像するだけで、胸が擽られる思いだ。
「ええ、朋志さんが取りたいときに」
わかりやすい朋志の気持ちなどお見通しと言わんばかりに脂下がっている棗に、もどかしいような気持ちで言い募る。
「俺は、棗さんだけですよ…?」
「ありがとうございます。疑っているわけではありません。わかっています。けどDomなんて本当に嫌になります…」
「…棗さん?」
「理生や理久兄さんが朋志さんの名前を呼ぶだけで言いしれないムカつきが湧いてくるのですよねぇ…」
「…」
「朋志さんは気にせず普段どおりにしていてください」
「…はい」
棗は以前のようにピリピリしていない。棗の中では、感情はともかく整理がついたことなのだ。
なんと言っても家族である。パートナーと家族の仲がいいのは棗としても喜ばしいことではある。
「棗さん」
「はい」
棗の頬を包み、鼻先同士をすりつけた。細めの目が見開かれているのを見た朋志は気が大きくなって、今度は唇を啄んでみた。一瞬のことだ。
「…なにか言ってください…」
「…」
「恥ずかしいです」
「いえ、小さいことに拘っている僕の方が恥ずかしいですよ…」
「え」
あっと言う言葉は棗の舌に攫われた。舌先を擽られて肩が跳ねる。角度を変えながら何度も唇を吸われる。朋志も同じことがしたくて棗の唇を追いかけていく。
「ありがとうございます」
「…」
ぽぉーっとして返事どころでは無い朋志を満足そうに見てから、棗は車を発進させた。
「いらっしゃーいトモくん!」
理一と美月に理久のみならず、恵吾まで朋志を囲んでもみくちゃにして盛大に歓迎している。
「あ、わぁ、ここんにちはっ」
「こんにちは、今日も愛くるしい…」
「堅苦しい挨拶はいいから中に入りなさい」
「クリスマスの飾り付けが途中なのよう、一緒にしましょう」
「あ、理人さんも早く中にどうぞ」
「ええ」
棗は秀麗巧緻に造られた芸術作品のような顔を、これでもかというくらいげんなりさせていた。
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