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期待をこめて
冬の夢、地下の息吹き 3
「”Kneel”」
「はい」
ゆっくり棗の膝に乗る。
腰を引き寄せられて、耳元で褒められる。擽ったくて肩を竦めるが、棗は知って止めようとしない。
「もうやめてください…」
「ええ、すみません」
その顔は、笑っている。
”Hug”と”Stop”
棗に抱きつく。
「そのままでいてください」
「はい」
膝に乗り上げ、棗の頭を胸に抱く。
熱い息が胸にかかる。
擽ったいし、ドキドキする。
ただ、こうしていると、棗が”自分のもの”だと感じられるから好きだ。
朋志は、棗の匂いも好きだ。若い男性の匂いの中に新緑のような瑞々しい香りがして、うっとりしてしまう。
背中や脇腹を撫でられたり、耳の裏を擽られたりするので、あまり集中できないが…。
それも全部、知られていることだ。
「棗さん…」
「動かないでください」
「…ぁっ、もう…」
「ええ、もう少し」
「ん…」
棗の気がすむまで、抱きついたまま過ごした。
ゆったりとしたプレイの充足感にぼんやりしていると、ふわふわしてきた。
「最近、こういうことが増えましたね」
「ん」
棗がなにか言っているが、朋志にはほとんど理解できていない。ただ棗の声を聞いていると、それだけで気持ちがよかった。
暖かい毛布に包まれているような心地で、どちらが上か下かもはっきりしない。頬に違う熱を感じた気がした。これも気持ちがいい。
「サブスペースに入っていると思うのですが…」
もっと声が聞きたい。
「…っめさん」
「はい」
「こえ…もっと」
「…ええ、朋志さん。僕のプレイでサブスペースに入ってくれる人はあなたしかいません」
朋志の中が棗の声でいっぱいになり、嬉しくなる。
「ありがとうございます朋志さん…」
棗さん、好きです。
朋志が目を覚ましたのは、真夜中だった。
真夜中なのに、気持ちの良い目覚め。
棗の寝室だ。隣では棗が眠っている。
プレイをしていてそのまま寝てしまったらしい。そんなことが時々ある。
ふと、”あ、今だ”と思った。
棗を起こさないように、そおぉっとベッドから抜け出す。
寝室の隣が朋志の部屋だ。
机に置いてある封筒。住所はなく、”棗さんへ”とだけ書いてある。
それを、棗の寝室にある机に置いた。
棗はまだ寝ている。
起こさなかったことにほっとして、朋志は布団を被りなおした。
手紙に気づいた棗の反応を想像しているうちに寝てしまった。
驚いてくれたらいい…と思いながら。
次に朋志が目を覚ましたのは、朝だった。
ブラインドが少しずらされていて、寝室に日の光が差している。ぼんやりと見えていた棗の後ろ姿が、段々とはっきりしてくる。
「あ…」
「朋志さん」
朋志に気づいて、棗が振り返る。
「おはようございます」
いつものように挨拶をして、起き上がる。
棗の手には、見覚えのある便箋があり、「あっ」と思い出した。
――― 読んでくれたんだ。
「棗さん、その…その手紙…」
「朋志さん、読ませていただきましたよ」
ほとんど同時に言い合ってしまい、二人して苦笑する。
棗が手紙の文字を追い、朋志に視線を移す。
「いつの間に置いてくれたのでしょうか、寝る前にはなかったように思いますが」
「はい…驚いてほしくて」
「驚きました、とても…」
「ふふ」
「…ええ、僕もあなたに会えてどれだけ嬉しかったか」
「俺もです。一緒に住むのはいいタイミングだと思いました」
「そうですか」
「はい」
ベッドが軋む。棗がベッドに座り、朋志を引き寄せた。
「棗さん、改めて、これからもよろしくおねがいします」
「ええ、はい。…僕の方こそ…」
朋志の首に鼻先がくっついている。擦り寄ってくる棗の頭を撫でると嬉しそうに目を細めている。棗が可愛い。
「俺、棗さんのパートナーになれてしあわせですよ」
寄り添っているので、囁くくらいがちょうどいい。
背中に回っていた腕に力が入り、少し息苦しいが、まだ言いたいことがある。
これからも棗さん好みのSubにしてください…
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