【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

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日常系 ※R-18

乙女の憂鬱 3




 「朋志さん、顔が見たいです」
 「え…」
 「嫌ですか…朋志さん、だめですか…?」
 ああ、ううと言葉らしいことは言えない間も、棗は朋志の顔が見たいと頼み込んでくる。
 朋志はもう、いっぱいいっぱいになっていた。
 いつものように素直にはいと言えないことも、棗が、こんなときにコマンドではなく、ただ懇願していることも。コマンドならこんな迷うことも無かったのに。こんなふうに思うのは、朋志の依存心が働くからだ。棗なんてひどくて意地悪で、こんなときでも優しくて…。
 「朋志さん」
 「うぅ…はい、棗さん…」
 はい、としか言えない。棗の声は一転して、ありがとうございますと明るい声だ。
 おそるおそる通話を音声から動画に切り替える。
 見られてしまう。
 棗からの懇願を断れるわけがない。
 顔が見たいと思うのは朋志も同じなのだ。
 ただ、たまらなく恥ずかしくて、こんな姿を見られてどう思われるのかと想像すると不安しかない。
 「…」
 「朋志さん…」
 いたたまれず泣きそうな顔。真っ赤な顔の目元は一層赤い。震える唇。吐き出せなかった熱を持つ火照った体。
 棗にはどれくらい見えているのだろう。スマホのカメラに収まる画角がわからない。
 
 朋志から見える棗は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。なんだか不機嫌そうな。
 やっぱり変なんだと目が潤み、前がうまく見えなくなりかけたとき。
 「ああ…、どうして僕がいないときにこんなかわいい顔をするのでしょうか…」
 「ご…めんなさい…あ会いたくて…」
 「怒っているわけではなくて、謝ってほしいわけでもなくて。僕も会いたいですけど、こう…惜しいです…」
 「惜しい…」
 怒っていないと言われてホッとした。
 朋志はどうしてそんなことを棗が言うのだろうと思ったが、ぼんやり考えがまとまらず、ただ言葉尻を返しただけだった。
 「流れ星を見逃したような…ハレー彗星…かもしれませんが…とにかくそんな気分です」
 棗は、火がつきにくい体質の朋志が体を火照らせているのがよりによってこのタイミングかと、悔やんでも悔やみきれないような焦りにも似た気持ちなわけだが、ぼうっとした朋志の頭に流れ星だとかハレー彗星だとかの例えが響くわけもなく。なにそれと聞き流すのも棗の声なら気持ちいい。うっとりしながら聞いていた。
 「僕のことを考えてくれましたか」
 「はい…」
 「嬉しいです、僕のことを考えてどんなふうになったのか教えくたさい」
 「うう…見えてるでしょう」
 「見えています、あなたの顔だけ」
 「棗さん…」
 「あなたの涙を拭えない可哀想な僕のためにおねがいします」
 「うぅ…」
 羞恥で人が死ねるなら、今だというくらいひどい羞恥の火の中で、朋志は棗の匂いが残るシーツを握りしめた。



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