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日常系 ※R-18
乙女の憂鬱 7
画面越しでは物足りない。とはいえ、こんな状態で目の前に棗がいれば、体から火を吹くに違いない。恥ずかしいから目の前にいられるのも困るが、こんなことを一人でするのも、恥ずかしくて憚られることに思えてしまう。でも。
「ん」
ゆっくり下腹へ手を伸ばし、そっと腫れて泣いているところを触る。
長い間放っておかれたせいか、一人でしていたときよりも、敏感になっているような気がする。画面の向こうから灼けるくらい熱い視線を感じるからだ。涙も乾かないうちに朋志の目頭からまた一粒流れた。棗があっと言おうとして止まる。スピーカー越しにもわかるくらいに、喉が鳴り…。
「朋志さん…」
「あ…棗さん…なにか…なにか言って…」
朋志の名前を呼んだきり、黙ってしまった棗だ。朋志は棗の声を頼りに、心許ない気持ちを持ちつつこんな恥ずかしくてドキドキして、なにかいけないことをしているような…いつもと違う状況にいっぱいいっぱいなのだ。
朋志の不安そうな声に、棗がはっとしたように息をのむ。
「…感極まってしまって…」
「なに…それ…」
「ええ、野暮でしたね、すみません。朋志さん…”Look”は辛いですか…?」
はっきり言ってもうよくわからない。辛い気もするし、まだ見ていたい気もする。なにより、棗の期待を裏切りたくない。
「平…気です」
「ああ…あなたは本当に素晴らしいSubです…」
あなたのパートナーになることができてよかった…と棗が恍惚とした表情をしている。朋志も同じ気持ちだが、もう今はそれどころではない。
手の中のものは、切なく震え、出口を求めている。
しとどに濡れそぼり、いつでも終わりを迎えられそうだ。
「も、…だめ…棗さん…」
「ええ、僕も」
「お願い、しっしょに…」
「…っ、ええ一緒に。朋志さんが一番気持ちがいいところはどこですか…」
「あ…わからな…」
「触ったら体が勝手に動いてしまうところありませんか」
「…あ、ありま…ぅ先の…ところ…」
「っ、…朋志さん先はもう濡れて…ええ、気持ちいいですね…もう好きなときにいっていいですよ…」
朋志は棗の声を感じなから、寄り添い敏感なところに触れてもらっている感覚がずっとしている。棗にもういいと言ってもらったので、朋志もやっと、”もういいんだ”と思えてホッとした。
「んん…ぅん…っんんっ…ぁ…」
「…っ」
棗から、出張先から直帰できるので、少し早く帰られそうだと連絡があった。ついでに体調も気遣ってくれていた。
昨夜のことが生々しく記憶に残っている朝のことである。
あのあと朋志は、”Look”のあと棗に褒めてもらっているうちに、うとうとして寝てしまったのだ。
穴があったら入りたい。入ったあとは可及的速やかに埋めてほしいとはこのこと。
スマホを握ったまましばらく石像のように固まってしまっていたのだが。
でも、もうすぐ棗に会える。テンションは上がりつつある。
一日離れていただけでこのありさま。
夕食は棗が準備してくれるので、朋志は疲れた棗を癒やすほうを担当する。
肩揉んで、棗の好きなコマンドをいっぱい聞いて満足してもらう。
Subの鑑になるぞー!いっぱい褒めてもらうぞー!
と欲望混じりに頭の中でポンポン花を咲かせている朋志だが。
仕事を終えた朋志が、マンションの扉を開け、棗の靴を確認してにんまりしていると、棗がおかえりなさいと出迎えてくれた。
「お疲れさまです」と会えた嬉しさで、ぎゅうぅっと抱きつくと、棗はちゃんと受け止めてくれた。
昨夜のことを恥じらいつつも密着した体がなにも兆してしないことに、棗が密かにがっかりしていることなんて、るんるん笑顔の朋志には預かり知らぬことである。
「宝くじに当たる確率と、隕石に当たる確率と朋志さん…」
腕の中の棗が、ブツブツ呟いているのもまた然り。
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