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トラウマ持ちのSubが幸せになる方法
トラウマ持ちのSubが幸せになる方法 3
棗が作ってくれたご飯は文句なしに美味しかった。
「片付けは俺がします。棗さんは先にお風呂へどうぞ」
「そうですか、じゃあお言葉に甘えます」
食器を片付け、棗が見えなくなるまで見送ってから手を拭いて冷蔵庫を開く。
棗には内緒だが、朋志は先週から料理教室に通っている。
料理教室は手が攣りそうになるくらい右手と左手に違うことをさせる。しかも迅速に。目まぐるしいが、普段と違う空気感は楽しい。棗に「すごいです、朋志さん」と言ってもらうために頑張っている。
明日の朝は棗より早く起きて、棗が食卓につくタイミングで温かい飲み物と焼きたてトーストを食べてもらえるように準備するのだ。棗が風呂から上がるまでにカットサラダを皿に盛って冷蔵庫にスタンバイさせておく。
棗に家事をしろと言われたことはない。朋志ができる掃除以外を棗がしてくれている。棗は時間配分が上手い。朋志の何倍も忙しいのに、朋志が何もしなくても、至れり尽くせり、上げ膳据え膳で全てしてくれる。筋トレなどの趣味も充実させている。朋志と同じ時間を生きている人とは思えないのだ。
夕方は朋志の方が少し早く帰宅する。
朋志が料理を作ることができたほうが、夜は一緒に過ごせる時間も増える。朋志は棗の役に立ちたい。プレイ以外でも、棗のためになにかしたい。
そんなことを考えているうちに棗が風呂から上がってきていた。後ろから伸びてきた腕に優しく抱きしめられる。
ふわりと香る新緑の香り。
「あ、棗さん、早かったですね。俺…お風呂まだだから…汚れますよ…」
さり気なく距離を取ろうとしたところを引き寄せられる。
「あっ」
「朋志さんは綺麗です」
そんなことはない。しっかり仕事で体を動かしてきた。一日のうちで今が一番汚れていると思う。だが、棗は本気だ。綺麗で格好いい棗に言われると気後れしてしまうが、気持ちは嬉しい。
じいっと見詰められる。
「俺の顔になにか付いていますか?」
「いいえ、朋志さん」
「はい」
するりと首筋に手が伸びてきて、指先が耳殻に辿るように触れる。
「ん」
擽ったくて肩をすくめる。
「あなたを縛りたくて…」
「えっ」
目を丸くする朋志を、近くで見たいというように引き寄せてくる。
棗に綺麗と言われても気になるものは気になるのだ。だめですと言葉の替わりに棗の胸に手を付いて距離を作る。
「だめですか」
「いえ…っ」
だめでも嫌でもない。久しぶりでびっくりしただけ。でも今のゼロ距離はだめだ。なんとかしたい。
「……お風呂に入ります…」
消え入りそうな声だが、近くで聞いていた棗が聞き逃すはずもなく。
「ええ、残りは僕が片付けます、いってらっしゃい」
「はい…」
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