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トラウマ持ちのSubが幸せになる方法
トラウマ持ちのSubが幸せになる方法 5
棗は、朋志の両足の親指を紐で縛った。
「痛くないですか」
「大丈夫です」
「よかった」
そう言いながら、朋志の足を床に下ろした。
ゆっくり立ち上がってみる。
親指同士がくっついているので、いつもよりも不安定だが、立つだけならできる。しかし歩けない。ゆっくり座る。バランスを崩したら転んでしまう。
いつもならお風呂上がりのこの時間は、棗とお茶を飲みながら一日のことを話したり、テレビを観たりしながらゆっくり過ごす。寝る前には洗面とトイレを済ませてからベッドに…。でも、今の朋志は動けない。
「あ…これ…」
ーーー 移動を棗さんに”お願い”するコマンド…?
移動といっても、朋志は子どもではない。
軽々と抱えて行くことはできない。
棗からコマンドを出したということは、朋志に”お願い”をして欲しいということだ。
「伝わりましたか」
「はい…棗さん」
頬が熱くなるのを感じる。
「プレイは寝るまでの間です。僕にして欲しいことがあれば呼んでください」
棗が立ち上がり、リビングを出ていこうとする。
「待ってください、棗さん」
「はい」
「どこへ行こうとしていますか」
「僕は今から飲み物を取りに。朋志さんは紅茶でいいですか」
「あ…はい」
ーーー ひとりになるのはいやだ。
朋志は、基本的にプレイ中にひとりになるのが苦手だ。
でも縛られているときは、棗が近くにいると感じられるから少しなら大丈夫だ。棗もそのつもりで離れるのだとわかっているけれど。
「待って棗さん、お願いします」
「…ええ、朋志さん」
棗が朋志の隣に座る。朋志の手を取って優しく握る。
「どうしましたか」
「いえ、あの…」
寂しいなんて言っていいのだろうか。
朋志を見る棗の目は、優しくて恩愛に満ちている。
こんなに綺麗で格好いい人に縛られているんだと思うと、胸がときめいてしまう。些細なことで不安になって呼び止めてしまい申しわけないと思ったが、棗の目を見て、素直になろうと後押しされた。
「俺も一緒にしたいです。棗さん、連れて行って下さい。お、お願い…します」
「ええ、よろこんで」
ーーー 恥ずかしい…。
棗の待ってましたと言わんばかりの笑顔が余計に羞恥を煽る。
「朋志さん、僕の肩に腕を回してください」
「はい…」
言われた通り、向かい合う棗の肩に腕を回す。背中から引き寄せられ、膝裏が持ち上がる浮遊感を感じたと思ったときには棗に抱きかかえられていた。
「わっ、こ、これ…」
お姫様抱っこだ。
「しっかり掴まっていてくださいね」
「はい…でもあの…」
「なんでしょうか」
足の親指を縛っているから、おんぶや抱っこはできないのだが、お姫様抱っこは恥ずかしい。照れが先にくる。
「俺…重いですよね…、麻袋担ぐみたいな感じで大丈夫なのに…」
「朋志さん、僕はこのときのために筋トレを趣味にしているようなものです、心置きなく抱っこされてください」
「…は、はい」
「朋志さんの”お願い”ですから。なんでもしてあげたくなりますよ」
「…」
ーーー やっぱり棗さんは不思議なDom…。
朋志は、頬を染めながらそんなことを考えていた。
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